「すいませーん。怪我人三人と厄介事一つ、面倒でしょうけど引き受けて貰えませんかー?」「……たまにだけど、貴方が全てを知った上で道化を演じているんじゃないかと疑いたくなる時があるわ。いらっしゃい」「どうもですお師匠様。ところで、良く分からないけどとりあえず謝った方が良いですかね、僕」「褒めているのよ。ここまで絶妙なタイミングで現れるなんて普通は有り得ないもの。まるで、二十四時間永遠亭を監視していたみたいね」「……勘弁してください。僕の場合、そういう他愛も無いジョークが笑えない事態を引き起こすんですよ」「知ってるわ。なかなか顔を見せなかった貴方への軽い嫌がらせよ」「一応、御土産渡すために軽く顔出しましたけど……」「戻って来てから一度も薬師の勉強をしてなくて、師匠はとても寂しいわ」「心の底からごめんなさい」「ふふ、冗談よ。勉強は気が向いた時で良いわ。さ、上がりなさい」「あ、すいません。ではでは御邪魔しまーす」「とりあえず、その二人を奥の部屋に寝かせたら姫様の部屋へ行ってちょうだい。姫様ったら退屈を拗らせて爆発寸前なのよ」「えっ、僕もわりと重傷なんですけど。と言うか、爆発しかけの輝夜さんに僕をけしかけないでくださいよ」「大丈夫よ。常人なら死んでるけど貴方なら勝手に治るから」「どうしよう、ついに医者から診察拒否される様になっちゃった。しかも強ち間違ってないのが辛い」「ああ、そうそう。姫様が貴方を見たら間違いなくロクでもない事を言うと思うけど、単にノリで言ってるだけだから無視しなさい。良いわね」「……たまにですけど、永遠亭における輝夜さんの立ち位置が分からなくなる時があります」幻想郷覚書 緋想の章・拾肆「天心乱漫/暇を持て余したかぐや姫の遊び」「この私をここまで待たせるなんて良い度胸ね! 気に入ったわ、難題に挑む権利をあげましょう!!」「要りません、ゴメンナサイ」「もうちょっと付き合いなさいよー。待ってたのは本当なんだから」 部屋に入って早々、全力でトバしてきた輝夜さんへ断りの言葉を返す。 お師匠様が言っていた通り、どうやら彼女は退屈を拗らせ過ぎてダメな感じに頭が茹ってるらしい。 即座に回れ右したい気持ちを必死に抑えて、僕は輝夜さんの前に腰かけた。「いやぁ、今まで特訓したり戦ったりで腰を落ち着ける暇が無かったんですよ」「何よ、それズルい! 何で私も混ぜてくれなかったの!?」「強いて言うなら、その場にいなかったからです」「じゃあ私、今後はずっと貴方の傍にいるわね! 不束者ですが!!」「僕、幽香さんちに居候してますよ?」「別れましょう。私達、上手くいかない運命だったのよ」 はやっ、諦めるのはやっ! 幽香さんの名前を出した途端に、半ば本気っぽかった発言を即時撤回させる輝夜さん。 彼女と幽香さんの接点はほぼ無いはずなんだけど、何故そんな露骨なまでに警戒の色を見せるのだろうか。 さっぱりワケが分からないですネ。えっ、四季面? 何の事です?「と言うか輝夜さん、暇なら出歩けば良いじゃないですか。五秒で面白い事の方がやってきますよ?」「私って箱入りお姫様で逃亡中の重罪人だから、外出に抵抗があるのよねー。……竹林からの出方も分からないし」「そうなんですかー」 明らかに後者が主な理由っぽいけど、追及すると大火傷しそうなのであえて無視する。 下手に「案内しますよ」とか言った日には、輝夜さん専用永世竹林案内人にされかねないし。 ……と言うか、現在進行でチラチラ期待の込められた目で見てきてますね。 言いませんよ? 絶対にそんな迂闊な事言いませんからね? そういう話はお師匠様に振ってくださいお願いします。 そうやって無視を決め込んでいると、輝夜さんは不満げに頬を膨らませながらそっぽを向いた。 どうやら諦めてくれた様だ。意外と物分かりが良いと言うか何と言うか……事に執着しないタチだよなぁ、輝夜さんって。 しかし、そんな子供っぽい仕草ですら色気が覗き見えるのは色々と反則くさい。傾国の美女って実在するんだねぇ。「あ、今ちょっと私にドキッとしたでしょ。惚れたか? 惚れたんか? ホレホレ」 御蔭様で、儚い夢を見させて頂きましたとも。 たった一言で色々と台無しにしてくれた輝夜さんの態度に、僕は思わず肩を竦める。 まぁ、輝夜さんの場合普通にしてるだけで気後れするくらい気品があるから、残念なくらいで丁度良いんだけどね。 ……ひょっとして輝夜さんは、そこらへんを自覚してるから軽く振舞っているのかもしれない。――無いかな。 「ちなみに、今起きてる異変に関してはノータッチですか? 姉弟子は色々調べてたみたいですけど」「異変の主の場所を教えてくれれば行ってあげても良いわよー。泥臭い調査は嫌」「うわぁ、誰もが考えるけど口に出すのを躊躇う台詞を堂々と言ったなぁ」「人間、おいしい所だけを食べたいものよ」「……そういう考え方だから退屈を拗らすのでは?」「こういうのは波があるのよ、波が。今は面倒な事をしないで面白い体験をしたい時期なの」 それはまた、超絶的にタチの悪い時期ですね。 そのまま輝夜さんは「あーつまらんつまらん」と寝転び、足をジタバタ動かした。 うーむ、この調子だと異変に関するアレコレは聞けないかなぁ。 出来れば聞くべき事をとっとと聞いて、妖夢ちゃんと姉弟子の様子を見に行きたいんだけど……。 そんな事をぼんやりと考えていると、お茶菓子を片手にお師匠様が現れた。「失礼します。どうやら暇は潰せている様ですね、姫様」「うん、まぁねー」「ええっ!? どうみても愚痴を零しているだけだったのに!?」 蓬莱人の暇潰しって分からないなぁ……。 唖然としている僕の前に、お師匠様が苦笑しながらお茶菓子を置いてくれた。 どうやら、蓬莱人だからこうなったと言うワケでも無いらしい。 そっちの方がより面倒な気もしないでもないけど、まぁ良しとしておこう。突っ込んでどうなるモノでも無いだろうしね。「ちなみにお師匠様、妖夢ちゃんと姉弟子の様子はどうです?」「うどんげは気絶しただけだから、そのうち目を覚ますわ。だけど半人半霊の方は……ちょっと酷いわね」「……マジですか?」「ええ、マジよ。身体の内外がそれくらいボロボロなの。いったいどんな無茶をやらせたのかしら、貴方?」「そうですね。ちょっと弾幕の海を突っ切らせて、身体能力を無視した動きを何度か」「意外とスパルタなのね。それとも、少女を虐めて喜ぶタイプ?」「失敬過ぎる!?」 そもそも、内容指示まではしてませんよ! 行動誘導したのは間違いなく僕だけど!! ニヤニヤしながら脇腹を突いてくる輝夜さんから逃れ、僕は拗ねる様にお茶菓子を口内へ放り込んでいく。 「貴方の嗜好はともかく。医者としてこれ以上、あの子を連れ回す事は看過出来ないわ。最低でも半日、永遠亭で寝て貰うわよ」「……妖夢ちゃんは、なんて?」「『晶さまの指示に従います』ですって。信頼されてるわねぇ、貴方」「重量過多で潰れそうですけどね。とりあえず、妖夢ちゃんには元気になるまで寝てるよう言っといて貰えます?」 さすがの僕も、ドクターストップかかった彼女に無理強いするつもりは無いです。 下手に連れ回したらさっきの焼き直しになる恐れがあるし、医者の勧めに従って妖夢ちゃんにはお休みして貰おうか。 ……以前の妖夢ちゃんだったら、間違いなく這ってでも付いて行こうとしただろうねぇ。 成長してくれてて良かった。潰れた原因もそこにあるんだけど。「ところで、何で晶と白玉楼の半人前がツルんでるの? いつもの天狗とか花の妖怪とかは?」「諸事情あって異変を単独調査中です。妖夢ちゃんは道中で拾いました」「あっはっは! 何それ、面白い冗談ね」 ……わりと事実だから困る。 懐に忍ばせていた扇で口元を隠しながら大爆笑する輝夜さんに、苦笑を返すしかない僕。 何でこの人、肩を無遠慮に叩く仕草すら様になってるんだろうか。泣きたい。 僕がコメカミに手を添え頭痛を抑えていると、隣で話を聞いていたお師匠様が優しく肩に手を添えてくれる。 ああ、慰めてくれてるのかなぁとそちらを見ると――そこには、「何か企んでます」と表情で語るお師匠様の笑顔があった。 何で忘れてたんだろう。ここが策略策謀において、幻想郷随一の魔境だと言う事を。「つまりこの後、貴方は半人半霊が復帰するまで一人で調査を進める予定なのね?」「えっ、あ、はい。そのつもりですけど……」「そう……なら、一つだけお願いがあるのだけど」「輝夜さんと弾幕ごっこはもう嫌です」「……明らかに私の方が痛い目に会ってるのに、まるで私が晶に酷い事したみたいな言い様。私は泣けばいいのかしら」「安心なさい。うどんげが目を覚ましたら、異変調査に同行させて欲しいと言うだけの話だから。後、姫様は邪魔なので黙っていてください」「えーりんのいぢわるっ!」 うわー、お師匠様ってば輝夜さん相手でも容赦ないなぁ。 輝夜さん、ションボリしながら部屋の隅に移動しちゃったよ。 ――等と軽い現実逃避をしながら、一番重要な部分を必死に聞き流す僕。チキンと呼んでくれて結構です。「うどんげにはこの異変中、貴方に手を出さない様言い含めておくから。――宜しくお願いするわね」「い、イエスマムッ!!」 しかし げんじつからは のがれられなかった。 脅されてるワケでも無いはずなのに、にっこり微笑まれて僕は水飲み鳥ばりに頷いてしまう。 この人の場合、存在自体がもう脅迫の材料だよなぁ。天才ガラムマサラ怖い。 とは言え、暴力的手段に訴えられる事が無いと言う保障はありがたい。 これで残った問題は、常時こちらへと向けられる殺意だけに。……うん、まぁそれが一番辛いんだけどね!「……少々荒療治が過ぎるけど、今のうどんげには丁度良い薬でしょう」「ほへ? 今、何か言いました?」「何でもないわ。それより、異変の調査はどれくらい進んでいるのかしら」「あっはっは――軽く詰みかけてる所です。今まで追ってた手掛かりがつい先程ブツ切れちゃって……」「ああ、竜宮の使いを追っかけてたのね。アイツなら確か、紅魔館の方に飛んでくのを見たわよ」「えっ?」「えっ?」 どうも『気質』は関係薄だったらしく――と口にしかけた僕の言葉を遮って、輝夜さんがさらりと新事実を口にする。 え、何でそこで深海魚が出てくるの? と言うか居るの? 海魚居ないのに深海魚は居るの? 疑問符を浮かべながら輝夜さんの顔を見つめると、彼女も不思議そうに首を傾げてこちらを見返していた。くそぅ、ちょっと可愛い。「え、貴方アイツを追っかけてここまで来たんじゃないの?」「そもそも、その‘アイツ’って言うのが誰を指しているのかが分かりません」「はぁ? それじゃあ、貴方の言ってた手掛かりって何なのよ」「天気を変える『気質』の事ですけど……」「天気が変わる? え、異変って頻発してる地震の事じゃないの?」「……じしん?」 自身――自信――磁針――地震――ああ、地震の事か。 そういえば、天候異常が起きたのと同じタイミングで地震が頻発し始めたんだよね。 異変の調査を始めた頃には、僕も何かしらの因果関係があるんじゃないかと疑って………あ。 その後特に、調べたワケでも、関係性を見つけたワケでも、ありませんでした。「わ、忘れてたぁぁぁぁぁぁああああ!?」「うわっ、びっくりした。何よ急に」「どうやら、情報の幾つかを失念した状態で調査を進めていた様ですね」「………さすがね。感嘆する他無いわ」 素で感心しないでください、お願いだから。 我ながら自業自得過ぎるうっかりに、僕は頭を抱えていた。 そうだよねー。気質の方が外れでもまだ地震が残ってたよねー。あっはっはー。「――で、さっき言ってた「リュウグウノツカイ」とこの地震にはどんな関係が?」「上手く切り替えたつもりなんでしょうけど、貴方今半泣きになってるわよ」 そこは気付かないフリをしてくれると、当方大変助かりますデス。 ふっふっふ、こちらは半泣きから全泣きに切り替える準備がいつでも出来てるのですよ? いや、何の自慢にもならない事は分かってますけどね? とにもかくにも、手早く話題を異変の方にズラす――もとい、戻さないと。 や、違うんですよ? 別に誤魔化したいワケじゃなくてね。一刻も早く異変を解決したいと言うやる気に満ちてるだけで。 ……すいません、己の恥を掻き捨てしたかっただけです。「まぁ良いわ、追及しないであげる。感謝なさい」「ありがとうございます。ついでにさっきの疑問にも答えてください」「……何だかんだで図太いわね、貴方」「良く言われます」「ふふっ。けどそういう所も嫌いじゃないわよ。――さぁ、永琳! 答えてあげなさい!!」 そこで丸投げですか、輝夜さん。 何故か自慢げな彼女の姿に、さすがのお師匠様も苦笑を隠せないようだ。 それでも普通に説明を始めるのは、忠誠心の高さ故か、自分で説明した方が早いからか。 何となく後者の様な気がしないでもないが、輝夜さんの名誉を守るためにも前者だと思っておく事にしよう。うん、そうしよう。「説明の前に、一つ確認させて貰うわね。貴方は「竜宮の使い」をどれくらい知っているのかしら」「珍しい深海魚で、見つかるとアレやらコレやら起きると言われている……くらいしか。ああ、タチウオに似てるらしいですね」「貴方、たまに信じられないほど頭が悪くなるわね。私が言ってるのは妖怪の方の『竜宮の使い』よ」 ……言われてみればそうか。幻想郷だもんね、普通は妖怪だよね。 今度はこちらへと向けられたお師匠様の苦笑から逃れるため、必死に視線を逸らす僕。 ただし、僕が逸らした目線の先では輝夜さんがニヤニヤ笑っているので、正直な話あんまり意味は無い。ちくしょう。 「竜宮の使い――言葉通り、竜の手足となって働く妖怪の事よ。幻想郷に居る竜宮の使いは、龍神の使いだと言われているわ」「龍神……って、幻想郷には竜も居るんですか?」「みたいね。随分前から隠遁していて、誰も会った事が無いようだけど」「ほへー、誰も会った事の無い龍神ですか。――すっごい興味深いですね!」「話が進まなくなるから、竜の事は自分で調べなさい。竜宮の使いの話を続けるわよ」「はい、お願いしますマム!」「滅多に人前に現れない竜宮の使いは、その美しさから天女と同一視される事もあるそうね。そして、竜宮の使いが人前に現れた時―――」「……地上では地震が起こる。と言う事ですか」「ええ、間違っては無いわよ」 うーむ、そんなドンピシャな妖怪が居たのか。幻想郷って本当に広いなぁ。 個人的には龍神の方が気になるけど、それはまぁ異変が落ち着いてからと言う事で。 今の所他に‘らしい’手掛かりも無いワケだし、今後は竜宮の使いを探す方向で動いた方が良いかもしれない。 それにしても、天女の様な美しさかぁ。 ……僕の頭の中では、天女の衣が深海魚に置き換わって大変生臭くなってるのですがどうしましょう。 竜宮の使いさんに会った瞬間吹き出したら、さすがに殺されても文句は言えないよね。「……さて、そろそろうどんげが目を覚ます頃ね。言い含めておかないと何をするか分からないから、私と一緒に行きましょうか」「はい! よろしくお願いしますっ!!」「行ってらっしゃーい。お土産宜しくねー」 もう少し話を聞きたかったけど、あまりのんびりしているワケにも行かないか。 お師匠様の言葉に従って、僕は医務室へ向かうため立ち上がった。 言うまでも無いけれど、輝夜さんの言葉は聞かなかった事にしてます。 それにしてもお師匠様、何だか微妙に話を逸らしていたような。……気のせいかな?◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「あけましておめでとうございます。今年も、「教えろ山田さんリベンジ」をよろしくお願いします。後ついでに本編も」死神A「逆! 本編の方をメインでよろしくしてくださいよ!!」山田「自分の出番が多い方をプッシュして何が悪いっ!!」死神A「逆切れしないでくださいよぉ……」山田「と言うワケで今回は正月特別編です。いつもより話短めで行かせてもらいます」死神A「え、それおかしくないですか。普通特別編ならいつもより話が長くなりますよね」山田「ぶっちゃけ、質問が一つしか無かったので」死神A「単なる質問不足を特別と言い張らないでくださいよ!?」山田「何言ってるんですか! いつもなら質問一つで山田さんなんてやりませんよ!!」死神A「そんな事を堂々と言い切られても……」 Q:四季面のスペカ発動中の空間転移は、「ですわ」の風紀委員さんの能力とは違うモノなのでしょうか?山田「むしろ、ショタコンサラシテレポーターの方が近いです」死神A「いやいや、ショタコンは公式設定じゃないですから。二次創作ですから」山田「まぁ「相手との距離を縮める」と言う限定的な転移なので、ショタコンの転移よりも若干劣りますがね」死神A「だから、ショタコンじゃ無いと!!」山田「ストーカー、ロリコン、シスコン、ショタコン。本当にグループはド変態の巣窟ですね(暗黒微笑)」死神A「二、次、創、作!! と言うかコレ、全然天晶花のQ&Aじゃないですよね」山田「はい」死神A「認めないでくださいよぉ……」山田「ではでは、今年もよろしくお願いしまーす」死神A「ああ、今年もこんな感じなんですね」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど