雪が降っている。 彼女が気付いた時に見た光景は、降り注ぐ雪と廃墟と化した都市だった。
「ここ・・・どこ?」
はっきりしない意識の中で彼女はそう思った。
建物は荒廃しきっており絶え間なく降り注いでいる雪で辺りは、まるで一面真っ白な絵の具で塗りつぶされた世界だった。
彼女は気が付くと、周りの風景が変わり今度は壊れた建物の中だった。
そこで彼女は自分とそんなに歳が変わらない少年を見つけた。
その少年はコートを羽織っていてが鉄パイプを持ってうつむいて膝を抱えて座っていた。
彼はうとうとしながらも何かを警戒するように建物の外を見つめていた。
彼の近くには不気味な顔が張り付いた本が置いてあったのだ。
「こんな・・・・・・モノ」
彼はその本をじっと見つめると声を出して本を座りながら蹴った。
彼女は声からして彼が凄く衰弱しているのがわかった。すると突然どこからともなく黒い影のような形をした化け物たちが現れてきた。
その黒い影たちは鉄パイプを持った少年に襲いかかってきたのだった。
「来るな!!バケモノ。来るな!」
すると彼はそう叫びながら立ち上がって、持っていた鉄パイプを両手でに持ち黒い影たちに立ち向かっていった。
黒い影の一体が鉄錆のような声を出して彼に迫ると、少年は手にした鉄パイプをその黒い影に向かって振り下ろした。
すると影のような形にしか見えないモノから赤い血が流れたのだった。
黒い影は悲鳴をあげると霧みたいものになり血溜まりを残して消えたのだった
。
「いったい何なのこれ?」
彼女は目の前でそれが消える瞬間を見ながら呆然としていているなかで、
彼は残り黒い影たちに無我夢中で鉄パイプを振り下ろしていたようだった。
彼女はこの恐ろしい光景を、見ながら彼女はどうして私はこんな夢を見ているのだろうと思っていた。
そう彼女が考えているうちにバケモノたちは彼に倒されていた。
「ケホッ...ケホッ」
すると建物の奥から咳をする女の子の声が聞こえてきた。
彼は血相を変えて建物の奥に走っていった。
今にも崩れそうな建物の奥に彼がそこに行くと、六歳くらいの小さな女の子でとても苦しそうに息をしてそこに座っていた。
「おにい・・・・・・ちゃん」
「大丈夫か? ヨナ」
男の子がそう言いながらに女の子の傍に来ると、
「ごめんね、おにいちゃん。もうすぐおせき止まるから・・・・・・ごめんね」
ヨナと呼ばれた女の子は咳をしながら弱々しく彼に返事をした。
「ヨナのおせきがきこえたらまたまっ黒オバケがでてきちゃう?」
「心配すんなにいちゃんはあんなオバケになんか負けない」
咳をし続けながら女の子がそう言うと、彼は明るい声を出してヨナを元気づけた。
苦しいそうに女の子がずっと咳をしてるのを見た彼は、
「待ってろ、また何か食べられるモノを見つけてくるから」
食料を探そうと彼は、女の子から離れて建物の外に出て行こうとした。
女の子の傍には彼の近くにあったあの不気味な本があった。
彼はその本をまるで忌々しいモノのように見つめながら女の子に呼び掛けた。
「・・・・・・ヨナ」
「・・・・・なあに?」
「何があっても絶対にその本に触るんじゃないぞ。絶対に」
「・・・・・・うん」
少女はか細い声出しながらも素直に頷きました。
彼は女の子を置いて、建物の出口に戻るとそこにはまたあの黒い影たちが現れて来た。
黒い影は、じりじりと彼に近づいていき、手にもっている剣の影ようなもので彼に襲いかかってきた。
「来い! 僕が相手だ」
彼は勇ましくそう叫び黒い影に挑み掛かっていく。
しかし次々と現れてくる黒い影たちに次第に彼は追いつめられいく。
「来るなっ! 来るなっ! 来るなっ!」
彼は力を振り絞って黒い影たちを戦うが、あえなく黒い影に打ち倒され冷たいコンクリートに突き飛ばされた。
黒い影たちは彼を無視して女の子のいる建物の奥に進もうとしていた。
突き飛ばされた彼の視線の先にはあの不気味な本があった。
それは禍々しい装飾が施された表紙から、まるで彼にチカラをやろうと誘惑しているように彼女にはそう見えたのだった。
「チカラを・・・・・・僕がヨナを・・・・・・守るん・・・・・・だ」
彼は意を決して這いずりながらその不気味な本の表紙に触れた瞬間、その本は眩しく光り黒い影たちはその光りをひるんだ。
その時黒い影たちの目の前に大きく、赤黒い腕が飛んできた。赤黒い腕に当たった黒い影は建物の外へ大きく吹き飛ばされた。
赤黒い腕の先には宙に浮かび、彼に付き従うあの不気味な本があった。
「ヨナに・・・・・触るな!」
彼はそう叫びと宙に浮かぶ本の先から赤黒い腕を具現化し、向かってくる黒い影たちを殴り殺した。
「ヨナは・・・・・・僕が守る!」
彼は息を切らせながら、次々と現れてくる影たちを本の力でなぎ倒していき黒い影たちは瞬く間に全滅していった。
「これが<黒の書の力―――。・・・・・・ヨナは?」
とても強大な本の力に彼は、震え上がる心を抑えながらも女の子の安否が気になった彼は建物の中に戻っていった。
「大丈夫か?・・・・・ヨナ!」
「おにいちゃんこそ・・・・・・大丈夫?」
彼が建物の奥まで戻ると彼は女の子の元へ駆け寄って行き女の子に呼び掛けると、女の子は苦しげにしながらも笑顔で彼を出迎えた。
「あんなヤツら、何てことないさ」
「よかった・・・・・・あ、コレ、さっき見つけたの」
彼がそう言うと女の子は近くにあるお菓子の缶箱を持って彼に見せた。
「・・・・・・クッキー? ヨナの大好物じゃないか!」
「うん! おにいちゃんと、はんぶんこ・・・・・・する」
彼は、驚いたように缶箱を見ると女の子は缶箱かクッキーを取り出して彼に差し出した。
「いいよ、僕は」
女の子が心配な彼はクッキーを受け取るのを断った。
「おにいちゃんといっしょに食べたい」
だが心配しているのは少女も同じで、自分もお菓子を食べないと粘り強く彼にクッキーを差し出した。
「・・・・・・じゃあ、ちいさいほうを」
彼は諦めたのかクッキーの半分を受け取ろうとして手を出した。
「ううん。 おにいちゃんは、おとうさんとおかあさんの分までたべ・・・・・・」
女の子はクッキーを彼と分け合おうとそれを差し出した瞬間、彼女の咳が、激しくなりその小さな体が崩れ落ちた。
「ヨナ!ヨナ!」
彼はその小さな体を受け止めると必死に女の子へ呼び掛けた。
「クッキー落とし・・・・・・ちゃった・・・・・・ごめんね」
女の子は辛うじて辛うじて意識は、保っていたものの体は、依然としてぐったりしたままだった。
そして気付けば少女の首筋から黒い紋様の鎖が表れ始めていたのだった。
「そんな・・・・・なぜ?」
彼は驚いたが、女の子の近くにも、あの<黒の書〉が有るのを思い出した。
「ヨナ、いっつもたすけてもらって・・・・・・から」
女の子はそれだけ喋ると意識を失って彼の体に倒れた。
「ダメだっ! ヨナ・・・ヨナッ!」
倒れた女の子に彼は必死に呼び掛けるが、少女の体温はどんどん冷たくなっていった。
「誰か・・・・・・誰かヨナを助けてください! 誰かっ!」
彼は、女の子の体を抱え誰かに救いを求め絶叫する。
彼女は二人の傍に近付こうするが、金縛りにあったように体が動かない。
「助けてください! 誰かっ! 誰かっ!」
彼女はこの悲痛な光景をただ傍観して見ることしかできなかった。
しだいに助けを求め続ける少年の姿が見えなくなり、彼女は目の前が暗くなり、ただ助けを求める彼の声が聞こえ続けた。
彼女は夢から目覚めると、そこはいつも見慣れた彼女の部屋だった。
「夢・・・・・・だったの?」
彼女は何故あんな夢を見たのか不思議でしょうがなかった。
そしてこの夢を見た時から彼女《鹿目まどか》は狂気に満ちた世界に招かれることになる。