注意・時は少しだけ未来のお話です。本編にまだ出てきてないキャラが普通にいて、問題も解決後となっていますのでご了承ください。それでも構わないという方はどうぞお楽しみくださいませ。
【 時間軸不定 IS学園弾の寮部屋兼『五反田食堂IS学園支店』 】
「ねー? あんた達ってさーサンタクロースを何歳まで信じてた?」
「何だよ急に?」
「あーそう言えばもうすぐクリスマスだもんね」
「私は随分と幼い頃までだったな。確か小学校に上がるか上がらないか位の時までだったぞ」
「私は確か小学校の低学年までは信じていましたわ」
スタスタスタ
「へいお待ちだ『オカン特製あ~ん♪掛けうどん』だ。残す事は許さん全部食べきれ」
「あ、それ私~♪ ありがとうラウラウー。わ~あったか~♪」
「あれ? 今日はラウラだったのか」
「そうだよー。今日はオフだから私はお客さんー」
「今日のシフトは私だ。嫁のくせにオカンを手伝わないとはどういう事だ。嫁姑問題になるぞ」
「なる訳ないだろうがっ!?」
「あっ! そうだラウラ? ラウラってサンタクロースって何歳まで信じてた?」
「三田九郎……? 誰だそれは?」
「あー……あんたの場合存在そのものを知らない訳ね。」
「サンタクロースってい言うのはねラウラ? クリスマスの夜にプレゼントを持ってくる赤い帽子と服を着た白髪白髭のお爺さんで、眠っている子供達の家にやって来ては、子共達の枕元に背負った白い大きな袋から出したプレゼントを置いて行ってくれる優しいお爺さんの事だよ」
「む? 何だその奇抜な服装の老人は? それにそれは不法侵入ではないか」
「な、何て夢のない事を言うのだこいつは……」
「えーとなんと説明すればよろしいのかしら……?」
「あーそうじゃなくて、子供達の喜ぶ姿が大好きなんだよそのサンタクロースってお爺さんは。決して泥棒とかそんな事じゃなくて、ただプレゼントを貰って喜ぶ子供の姿を見たいだけなんだよ」
「物好きな奴だな」
「まったくこいつは……そんな事言ってると、あんたの所にプレゼントを置いて行ってくれないわよサンタは?」
「ふん! そもそも眠っている私に察知されずそんな芸当ができるとは思えん。そんな事が可能なのは織斑教官か我が隊の司令官ぐらいのものだからな」
「「「「……はぁ」」」」」
「うまうま♪」
スタスタスタスタスタ。
「お待たせしました『弾特製愛の気持ち(キムチ)鍋』『弾特製スぺシック炒飯』です」
「後は『業火野菜炒め』が二つに『弾特製かもオムレツ』……お待ちどう様」
「あ、どうも虚さんに簪。えーと『業火野菜炒め』は俺と箒で、『弾特製かもオムレツ』はセシリアで『弾特製スぺシック炒飯』は鈴。そして『弾特製愛の気持ち(キムチ)鍋』はシャルです」
「はい。熱いので気を付けて」
「……どうぞ」
「「「「ありがとう(ございます)」」」」
「お姉ちゃんとかんちゃんも今日は入ってたんだー」
「まぁね。今日は生徒会の仕事も無いから、こんな日ぐらいは」
「……私は今日シフトだから」
「そっかー。あ、そうだ! かんちゃんってサンタクロースどう思うー?」
「え……?」
「何の話をしてるのかと思えば……もうすぐクリスマスだったわね」
「それで簪はサンタってどう思う?」
「……サンタさんはいるよ?」
(な!? 簪は今でも信じてるのか……こ、これは意外だ)
(ど、どうしましょう? まさか今でも信じてる方がいるとは予想外ですわ)
(……簪ちゃん可愛いなぁ)
「おお~♪ かんちゃん可愛いい~! ハグ~♪」
「え……? な、何本音? あ、こぼれるから止めて……!」
スタスタ
―― シュバッ!
「へいお待ち! 『五反田食堂IS学園支店』のボス! 五反田 弾ですっ! おーなんだ勢揃いだな?」
「そしてそのNO1看板娘! 更識 楯無ちゃんよ! は~い♪」
【ついでに前掛けアイドルの自分もお忘れなく】
「弾に楯無さん! 厨房はいいのか?」
「おうよ! 今は落ち着いたとこだから問題なし! んで? みんなお揃いで何話しとんのよ?」
「あ、そうだ二人ともサンタクロース信じてる?」
「おおう?」
「サンタ? サンタなんて居る訳――」
「……(しょんぼり)」
「―― 無い筈ないわね。いるわ必ず! それはもう世界中に!」
「……お嬢様……最近特に簪お嬢様に甘くなりましたね」
【流石相棒と二分する妹魂ですね】
「オカンはそのサンタとやらを知っているのか?」
「ああ、還暦彷彿させる服着こんで、幼い子供のいる部屋に忍び込み子供の小さい靴下の中にプレゼント突っ込んでは、靴下のゴムを伸ばしプレゼント箱をひしゃげる事に喜びを感じる特殊思考を持った爺の事だろう? 知ってる」
「「「「色々最悪な認識をしてるっ!?」」」」
「だ、弾くん? ……その認識はどうかと……」
「だんだんは何かサンタさんに恨みでもあるのかなー?」
「……弾は……信じてないの……?」
「ちょっとダーリン! 信じてないかっらってその言い方は無いんじゃないかしら!? サンタさんは居るのよ!」
「ああその通りだ。驚いた事に奴は確かに存在している……!」
【衝撃事実ですね】
「「「「その言い草で信じている(のかよ/の/んですの)!?」」」」
「そうか……オカンが言うならそいつは確かに実在するのだな。一体どれほどの訓練を受けた精鋭なのだろか」
「違うよ!? 色々違う認識だよラウラ!? だ、弾! ラウラに変な事吹きこまないでよっ!」
「楽しいね♪」
「ワザとか!? あんたワザと言ってんのか!?」
「いやー実際いるぜその爺? 俺一回だけ会ったことあるからな」
「……ほ、本当っ!?(キラキラ)」
「おう勿論だかんちゃん! 確かまだ俺が小学校一年生の時だったな」
「……こいつが言うと頭ごなし否定できん所が怖いな?」
「い、一体どういった経緯なのでしょうか?」
「ダーリン。その時の事話してくれないかしら? 簪ちゃんが凄い興味持ってるみたいだし」
「私も聞きたいな~だんだんの小さい頃の話ー」
「弾くんの小さい頃の話ですか……興味ありますね」
「僕も聞きたいな。なんだか面白そうだし」
「オカンの昔話か。私も是非聞きたい」
「……なぁ鈴? 俺何だか色々読めてきたんだけど……」
「……やっぱりあんたも? あたしもなのよね……」
「いいぜ? あれはその年のクリスマスイヴの夜の事でなぁ……実は家の可愛い妹の蘭が、その爺宛てに欲しいプレゼントを書いた手紙を幼稚園から持って帰って来たらしいんだが」
「む? 私も幼稚園の頃にそんな思い出があるな」
「可愛らしい行いですわね」
「ここで問題発生してな? 蘭の奴、どうやらその欲しいプレゼントを書いた手紙を持って帰って来る途中で無くしちまったみたいなんだ。あん時は大変だったぜ? 蘭が『これじゃサンタさんにプレゼント貰えない~!』ってわんわん大泣きしちゃってよ」
「あらららら……それは大変だったわねー」
「……可哀想」
「弾の妹さん可愛いなぁ♪」
「それでその後どうしたのかしら?」
「その後なんとか宥めすかしたんだが……そしたら蘭の奴、その爺に会って直接お願いするって言い出したんだ。名付けて『サンタさんにお願いしよう夜更かし大作戦』! 俺も蘭にお願いされて付き合う事にしたんだ」
「おー♪ だんだん優し~」
「うむ。それでこそオカンだ」
「うふふふ微笑ましい行いですわね」
「……何故だ嫌な予感が?」
「あ、箒いらっしゃい」
「……弾が一緒ってのが激しく嫌な予感がするよな」
「そしてその夜、蘭の部屋で『サンタさんにお願いしよう夜更かし大作戦』が決行されたんだが――」
【回想入りまーす】
~ 回想 ~
『……おーい蘭? 俺が起きてるからお前は寝てても良いんだぞ?』
『……やらぁ……サンタしゃん……会うんだもん……』
『さっきからコックリコックリ首が船漕いでるのは何故かね? もう寝なさいな』
『……やぁ……』
『くっ! なんて可愛い拒否の仕方だ……! ええいおのれサンタの爺めっ! 蘭にこんなに待ち望まれてるなんて何て羨ましく妬ましい野郎だ……!?』
『……サンタしゃん……会う……』
『ぐぎぎぎっ! 畜生腹立つ! 俺だってこんなに蘭に想われたい! もう寝るんだ蘭! そんな健気に待つ必要なんてないじゃないか!?』
『……やらぁ……』
『俺とその爺のどっちが大切なんだっ!?』
『……お兄……』
『――っ!? わが生涯に一片の悔いなしっ!! ぶはっ!(鼻血吹いて気絶)』
『……むにゅむにゅ……(コテンと弾の横で夢の中へ)』
―― それから数十分後
『―― っ母さんそれ捨てないでって言ったじゃん!?(ガバッ!)』
『……っ!?(ビクゥッ!)』
『っておろ? おおう何だ夢か、いやー驚いた』
『……すぅ……すぅ……』
『おおう? 横を向けば天使の寝顔とは何て目覚めのいい。結局寝ちまったのか蘭は……まぁしょうがないか』
『……(ドキドキ)』
『さてと……可愛い妹の為だ。俺が代わりに起きておいて――』
『……(プレゼントを持った赤い服着た人物)』
『……(それを見て無表情になる兄)』
『……っ!?(能面の様な表情の弾にビビる赤い服着た人物)』
『……(そいつが可愛い妹のすぐ傍まで接近している事に気付く兄)』
『『…………』』
『や、やぁ! 今晩は! 私は良い子の元にやって来るサンタ『ふざけてんのか?』――って超ドライ!? ま、待て俺は――!?』
『―― ってめえええええええええええええっ! 俺の可愛い妹の部屋に忍び込んで何するつもりだったこの変態野ろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?』
『ち、違う! 俺は蘭にプレゼン――』
『蘭の名前まで調べ上げてんのか貴様あああああああああああっ!? ぶち殺したらあああああああああああああああっ!?』
『まっ待て弾!? 俺だ! お前達のお父さ――っ!?』
『死ねええええええええええええええええええええええっ!!』
『何処にあったその金属バッ――ぎゃあああああああああああああああああああっ!!』
―― その夜、駄突音が響き渡った。
~ 回想終了 ~
「―― という事があってな? あん時程蘭の傍に居てやって良かったと思った日は無かったぜ……」
【流石相棒ですね。妹君の危機を事前に察知するとは感服します】
「「「「―― っなんて事をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」」」」
「……弾のお父さんだったんだ……」
「大丈夫よ簪ちゃん。サンタさんは必ずいるから落ち込まなくてもいいのよ?」
「い、いえ突っ込み所がおかしいですよお嬢様方?」
「……やっぱり二人とも姉妹だねー」
「流石オカンだ。まだ未発達の肉体で自分の何倍もの大きさの相手を撃退するとは」
「そうじゃないでしょう!? お父さんになんて事するの弾っ!? プレゼント持ってきた上にサンタクロースの格好までしてくれたのに!?」
「え? 親父なんてさっきの話の中で出てきてないよ? 何言ってんのシャロさん?」
「まだ気付いてないのっ!?」
「……なんだかもう色々と台無しですわね……はぁ」
「……やはりこう言う話だったか」
「……弾のお父さん、昔から酷い目にあってんのね……」
「……俺、今度何か差し入れしてあげよう」
「で、次の日の朝冷静になって考えたらそいつがサンタだったんじゃないかって事に気付いてな?」
「気付こうよ!? 最初で気付こうよそこはっ!?」
「いや暗かったし?」
「うわあああああぁぁぁぁっ! もうっ! 本当に弾といい爺といい紳士ってこんな人ばっかりだよ!」
「苦労してんのねあんた……」
「爺だって去年のクリスマスプレゼントに『シャルロットお嬢様? 油田と島どちらがお好みで?』なんて事普通に聞いて来るんだよ!? どっちもいらないって言ったら『ああそうですか。では両方で……』とか言って本当に油田の権利書と買った島の写真を手渡して来たんだよ!?」
「「「「それはそれで色々凄い(な/ですわ)っ!?」」」」
「うわああああん! いらないって言ったのにいいいっ! 『シャルロッ島』ってなんなのさ爺の馬鹿あああああああああああああああっ!!」
「さ、流石『仏国の賢人』と呼ばれる方ですわ……やる事が常軌を逸脱しています」
「会った事あんのかいアンタ!?」
「社交パーティの時に挨拶程度ですが……」
「『仏国の賢人』……? そういえば我が隊の司令官とも交流があると聞いた事があるな?」
「いやもういい……頭痛くなりそうだから話さなくいいラウラ……」
「……そう思うのも無理はない」
「それでその後蘭に『お兄の馬鹿あああっ! なんで起こしてくれなかったのー!』って泣きながら怒られて……マジで悪い事したぜ蘭に」
「蘭にかいっ!? というかその状況で眠り続けてた蘭も凄いわねっ!? やっぱ兄妹だわアンタ等!」
「けどその時母さんがやって来て『サンタさんから預かっておいたわ』って言って蘭にプレゼントを持ってきてくれたんだよ。……あの爺……あそこまでやったのにまだ動けたとは……しかも今度は母さんの元に行っていたとは……余程死にたいと見える……まぁ我が『五反田食堂』最強の爺ちゃんがいるから大丈夫だったろうけど」
「お前もう何か色々最悪だな」
「生きてる弾のお父上もある意味凄いな……」
「……それで結局プレゼントは何だったの……?」
「そうそう。ダーリンの妹さんは一体何をサンタさんにお願いしていたの?」
「ん? ああ蘭へのプレゼント中身は『ヘアバンド』だったよ」
「ヘアバンド……ですか?」
「それってだんだんが頭に巻いてるのと一緒の~?」
「おう! 色違いのお揃いだ! しかもどうやらそれが蘭が欲しがっていた物だったみたいでな~? 開けた瞬間、大喜びだったぜ蘭の奴『サンタさん凄いっ!』ってなー。けどその後の、蘭がヘアバンド巻いて『お兄とお揃い~♪』って俺の元に小走りで近づいて来た姿がそりゃもう可愛くて可愛くて……!!」
「……良かったね弾♪」
「いいなー私も簪ちゃんとお揃いで何か欲しいなー」
「微笑ましいですね」
「だんだん良かったね~♪」
「うむ、中々面白かったぞオカン」
「いい話か……これ?」
「あたしに聞かないでよ……」
「……いい話なんだが納得いかんぞ」
「……ええ本当に、話の後半さえなければ……」
「うぅぅ……今年のクリスマスは普通に過ごせますように……」
―― こうしてIS学園の日常は過ぎていく。この後、来るクリスマスに向けて各々が想いを胸に行動を開始するのだが……それはまた別のお話。
【後書き】
メリークリスマスッ!