「ま、こんなもんね」「……ほんとに問答無用だったね。良いのかなぁ」「良くないわよー。もう、少しくらい話を聞きなさいって」「意味のある事を言うなら聞いてあげるわよ。言わないなら叩きのめすわ」「そういうのは、そもそも会話を試みてから言うべきじゃないかな」「ロクでも無い事を吹き込む気満々だった幽霊は、問答無用でシバかれても文句を言えないと思うわ」「いや、だからそういうのは少しでも話してから……」「…………………………」「幽々子お姉さん?」「…………どうせだから、ご飯でも食べていく?」「いただくわ」「……お姉さん、ひょっとして図星?」「うふふ、妖夢が置いてってくれた美味しいおゆはんがあるのよ」「まだお昼だよ?」「おかわりはあるかしら」「あるわよ。明日の朝ごはんも」「……まだお昼、なんだけど」幻想郷覚書 神霊の章・陸「雄終完日/Don't lose your mind」「にゅぐぅ……うにゅ! ふっかぁーつ!!」 しばらくフラフラしていた地獄烏が、ようやく落ち着いたのかピシっと静止してポーズを決めた。 ったく、もうちょっと早く復活してくれよ。待ちくたびれたじゃねーか。「その隙に弾幕ブチ込めば良いじゃないですか」「常識ですよね」「黙ってろ」 私が待ちくたびれた原因の、八割はお前らのせいだからな!? 好き勝手言いたい放題言ってくれやがって……攻撃しなかった事を感謝しろよ! ――待て。なんで私は、そこまで言われてなお我慢していたんだ? ぶっちゃけそこまでして耐える理由は無いよな。むしろ率先してぶっ飛ばすべきだよな。「おや、今更気付きましたか。いつ気付くかと待っていたのですが」「――ぶっ飛ばす!!」「構いませんが、今やると後ろから撃たれますよ?」「えっへん、やっちゃうよ!!」「ちいっ!?」 良く分かってない癖に邪魔すんなよ! いや、主の危機? だから分かってても邪魔はするのか? 分からんが、コイツを倒さん事には何も出来ないのは確かだ。「そんじゃ、そろそろ決着と行くか?」「私はいつでも大丈夫だよ!!」「そいつは上等――なら、ぶっ放させてもらうぜ!!」 攻撃する気は無かったがな、下準備の方はキッチリやらせてもらったんだぜ? 私の魔力はありったけ八卦炉に溜めさせて貰った。 次の一撃は、文字通り私の渾身の一撃だぜ! ―――――――邪恋「実りやすいマスタースパーク」 威力の方は折り紙つきだが、出の遅さが致命的なこのスペルカード。 私は先制攻撃を兼ねた誘導のレーザーを、地獄烏にブチ当てる。 「うぐっ!?」 レーザーに絡み取られ、動きを封じられる地獄烏。 このまま大人しくしてくれるのなら、トドメの一撃で綺麗にすっ飛ばせるんだがな。 ……まぁ当然、そんな真似を許すほどヌルい考えはしてないだろう?「ま、負けないよぉぉお!」 ―――――――爆符「ギガフレア」 先程の炎を軽々と超えるほど巨大な太陽が、地獄烏の右腕に一瞬で生まれた。 同時に八卦炉から放たれる七色の光。マスタースパークを遥かに上回る輝きは、そのまま太陽へと突っ込んでいく。 奇しくも、先程と全く同じ形で力の押し合いが始まった。 ……もっとも全部が同じってワケじゃないがな。 先手を打ったのは私だし、何より――さっきまでの私とは覚悟が違う!!「全力ぅぅうぅぅうう――あ、あにゃぁ!?」「――はっ、どうしたよ地獄烏。気合のわりにゃあ炎の量が足りないみたいだぜ?」「う、嘘。全力なのに、なんでっ!?」「分かんないのか? それは私が、超本気だからだよ!!」 ああ、認めてやるさ。お前と私じゃ地力の桁が違いすぎる。 総合的な火力じゃ、どう足掻いてもお前に勝てやしないだろうな。 だけど――それでもお前は、私に勝てない。「覚えておけ。コイツが「普通の魔法使い」、霧雨魔理沙様の実力だぁ!!」 更に後押しの一撃で、マスタースパークの力を倍増させる。 あんまりにも出力を上げすぎて、八卦炉がギシギシ言ってやがるぜ。 身体の調子もちとおかしい。身の丈に合わない事やったせいで、どっかにガタがきちまったようだな。 だが、まだ戦える。その事実があれば十分だ! あるだけ全部を込めた私の力は、ヤツの全力の太陽ごと地獄烏をぶっ飛ばした。「う――にゅぅぅうううう!?」「へっ、どーだ!」 遥か彼方まで吹き飛ばされ、そのままの勢いで地面に叩きつけられる地獄烏。 完全にノビたヤツの姿を確認した私は、糸が切れたように体勢を崩して地面へ向けて落下していく。 あー、ヤバい。完全にガス欠だコレ。どうするか――ん?「はいはい、お疲れ様ですっと」「ぐぁ……」「結局最後まで力押しでしたね。もうちょっと賢く戦ってもバチは当たらないんじゃないですか?」「うるへぇ、私の勝手だ……」 そんな私を、一瞬で近付いてきた文が受け止める。 さすがに早いな、助かったぜ。……だけどその上から目線はちょっとムカつく。「おかげでさとりさんの狙い通りですよ。まぁ、このコンビの主力たる私が無傷なので問題無しですが」「や……戦ってないだけだろ。良いのかよ……何もしなくて…………」「そこまでへたばってる状況でツッコミ入れる気概は評価します」「うっせぇ…………」「ちなみに、我々が戦わない理由は簡単です。――勝敗が明らかだからですよ」 両腕を組んで、口の端を僅かに歪める古明地さとり。 ……凄まじいまでの自信だな。そこまでの勝算があるって言うのか。 文の奴は、地上でもそれなりの上位に入る強豪妖怪なんだが……それでも勝てないって言うのかよ。「ふふふふふ……魔理沙さん、一つ良い事を教えてあげましょう」「な、なんだよ………」「負けるのは私の方です」「お前が勝てないのかよ!! ――っぅ」 つ、ツッコミが身体に響くぜ。 いやでも、コレは突っ込まざるを得ないだろうよ。 なんで負けるの確定してんのに偉そうにしてるんだ。なんだそのドヤ顔は。 いや、表情的には完全に無表情なんだがな。アレは確実にドヤッてる。オーラが出てる。「当然でしょう、相手は幻想郷最速の烏天狗です。トラウマ見せる前に倒されたら私どうしようもありません」「……もっともな意見だが、お前に言われると嘘っぽく感じるな」 真面目な話、高速攻撃くらいなら余裕で対処出来そうな気がするんだが。「ぶっちゃけ私、トラウマ引き出せる以外は普通の妖怪ですよ」「……トラウマ引き出せる時点で普通じゃないだろう」「可愛いもんじゃないですか」「お前、なんで地下に封印されてるのか分かってるのか?」 ようやく落ち着いてきたんだから、もうツッコミをさせるなよ。 本気か冗談かも分からない、相変わらずの鉄面皮っぷりでポーズだけ可愛くする古明地さとり。 疲れる、ただただ疲れる。「ま、実際の所は完封勝ちとはいかないでしょうがね。――無駄な勝負になるのも間違い無いでしょう」「そうですね、しなくて良い喧嘩は避けるべきです」「……私はテメェに、しなくて良い喧嘩をふっかけられたワケだが?」「私にとっては必要な喧嘩でした」「は、腹立つ……」 くそっ、身体が動けば一発叩き込んでやるのに! 一応は勝ってるはずなのに、何もかもが相手の思い通りに進んでいる気がする。「実際狙い通りです、ぶい」「……また、タチの悪い冗談だよな?」「ふふふ、どっちでしょうね」 徹頭徹尾無表情なのがムカつく! わざわざ仕草を声に出すさとりの姿に、力の入らない拳を必死に握る私。 もちろん単に、表情に出ないフレンドリーさを仕草で補っているだけとも考えられるが。 ――いや、やっぱ無いな。 どう好意的に考えても舐めてるだけだ。私を怒らせるためだけに全力出してやがる。「どうどう、冷静になりましょう魔理沙さん」「私は馬か! ――うぐっ」「まだ身体キツいんでしょう? ここから先は、大人しく私に任せてください」「……それはそれで不安なんだが」「おや、この私の何が不安で?」「――ソイツと一緒に私を煽り続けた事、忘れて無いからな」「てへぺろ☆」 良し、復活したらぶっ飛ばす。絶対にぶっ飛ばす。 こっちは表情も合わせて煽ってくる文、どっちにしろムカつき具合は変わらない。 くそ、絶対覚えてろよコイツら……私は意外と執念深いんだぜ?「ではさとりさん、一応魔理沙さんが勝ったので」「一応は余計だ」 自分でも思ったけど、他人に言われると腹立つんだよ! 私の抗議の声を、しかしあっさり無視してくれる射命丸文。少しで良いからこっちを気遣え。「――教えてもらいましょうか、貴女の知っている神霊に関係した情報とやらを」「約束ですからね。教えましょう……実は」「実は?」「この異変を悪化させたのはあっきーらしいですよ?」「知ってるよ!!」 散々引っ張っておきながら、取り立てて珍しいワケでもない既知の情報かよ!! いや、確かに私らも紫が暴露するまで知らなかったけどな。 だからって今更言われてもな……そもそも、それ異変に関係あるけど無関係なヤツだろう。「……ちなみにですけど、確認して良いですか?」「どうぞ」「その情報、どこで仕入れました?」「貴方達の脳内ですね」「つまりさっき仕入れた情報って事じゃねーか!?」「言ったでしょう? ――色々と情報を手に入れる方法はあると」「最悪だ! 最悪だコイツ!!」「いやー、さすが覚妖怪。やり口が悪辣ですねー」 つまる所、コイツは何にも知らなかったって事じゃないのか!? 私がさとりを睨みつけると、さとりは何故か両手でピースサインを作ってみせた。 ただしやっぱり表情は変わらない。どう考えても喧嘩売られているよな、コレ。 しかし文の奴は、少し苦笑しただけで怒りはしなかった。 ……我慢強いのか? 幾らコイツでも、無駄足踏まされたら多少はムカつきそうなもんだが。「とりあえず、勝利報酬に足りない分の情報は命で補ってもらいましょうか」 あ、さすがに腹立ってたか。 ニッコリ笑いながら葉団扇を構える文。 よしっ、良いぞ! 珍しく意見が一致したな!! やっちまえ文!「分かりました。ではあっきーの秘密を一つ教えます」「……許しましょう、全てを」「はえーよ!!」 でもそんな気はしてたよ! くそっ、分かりやすく懐柔されやがって!!「お前、ここで引いたら完全に無駄足だぞ!? 良いのか!?」「後悔は――無い!!」「さすがです」「……もういいよ」 この弟狂いはダメだ、分かってたけどダメだ。 文の力強い返答に、改めて絶望する私。 畜生、コレひょっとしなくても私の方がハズレ引いてるんじゃねーか? 「真面目な話、ここでコレ以上さとりさんに拘る理由は無いですからね。お礼参りは後日に回すべきかと」「分かっちゃいるけど、このまま舐められっぱなしっつのはな……」「相手がそれだけ上手だったと言う事です。さすがは地霊殿の主、地底最悪の妖怪と褒め称えましょう」「尊敬しても良いんですよ」「――ああ、ある意味尊敬するよ」 その面の皮の分厚さはどうなってるんだ、本当に。 絶対鉄面皮の原因ソレだろ。そりゃそんだけ分厚ければ、頬の筋肉なんて欠片も動かないだろうよ。「酷い話です、しくしく」「突っ込まないぞ」「ちぇっ」「と言うワケで、我々そろそろ撤退しようと思うのですが」 「良いんじゃないですか? 我々もそこまで執拗に貴方達に絡むほど暇ではありませんので」「だから――」「はいはい、話が長くなるから黙っててください」「むぐ……」「ご安心ください。この地底において、地霊殿がコレ以上何かする事は――」「さとりさまー。勇儀の姐さんに魔理沙達の事チクって来たよー」「……………………」「……………………」「……………………」「…………何かする事はありえません。やったね!」「おい、やっぱコイツ何とかした方が良いんじゃないか?」「私も正直、コレ放置するのはマズいんじゃないかなーと思い始めてきました」「大丈夫ですって、コレ以上の事は本当にしませんから」 そりゃ、ここまでやったらもう何もやる必要が無いだろうが。 勇儀って言うのは確か、以前に私も会った旧地獄の鬼だ。 性格は典型的なバトルジャンキー。私達の話が振られたとしたら、間違いなく喧嘩売ってくるだろう。 しかも鬼は、天狗の元上司だと聞く。 文にとっちゃ、さとり以上に会いたくない相手だろう。 ……さては、文だけ無傷で逃した理由はソレか。性格超悪いな。「とりあえず超速で逃げますよ。あの人らに出会ったら、死ぬほど面倒な事になりますからね」「まぁ、私は今荷物だからな。反対はしないさ」「頑張ってください、応援してます」 自分が原因の癖に平然とそう言い放って、わざとらしくハンカチを振るさとり。 せめてもの反撃として私が思いっきりアカンベーをしてやるのと、文が全力で飛び立つのはほぼ同時だった。 あっという間に見えなくなる地霊殿。……結局、良いように翻弄された記憶しか無かったな。 くそっ、これはもう本当にお礼参りするしか無いな。「覚えてろよ、さとり!!」「別に構いませんけど……それ、完全に負け犬の遠吠えですよね」 ああ、さすがの私もちょっと虚しかったよ。 ◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「最終章だろうがいつも通り、山田です!」死神A「あ、死神Aです」山田「まーぶっちゃけますと、後何回このコーナー出来るか分からないのでいつも通りしか出来ないという……」死神A「ぶっちゃけ過ぎですよ!?」山田「でもやりたいですよね……特別編」死神A「特別編ですか……このコーナーで、どんな特別をやるって言うんですか?」 山田「死神Aへのオシオキがいつもよりとくべ」死神A「さ、さぁ! とっとと今回の質問に行きましょう!!」 Q:どのマスパの威力が最も強かったのか、教えろ! 死神A!山田「作者が読み間違えているのかもしれませんが、今回は「名称:マスタースパーク」に限定した強さ比べです」死神A「派生は無しって事ですよね」山田「恐らく。……まぁ正直、派生系は色々基準に困りますしね。特に某主人公のは」死神A「そういや、真っ当な威力のスペカ持ってないですね」山田「アブソリュートゼロとか、多分威力的には最下位になりますよ」死神A「まぁ、威力だけが全ての技じゃないですしね」山田「そうです。某遊戯王タッグフォースなら、CPUがどう足掻いても使ってくれないレベルです」死神A「その例え必要でした?」山田「では、マスタースパーク強さランキングです」 幽香 ≧ 四季面 > 魅魔 ≧ 靈異面 > 晶 = 魔理沙山田「ちなみに作者、当初は「魔理沙>晶」と書くつもりでした」死神A「ありゃ、なんで変わったんですか?」山田「過去のコメントで、マスパの威力は「晶=魔理沙」だってはっきり言ってたの見つけたんです」死神A「わぁ……」山田「理由は「幽香のマスパの劣化コピーだから」でした。なるほどと自分で納得しました」死神A「そもそも忘れないでくださいよ。……ところで、マスパの威力は四季面の方が上なんですね?」山田「四季面のマスパは奥の手、靈異面のマスパは基本技ですからね。靈異面にはトワイライトスパークもありますし」死神A「あと、元祖マスパの使い手最下位なんですが……」山田「本家マスパ使いが一位ですから仕方ありません。天晶花は人間に厳しいのです」 死神A「酷い世界だ……」山田「…………さて、今回はこれで終了なのですが」死神A「はい」山田「とりあえず、逝っときます?」死神A「いや、そんな軽いノリで言われても。私今回落ち度無いですよね?」山田「落ち度がないのが落ち度、と言う考え方もできます」死神A「完全に言いがかりじゃないですか!」山田「やかましいです! 面倒だからサクサクっとお仕置きされなさい!!」死神A「り、理不尽過ぎですよー!!」山田「……このオチもわりとありがちですよね?」死神A「そうやってテンション下げるなら、その手も止めて――うぎゃあああああ」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど