日常の裏書その10「三人娘と姉」 ※この番外編は、付喪神三人娘がただ駄弁るだけののんびりとした番外編です。 派手なバトルや驚愕の展開は一切無いので、期待せず見てください。 なお、晶君は基本登場しません。 時間軸は輝針異変の後ですが、具体的にどれくらい後なのかは考えていないので気にせずスルーしてください。神剣「………………」文「………………」紫「険悪な雰囲気ねぇ」三叉錠「そっすね」鎧「…………オウテ」三叉錠「あがっ、ちょ、ま、待った!」鎧「………………マッタナシ」紫「そもそも一回待って貰ったくらいじゃ勝てないでしょ、コレ。ボロボロじゃないの」三叉錠「い、いやいや、逆転はこれからっすよ」紫「将棋に一発逆転要素なんて無いわよ。と言うか貴女、飛車角落ち相手にこの惨敗っぷりなの?」三叉錠「言っときますけど、オレが弱いんじゃないっすよ! 魔法の鎧が強いんです!!」鎧「…………フフン」紫「確かに、結構出来るみたいね。……三叉錠ちょっと変わりなさい」三叉錠「えっ、この状況から逆転出来るんっすか!?」紫「……さすがにこの状況から勝つのは無理よ。ハンデは要らないから、最初からで構わないかしら」鎧「………………イイヨ」神剣「放置は止めてください!!」文「ちょっとは何か言及なさいよ!?」三叉錠「あーうん、なんて言うか――飽きた」文「飽きた!?」神剣「まるで自分らの喧嘩がコントのような扱い!?」紫「実際コントでしょう。顔を合わせる度に睨み合って……」鎧「………………シンポナイ」三叉錠「想像通りにいがみ合って、想定通りに喧嘩し始めたからなぁ。和解しない所まで含めて予定調和っつーか」紫「お馬鹿よねぇ、貴方達。うぷぷぷぷ」文「アンタにだけは言われたく無いわよ!! 大体、何でそんな余裕ぶっこいてるの!? 貴女も本来はこっち側でしょうに!」紫「ふふ、理由は簡単よ。――私は貴女達が潰し合うのを待っているのよ!」神剣「しまった! 漁夫の利が目的でしたか!!」文「セコい、このスキマ死ぬほどセコいわ!」紫「ほーらっ、争いなさい愚か者共! 最終的な勝者になるのはこの八雲紫よ!!」神剣「そうは行きません! 文殿!!」文「ええ、神剣!!」神剣「相討ち覚悟でこの方を成敗してください!!」文「自爆前提でこのスキマをボッコボコになさい!!」神剣「…………ぐむむ」文「…………あやや」紫「ふっふっふ、分かった所で貴女達に出来る事は無いわ。せいぜい惨めに踊ると良いわ!」鎧「…………オウテ」紫「あ、あら?」三叉錠「何やってるんっすか、紫サン……」文「おーやおや? 妖怪の賢者と名高きスキマ妖怪殿があっさり負けてしまうとは」神剣「実に情けないです。ヘタレ妖怪に改名したらどうですか?」三叉錠「……ここぞとばかりに責め立てるなぁ。まずは弱いヤツから叩くってか」紫「ま、待ちなさい。今のはちょっと集中が足りなくて、この子の動きを読み違えただけよ。私が本気を出せば将棋なんて……」文「『衝撃! 八雲紫、将棋で負けた上にみっともなく言い訳!!』っと……記事提供ありがとうございまーす」紫「発行停止に追い込むわよこの駄天狗」神剣「……おお、そういえば文殿は新聞記者でしたね。自分スッカリ忘れておりました」三叉錠「オレも今、文サン何でメモなんかしてんだろーなーって思ってた」鎧「………………ビックリ」文「あ、あやや? なんか今、思わぬ所から撃たれましたよ?」紫「くふふふふ、姉キャラとしての己を優先してきたツケが回ってきたようね。少しは私を見習ったらどう?」神剣「紫殿は存在しているだけで胡散臭い。言わば喋っているだけでスキマ妖怪やれる稀有な存在ですから、参考にはならないかと」文「ぷぷぷ、言われてやんのー」紫「……貴女、命が惜しくないみたいね」神剣「自分は素直なタチなので、思った事を素直に言っているだけです」紫「ふふふ、馬鹿正直な妖怪は長生きできないわよ?」神剣「自分は主様が居る限り不滅なので大丈夫です」三叉錠「……比喩的な意味なのかマジな意味なのか判断に困るな、その台詞は」鎧「………………ツヅキ、シナイノ?」紫「――そうね。誤解されたままってのも癪だから、後ろの馬鹿二人に私の真の実力を見せつけてあげましょうか」神剣「自分知ってます。それ、フラグってヤツですよね」文「いやー、自らネタを提供する紫さんは妖怪の鑑ですねー」紫「好きに吠えなさい。魔法の鎧ごときに絶対負けはしないわ――っ!」三叉錠「……紫サン、そいつは言っちゃダメな台詞だよ」 ~少女対戦中~紫「魔法の鎧には勝てなかったよ……」三叉錠「何の捻りもなく負けたなー」鎧「…………アブナカッタ」文「まぁ、そこそこ良い勝負だったわね。結局鎧ちゃんが勝ったし、特に面白い所も無かったけど」神剣「いっそ圧勝とか圧敗とかしてくれた方が、まだネタになりましたよね」紫「わ、私まだ本気出してないから。本気の十パーセントしか出してないから」三叉錠「紫サン、素直に負けといた方がまだ恥かかなくて済むよ?」文「素直に負けを認めたら、記事の内容も大人しめにしてあげますよー? プークスクス」紫「……言っとくけど、この子の強さは本物よ。結果だけ見て無駄にはしゃぐのは、逆に貴女の底の浅さを露見させる事になるわ」文「おやおや、それは挑発ですかー? でもお生憎様、私は将棋も得意なんですよねー。部下に将棋好きが居ますから」三叉錠「へー。それじゃ、文サンからみて鎧の腕前ってのは如何程のモノなんで?」文「まぁ、それなりに出来るようだけどまだまだ実力不足ね。勘で打っているウチは二流よ」神剣「そして自分は一流だと」紫「言ってくれるじゃない。その言葉が口先だけで無い事を、是非とも証明してもらいたいわね」文「ふふふ、お望みなら喜んで証明するわよ。せーぜー歯ぎしりの準備をしておく事ね!」三叉錠「文サン、それ紫サンの時と同じパターン……」鎧「………………ショウブ、スル?」文「ええ。妖怪の山の将棋マスターとして、貴女に胸を貸してあげましょう!!」 ~少女対戦中~文「馬鹿な……将棋マスターと呼ばれたこの私が……っ!?」三叉錠「ひょっとして二人共、ワザとやってます?」紫「ちなみに彼女が勘で打っているように見えたのは、こちらの手を予測してあえて定石を崩していたからよ」三叉錠「魔法の鎧って、この手のゲームだとすっげぇ理論派になりますよね。大将の考え方をより理屈っぽくしたって言うか」鎧「…………カンガエルノハ、スキ」神剣「口下手な鎧殿ですが、頭の中でも言葉少なめと言うワケでは無いのですね。……自分は単純明快な方が分かりやすくて好きなのですが」三叉錠「うん。だからオマエ将棋超弱いんだよな。つーかいい加減、移動範囲の広さだけを基準にして駒動かすのは止めろよ」神剣「いっぱい動かせる方が強いではありませんか!」鎧「…………ソンナコト、ナイ」三叉錠「オマエの人生論が透けて見える理屈だなぁ」文「うぐぐ……知っていたのにあえて言わなかったわね、紫ぃ」紫「将棋マスター様ならとうに気づいていると思ったのよ。ふっふっふ」文「しかし、私は貴女よりも抵抗出来たわよ! 総合的に見れば私の方がマシね!!」紫「それは予め鎧ちゃんの手を見ていたからでしょう? それで負けたのだから私の方がマシよ」神剣「自分知ってますよ。コレが目くそ鼻くそを笑うってヤツなのですね」三叉錠「あーうん、少しは考えて喋れよ?」文「……とりあえず始末しておきますか、コレ」紫「晶には代わりを宛てがっておけば大丈夫よね、うん」神剣「ふむ? この流れで、何故自分が見つめられるのでしょうか」三叉錠「オマエが全力で喧嘩を売ったからだよ」神剣「ふっ、どうやら自分の主様への愛が新たなる試練を呼び込んでしまったようですね」三叉錠「この流れで大将の存在を絡められるオマエって天才だよな」神剣「そう褒めないでください」文「…………なんか、こう、みるみる敵意が失せていきますね」紫「ここまで突き抜けられると、もう好きにしてって感じになるわね」鎧「………………テオクレ」神剣「おかしい。自分は何故、皆に飽きられているのでしょうか」三叉錠「いや、いい加減学習しろよ。大将大好きなこの二人から引かれるって相当だぞ……」 続かない