「―――――ちわっす! いつも貴女に真心を。五反田 弾です。」
「おー。戻って気たか弾。今日は長かったな?」
「だんだんが生き返ったー。わ~いパフェ~♪」
「ふー危ねぇ。あんまりにも深くまで落されたから戻って来るのに苦労したぜ。流石は千冬さんだな。」
「むしろ、あれで死なないお前が怖いわ。」
千冬さんに、地獄の底深くまで落された俺。いやほんと苦労した。
一夏と布仏に手伝ってもらい蓑虫状態を抜け出す。
首をコキコキ鳴らして、時計を確認。
ふむ?
「今って二限目の休み時間で間違いないか? だいぶ復活に時間くったもんだ。なんで誰も起こしてくれないんだ?」
「織斑せんせーが『下手に触るなよ?刺激すると動き出す、放置しとけ』ってー。」
「成程。それなら仕方ないな。」
「納得するのかよ。お前本当にどうしたら死ぬんだ?」
「蘭が花嫁衣装を着て、俺の前で三つ指ついて『お兄。今までお世話になりました』と言ったら、馬骨野郎道連れにして死ぬ。」
「能面のような無表情で言うな!? 近い近い! 怖えええぇぇぇ!!」
「そんで俺だけ戻って来る。」
「死んでねぇじゃねぇか!?」
「いやー、しかし本当に苦労したぜ戻って来るのに。」
「なんで普通に戻って来れんだよ。意味分かんねぇホントに。」
「いや、あっち行ってもな? なんか妙に偉そうな風体で、手にしゃくを持った髭面野郎が、いつも俺見るたびに『く、来るなぁぁ―――!! お前はまだ来るな―!! 近づくなぁ! もう嫌だ! 嫌だ―――!! はうっ!? 胃が…!?』とか叫んでな、門前払いされるんだよ。失礼じゃね? あの髭。」
「お前あっちで何やらかしたんだよっ!? 最高責任者怯えまくってんじゃねぇかよっ!?」
「まぁ、その後はいつも通りに。歴代の『五反田号』を乗り継いで帰って来るんだが、いやー今回は特に深くてなー」
「…歴代達あっちにいるのかよ。」
「失敬な。六代目は健在だ。多目的ホールに今でも置き忘れたままだ。」
「取りに戻れよっ!?」
「行きは電車で帰りは自転車って、おいおい一体何キロあると思ってんだよ?」
「実際その距離走ったお前が言うな!!」
「さっきから何興奮してるんだ一夏。いくら周りが女子ばっかりとはいえもう少し落ち着けよ。」
「お前のせいだろうが!?」
「俺のせい? …待て、一夏。そんなお前こんな場所で。駄目だぞ…?」
「顔赤らめて妙なことほざくなぁぁぁぁぁぁっ!?」
「おりむ~大変だね~。」
大声出してはしたない奴だな。ほら見ろ、女の子たちが怯えまくってんじゃねぇか。
いや、何人かは俺の発言も元をとろうとガン見してる。うむ、素晴らしき腐女子ソウル。頑張れ。
しかし、授業を二時間も逃すとはこれは痛いな。ISに関して全く知識がないからなー。免許に響きそうだ。
お、そうだ授業といえば。
「ところで話しは変わるが一夏? ひとついいか?」
「はーっはーっ!! 今度は何だよっ!?」
「あの、入学前に貰う参考書って持ってるか? ちょいとミスって無くしちまってよ。できたら貸してほしいんだが。駄目か?」
「え、参考書? …あーいや、持ってたことは持ってたんだが。」
「おりむ~、参考書を古い電話帳と間違えて捨てちゃったんだよー? さっき、それで織斑せんせーに怒られてた~。」
「はぁ捨てた? …馬鹿かお前?」
「…お前に馬鹿といわれる程ムカつくことはねぇなぁ…!?」
「マジ使えねー。」
「よーし、表でろや弾。久しぶりに拳で語ろうぜ?」
「だんだんはどうして無くしたの~?」
「そうだ! 俺に何か言える立場じゃねぇぞ弾!」
「あー俺のか。俺のは――――」
「「俺のは(~)?」」
「食われた。」
「ヤギでも飼ってんのかお前は!?」
「いや、本当にうまそうに食うから止めるタイミングを外して。ははは。」
「だんだんの家ってぼくじょー?」
「『五反田食堂』って近所で評判の飯屋さ。暇なら足を運んでくれ。サービスするぜ!」
「わ~! いくー!」
「ま、宣伝は置いといて。いや本当に美味そうに食ってたな――――」
「おい、マジで食ったのか?」
「―――――― 一郎の奴。」
「…おい、それヤギだよな?」
「一枚一枚千切って、そりゃもう美味そうに―――。」
「おい、そいつヤギだよな!?」
「お代はいらないって言ったんだが、律儀に支払いを―――」
「人か!? 人なのか!? 一郎って誰だよ!? お前以上の変人がいるのか!?」
「バカ言うな!? 俺が認める数少ない紳士だぞ!? 謝れこの野郎!?」
「化け物って言うんだよそれは―――――!!」
おのれ何と失礼なこと言うんだこいつは!?
一郎ほど日本紳士の心を理解している奴はいないというのに! いくら親友でも許せん!
一夏とお互い胸倉を掴み合い言い合いを始める。
『変人!!』『鈍感野郎!!』『変態!!』『フラグ乱立馬鹿!!』『今世紀最大汚点!!』『顔だけ野郎!!』『この害悪!!』『無自覚女垂らし!!』『シスコン!!』『それは認める』『千冬姉に迷惑かけるな!!』『蘭に期待させる行動とるな!!』『意味分かんねぇ事言うな!』『蘭可愛い!超可愛い!』『千冬姉の方が美人だ!』『蘭の方がピチピチだ!』『千冬姉方が格好いい!!』
――― と、ギャンギャン言い合う!おのれ!譲らんぞ!?
家の姉、妹が一番対決がヒートアップしていく中、女子達はあきれたように『どこか別の場所でやれ』みたいな視線を向けて来る。
俺達に挟まれた本音ちゃんが『あうあうあああああ~!?』とオロオロする姿に密かに萌えつつ一夏と論戦を繰り広げていると――――。
「―――― ちょっと、よろしくて?」
――――――金髪少女が空気を読まずに話し掛けてきた。
ピタッと、一夏と同時に停止し少女の方へ顔を向ける。
腕を組んで、やや釣り目の青い瞳をした美少女だ。ロールがかった髪と上流階級であると、口にせずとも理解できる雰囲気を放っている。
おう? 凄い美人だが誰だこの子?
うーむ、声かけてきたのはいいんだが。いかにも「女尊男卑」社会で育った感じがひしひしする。
ふむ。俺は別段構わんのだが、一夏がどう出るか分からん。
世界全ての女性の味方である俺だが、あんまり『力』を振りかざす女性を見たくはない。愚かな男と同じ道をたどる事だけはして欲しくないからねー。
強く、気高く、美しく空を舞ってほしい――――。
それが俺の願いです。
まぁとりあえずは――――――――。
「「――――――――――後にしてくれ!!」」
一夏とユニゾンしました♪
【一夏SIDE】
「な、なんですってぇ!?」
弾の馬鹿と口喧嘩し、自分でも何言ってるか分らない俺は勢いに任せ答え。
その言葉がお気に召さなかった金髪の女の子は、顔を怒りで赤く染めた。
「この私が声をかけて差し上げたというのになんですの!? その態度は!?」
「今取り込み中なんだよ! 見て分かんないのか!?」
「その通りだお嬢さん!! アポ取ったのか!? ちなみにどこぞの伝説のレスラーの使う『アポ~』じゃないぞ!?」
おいこらアポってなんだ。またこいつは意味不明な事を!? いま必要ないだろそんな説明はっ!
「なんですの貴方達!? これだから下々の男というものは――――!!?」
あー、なんか一人で喚き始めたぞ。
憤慨する目の前の女子を見つつ、面倒なことになる予感を感じた俺は弾の襟を掴んでいる手の力を抜き、弾と視線を合わせる。
すると、あいつも俺の襟から手を離し俺に視線を返してきた。
―――― 一時休戦しないか?
―――― あいよー。
中学時代から培ってきたやり取りに、内心苦笑し、俺は弾と共に目の前の事をまず片付ける事にした。
まったく、ふざけた言動さえなけりゃいい奴なんだけどなぁ。
「あー? で、何にか用件か?」
「まぁ!? なんですのその言葉は!?私を散々蔑にしておいて謝罪の一つもございませんの!?」
「サーセン。」
「なんですのそれはっ!?」
「え? 謝ったんだが? もしかして通じてない? 日本では凄く流通している謝罪の言葉なんだが?」
本当、何でこいつは毎度毎度ナチュラルに大ボラ吹けるんだ?
「そ、そう、なんですの?」
「いや、嘘だからな? こいつの事は流してくれ。」
「なっ!? 嘘を吐くなんてどういうことですの!? 最低ですわ!!」
「ホント最低だなお前。」
「お前に言ってんだよ!? アホか!!」
「へい! ところでお嬢さん! 貴女はお名前は?」
「おいこら!? 無視すんな!?」
こいつは本当に人のことお構いなしだな!?
ああ、マジで千冬姉のストレスが心配だ。マッサージでもケアが追いつかないとか、どんだけだよ!?
「私を知らないっ!? セシリア・オルコットを!? イギリスの代表候補生にして入試首席のこの私を!?」
「乳歯がどうした? 俺は全部永久歯だ。」
「乳歯ではありませんわ! 入試です!!」
「おい弾、とぼけたこというなよ。初心者にお前の扱いは酷なんだぞ?」
「…ごめん、実は一本だけ差し歯です。」
「「どうでもいい(です)わ!?」」
「あ、ところで一ついいかな? 麗しいお嬢さん?」
「ふん! 今頃取り繕っても無駄ですわ! ま、でも私はやさ「代表候補生とはなんぞや?」まだ私が喋っている途中でしてよっ!?」
「あ、それは俺も気になる。代表候補生って何?」
がたたっ!!
と、俺達のやり取りを聞き耳していたクラスの女子数名がズッコケた。
パァンッ!!
ついでに弾が、何処からか取り出したクラッカーを鳴らした。
「なんでクラッカー鳴らしてんだお前っ!? というかどっから出した!?」
「いや、ズッコケたレディ達にナイスリアクションって意味で景気づけに。」
「お前はホントに、どうでもいい事に全力投球するなっ!?」
「紳士だもん。」
「もう喋るな。お前もう喋るな!」
「そんなに俺が他の女の子と会話するのが嫌なのか? 全く独占欲が強いんだから。」
「だぁぁぁぁっ!! 誰かこいつ何とかしてくれ!!」
「だんだん~? 静かにしよーよー。」
「…【ズビシ!】」(サムズアップ)
「てめっ!?」
ム・カ・つ・くぅぅぅぅっ!?
お、落ち着け俺。冷静になれ、今この場でこいつに対処できるのは俺だけだ。そうだ、突っ込むから図に乗るんだ!
こいつはもう無視しよう。うん我ながらいい考えだ。
「あ、ああ、貴方達本気でおっしゃっていますの!?」
「え? ああ、知らん。」
「(書き書き)【こいつホント使えねー】」←カンぺ。
「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら?常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら」
「(書き書き)【こいつマジ使えねー】」
「…で、代表候補って?」
「国家代表IS操縦者の、候補生として選出されるエリートの事ですわ。…あなた単語から想像したら分るでしょう?」
「(書き書き)【あったまワルーイ♪】」
「…そう言われればそうだ。」
「そう! エリートなのですわ!」
「(書き書き)【ザワ…ザワ…!】」
「…。」
「ほ、本来なら私のような選ばれた人間とは、クラスを同じくするだけでも奇跡、幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」
「(書き書き)【ピロリン♪一夏はまた一つ利口になりました。】」
「そそそそうかっ! そそそれは、ら、ラッキーだ…っ!!」
「ば、ばば馬鹿にしていますのっ!?」
「(書き書き)【ばーか】」
「――――――っ!!―――――っ!!(ギリッ!!)」
「…あ、あの? む。無理は身体に悪いと思いますわ私…?」
「――――――っだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! お前は黙ってても鬱陶しいな!?」
「(書き書き)【喋っていい?】」
「むしろ喋っていた方が幾分かましだお前は!?」
「だろ?」
「お前…っ!?」
「というか貴方何ですのさっきから!? 邪魔でしてよ!?」
「邪魔してるからなー? 喧嘩いくない。」
「「あれで止めてるつもりだったのか(でしたの)!?」」
こいつだけはマジで意味分からん!?
あああもう、くそぅ!! こいつに対抗できる奴なんて束さんくらいじゃないか!?
「まぁ、とにかく仲良くしようぜ! 俺達はISの操縦に関しちゃド素人だからなー。野郎でIS動かせたってだけだし。ならこのセシリーちゃんに色々教えてもらえりゃ恩の字じゃね?」
「そりゃあ。まぁそうだけどよ。」
「ふん! 男がISを動かせるからどんなものかと思ってみれば。拍子抜けですわ。というか馴れ馴れしくセシリーって呼ばないで頂けるかしら!? なんですのその呼び方は!?」
「え? 可愛いじゃん? 駄目?」
「駄目ですわ!!」
「…俺達に何かを期待されてもな?」
「ふん! まぁでも? 私は優秀ですから、貴方達のような人間にも優しくしてあげますわよ。泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ?なんせわた――――。」
「あ! 馬鹿そんなこと言ったら!?」
「はい?」
「――――――教えてぐだじゃい…っ!!(ボロボロ)」
「ひぃぃぃっ!? 近い! 近いですっ!? というか本気で泣いて―――って怖い!! 怖いですわぁぁぁっ!?」
「あー、言わんこっちゃない。」
「だんだんー、泣かないでー? はーいチ―ン。」
「ズビズバボッボ!! ふー! すっきりしたぜ。(ケロッ)」
「にゃー!? 汚いー!?」
「何なんですのこの方はーっ!?」
弾に下手なことは言えないぞ。全部実行に移す奴だからな?
「信じられませんわ!! こんな方と一緒のクラスだなんて!? 私にこのような苦行を一年も耐えろとおっしゃいますの!? この私に! 入試試験で唯一教官を倒したエリート中のエリートであるこの私に!?」
「俺は中学以来からの付き合いなんだがな。今だに慣れねぇよ。」
「ふむ? 入試で教官を倒したねー。…あり? 確か一夏、お前も倒したんじゃなかったっけ?」
「…は?」
「ん?ああ、俺も倒したぞ。いやあれは倒したって言えるのか?」
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「「女子ではってオチじゃないのか?」」
「おー! 息ぴったりー。おりむーとだんだんは仲良いねー?」
「ただ最近。俺、一夏からの想いが少し重くてなぁ。」
「黙れこの野郎。」
「…。」
「カンぺ持ちだすな!?」
「あなた! あなたも教官を倒したっていうの!?」
「へ? ああ、うん、まぁ。たぶん。」
「たぶん!? たぶんってどういう意味かしら!?」
「どう説明したらいいのか…うーん?」
「実際に見てみりゃいいじゃない♪」
「は? 何言ってんだ弾? 一体どうやって?」
「ふむ、では俺が一肌脱ごう!!」
「「は?」」
そう言って弾は自分の服に手を掛けて――――って、ちょっと待て!? お前文字通り脱ぐ気か!?
周りの女子達もギョッとした様子で見て――――ってなんで誰も反らさない!?
ちょ! おま――――!?
制止しようとする俺を無視して、弾がバッと制服を取り去り――――。
その下から、『五反田食堂』で働く弾の前掛け姿が現れた。
「――――っお前下に着込んでたのかよ!?」
「当然だ。料理人たる者。いつ何どきでも調理ができる状態でなくてはならん。常識だ。」
「…ああそうかよ。でも、今その姿になる必要性が全く分らんのだが?」
「おいおい一夏。良く見ろよ! いつもと違うだろ?」
「は? 別段いつも通りのって、うん?」
いつも見慣れていると姿だと思っていた俺だけど。よく見ると、前掛けが明らかに変わっている。
碧と黒をで統一され。真中にやたら達筆に【七代目五反田号見参!!】と書いて―――――って!?
「な『七代目五反田号』だってぇぇぇぇ!? これってお前のISなのか!?」
「その通り!! これが俺の相棒『七代目五反田号』の待機状態! 紳士の前掛けだ!」
「…いや紳士いらんだろ?」
「ちなみにこの前掛けだが。俺の心情に応じて真中の文字が変わる!! 目で楽しませるという粋な作り!さすが俺の相棒、分ってる!!」
「なんじゃそりゃってホントに変わった!! 【妹魂】…お前何考えてんだ?」
「蘭のこと。あいつ泣いてないかなー? 俺が居なくて。」
「むしろホっとしてそうだ。」
「な、なぁっ!? あ、貴方それは!? まさか専用機ですの!?」
「いや出前機。」
「で、出前機ぃ…?」
「まぁ、それはともかくと。―――『七代目五反田号』。レシピ展開。オーダー【一夏、入試試験】一丁!」
弾が、客の注文を投げかける感じで声を上げると、前掛けの文字が【毎度あり!】と瞬時に変わる。
お、何気におもしろいなこれ。
そのまま数秒経って、また文字が変わる。
【へいお待ち!】
「よっしゃ!『七代目五反田号』展開!」
パッと現れたのは、店でよく見掛けるメニュー表。
そこに映っていたのは――――。
「―――これって俺の入試試験の時の映像か? いつ撮ったんだお前?」
「ん? ああ、あん時俺は見学してたろ? その時ちょっと『七代目五反田号』の機能調べてたら『記録』ってのがあって試しにやってみた。」
「…お前、千冬姉が知ったらまた怒りそうなことを。」
「まぁまぁ、ちなみに後、四つの機能がある。」
「…どんな?」
「焼く、切る、叩く、貯蔵。」
「その前掛け状態で出来んのかよ!?」
「いや俺もびっくりだ。ちなみに『七代目五反田号』には『弾特製特別親愛メニュー』やら『五反田食堂秘伝調味料』など、俺の持つ技術と知識が全部詰め込んである。まさに俺の分身だな。」
「ほー? そりゃすげぇ。」
「だろ? って、ほらほら始まるぞ。飴いる子―?」
「はーい!」
「ほいよ。」
「えへへ~、うまうま♪」
何してんだお前。紙芝居かよ。
展開されている画面に、俺達だけじゃなくクラスの女子達も目を向けている。
あ、箒の奴もチラ見してる。堂々と見ればいいのに
突っ込む山田先生。 かわす俺。 壁にめり込み動かなくなる山田先生。
「「「「「「……。」」」」」」
なんともいえない空気が蔓延した。
「…理解したか?」
「え、ええまぁ。確かに微妙ですわ。」
「わー、ほんとに微妙だ~。」
「でもそこが萌えるな。うむ。」
うんうん頷く馬鹿は無視する。
おいどうするんだこの空気、こういう時こそ何とかしろお前は。
キ―ン・コ―ン・カ―ン・コ―ン♪
お、三限目開始のチャイムだ。助かったぜ!
ぞろぞろと全員が自分の席へ戻っていく。弾の奴も、一瞬で制服姿へ早変わりし席に着いた。お前は何処の手品師だ。
ガラガラ―――。
「全員席に付いているな?では授業を始める。」
千冬姉が入って来て、その後にやって来た山田先生。その山田先生に、皆からの生温かい視線が集中する。無理も無い。
当の本人も、その視線に「?」と困惑顔。
「…。」
「へいお待ち!」
「…チッ!!」
弾の復活した姿を見た千冬姉が、盛大に舌打ちしたのを皮切りに、授業が開始される。
ちなみに、千冬姉がなにげに胃に手を当てた所を、俺はしっかりと目撃した。
千冬姉、頑張れ!俺もフォローするから!
後書き
セシリアさん登場です。そして『七代目五反田号』の待機状態は前掛けとなりました。さて次回、セシリア宣戦布告に部屋割りです。弾の同居人は誰にしましょうか?悩みどころです。