「ところで久遠様、新聞の続きは作らないのでしょうか」「……新聞? あー、前に皆で作ったアレですか」「ええ、妹様が続きを作りたがっております」「フランちゃんが? そんなに楽しかった――にしては、今まで何も言ってこなかったけどなぁ」「はい。実はつい先日、妹様にファンレターが届きまして」「ファンレターって、フランちゃんに?」「正確には三人の名前を混ぜたペンネーム『因幡フラディス』宛でしたが、他二人が妹様に所有権を譲ってくださった様で」「来たんだ。あのシンデレラの要素を抜いたせいでスペース武侠オペラになった『デレラ』にファンレターが……」「意外と面白かったですよ。相棒がカラクリ仕掛けとは言えメイドなのも高ポイントです」「けどなぁ、シンデレラは幻想郷にもあるし。除外せざるを得なかったというか、無い方が話が纏まると言うか」「で、続きはやるんですか?」「んー。まぁ一回だけってのもアレですし、不定期で続けるのも良いかもしれませんね。皆に相談する必要はありますが」「分かりました。では、妹様にはそう伝えておきますね」「お願いしまーす。……それにしても誰なんだろうなぁ、ファンレター出したの」幻想郷覚書 緋想の章・玖「意気天候/半人半霊のコンフリクト」 咲夜さんから「事態を把握してるらしい人」を教えて貰った僕等は、その人に会うため再び中有の道を歩いていた。 相も変わらず霊と人とで賑わっている道を、僕等は互いに無言のまま進んでいく。 いや、正確には喋りたくても喋れないだけなんですけどね? 僕に関してはだけど。 と言うのも、どうにも先程から妖夢ちゃんの様子がおかしいのである。 咲夜さんから情報を聞いた直後は、これで何か分かるかもしれないと無邪気にはしゃいでいたのになぁ。 円滑に話を聞く為、何か手土産でも買っていこうと言ったら急に俯いてしまった。何故?「………はぁ」 ひょっとして、オブラートで包んだ体裁の中身を見抜かれてしまったのだろうか。 身も蓋も無い事を言ってしまえば、手土産とはつまり賄賂の事である。 無駄な戦いを避けると言えば聞こえは良いが、要はモノで釣ろうと言ってしまってるワケで。 何だかんだで武人な彼女には、やっぱり納得のいかない所があるのだろう。「えーっと、妖夢ちゃん? あのね」「晶さま……私は、どうすればいいのでしょうか」 いや、いきなりそんな事を聞かれましても。 屁理屈捏ねて手土産の正当性を立証しようとした僕に先んじて、彼女は絞り出すように悲痛な悩みを吐き出した。 ただし、具体的な内容は一切無い。これで的確な返しを出来る人間がいたら、その人はきっとお悩み相談だけで生きていけると思われる。 え、僕ですか? あるワケ無いじゃん、そんな職業適性。 しかしこの流れで急かすのもどうかと思うので、とりあえず僕は無言で妖夢ちゃんに続きを話すよう促しておく。 彼女は二、三度躊躇った後、なけなしの勇気を振り絞った顔で悩みの内容を僕に語った。「共に異変を調査しようと提案してくださったにも関わらず、この身は未だ何の御役にも立っておりません」 まぁ、言われてみれば確かに。ここまでで妖夢ちゃんが何かしたかと言われると答えはノーだ。 が、それで自分を役立たずと断ずるのはどうだろう。そもそも僕だって、言うほど何かをしたワケじゃないしね。「妖夢ちゃん、気持ちは分かるけど焦り過ぎ。ついでに考え過ぎだよ」「しかし、晶さまに任せてばかりで何も出来ていないのも事実です。私は、未熟な自分が情けない」「そりゃあ、行き先を選んだのは僕だけどさ。この状況ならどこを選んでも必ず何かしらの情報は得られたと思うよ?」 そもそも今まで得られた成果だって、言うほど大したモノじゃないだろうに。 緋色の雲が異変に関係している事は確定だとしても、その内容は結局一切合財分かっていないワケだし。 正直、役立たず具合はどっこいどっこいじゃないだろうか。 むしろ僕の所為で寄り道しまくってる現状を考えると、足を引っ張ってる気さえしないでも無い。「しかし……」 そんな僕のフォローに、妖夢ちゃんは苦い顔をして小さく否定の言葉を発した。 んー、これはちょっと重傷だなぁ。本当にどうしたんだろうか。 僕のやり方が妖夢ちゃんに合っていない事は薄々分かっていたけど、まさかここまで思い詰める程だったとは。 今からでも、辻斬り方式にやり直すべきかな? そっちのやり方で進んでも、何とかなる気はしないでもない。……まぁ、死ぬほどキツい事は確実だけど。 そうやって僕がどうするべきか悩んでいると、ハッとした表情の妖夢ちゃんは慌てて言葉を続けた。「す、すいません。晶さまに文句を言うつもりは無いんです。ただ、その……」「極力戦わないやり方は、慣れない?」「いえ、そんな事はありません! この様なやり方があったのだと、むしろ感心しているくらいです! そう――」「よ、妖夢ちゃん?」「……私には、考えも付きませんでした。これから話を聞かせて貰う相手に手土産を持っていく、そんな簡単な礼節さえ」 あ、そういう事ですか。 どうやら僕の姑息な賄賂作戦を、妖夢ちゃんはそういう風に解釈してしまったらしい。 人里へ行く時に、僕等が手ぶらだった事実はすでに忘却の彼方へと行ってしまっているようだ。 あー、でもそう言えば、白玉楼へ行く時はお土産用意してたっけ。 妖夢ちゃんは藍さんの所にずっと居たし、実は持っていたと勘違いしていても仕方が無いのかもしれない。 とは言え礼節云々はあくまで最後の一押しだろう。落ち込んでしまった一番の原因は、今までの積み重ねに違いあるまい。 生真面目だからなぁ、妖夢ちゃん。どうでも良い事でも自分の力不足だと思って落ち込んでたし。 うーん、どうフォローしたら良いんだろうか。ある意味これって性分だから、下手に慰めてもねぇ……。「とりあえずお土産決めようか、お土産! 妖夢ちゃんも選ぶの手伝ってね!!」「あ、はい。分かりました……」 結局僕には、話を誤魔化す事しか出来なかったのでした。ちゃんちゃん。 ……はい。チキンでもヘタレでも、好きに呼んでください。 モヤモヤしたモノを抱えつつ手土産を用意した僕等は、何とも言えない沈黙と共に三途の川へとやってきた。 右腕で大事に抱えているお土産の中身は、高級そうな包みで覆われた酒瓶だ。もちろん、値段の方も外見相応のお高さとなっている。 ……何しろコレ一本で、今まで使わずに貯めてた紫ねーさまからのお小遣いが一瞬で吹っ飛んだからなぁ。 恐るべしは高級酒か。しかもこれでも、酒のランクを考えればお安く済んだ方らしいからもう何と言うかね。 ちなみに『らしい』と言う表現から分かる様に、お土産を選んだ人物は僕では無く妖夢ちゃんである。 僕よりも件の人物に親しかった彼女は、白玉楼の従者として叩きこまれた知識を駆使し最も相応しい御土産を洗い出してくれたのだ。 いやぁ、大変助かりましたよ。早速役に立ってくれた妖夢ちゃんに、僕は感謝の言葉をかけたワケなのですが……彼女の反応は実に淡白だった。 ――私に気を使ってくれなくても結構です。晶さまなら、この程度の事など御一人で出来たでしょう? 酷い過大評価だけど、そう言われても仕方の無い態度だったのもまた事実だ。 何しろ僕は、一滴飲んだだけで記憶を失う超絶下戸なのである。 当然利き酒なんて出来るはずがないし、酒の味に関する知識なんてモノも持ち合わせていない。 故に妖夢ちゃんへ全ての選択を丸投げしたその時の僕の姿は、落ち込んでいる彼女には気を使っている様にしか見えなかったのだろう。 ネガティブになっている時って、そういうの全部後ろ向きに捉えちゃうもんね。 うん、ちょっとタイミングが悪かったかな。妖夢ちゃんが僕に愚痴を言う前だったら、それなりに効果もあったんだろうけど。 ……はぁ、参った。人生経験が色々と薄い僕には、こういう時かけるべき言葉が何も思い浮かばない。 このまま妖夢ちゃんを放置するのはマズイと分かっちゃいるんだけどねー。歯がゆい、実に歯がゆいですぞ。「晶さま」「はひゃいっ、何でせうか」「いました、小町殿です」 妖夢ちゃんが指さした方向には、大木に寄りかかって寝転んでいる三途の渡し守の姿があった。 彼女――小町姐さんこそが、咲夜さんの言っていた『異変の事情を把握しているかもしれない人』だ。 サボり魔で色んな所をうろついているらしいから、見つかってまずは一安心だけど……。「滅茶苦茶、機嫌悪そうだね」「ええ、何があったのでしょうか」 居眠りしていると思われていた姐さんは、何故か空の杯を傾けつつ半泣きで虚空を睨みつけていた。 勤務中だから飲酒を自重している――と言う感じには見えない。完全に拗ねてる風だ。 あ、酒瓶を逆さにして振りだした。何も出てこないって事はこっちも空か。……分かり易く凹んでるなぁ。 さすがに見ていて切なくなってきたので、僕は意を決して姐さんに話しかける事にした。 出来る限りの愛想を顔に浮かべ、妖夢ちゃんと共に小町姐さんに近づく。「ん? 誰かと思ったら女装メイドと半人前剣士か。こんな所に何の用だい」「……はんにんまえ」「うわぁぁぁ、どうもお久しぶりです小町姐さん! はいコレ御土産!!」 不機嫌そうな小町姐さんの呟きを遮る様に、手持ちの酒瓶を彼女へ押し付ける。 本人としては軽口のつもりなんだろうけど――実際軽口なんだけど――今の妖夢ちゃんには致命的過ぎる一言だ。 何とか勢いで誤魔化そうとしたものの、ばっちり聞こえていた彼女はがっくりと項垂れてしまった。 ああもう、本当にタイミングが悪すぎる! 妖夢ちゃんそろそろ自己嫌悪で死んじゃうよ? しかも当の本人は、ハッとした表情で乱暴に包みを破きだすし。 薄布で結んでるだけなんだから、そんなビリビリにしなくても……ダメだ、完全に酒瓶しか見えてないや。「おっ、おおっ、おおおーっ! きゅ、久の字!!」「は、はい?」「お前さんは、きっと極楽に行けるよ!」「このお土産を選んだのは妖夢ちゃんですよー」「でかした魂魄流! お前さんも極楽に連れて行ってやろうか?」「私は冥界の人間なのですが……」 ちっとも感謝の言葉に聞こえないお礼を口にしながら、困り顔の妖夢ちゃんに抱きつく小町姐さん。 理由は分からないけど、このお土産は余程姐さんの琴線に触れるモノだったらしい。 だけど、極楽行きを約束しちゃうのはどうだろう。免罪符じゃないんだから。 後で映姫さんに怒られても知らないよ? あの人確実に地獄耳だろうしね。「旨いっ! あー、五臓六腑に沁み渡るよ!!」「……勤務中ですよね?」「あっはっは、固い事は言いっこなしだよ久の字!」 いやまぁ、小町姐さんが良いんだったら別に良いんですけどね? 御満悦な表情でお土産を飲み干そうとする姐さんに、とりあえず僕はここに来た目的を話す事にした。「ところで小町姐さん、緋色の雲に関してなんですが……」「あん? 『気質』の事かい?」「――気質?」「ふぅん、久の字の気質は幻日か。お前さんらしい天気だねぇ」「あ、どうも。……って、褒められてるんですか?」「幻日は日の光を掻き乱す。本人には規則性があるつもりでも、傍から見れば滅茶苦茶さ。よっ、天性の問題児!」「ああ、褒められてはいないと。良く分かりました」「そして凍てつく程の冷気は頑なに変化を拒み、住まう者を冷徹に選別する。……ここらへんはそうなのかー? って感じだけどねぇ」 「いや、同意を求められても」 僕としては、小町姐さんがどうしていきなり性格診断を始めたのかの方が気になります。 唖然としている僕に気付かず、何やら納得した表情で頷く小町姐さん。 はっきり言ってワケが分からないけど、とりあえず泣きたくなった。 