「幽香さん、今良いですか? ちょっと軽く組み手をお願いしたいんですが」「……貴方がそんな事を言い出すなんて、明日は雪かしらね」「あはは。否定は出来ませんが、僕は至って正気ですよ?」「ふふ、分かってるわよ。本格的に力と向き合ってみようと思ったんでしょう?」「そういう事です。それに、ちょっと試してみたい事があるんですよね」「……試してみたい事?」「ええ、困った事に相手がいないと成り立たないんですが。実はですね……」「説明は不要よ。タネの明かされた手品ほど冷めるモノは無いのだし」「いやその……事前に説明しておかないと、上手く行ったのかどうか判断して貰えないので」「……自分で判断しなさい。それくらい」「それが多分、出来ないからお願いしてるんですよ~」「どんな理由があるにせよお断りね。たっぷり遊んであげるから、せいぜい自力で何とかしなさい」幻想郷覚書 天晶の章・拾壱「指向錯誤/切り札は未だ引けず」「いやぁ~、気分が良いと普段より速く飛べる気がするわね!」 私こと射命丸文は、鼻歌交じりで太陽の畑に向かって飛んでいた。 昨日は隙間に対して意地を張った結果、財布の中が大分軽くなってしまったけれど……ふふふ、悪い事ばかりじゃ無かったわね。 文々。情報網によると、昨日同じくらい散財した八雲紫はその事で自分の式の怒りを買い、外出禁止を言いつけられてしまったそうだ。 つまり今日は、晶さんを愛でようと企むダメ姉がいないのです! 風見幽香は基本そういった事に興味が無いし……久しぶりに私の時代が来たわね、これは!!「彼女の事はまぁ新聞のネタにさせて貰うとして。あやややや、今日は楽しい事になりそうよ~」 到着してからの事に思いをはせて、私は風見幽香宅の前に着地する。 元気良く二人に挨拶をしようとして――そこで、ようやく私はその場の惨状に気が付いた。 「な、なによコレ!?」 家の前には、強大な力同士がぶつかり合って生まれたかのような巨大な窪地が。 さらにその穴の中には、数える事すら億劫になる程の亀裂や孔が至る所に付いている。 弾幕ごっこの余波……にしては少々穏やかじゃないわね。 私は未だ一部で白煙を上げている窪地の周囲を、二人の姿を探して旋回した。「どんな戦い方をしたらこんな風になるのよ。フラワーマスター、分裂でもしたのかしら?」「あら、今日は意外と遅かったわね。いつもなら我先にとやってくるのに」「しょうがないじゃない。今日はライバルがいないから、どうにも気が緩んで――って、うわぁ!?」 窪地の反対側、丁度家の壁近くに幽香さんと晶さんの二人は居た。 ただし晶さんはぐったりとした様子で倒れ伏していて、ピクリとも動いていない。 ……なるほど、謎は全て解けましたよ。 フラワーマスターめぇ、己が欲求のために晶さんとガチバトルをするとは。 ここ最近は愛着も湧いてきたみたいだから、無茶な真似はしないと思ったらコレですよ!! まったく、姉として抗議する必要があるようですね。「ほら、お望みの晶よ。煮るなり焼くなり好きにしなさい」「うわっと、そんな乱暴に放り投げないでちょうだいよ。何をそんなにイラついているの?」「ただの八つ当たり、かしらね。晶に派手にやられて、今少しだけ機嫌が悪いのよ」「……はぁ?」「言っておくけどジョークじゃないわよ。そこらへんは見れば分かるでしょう?」 改めて見ると、確かに風見幽香の姿はボロボロだった。 巧妙に隠しているけど息は途切れ途切れで、プライドの高い彼女が人目を憚らず壁に身体を預けている。 肉体的損傷もかなり激しく、項垂れた右腕や額からは血が垂れ、左腕に至っては持っている傘ごと捻じれていた。 おまけに服は切り傷と焦げ跡だらけで、覗いて見える肌は例外無く怪我を負っている。 左脇腹当たりの服を汚している血も、恐らく返り血では無いのだろう。風見幽香のこれほど余裕の無い姿を見たのは初めてかもしれない。 一方、晶さんは気こそ失っているものの一切怪我らしい怪我を負っていなかった。 唯一頭には冗談みたいなタンコブが出来ているが、これを傷と呼ぶのは少々無理があるだろう。「な、何があったのよ? 晶さんのいつものうっかり――と言うワケでは無さそうだけど」「そこらへんは本人に聞きなさい。……まぁ、この子は‘覚えていない’でしょうがね」「はぁ? どういう事?」「さぁ、どういう意味かしらね」 そう言って不機嫌さをいつもの笑顔の下に押し込めた風見幽香は、のろのろとした動きで家の中へと向かっていく。 どうやら事情を話す気は欠片も無いらしい。疑問符だらけのこちらを無視して、彼女はそのまま扉を閉じようとする。 しかしその途中に何かを思い出した風見幽香は、隙間から覗きこむ形でこちらに話しかけてきた。「そうそう、晶には今日一日帰ってこないよう言っておいてちょうだい。‘家の後始末’で慌ただしくなるから」「ふむ……まぁ、一つ貸しにしておきましょうか。晶さんにスパイラル土下座を連発されても寝覚めが悪いし、こっちで適当に誤魔化しておくわね」「助かるわ。それとついでに、二つほど伝言もお願い出来るかしら」「伝える保証はしないけど、聞くだけなら」「『私は負けなかった』『楽しめたけど、面白くは無かった』――じゃ、お願いするわね」 端的過ぎて意図が分からない伝言を告げて、風見幽香は今度こそ扉を閉める。 話についていけない私は、晶さんを抱きかかえたまま途方に暮れるしかなかった。「すいません、知らないです」 晶さんを連れて妖怪の山まで戻り、目を覚ました彼に事の詳細を聞いた答えがコレだ。 身も蓋もない答えに、私は思わず頭を抱えてしまった。 ……しかも、「言えない」でも「分からない」でも無く「知らない」と来ましたか。 晶さんは確かに弩天然の秘密主義だけど、嘘をついてまで事実を隠ぺいしようとする程徹底はしていない。 つまりは幽香さんの言った通り、本当に晶さんは覚えていないのだろう。……あれだけの事をやらかしたのに。「それでも、戦う直前までの事は覚えているはずですよね。何があったんですか?」「んー……その前に聞きたいんですけど、幽香さん何か言ってませんでした? 本当に何も把握して無いので、出来れば情報が欲しいんですが」「一応、伝言なら預かってますよ」 どこかバツの悪そうな晶さんに、彼女からの伝言をそのまま伝える。 たった二言の台詞を聞かされた晶さんは、あからさまな落胆の表情でがっくりと肩を下ろした。 「とほほ、着眼点は悪くなかったと思うんだけどなぁ。やっぱり弾幕ごっこには向いて無かったかぁ」「本当に何をやったんですか、晶さん?」 初めて会った頃とはもう比較する事自体が間違っているくらい強くなった晶さんだけど、幽香さん相手にあそこまで出来る実力はまだ無い。 と言う事は、最低でもいつも通りの‘小細工’はしていたはずだ。結果の方はいつも通りとはいかなかった様だが。 ……もっとも今の晶さんなら、幽香さん相手でも接戦出来る程度の力量はあるはずなのよね。 能力的にも相当なモノを持っているワケだし。後はあの性格が何とかなれば――無理か。 まぁ、私個人としては晶さんに今のままで居て欲しいですから、ヘタレ自虐的な性格バッチこいなんですけど。可愛いですし。 とにかく話を戻すが、晶さんは幽香さんとの実力差を埋めるために必ず何かをしたはずなのである。 それも、小手先の技なんて可愛いモノじゃない。もっとトンデモない何かを。「――あはは、なんでもありませんよ。単に思い付きがいつも通り失敗しただけの話です」 しかし、私の問いに晶さんはただ苦笑を返すのみだった。 ダメだコレ、完全に意地を張っちゃってるわね。 表面上は何でも無い事の様に振舞っている晶さんの姿に、私は内心で溜息を吐く。 一度こうなってしまうと晶さんは、死んでも意見を変えないから困りモノだ。 しかもそれが、比喩でないから尚の事タチが悪い。 以前に真の能力の事で悩んでいた時も、結局最後の最後まで自分で何とかしようとしていたワケだし……。 ここできちんと追求しておかないと、また勝手に命をかけられてしまうかもしれない。 姉として保護者として、しっかり何が起きたのか把握しておかないと!「今回ばかりは、例え晶さんと言えど――」「……そういう事にしてもらっちゃ、ダメかな?」 あうあうあう、反則ですってソレは。上目遣いとか止めてくださいよ殺す気ですか晶さん! とまぁ冗談はさて置いといて。……ええ、冗談よ? 幾ら私だって、こんな時に優先順位を間違えたりはしないわ。 私は晶さんの瞳を真正面から見つめ返した。縋る様な外見の態度と違って、その瞳には強い意志が宿っている。 一歩も引かない。晶さんの目は暗にそう語っていたのだった。 「幽香さんとの件で分かりました。‘コレ’はもっと自分の中で纏めて、はっきりとした形にしないとダメだって」「だから、今は話す事が出来ないと?」「すいません、自分の力だけで何とかしないと、ダメな気がするんですよ。――あ、だけどおかげ様で、完成系は見えたと思います!」「私じゃなくて幽香さんのおかげですけどね。……ま、良いですよ。涙で枕を濡らしながら諦める事にしましょうか」「あはは、ありがとうゴメンなさい」 やれやれ、私も甘いわねぇ。 だけどどうにも弱いのだ。晶さんのこの、不敵で底意地の悪い笑顔には。 はぁ、晶さんの力を警戒していた頃が懐かしいわ。 いつからかしらね。彼のしでかす事に、不安と同じくらいの期待を抱く様になったのは。 何をやらかすつもりなのかは知らないけど……仕方が無い、姉らしく見守ってあげる事にしますか。「ところで、これからどうするつもりなんですか? 今太陽の畑に帰ったら幽香さんに惨たらしく殺されますよ」「むごっ……いやその、とりあえずさっきは目標を高くし過ぎたので、今度は低い所からやっていこうかと」「ほぉ、なるほど。今度は低くですか、なるほどなるほど」「え、何かマズいですかね」「マズくはないんじゃないですか? そこらへんも含めて私は何も聞かされて無いので、さっぱり事態が飲みこめませんが」「……あー、すいません」 まぁ、これくらいの不平不満を言う権利はあるだろう。 頬を膨らませて抗議する私に、晶さんはワタワタと事情を語り始めた。 どうやら、用いた手段は話せなくても目的の方は問題無く話せるらしい。 ……ああ言った手前話題を掘り返す事は出来ないけど、いったい何をしたのかしら晶さん。「実は霊夢ちゃんに言われてから、真の能力と対話するために色々と試していたんですよ」「してたんですか?」「はい、片手間で」 にっこり笑いながら、晶さんはそれはどうよと言いたくなるような事を口にする。 いやまぁ、そういった事柄は無理なくやるのが一番だから、その姿勢を責める気は無いけれど。 晶さん的にはそれで良いのだろうか。――良いんでしょうねぇ、晶さんだから。「で、その一環として新しい技を考えてみたんですが」「物の見事に失敗したと」「そういう事です。あはははは」「笑い事では無いと思うんですが……それで、そこからどう目標を低くするんですか?」「とりあえず、今ある能力で新しい技を作る方向性に妥協してみようかなって」 それ、本来意図する目的に繋がる妥協なのかしら。 思わずそうツッコミかけた腕を止め、私は苦笑だけで己の意思を晶さんに伝える。 ――あ、目を逸らされた。 どうやら本人にも、何かを間違えてる自覚はあったらしい。 それでも変えないのは……多分、他に妥協の方法を思いつかないからなんでしょうね。 まぁ、最初の頃とやっている事がさほど変わっていなくても、有用性がある事に違いは無いんでしょう。 「――と言うワケなので、晶さんに協力してあげてください」「いきなりなんだい!?」「文様……せめて前置きくらいはして頂けませんか」 相手の確認よりも早く扉を開いた私は、訪問者たちに問答無用で話を振ってみた。 親友の河童と可愛い部下は、私の言葉に其々の反応を返してくれる。 ちなみに二人が来るのを先読み出来たのは、単純に話声が聞こえてきたためだ。 残念ながら私に、そこまで強力な索敵能力は無い。――ただし、弟の事なら幻想郷の端に居ても分かりますがね!「ところでお二人共? 魂の抜けた姉馬鹿とか、弟狂いが無くても元からアレとか、随分と興味深いお話をされていたみたいですね?」「あ、あはははは、そこに居るのはアキラじゃないか! 久しぶりだね、元気にしてたかい!?」「ほへ? でもお土産渡した時に顔合わせたよね?」「いやいや、挨拶とは何度やっても良いモノだ。だから何度でも言うべきだと私も思う。そうだろう久遠殿!」「わけがわかりません」 晶さんへ縋る事で、何とか話を有耶無耶にしようと企む妖怪二名。 まぁ、誤魔化されてあげても良いけど……後で家の裏に来なさいよ、ね? 「じゃあ話を戻すわ。二人には、新技完成のために晶さんの手助けをして欲しいのよ」「……私達に、死ねと?」「いやいや、そんな大袈裟なもんじゃないから。ちょっと新技の練習相手になって欲しいってだけの話で」「アキラ、一つ良い事を教えてあげるよ。――私らは、アンタが思ってるよりずっと弱いんだ」 にとりの真剣な言葉に、椛も何度も頷いて同意している。 まったく、晶さんの自己評価の低さには毎度呆れる他無い。 どれだけうっかりしていても詰めが甘くても、貴方には椛くらいの相手なら一撃で沈められる程の実力があるのだからね? そもそも椛とは、出会った時点でそれくらいの差が出来ていたはずなのだけど。 二人が本気を出せば、自分くらい止められるとでも思っているのかしら。――凄く思ってそうだわ。「とりあえず安心しなさい。手助けと言っても直接的なモノじゃないから」「そりゃ良かった。……しかし、助言を求められてもそれはそれで困るよ?」「久遠殿の能力に関しては、我々はズブの素人ですからね。精々思った事を言うくらいしか」「ああ、大丈夫よ。どうせ晶さんの事だから、素人目にも分かるレベルで欠点を晒してくれるわ」「さすがに酷い!?」 私の言葉に半泣きになる晶さん。ああ、可愛いなぁ。 だけど実際問題、晶さんの考える新技ってどこか抜けてますよね? 言外にそんな意思を込めて晶さんを見つめると、さすがの晶さんも少しばかりムッとした顔をした。「僕だって、毎回毎回抜けたスペルカードを作ってるワケじゃ」「ペネトレイション・サーペント」「あぐっ」「フリーズ・ワイバーン」「うぐっ」「スピア・ザ・ゲイボルク」「……ゴメンナサイ」 淡々とスペカ名で指摘され、心の折れた晶さんはがっくりと項垂れる。 私も、まさかこんなに出てくるとは思わなかったわ。他人事なのに泣けてきたじゃない。 しかし、ここで落ち込みっぱなしにならないのが晶さんの良い所だ。 彼は勢い良く立ち上がると、私達に向かって半泣きで宣言した。 「ちくしょー、やってやろうじゃないか! 文姉がビックリするような新技を考えてやるぅぅぅ!!」「……おかしいな。見た事も無い未来が鮮明に見えた気がするよ」「にとり殿もか、奇遇だな。実は私もなんだ」「安心なさい。皆思ってる事よ」 晶さんの叫びが、妖怪の山に響き渡る。 その内容に誰も期待しなかったのは……ある意味、彼の人徳が為せる技だろう。 ◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「お前のやったことは全部お見通しだ! 山田です」死神A「いえいえ……それほどの者です。死神Aです、って山田様」山田「今回は巻きで行くので、ツッコミはガン無視させて貰います。どんと来い、超常現象」死神A「なら、ここぞとばかりにボケを挟むのは止めてください! と言うか意味が分かりませんよ!?」 Q:八坂の姐さんはゲッターは浪漫らしいですが、他に浪漫を感じるスパロボってあるんですか? 出来れば、身体的に「ある一部」と名前がTRICKの女主人公と同じな山田さん教えてください。山田「合体、変形、必殺技のあるロボットは一通り浪漫です。地獄へ落ちろ」死神A「何か漏れてますよ!? 気のせいじゃ誤魔化せない危険な響きが零れ出てますよ!?」山田「ついでに言うと「○○の性能のみに特化した機体」とかも浪漫に含まれるようですね。地獄へ落とす」死神A「一極化はスーパーロボットの花ですからねぇ。って、語尾が悪化してますよ!?」 Q:っていうか、あんた等の財布の中身どうなっとるんや。 あやや以外まともに仕事して無いじゃん。ゆかりんは色々手はありそうだけどさ。山田「レミリア・スカーレットは確か、スカーレット家の所持する財宝を食い潰しているはずです」死神A「二次創作の設定ですよね、それ」山田「天晶花でもそうで良いんじゃないかな」死神A「いや、ダメでしょう」山田「まぁ、真面目な話。売るモノはたくさんありますから、要らないモノを売って小金にしてるんでしょう。基本的に金の要らない人達ですから」死神A「どっちにしろ食い潰してるワケですね。……スカーレット家大丈夫なんですかね」山田「風見幽香は公式で人里で買い物していますし、何か手があるんでしょう。多分」死神A「その具体的な内容を知りたいんですが」山田「テリトリー内に入った人間の死体から拝借してるんじゃないかな」死神A「生々しいですよ!?」山田「はいはい、ではまた次回~」死神A「テンポ良過ぎてツッコミを入れる余地が無い……せめてボケを減らしてくださいよ」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど