※CAUTION! このSSの舞台は、数十年後のパラレルワールドな幻想郷となっております。 そのため、独自設定とオリキャラのオンパレードです。 東方キャラの一部も、容姿や設定が大きく変化しております。 以上の設定が許容出来ない方は引き返してください。未来語り特別編「じだいちゃんのにっき」○月○日(甲) 博麗の巫女になってから書き始めたこの日記も、ついに五冊目に突入した。 やはり、こういう細かい作業は私の性に合っていたのだろう。 先代の犯した過ちは絶対に繰り返さない。そんな強い決意も関係しているのかもしれない。 ……話が逸れた。もうすでに何度か書いた事だが、日記帳も新しくなったのでもう一度この日記の意図を記しておく。 この日記は私の日常を記し、博麗の巫女が如何なる仕事を行い、その力をどのように使ったのかを後の世に伝える物である。 無論、この日記その物が未来永劫残るとは私も思っていない。 だがここに書いた内容は、何らかの形で後続の巫女達に伝わる事だろう。 うん、伝わらせる。絶対に伝える。どこぞの巫女みたいに、口頭だけで伝えるなんて事はもう絶対にしない。 内容がかなり適当で、催事や祝詞の半分以上がうろ覚えで間違ってました。なんて悲劇は私の代で根絶やしにしてやるのだ。・今日の馬鹿 いつの間にか神社に居て、魔理沙さんと一緒に家のお茶とお茶菓子を貪っていた。 それも、よりにもよってお気に入りのヤツだ。隠していたのにどうやって見つけたのだろうか。 思いつく限りの言葉で怒鳴ってやったら、「先代は見つける立場だったんですけどねぇ」としみじみと言われた。 色んな意味で腹が立ったから全力で叩いておいた。魔理沙さんは許す。晶「お神酒は巫女が飲み干さなければならない。なんてアホな作法を信じる次代ちゃんもどうかと思いますが」次代「あの時は巫女の仕事なんて何も知らなかったのよ! と言うか人の日記を覗くな馬鹿!!」晶「良いじゃないですかー。僕と次代ちゃんの仲なんですから」次代「死ね」晶「魔理沙さーん、次代ちゃんが容赦なく酷いでーす」魔理沙「自業自得だから諦めろ」○月□日(甲) 紅魔館の吸血鬼は、幻想郷でも有数の『力と組織力を持つ妖怪』だ。 強くなれば強くなるほど厄介事を起こす幻想郷の妖怪の中では、強者故の責任をきちんと理解している貴重な常識人? である。 ……まぁ、それでもたまに面倒な問題を起こすけど。それはもう妖怪のサガと言うヤツなのだろう。 尚、公平を期すため記しておくが、今代の巫女である私に紅魔館の吸血鬼を御する力は無い。 先代のように力尽くで抑えられるようになれとは言わないが、最低でも一つくらい対抗策は用意しておくべきである。 そうでないと私のように、毎日レミリア・スカーレットがやってきて馬鹿にされるなんて言う目に遭う事になる。 ちくしょう、強くなりたい。せめて舐められない程度の実力は身につけたいわ。・今日の馬鹿 レミリア・スカーレットの付き添いでやってくる。お前は本当に立ち位置をハッキリさせろ。 私が吸血鬼にヘタレだの未熟者だの散々言われてる間も、アイツはもう一人の付き添いと話していてこちらに見向きもしなかった。 とりあえず隙を見て脇腹を抓っておいた。お土産でお茶とお茶菓子を持ってきたが、やっぱり許さない。晶「……レミリアさん、さすがにその作戦はみっともないと思うんですけど」レミリア「わ、私は単に様子を見に来ているだけで、今のうちにトラウマを与えておいて後々を有利にしようと企んでるワケでは――」パチュリー「語るに落ちてるわよ。だけど正直、この策は思いっきり逆効果な気がするわね」晶「アレで存外、先代に似て気が強い所がありますからねー。……逆に成長したら、今までのお返しとばかりに噛み付いてくるかも」レミリア「はっはっは、まさかそんな――な、無いよな? そこまで出来るほど強くなるなんて事は、無いよな?」パチュリー「レミィ……長い付き合いだったわね」レミリア「ちょ、止めてよちょっと!? なんで晶も手を合わせてるのよ!?」○月△日(甲) 永遠亭の蓬莱人達は、妖怪とも神とも人間とも違う独特の立ち位置に居る。それ故に彼女らは滅多に外へ出てくる事は無いのだ。 先代の時には宴会などの折に現れていたそうだが、今代の私は未だに永遠亭の‘姫’に出会った事が無い。 恐らく私が未熟者だからだろう。口惜しいが事実である以上、現状を甘んじて受け入れるほかない。 ただし、永遠亭の人間との交友が完全に途切れているワケでも無い。部下である兎達とは、わりと頻繁に会っているのだ。 ……ああ、そうだ。後世のために書いておくが、黒髪の兎妖怪は絶対に信用するな。 童女みたいな外見で無垢そうな面してるが、腹の中身は真っ黒である。ロクでも事ばかり常に考えている。 だから絶対に信用しない事! 絶対にだからね!! 絶対に!・今日の馬鹿 ものすごくワザとらしい笑顔を浮かべ、揉み手をしながら近付いてきた。 態度としてはへりくだってるはずなのに、何故か気分的に見下されてる気がする。 何の用かと思ったら、例の結界をどうにかしてやれないかと言う話だった。 なんでそんな事を尋ねたら内緒と言われたので殴っておいた。秘密主義なのは今に始まった話じゃないけど、やっぱり腹が立つ。てゐ「晶ー、おたくの所の巫女。ついに神社にてゐちゃん専用締め出し結界張り出したんだけど」晶「あの子ったら……そんなしち面倒臭いモノを作れる程に成長したんだね。ホロリ」てゐ「ホロリじゃないよー。なんとかしてよー」晶「いや、それはぶっちゃけ自業自得でしょ。てゐちゃん何度あの子の事を騙したよ?」てゐ「だってすっげぇチョロいんだもん、あの次代。……晶をネタにしたらほぼ百パー釣れるし」晶「程々にしときなよ……。ちなみに、輝夜さんの様子はどうです?」てゐ「相変わらずだよ。布団の中で「後二千年は寝てやる……」って意地になってる」晶「暇だから最長睡眠記録に挑戦って話だったのになぁ……もう完全に目的と手段が入れ替わってるよね、ソレ」てゐ「私は楽が出来て良いけどねー」△月◎日(甲) 白玉楼の剣士殿がやってきた。 優れた剣の腕に落ち着いた物腰、私が魔理沙さんの次くらいに憧れる理想の女性だ。 普段は冥界に居るため滅多に会えないが、たまに博麗神社に顔を出して色んな事を教えてくれる。 実に良い人だ。必要最低限の事しか話さない寡黙な所も気に入っている。 だけどあの人何故か、あのバカスキマを尊敬しているみたいなのよね。いやまぁ、アイツが凄いヤツだって事は知ってるけど。 うん、まぁ実力だけはね? 実力だけは認めなくもないわよ? 本当に実力だけだけどね? だけどどう考えても、妖夢さんが尊敬するようなヤツじゃ無いと思うんだけどなぁ。・今日の馬鹿 思い出したように現れ、何かを確認してそのまま消えるを繰り返していた。意味が分からない。 仕方がないので気になるなら居ても良いと言ってやったのだが、何故か遠慮してまた消えてしまった。何がしたいんだ。 そういえば、妖夢さんが来ている時の久遠晶は毎回同じ様な行動をとっている気がする。 ……なんだろう、実は妖夢さんと仲が悪かったりするのかしら。妖夢「終わりました、晶さま!」晶「あーうん、ご苦労様」妖夢「お安いご用です! お忙しい晶さまの手伝いをしてやれと、ゆゆ様からも言われておりますので!!」晶「忙しいって言うか、この手の助言を僕がしても聞き入れてもらえないと言うか……」妖夢「しかし晶さま、何故私は出来るだけ喋らないようにしなければならないのですか? 正直、物を教えにくいのですが?」晶「……ボロが出るから」妖夢「なるほど、良く分かりませんが分かりました!」晶「見た目は凄まじく成長したのに、中身は一切変わってないんだよなぁ……」◎月○日(乙) 命蓮寺の聖人や守矢神社の神と会合を行う。 博麗神社は幻想郷の秩序を守る面が強いせいか、あまり宗教色が強くない――気がする。 少なくとも先代は、信者集めにそこまで執心していなかったらしい。 たまに賽銭が欲しいと零してはいたが、対策らしきものは何もしていなかったらしい。 私もあまり興味は無いが、だからと言って何もせず宗教家達を放置して暴走されても困る。 なのでこうして定期的に集い、情報交換などをしているワケだ。 これは色々と有意義な情報が貰える時間なので、後継者達も可能な限りこの集まりを継続する事を望む。・今日の馬鹿 話し合いのある日は来ない。こちらに気を使っているのだろう。 別に毎日顔を合わせたい相手でも無いので、居ようが居なかろうがどうでもいいのだけど。 寂しい。白蓮「はい、拙い出来ですがどうぞ」次代「ありがとうございます。白蓮さんの作る『くっきぃ』は、いつも美味しいですよ」諏訪子「ヘルシー過ぎるのが難点だけどねー。神奈子の作る炭よか百倍マシかな」白蓮「申し訳ありません。この様な歓迎しか出来なくて……」諏訪子「ゴメン、嫌がってはいないよ。悪態をついちまうのは私の本能みたいなモノでね」次代「白蓮さんは真面目だから、からかっちゃダメですよ諏訪子様」諏訪子「次代ちゃん程じゃないけどね。それでどうなんだい? ウチの四柱目との関係は進展した?」次代「い、いや、何言ってるんですか!? 私とアイツはそういう関係で無くてですね」白蓮「あの、諏訪子様? 毎回そうやって話題をズラすから、まともな話し合いが出来ないのだと思うのですが……」諏訪子「ニーズに合わせてるんだよ。次代ちゃんは私らの動向より、コイバナの方が気になるみたいだからね」次代「そ、そそそ、そんな事はありませんよ!?」白蓮「いえ、私も気にならないワケでは無いのですけど」次代「白蓮さん!?」□月△日(甲) 地霊殿からさとり妖怪がやってきた。正直、彼女は色んな意味で苦手だ。 しかもセットで地獄烏と火車まで連れてきた。見つからないけど、多分妹も居るのだろう。 予想通り、独特の世界を構築するさとり妖怪と愉快な仲間達。なんで人の家まで来て内輪で盛り上がってるんだコイツら。 更に久遠晶まで現れボケを畳み掛けてくるのだから、頭が痛くてしょうがない。 とりあえず晶の馬鹿は殴っておいた。最近、自分のパンチが鋭くなっているのが分かる。 ……今度、実戦で使ってみようかしら。・今日の馬鹿 さとり妖怪とイチャイチャしてた。死ねばいいのに。晶「さとりん、あんまり彼女をからかうのはどうかと思うよ?」お燐「え、お兄さんが言うの? あんだけ好き放題弄りまくってたお兄さんが言うの?」さとり「すいません、リアクションが面白くてつい」晶「許す」お燐「許した!?」さとり「良い子ですよね、彼女。博麗の巫女にしておくには惜しいピュアさ加減です」晶「最近ちょっと怪しくなって来たけどねー」さとり「……ちなみに、貴方とのやり取りの影響で彼女、武闘派に傾きつつありますよ」晶「…………マジで?」さとり「マジで」晶「ねぇ、そろそろ僕あの子の日記盗み読むの辛くなってきたんですけど」霊夢「ダメよ。だってあの子、アレ後世に伝えるつもりなんですもの」魔理沙「監査はしなくちゃダメだよなぁ。霊夢みたく、変な事伝えられても困るしな」晶「……霊夢ちゃんは、本当に巫女としては色々ダメ過ぎたよね」霊夢「………………」魔理沙「突っ込んでやるなよ。年齢重ねて、霊夢もようやく過去を後悔出来る普通さを手に入れられたんだからな」霊夢「いや、気にしてないから。全然気にしてないから」晶「僕、霊夢ちゃんが涙目になるの初めて見たよ」魔理沙「最近は、酒飲むと毎回こうなるぜ?」霊夢「魔理沙うっさい」晶「でも本当、盗み読みは止めようよ。ぶっちゃけ中身ほぼ完全に私事しか書いてないんだよ?」霊夢「良いじゃない。アイツだって本当は、アンタが読むなら問題無いと思ってるわよ」魔理沙「可愛げあるよなぁ。こことか絶対見られるの前提だぜ?」晶「――ああ、だから特設コーナーが作られていたのか。僕の嫌われっぷりも拍車がかかってきたなぁ……」霊夢「うん、アンタが結婚できない理由がよーく分かったわ」魔理沙「だからお前この間、馬鹿言ってアリスに半殺しにされたんだよ」 晶「自分達だって独身なクセに!?」 霊夢「そして今、自分で自分の寿命を縮めたわね」魔理沙「よし、表出ろ。お前を人間として葬ってやるぜ」晶「ちょっと前まで「一生独身でいいや」とか言ってたのに……」