うーむ、それにしても『気質』かぁ。緋色の雲の事を指す言葉らしいけど、抽象的過ぎてそれだけじゃ何とも。 首を傾げつつ視線を妖夢ちゃんに向けると、どうやら彼女も分からないらしく無念そうに首を横に振った。「それで小町姐さん、その『気質』って言うのは?」「何だい何だい藪から棒に。まさか、気質が何なのか分からないとは言わないよな」「はぁ、そのまさかなんですが」「ええっ!? 白玉楼の庭師が居るだろう! 何も聞いてないのかい?」 心底ビックリした顔で、小町姐さんは妖夢ちゃんを見つめる。 そんな彼女の問いかけに、妖夢ちゃんは心当たりは無いと言わんばかりに慌てふためいた。「な、何故そこで私が?」「何故って……はぁ、アンタ本当に半人前だねぇ」「うっ――」 それはもう、吐き出す様にしみじみとおっしゃってくれましたとも。 先程の軽口よりも実感が込められた「半人前」宣言に、妖夢ちゃんは言葉を詰まらせた。 そういえば幽々子さんも、この異変に関して何か知っている風だったよね。 つまり冥界の人間なら、今回の事象に何か心当たりがあるはずだと。 あ、そういえば――「ひょっとして、冥界の霊が減っている事にも「気質」が関係しているんですか?」「お、さっすが久の字。妙な所で鋭いじゃないか」「全然嬉しくないけどどーも。それで、どうなんです?」「そうだねぇ……にひひ」 一瞬何かを考え込んだ小町姐さんは、意地の悪い笑みを浮かべると急に立ち上がった。 彼女は大木に立て掛けていた大鎌を手にすると、片手で一回転させ上端部をこちらに向けてくる。「あたいに勝ったら教えてやるよ――ってのはどうだい?」 あー、なるほどねー。幻想郷お馴染のじゃれあいって奴ですか。 もう小町姐さんってば血気盛んなんですから。あはははは、マジ勘弁してください。 しかし姐さんは、そういや久の字と戦った事は無かったっけなぁと完全にやる気モードである。 ならば、僕のやる事は一つ――和平工作しかないだろう。だって戦いたくないからねっ!「お酒持ってきたじゃないですかー。ここは美味しい思いをした代わりに、つるりと教えてくれないですかね?」「うん、良い酒だったよ。今日は真面目に仕事するつもりだったけど、おかげで話を聞く気になったね」「あ、そーいう解釈になるんですか。つーか何気に、サボりの理由を僕の所為にしてません?」「あはははは、気の所為気の所為。それで、どーするんだい?」 冷や汗を流しながら、必死に話を誤魔化す小町姐さん。無駄な足掻きである気がしてしょうがない。 とは言え、平和的な解決はほぼ不可能と考えて良いだろう。 ……現実逃避に人を巻き込まないで欲しいんだけどなぁ。しょうがない、やるかー。「分かりました。じゃあ――」「お待ちください、晶さま」 魔法の鎧を展開しようとした僕を制して、険しい表情の妖夢ちゃんが前に出た。 彼女は腰の二刀を抜き放つと、どこか縋りつくような目でこちらを見つめてくる。「ここは、私にお任せ頂けませんか?」「え、でも――」「お願いします。私に、任せてください」 ギリギリと、妖夢ちゃんが手を赤くするほど剣の柄を強く握り締める。 その姿は言外に、力を証明する場が欲しいと望んでいる様だった。 正直、彼女を戦わせる事には反対だ。何と言うか危う過ぎて、取り返しのつかない事になりそうな気がする。 が、ここで戦わせないとそれはそれでマズイ事になりそうな気も……どうしようか。「大丈夫、なんだね?」「――はい!」 こちらの問いに対して、彼女は真っ直ぐな目で頷き返してきた。 不安は残るけど、これならまぁ大丈夫かな? 若干の懸念はまだあるモノの、明確に拒否する理由も特には無い――はず。 「分かった、任せるよ」 僕がそう答えると、ホッとした表情の妖夢ちゃんは静かに姐さんと相対する。 一方の小町姐さんは、相手が彼女だと知るとあからさまな程分かり易い落胆の笑みを顔に浮かべた。「ええー。お前さんとは花の異変でやりあったから、遠慮したいんだけどなー」「問答無用です。あの時の雪辱も晴らさせて頂きます」「別に良いけどさ。……あれからちょっとは成長したんだろうね?」「………」 小町姐さんの問いに無言を返す妖夢ちゃん。 その表情は、図星を付かれたかの様に暗く重い。 ……あの、妖夢ちゃん? 本当に大丈夫なんですか? まさか、勝算も無いのに破れかぶれで任せろって言いだしたワケじゃないよね?「な、何とかしてみせます! 覚悟!!」 何とも頼もしくない事を言いながら、妖夢ちゃんは露骨に話を誤魔化して駆け出す。 ああ、これは判断を間違えたかもしれないなぁ。 しかし今更止めろと言えない僕は、不安に思いながらも二人から離れるのだった。◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「私と四季映姫はシャアとクワトロくらい無関係ですが、とりあえず小町は減給。どうも、山田です」ちぇん「えっとこんにちは、臨時あしすたんとのちぇんです!」山田「はい、よろしくお願いします。仲良くやって行きましょうね」ちぇん「……良いんですか?」山田「何がですか?」ちぇん「いえその、山田さんは何か被ってる人には厳しいと聞いていたので。私、何も被っていないんですかね?」山田「まぁ、微妙な所ですが――さすがの私も、登場回数僅か二回、晶君との絡み皆無の貴女を貶める気はさすがに……」ちぇん「……うう、改めて言われると落ち込むなぁ」 Q:晶君はそろそろバケモノ級になりましたかね?山田「まだまだ、準バケモノ級の壁は厚いのですよ。そもそも晶君は面変化中でしたしね」ちぇん「そういえば、面変化中は実力もぱわーあっぷしてるんですよね。でも、面変化も込みで実力になるんじゃ?」山田「だとしても準バケモノ級ですね。その上へ行くには、ちょっと実力が不安定過ぎるのですよ」ちぇん「不安定、ですか」山田「はい。真の能力を使いこなせるようになってようやくバケモノ級、とでも思ってください」ちぇん「……そんな時が来るんですかね?」山田「来る時が最終話です」ちぇん「さ、最後まで無いのかぁ」 Q:山田様は晶君の成長をどう見てますか?解説者っぽく御願いします。山田「そうですね。一言で言うと『未熟な奇術師』と言ったところでしょうか」ちぇん「はぁ、奇術師」山田「変幻自在に相手を惑わす彼にピッタリな称号でしょう? 種も仕掛けもある所がポイントです」ちぇん「でも未熟……なんですよね?」山田「ええ。一流の奇術師なら相手を自分の手品に自然と惹きこませるモノですが、晶君にはまだそれが出来ません」ちぇん「え、えーっと?」山田「……もうちょい、要領良く返せませんかね」ちぇん「す、すいません」山田「まぁ良いです、続けます。彼の場合は観客――相手の事ですが――が付き合って初めて奇術を為せる。これでは一人前とは言えません」ちぇん「そういえば強い人達は、皆晶君が何をするのか見守っていたりしますね」山田「そういう事です。おまけに種と仕掛けがばれるとそこまでなので、常に新しいネタを考える必要があります。成長スピードが早いのはこのためですね」ちぇん「なるほどぅ」山田「まぁ、まだまだ未熟者ですよ。技術だけがどんどん先行していってますがね」ちぇん「そうなんですか。――あ、分かりました! 必要以上の能力を持とうとしないのも、相手を油断させるためのてくにっくなのですね!」山田「いえ、それはただ自分を過小評価してるだけです」ちぇん「そ、そうですか」山田「では今回はこれにて。――ああ、それと。次来る時はもう少しボケかツッコミを磨いといてください。ぶっちゃけ絡み難いです」ちぇん「ご、ごめんなさい……」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど