「晶君、ここに完全復活! さぁレミリアさん、話を聞かせて貰いましょうか!!」「寝てるわよ」「ええ~、寝てるって……じゃあこの気合いはどこに持ってけば良いのさ」「知らないわよ。大体、レミィが倒れたのは貴方がブッ飛ばしたからでしょうが」「あー、寝てるってそういう」「ちなみに、月の兎もぐっすりおねんねしてるわ。……何やったのよ貴方」「いやまぁその、僕も想定していなかったと言うか。姉弟子も意外と無茶しいだなと言うか」「まぁ、どうでも良いけど……当然貴方は二人が起きるまで待つのよね」「時間は惜しいけど、二人共寝ているとなると待つしか無いからねぇ。それがどうしたの?」「はいコレ」「……何故に掃除用具?」「暇なら手伝いなさいよ。一応紅魔館のメイドでしょ、貴方」「え、でも僕勝ったんですけど?」「それが?」「………手伝います」幻想郷覚書 緋想の章・弐拾「天心乱漫/痛快? 三匹が逝く!」 どうも! 勝ったのに結局、半日程掃除に駆り出された久遠晶です!! ……異変終わるまでずっと拘束されるよりかはマシだけど、やっぱり釈然としないモノを感じるなぁ。 まぁそれでも、やるからには全力で取りかかるのが僕の良い所。 途中フランちゃんに絡まれつつも、きっちり仕事はやり終えましたよ。 で、起きたレミリアさんと雑談を交わしつつ姉弟子の様子を見に行ったら―――「えーっと、どうかしました?」「……何でも無いわ」 やたら不機嫌そうな姉弟子が、憮然とした表情でこっちを睨みつけてきたワケです。……何故に? そりゃまぁ寝込む原因は僕の魔槍にあったワケだけど、回避勧告はちゃんと出したワケで。 それでも残った姉弟子に怒られるのは、さすがに理不尽じゃないかと思うのですがどうでしょう。 後、気のせいかもしれないけど何だか視線から殺意が消えている気がする。 相変わらず敵意は視線に過積載だけど、泣いて謝るほどの迫力は霧散したと言ってもいいかもしれない。 え、どうしたんですか姉弟子? 隙あらばお前の喉笛を噛み千切ってやる的なオーラに満ちていた、あの頃の姉弟子はどこに!? ……まぁ、それは戻ってこなくても良いかな。うん。 「貴方には絶対に負けないわよ!」「……今の唐突な宣戦布告は、どういう意味なんでしょうかレミリアさん」「ふっ、貴様も追われる立場になったと言う事さ」 意味が分かりません。だけどなんか、変な地雷を踏んでしまった気がする。 ガッツリ僕の事を見つめてくる姉弟子の姿に、以前とは違う意味での遣り辛さを感じる僕。 ううっ、その一挙手一挙動を見逃さない的な顔は本当に何なんですか。胃がキリキリするんですけど。「さて、と。月の兎も元気な様だし、約束の報酬を与えようではないか」「貴方と遊んでいたせいで一日も無駄にしたんだから、つまんない情報だったら承知しないわよ」「まぁ、半分以上自業自得な気がしますけどねー」「そ、そういう余計な事を言わない!」「構わんさ。それだけの価値は保障するとも」 今に始まった事じゃ無いけど、レミリアさんは見てる方がヒヤヒヤする程ハードル上げるよねぇ。 その過剰な自信は、いったいどこから湧いて出てくるんだろう。ちょっとだけ分けてほしい気がしないでもない。 そんな妙な心配をしている僕を余所に、レミリアさんは胸を張ったまま高らかに宣言した。「妖怪の山へ向かえ、その過程で全てが明らかになる」「えーっと、妖怪の山に竜宮の使いがいると思って良いんですかね?」「多分な」 いや、そこは断言してくださいよ。 レミリアさんのわりといい加減な物言いに、ガックリと頭を垂れる僕と姉弟子。 それで何故にあんな自慢げにしていられたのか、レミリアさんの思考回路は本格的に理解できない。 そんな僕の思考を察したのか、彼女はさらに背中を反らして大きく高笑いを放った。 どうでも良いけど、あんまり仰け反り過ぎるとすっ転びますよレミリアさん。「くっくっく、心配するな。何が起こるか保障は出来んが、何かが起こる事は約束してやる」「それはつまり……どういう事なので?」「――なるほどね。レミリア、貴方‘弄った’わね」「人聞きの悪い事を言うな。軽く‘覘いた’だけだよ。これから久遠晶に何が起こるか、をな」「え? え?」 何やら訳知り顔で語り合う姉弟子とレミリアさん。完全に僕置いてけぼりである。 とりあえず、レミリアさんが未来予知的な何かをしたらしい事はおぼろげながら把握したけど……そんな事出来るのこの人?「……分かって無い顔ね。ひょっとして、レミリアの能力知らないの?」「これっぽっちも知りません」「そういえば言って無かったな。私は『運命を操る程度の能力』を持っているのだよ」 あー、そういえば以前に運命がどーとか言ってた気がする。 占いか何かだと思っていたけど、額面通りの意味だったんだね。 さすが幻想郷上位妖怪、僕が言えた義理じゃないけど能力がチート過ぎる。 つまりレミリアさんは僕のこれからをどうやってか見て、何かが起こる場所を先読みしたワケなんですね。 それは凄い。だけど……。「結局レミリアさんも、竜宮の使いを見たワケじゃ無いんですか」「………紅魔館の主はな、その様な瑣末事を気にしては居られないのだよ」 あ、反らした身体が戻った。 どうやら、探らなくてもいい痛い腹を探ってしまった様だ。 レミリアさんが頬を引き攣らせている事は、絶対に指摘しないでおこう。 言った瞬間、二度目のバトルに突入しそうだ。「そ、それじゃあ姉弟子。次の目的地も決まった事ですしさっそく向かいましょうか!」「そうね。ここでウダウダしていたら、メイドの業務をなんやかんやで押し付けられそうだし」「くくっ、構わんではないか。丁度メイド服も着ているのだし」「好きで着てるワケじゃ無いわよっ! と言うか、一日経ってるなら服も乾いているはずよね。とっとと着替えるわよ!」「んー。時間も惜しいですし、着替えは無しで行きません? そのメイド服も似合ってますよ?」「……私はもう、この服の隙間に耐えられそうにないのよ」 それを言われると僕は、『じゃあ着替えましょうか』としか答えられなくなるワケで。 肩を怒らせながら部屋から出る姉弟子の後に、僕はレミリアさんに頭を下げながら続いていく。 そんな僕の背中に、平静を取り戻した彼女は小さく声をかけてきた。「晶よ。――くれぐれも‘やり過ぎるな’よ」 それは恐らく、僕の運命を覘き見たが故の助言だったのだろう。 だけど残念ながら、僕がそれに気付く事は無かったのだった。 そのまま姉弟子について行こうとしたらド変態扱いされたので、僕だけ門前で先に待つ事にしました 寝てる美鈴もついでに起こそうかと考えていたら、何故かそこには妖夢ちゃんの姿が。 彼女は僕の姿に気付くと、忠犬だってもう少し逡巡するってレベルの速さで僕に近づいて来た。 ちなみに、美鈴は門柱に寄りかかったままピクリとも動かない。門番さーん、そこに侵入者がいるんですよー?「晶さま、久方ぶりです! 魂魄妖夢無事復帰致しました!!」「あーうん、御苦労様。身体の方は大丈夫?」「問題ありません! 薬師殿からも太鼓判をいただいております!!」 ふんすと擬音が聞こえてきそうな程鼻息荒く、妖夢ちゃんが己の好調を訴えてくる。 まぁ、そうだよね。半日あれば最低限は回復するって言われてたもんね。 あれから丸一日経ったワケだし、妖夢ちゃんが完全復活していてもおかしくはないか。 「これからは、再び晶さまの剣として頑張っていこうと思います! さぁ、ご命令をっ!!」「待機で」 張り切っている所悪いんですが、今すぐ切るべき相手はいませんよ妖夢ちゃん。 だから、期待を込めた目で美鈴をチラチラ見るのは止めなさい。 少なくとも現時点で、彼女ほど無害な妖怪は居ないんだから。門番としては問題だけどさ。 そんな僕の無情な命令に、しかし妖夢ちゃんは元気よく頷いて視線を戻した。 相変わらず見ているこっちの方がコメントに困る潔さで、彼女は姿勢を正し次の言葉を待つ。 やり辛い。死ぬほどやり辛いです。ちょっとは悩む素振りを見せてください。「お待たせ……って半分剣士じゃない。もう復活したの?」「これは鈴仙殿、お久しぶりです!」「あ、おかえり姉で――し?」「なっ、何よ。何か私に文句があるの?」「文句と言うか疑問と言うか……何故に姉弟子、メイド服のままなので?」 着替えてくると言ったはずの姉弟子は、一切服装を変えないまま僕らの前に姿を現した。 僕がその理由を尋ねると、彼女は露骨に視線を右往左往させながら答え始める。「ち、違うのよ? べ、別に、貴方に似合ってるって言われたから着替えるのを止めたワケじゃ無くてね?」「無くて?」「えーっと………ダメに……そう、ダメになってたのよ服が! だから仕方なくメイド服を着ているワケなの!!」 あれ、そうだったっけ? 乾いた服の回収は小悪魔ちゃんがやっていたはずだけど、特に問題は無かったはずだよね? まぁ僕は、そこまで姉弟子の服に注視していたワケじゃないから分からないけど……。 そもそも湖に落ちた程度で、服ってダメになるものなのかなぁ?「ふむ、では鈴仙殿の持っている包みの中身は服ですか」「そ、そうなのよ! 異変が終わったら直そうかなぁって。あ、あはははは」 あからさまに態度が不審過ぎる……だけど、追求したら僕だけ殺されそうな気がするのは何故だろう。 しょうがないので、触らぬ神に何とやらの精神で気付かなかったフリをする僕。 当然、妖夢ちゃんがこっちに送ってくる追及しても良いですか的なオーラも無視である。 残念ながら僕に、デッドエンドフラグを好んで回収する様なコレクション癖はございません。 や、本当ですよ? 知らずに踏んでる事は多々ありますけどね? それにしても妖夢ちゃん。地雷だと分かった上でそれを踏みたがるとか、意外と良い性格してるなぁ。知ってたけど。「まぁ、姉弟子が良いんでしたら僕らも構いませんよ。拒否する理由もありませんし」「……晶はやっぱり、メイド服の方が良いの?」「はぇ?」「――ちぇいっ!!」「わぁ!? 姉弟子が突然自分を撃った!?」 躊躇なく顔面に弾丸をブチ当て、姉弟子はダメージ以外の何かで息を荒くする。 挙動不審さがカンスト状態で実にコメントに困ります。色んな意味で大丈夫ですか姉弟子。 「ごめんなさい、今ちょっとだけ血迷ったわ。気にしないで」「……いや、さすがにそれは」「気、に、し、な、い、で。――良いわね?」「イエスマムッ! 了解致しました!!」 黒コゲの顔で尚優しく微笑む姉弟子に凄まれた僕は、一も二も無く頷いていた。 殺される。首を横に振ったらその瞬間に殺される。理由を尋ねてもやっぱり殺される。 未だかつて無い姉弟子の迫力に、苦笑いする余裕すら無い僕は冷や汗を流しながら大きく距離を取った。 そして、そんな僕に構わず頭を抱えてギリギリと歯軋りし出す姉弟子。 僕は本当にどうすれば良いのでしょうか。いやまぁ、黙って見ている一択しか現状の選択肢は無いんですけどね。「一瞬とはいえ私は何て事を。……落ち着け、さっきのは気の迷いよ。そう気の迷い。気の迷いなのよ」「晶さま、鈴仙殿は大丈夫なのでしょうか」「……ダメかもしれんね」 あの魔槍、ひょっとして姉弟子の変な所にクリーンヒットした? そう思わせるくらいのテンパリっぷりを見せた姉弟子は、ふと何かを閃いた表情で顔を上げる。 ただし、その瞳は清々しい位に渦巻いている。ああ、何か分かる。分かってしまう。これは完全にダメな発想に至ったパターンだ。 「――そうよ。全部、この異変が悪いのよ! さぁ、一刻も早く異変の主を退治しましょう!!」 ほら、やっぱりダメだった。 名案を思いついたと言わんばかりのダメな意味でイイ笑顔を浮かべ、姉弟子は無駄に明るく足を進め始める。 いや、姉弟子? 幾らなんでも今の奇行を異変のせいには出来ませんよ? 何かに取り憑かれたかの様に進んでいく姉弟子の後を追いながら、殺されないよう宥めるにはどうツッコミを入れたものかと頭を悩ませる僕。 最終的には宣言通りに異変の主を退治する事になるだろうから、彼女を止める理由は無いんだけどねぇ。 ……ある程度釘を刺しておかないと、今の姉弟子は普通にトンデモ無い事をやらかしそうで怖いんですよ。「ところで晶さま、我々はこれからどこへ向かうのですか?」「妖怪の山だけど……妖夢ちゃんは、お師匠様に何か聞いてる?」「いえ! 晶さまとの合流を優先しましたので、何一つ聞いておりません!!」「あ、左様ですか」 そして、こっちもこっちでさりげなくダメだった。 妖夢ちゃんの真相究明我関せずっぷりは知ってたけど、この状況で何も聞いてないはキツいです。主に心の負担的な意味で。 と言うか何も知らないのに目的地しか聞かないって、妖夢ちゃんもう異変の顛末に興味無いよね完全に。 とりあえず斬れれば何でもいいって考えは、さすがに改めた方が良いと思いますよ? 幻想郷ならそれでも問題無い所がアレだけど。 「ほら貴方達、急ぐわよ! 異変は刻一刻と私達を蝕んでいるのよ!!」「分かりました! 事情はサッパリ掴めませんが、異変の主は私が全力で叩き斬ります!!」 ……ひょっとしてコレ、僕単独で動いた方がマシなんじゃないだろうか。 溢れ出るトラブル臭の強さに、半ば本気でパーティ解散を考える僕なのでした。 ――ちなみに姉弟子の熱暴走はその後しばらく続き、その憤りは僕にだけ向けられましたとさ。……何故に?◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「山田です。はい、最初の質問ですが……」死神A「いやいや、早いですって。せめてアシスタントの自己紹介くらいさせてくださいよ」山田「仕方ないのです。今、このコーナーは深刻な危機を迎えているのですから」死神A「な、なんですかそれは……?」山田「冒頭の挨拶が思いつかない症候群です」死神A「わぁ……それは心底どうでも良い危機だなぁ」山田「まったく。それもこれも緋想の章が長々続いたせいですね。当初の予定通り未登場キャラをアシスタントにしていたら、ネタ切れでコーナー終了していましたよ」死神A「いや、それとこれとは一切関係の無い問題な気が」山田「はい、最初の質問でーす」死神A「……ああ、愚痴りたかっただけですか」 Q:ところで、うどんげは開き直っちゃえば伸びしろが結構ありますよね?山田「多分」死神A「多分って……」山田「ぶっちゃけ、能力の使用範囲がわりとあやふやなんですよね。『万物の波長を操る』のレベルが分かりません」死神A「質問者は例えとして、ステルス兵装や光学兵器への応用を提示してますが」山田「出来るかもしれませんね。とは言え鈴仙のネックは能力ではなく戦いに対する心構えだったので、今回はあまり関係ないかと」死神A「覚醒によって、能力の新しい使い方を生み出したりとかは?」山田「あるかもしれません。ただまぁ、ステルスは公式で示唆されてるのであり得ますが、光学兵器はさすがに無理だと思ってください」死神A「うどんげがチートキャラになるからですか?」山田「スペカのレーザー弾幕が同じ理屈かもしれないからですよ」死神A「……もうすでに使ってる可能性があるって事ですか」山田「不明です。なんなんでしょうねあの紅いの」死神A「いや、あたいに聞かれても」 Q:本物であれば百発百中だった気がしましたし。威力だけは本物ってことですかね。山田「作者が参考にしたサイト全部を見直しましたけど、ゲイボルグに必中機能がある。と言う表記はありませんね」死神A「Fate/stay nightだと「因果逆転の槍」って扱いになってますけど?」山田「あれはFateオリジナル効果です。原典にその様な表記が無い以上、別作品である東方ではノーカウントになります」死神A「作者も調べるまで、必殺必中がゲイボルグの効果だと思ってたそうですからねぇ」山田「Fateの魔槍はある意味完全に別物ですよ。実際のゲイボルグは下手をすると、槍ですら無いと言う話ですし」死神A「実は水中用武器、と言う話もあるみたいですね。後、足を使って投げるとか何とか」山田「ちなみに、天晶花で神話性能付与版は『金属光』を放っていますが、実際のゲイボルグは海の怪物の骨で作られてます」山田「どっちにしろ「ゲイボルグっぽい何か」である事に変わりは無いワケですね」死神A「それでよく、神話性能を再現できたものですねぇ」山田「再現できた理由は『槍であって槍で無い所』と『無数の矢じりに分かれて敵を倒す所』が一致していたからですよ」山田「そもそも全部の特徴が一致していたら、東方の世界観的に考えて能力補助無しに魔槍化してます」山田「つまり、能力による補助と言うのはデジモンワールドにおける進化条件無視ボーナスのようなモノで」死神A「山田様、それはほとんどの人間が分からない例えです」 Q:晶君の好きなタイプと苦手なタイプをぜひ教えてください!w山田「好きなタイプは本音をズバズバ口にするタイプです。本人が腹芸を苦手としているので」死神A「ああ、だから永遠亭のメンツが苦手なんですね」山田「腹芸の代表格的キャラですからねぇ。ちなみに苦手なタイプは、腹芸してくるタイプの他に『露骨に敵意を向けてくる好人物』とかがいます」死神A「……好人物?」山田「久遠晶にとって好ましい人物、と言う意味です。基本的に嫌いでない相手とは積極的に関わりたがるタチなので、拒否されると接し方に困るワケですね」死神A「嫌いな相手だと?」山田「殺意だろうと敵意だろうと一切意に介しません。そもそも『仲良くする』と言う選択肢が無いので」死神A「極端だなぁ……」山田「後はまぁ、手放しに賞賛してくるタイプですね。基本的に虐げられている子なので」死神A「……不憫過ぎるはずなのに、そんな気がしないのは何故なんでしょう」山田「晶君だからでしょうね」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど