<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27655] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:3759d706 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/17 17:13
「ちわ【ちわっす、ご存じ歴代『五反田号』最強の称号を欲しいままにするプリティーキュートな前掛けアイドル、『七代目五反田号』です】――えっ!? まさかの横取り!?」
【ああ、相棒を出し抜くこの感覚……堪んネェなぁ……!】


……どうしよう。相棒をそろそろ本格的に点検に出した方が良い気がしてきた。一体どういう内部構造もといAIしとるんだこいつは。(今更)

悩み多き今日この頃、改めてちわっす! 淑女の有料スマイルに、金を全く惜しまない。五反田 弾ですっ!

『七代目五反田号』に前口上を掠め取られつつも、たった今も目の前の遮断扉を粉砕し、只今アリーナ内を絶賛激走中です!

結構遮断障壁を突破して来たと思うが、まだ先は見えない今日この頃。俺と淑女達との甘美な邂逅を邪魔するとは何と不届き千万な扉共か。あの乱入してきたIS同様に本当邪魔な事この上ない。

けどまぁ、あっちの乱入ISの方は今後の俺達の動き次第じゃ『金の卵』に成りえる分だけ、まだマシかもしれんが。

あちらさんは一夏と鈴にしばらくの間相手を頼んだが……対戦の最中に乱入されたから二人のエネルギー残量がちょっと心許ない、特に一夏。一夏は全力で鈴に臨んでいただろうし、鈴も一夏の予想外の善戦振りに、出し惜しみなんて事頭から抜け落ちていただろうしね?

しかも敵ISの詳細な情報も無い上、相手はアリーナのシールドを破壊する程のスペックを持っている。なーんて奴相手に二機がかりとは言え、エネルギー残量が心許ない状態で何処まで喰らいつけるか疑問だ。

うん。さっさと淑女達の避難を完了させなきゃ不味いなこれは。観客席に取り残された子がいるかもしれんから、観客席に敵の攻撃が向かないよう立ち回ってくれって、さっき通信で二人に頼んだから行動だって制限される筈だしねー。

とにかく何とか持ちこたえてくれよ、お二人さん!

色々と思考を張り巡らせ、通路を激走し続ける。――だがその時、俺の視界一杯に『七代目五反田号』から【注意】を促す空中ディスプレイが表示された。

おう? どうした相棒。 


【相棒。どうやら次の障壁で最後のようです。次の扉の向こうに淑女達がいるかもしれませんので、今まで見たいに破壊するのはNGですよ】
「やっとか! よし任せろ。次は細心の注意を配って派手にブチ壊してやる」
【ふぅ……それにしても今まで壊した障壁だけで一体どの位の損害になるんでしょうかねぇ。そしてアリーナ内部の被害が、あの乱入者よりも相棒の行動によっての被害が大きいというこの事実。千冬様、マヤたん乙ー】
「緊急事態だからしょうがねぇ! しかし流石に此処まで派手にやっちまうと少々やり過ぎな気もしないでもない。……ふむ、後でガムテで修復をしとくか」
【止めなさい相棒。千冬様達が赤い暖簾を潜りに行ってしまいます】
「じゃあ『ア○ン・アルファ』か……あれ量の割に高いんだよなぁ……」
【千冬様、マヤたん。タダ券用意しときます。何もかも忘れて飲みなさい】


内部の修復は後できっちりやるとして(千冬胃痛フラグ)、まぁ今はそれよりも――おっし見えた! あれが最後の障壁だな! 扉の向こうに淑女がいるかもしれない事を考えると、今まで粉砕して来たようなやり方じゃ、吹っ飛んだ瓦礫の破片で淑女の玉のお肌を傷つけかねん。ここは抉じ開ける方が無難だっ!

障壁の前まで接近した俺は、障壁の下に『七代目五反田号』のIS装甲で覆われた両手を食い込ませ上へ抉じ開ける体勢をとる。


「おっしゃああああああああっ行くぜ相棒っ!」
【――おや? これは……相棒ちょっと待ってください】
「抉じ開け――! って何よ相棒、良い所で」


突然の相棒の制止の言葉に、今まさに抉じ開けようとした俺は一端行動を止め憮然とした表情を浮かべて口を開く。あんまり他の事に時間を割いている暇は無いんだが。

だが、そんな俺の様子を見ても相棒は気にした様子も無く、俺の眼前に言葉を並べた。


【いえ、何か違和感を感じまして……】
「違和感……? もしや昨日、相棒に誤って白玉ぜんざい溢しちまった所か?」
【いや其処じゃないです。っていうか本当冗談じゃないですよ。年頃の前掛けのお肌に何て事すんですか】
「えー、何だよお前まだ根に持ってたのかよ。俺ちゃんと謝ったじゃん。今の状況で蒸し返す様な事じゃないだろー、も~っ!」
【話を振ったのは相棒でしょうが。っていうかあの状況じゃ話を打ち切る以外の選択肢なんて無かったじゃないですかっ! 漂白剤とシンナーという究極の選択を迫られたんですよ!? どんな二択ですか!?】
「やれやれ全く贅沢な奴だ……」
【どこがっ!?】
「って言うか相棒。お前が最初から普通に自己修復機能を使ってれば良かっただけの話じゃね? それなのにお前ときたらグチグチと――」
【嫌ですよ。何でそんな事に労力(エネルギー)を使わなきゃならないんですか。面倒臭い】
「お前スゲェ事平然と言うな……」


文句の文字の羅列を並べまくる相棒に適当にあしらう。もう済んだ話なんだからもう良いでしょうに。何気にしつこい所あるなぁ俺の相棒は。

ちなみに漂白剤を用意したのは俺、そしてシンナーを持ってきたのは……何と俺と同室の同居人。萌えの塊のほほんちゃんその人である。

いやしかし、のほほんちゃん……あんなシンナー缶何処にしまってたのよ? 『業務用だよ~♪ 綺麗に落ちるよ~』って君……そりゃ色々と落ちるだろうけどね? 何でそげな危険物持っとるのよ。

ああ、そう言えばのほほんちゃん『IS』の整備科志望って言ってたな。持ってても不思議じゃないのか……? いや、そもそもシンナーなんて『IS』の何に必要なのよ?

普段ぽや~っといてる分、たまに度肝を抜く行動を起こすよなーあの子は、そこがまた魅力だけどね!


「――って!? だから今はそんな事はどうでも良いのよ!! 結局違和感って何なんだよ! 話が脱線しすぎるにも程があるわ!」
【だから話を振ったのは――ああもう良いです。このままじゃ埒が空かないのは確かですし……話を戻します。違和感と言うのは他でもありません。この扉の向こうに淑女達の反応が感じられないんです】
「――何っ!? そぉいっ!!」


相棒の言葉に、俺は瞬時に腕に力を込めて思いっきり遮断扉を上へと持ち上げ抉じ開けた。

鈍い音を響かせながら扉を押し上げて、その先に視線を向けると――そこには相棒の言った通り、閉じ込められている筈であろう淑女達の姿が唯の一人の影も形も見られなかった。

――マジだっ! 誰もいねぇ!?

そんな馬鹿なと驚愕する俺だったが――その時、最悪の考えが頭を過る。……お、おいおいまさか……!


「相棒……こいつぁもしかすると……」
【ええ、考えたくありませんが……最悪の場合、未だ観客席内に閉じ込められている可能性があります】
「相棒っ!!」
【承知っ!】


この場で話をしている時間すら惜しいと悟った俺は、声を張り上げる。

俺の声に、その意味を瞬時に理解してくれた相棒が、クラスターにエネルギーを爆発的な勢いで注ぎ込み始めてくれた。

この先の事を考えると、全速力での移動はエネルギー消費の面で悪手にしかならないが……そんな事言ってる場合じゃねぇっ! 淑女達のピンチに出し惜しみする紳士が何処にいるっ!?

一夏、鈴っ頼むぜ! もう少しの間でいい、敵さんを上手く引きつけておいてくれよっ! 


【――準備完了! 相棒どうぞ!】
「全速全開っ! 飛ばすぜえええええええええぇぇぇ――」


――ピッ!


『――はぁい♪ ダーリンお元気かし――』
「すまないハニー! 後で掛け直すっ!」
【遮断します】


――ブツンッ!

全速力でぶっ飛ばそうとした瞬間に、愛しのハニーから通信が入ったが今は緊急事態だ! 相棒に通信を切ってもらう。

すまないハニー! 淑女の通信には随時応えてやりたいが、今は急いでるんだっ! 後でちゃんとお詫びするから許してねっ!

空中ディスプレイに一瞬映ったハニーは、それはそれは普段通りの軽さで『はぁい♪』と手を振ってくれていた気がする。

……流石ハニー。この緊急時の中でもブレないな。それがハニーの強みだとは思うがもう少し緊迫感を持ってもらいたいと思う今日この頃ですっ!

再び全速力で飛ばす体勢を立て直し、行動に移す。


「――相棒っ!」
【参ります。クラスター全開――】


――ピピッ!


『――ちょ、ちょっとダーリン何で切――!?』
「ハニーっ! 今ちょっと急いでるんだっ!!」
【話なら後にして下さい】


――ブツンッ!

再びハニーから通信が入るが、断腸の思いでそれを切る。

俺も君との会話を楽しみたい所だが、今はその時間すら惜しい所なんだっ! 後で絶対にお詫びするから、その時にどんな責め苦も受け入れるから!

もう一度体勢を立て直し、前方を見据える俺。今度こそ行くぜっ!!


「行くぞっ!」
【では、行きましょう相棒。出力全開――!!】


――ピピピッ!


『――ちょっとダーリン待って!? 私の話を聞――!!』
「緊急事態なんだハニーっ! いくら紳士な俺でも時と場合によっては怒るよっ!?」
【空気読めよっ!】


――ブツンッ!

流石に三度目ともなると、俺も少しキツめな対応を取ってしまった。ごめん! 本当にごめんねハニー! でも俺の今の状況も少しは察してくれないかなっ!? 話なら後でいくらでも聞くから! 

これは後で土下座も視野に入れたお詫びを考えねばならんか……だが、とにかくそれも後回しだ。今は一刻を争うんだ!

そう思いつつ、再三体勢を立て直す。閉じ込められた淑女達の為に、五反田 弾っ! 今こそ風になりま――!!


――ピピピピッ!!!


「…………」
【……チッ】


……こら相棒。気持ちは分かるが舌打ちなんかしちゃ駄目だろう。……あーもー仕方ないなハニーは……。

内心溜息を吐きつつ、俺は若干半眼になりながらも相棒に回線を繋ぐよう指示を出して空中ディスプレイを表示させる。

特有の表示音と共に表示されたディスプレイに視線を向けつつ、俺は口を開く


「……なぁハニー? こんな事言いたくは無いんだが、もう少し状況を理解して――」
『五反田君? 今、大丈夫かしら』
「――っ虚さんじゃあーりませんかっ!?」


視線を向け開いた空中ディスプレイに映っていたのはハニーでは無く、眼鏡美人の虚さんのお姿だった。

てっきりハニーかと思ってたもんだから驚きもひと押し。ふむ? しかしこの状況で虚さんから通信とは……一体何事だ?


「何かトラブルでも?」
【こちらも緊急事態が発生しておりまして、出来れば内容は簡潔にお願いします。もしこちらで対応できそうであれば力になりますが?】
『いえ、少し連絡しなければならない事があるだけですから。……あの、会長? 五反田君、普通に返答を返してくれていますが』
『――なんで虚ちゃんの時だけは普通に出てくれるのよおおおおおっ!? ねぇ何!? 何なのこの差は!? 私だって時と場合くらい考えて通信してるのに、何なのかしらこの仕打ちはっ!? 私と虚ちゃんで何でこうも違う訳っ!?』


すると虚さんの横から割り込む様にしてハニーが現れた。何故かちょっと涙ぐんでいる様子。おおっ虚さんと一緒だったのか。

と言う事はハニーと虚さんの話の内容は一緒だったりすのかね? するとさっきからハニーが俺に通信を入れて来たのは、俺に何か連絡があるからだったのか……いやはやこいつは失敬失敬。

いやだがね? あんな緊張感の無い態度見たら、今現在、正に余裕の無い俺には重要な話だとは思えんかったのよ。


「おお、ハニーも一緒だったのか。……ふぅ、やれやれ……そう言う事なら先に言ってくれよハニー」
『話を切りだす前に即切ってたから先に言うも何もないわよねぇっ!?』
【いえ楯無嬢。緊急時に通信して来て、その瞬間『はぁい♪』なんて事言う人の話が、その場で重要事項であると誰が考えると言うのですか?】
『……確かに少し非常識だと思います』
『な、何よぉ!? ちょっとしたお茶目じゃない! ダーリンだって通信とか電話掛けて時だって『へいっ!』って言うじゃないの!』
【相棒ですから】
『まぁ五反田君ですから』
「いやーはははっ。照れるなぁ♪」
『贔屓だわっ! 贔屓反対っ!!』


俺の事をよく理解してくれている相棒と虚さんの言葉に照れつつも、俺は通信越しに映る虚さんの顔を見つめ、瞬時に表情を引き締める。

さて、虚さんからの緊急連絡事項とはこれ如何に? 時間も割いてられないからおふざけは無しだ。(キリッ!)

俺の表情が切り替わった事に、虚さんは少し目を見張り――ちょっと頬を染めたようだが、あちらも真剣な瞳になる。ふっ……緊急時に魅せる、真剣な紳士の表情は淑女に対してやはり効果は抜群らしい、虚さんの俺に対する好感度アップだぜ! やったね!

それにしても流石は見目麗しい年上お姉さん。その真剣な凛とした表情も最高ですねっ!! 俺の虚さんへの元から高い好感度もアップして天元突破する勢いです! やったね!


「――それで一体何事っすかね?」
『え、ええ。実は五反田君に伝えなければならない事が……会長』
『……まぁ良いわ。それでダーリン? 今、何処に向かおうとしていたのかしら?』
「ああ、実は今、アリーナ内に閉じ込められたままの淑女達の避難を最優先に動いてんだがね? ここで緊急事態発生! 通路内に閉じ込められてるものとばかり思ってたんだが、どうやらまだ客席に閉じ込められてる可能性が出てきた所なんだっ! だから今は俺凄く急いでんのよ!」
『成程ねー? ダーリンらしいと言えばダーリンらしい行動ね。けどその必要は無いわよ』
「――なんですと? それは一体どういう意味?」


ハニーの言葉に思わず疑問符を浮かべ首を傾げる。

そんなの俺の反応を見て、ハニーが茶目っ気タップリの笑顔を浮かべウィンクしてきた。うむ流石ハニーだ可愛い。


『うふふ♪ ダーリン、私達の事を忘れて貰っては困るわねー? 私達はこの『IS学園』の生徒会に所属してるのよ? 私達には『IS学園』の生徒達を護る義務があるの。だから――ね、虚ちゃん』
『はい。五反田君達が他の場所で生徒達の避難に尽力してもらっている間に、私達も別の所から生徒達の避難を率先して行っていたの』
「マジっすか!? と言う事は!!」
『ええ、アリーナ内に残されていた生徒達の避難は完全に完了したわ。観客席にも残されている子はいないわよ? ちゃーんと確認したから間違いないわ』
『はい。五反田君の御蔭で、避難が当初の予測よりも遥かに早く完遂できました。生徒会として、個人としてもお礼を言います。ありがとう五反田君』
『私からも。……ありがとう弾君。生徒会長として、私個人としても貴方に感謝するわ』
「お礼を言うのはこっちの方ですっ! ありがとうハニーに虚さんっ! 流石、頼りになるぜっ!!」


ハニー達から聞かされた内容に、俺はこれでも無いかってくらい歓喜する!

道理で俺が今いる場所に淑女達の姿が見えない筈だ。既に避難が済んでいたからだったんだね。成程納得だっ!

しかし流石ハニー達だ対応が早い! そうだよ、冷静に考えてみたらこの非常事態にハニー達『IS学園生徒会』が動かない筈がない。

のほほんちゃんだって危険を承知してなお、客席まで確認しに行ってくれてたみたいだし……何て頼りになる淑女さん達だっ! どうやら俺もこの状況で少しテンパってたようだ。俺にはハ二ー達『IS学園生徒会』という心強い味方がいた事を忘れていたとは……いやはや面目ない。

だがこれで心配事は無くなった。さらに嬉しい誤算で、これ以上遮断扉を突破するのに余分なエネルギー消費をしなくて済む。【七代目五反田号】のエネルギー残量を確認しても、こっちも想定していたよりも遥かに余裕が残されてある。

これだけあらば、莫大なエネルギー消費を必要とする【食の寝台・まな板領域】も、範囲指定してやれば一回なら使用できるかもしれん……!

さて、ならば俺もそろそろ次のステージへと上がるとしますか。


【では、参りましょうか相棒】
「おう。そろそろ無粋な輩、もとい引き立て役にしかならん奴には御退場願うとしますかね」
『五反田君?』
『あら? もしかしてダーリン。織斑君達の救援に行く気なのから?』
「まぁね? 二人の事考えると、エネルギー残量が残り少ないだろうし」
『……ふーん? でもダーリン。ダーリン一人が救助に向かっても何も変わらないんじゃないかしら? むしろダーリンのIS操縦の腕じゃ、行っても戦力にはならないと思うんだけど』
『……言い方はキツイかもしれないけど、会長の言う通りです。五反田君、貴方のISの起動時間は既に一夏君と比べて大きく下回っている事を忘れないで。今の貴方じゃ二人の助けになる所か、最悪枷にしかならない』


途端に固い声で俺にそう忠告する虚さん。ハニーも笑顔ではあるものの、その瞳は鋭い光を宿している。

あらまぁ、何とも痛い事を言ってくれます。けど、これは俺の事を想ってくれての言葉だ。キツメな発言をするのも、俺を止めようとしてくれてるハニー達の優しさなんだって理解できてる。

確かに今の俺の力じゃ大して役には立たんだろうがね? エネルギー残量が少ないとはいえ、二機のIS相手に互角以上に渡り合う程の力を宿した敵が相手だ。ここ最近、他の事に忙しくて碌に特訓もしてなかった俺じゃ相手にもならんだろう。俺もそこまで自分の力を過信してる訳じゃない。むしろ邪魔にしかならんだろうが……。


――俺達には、きっと一夏達の助けになる物を一つだけ所持してたりするんだよね。


ヘラリと表情を崩した俺は、ディスプレイに映るハニー達に笑い掛けながら言葉を紡ぎだす。


「なーに、別に俺は窮地に駆けつけて、颯爽と敵をやっつける英雄願望なんざ持ち会わせて無いのよん。自分の事ならしっかり理解できてますよ」
『……ふーん? と言う事は、ダーリンには何か考えがあるってわけね?』
「まぁねー。紳士は何時でも隠し玉の一つや二つ持っている物なのだよ!」
【相棒には自分が付いています。お任せを】
『……そう。なら私からはもう何も言わないわ。でも無茶だけはしちゃ駄目よ? ダーリンにはこの先色々と役に立って貰うつもりなんだから♪』
「おおう? それはまた意味深な一言だなハニー」
『はぁ……言っても無駄みたいですね。分かりました。でもくれぐれも気をつけて』
「ありがとうございます虚さん! ――ほんじゃ行くぜ相棒っ!!」
【了解です】
『あっ! ちょっと待ってダーリン。行くのは良いけど、どうやってアリーナ場の中に入る気なの? もしかしてバリアを破壊する気? 言っては何だけど、ちょっと無茶じゃないかしら』
『アリーナ内の通路も、アリーナ場に続く道は遮断されてますし。システムクラックも完了していませんし……』
「……ふむぅ? 問題は其処か」


確かにハニー達の言う通りだ。まずどうやってアリーナ場に入るかが問題だ。

バリアを強行突破するって案も、他に思い付かなきゃ視野に入れてたが……無茶すぎるな。そもそもバリアが破壊出来る程の威力となると『特注コンロ・炎の料理人魂』の『強火』しか無いし。チャージに時間も掛かる上にエネルギーを多く消費する。

最短距離で壁を突破するか? それもエネルギーを多く使う。今まで普通に壊してきたが、唯でさえ固いんだ。折角想定していたエネルギー残量よりも多く残せているんだし、それも微妙。

何処かにアリーナ場へ続く通路でもあれば……流石に都合良く見つけられる訳無いか。

はてさて困ったと首を捻る俺だった――が、その時だった。


【御心配には及びませんよ相棒】
「おおう? 相棒、何か案があるのかね?」
『『?』』


相棒の言葉に、俺だけでなくハニーと虚さんも疑問の表情を浮かべる。そして――。




【――フッ。自分に秘策があります(キュピーン!)】




……はて? 相棒が誰かの台詞を盗った様な気がするのは何故だろね?



【 とあるドイツの最強部隊 SIDE 】



――ガッタアアアンッ!!


『――それは私の台詞だああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?』
『っうきゃあああああっ!?』
『お、お姉様が突然ご乱心ーっ!?』
『いやーっ! 私のプリンがー!?』
『衛生兵っ! 衛生兵ー! お姉様がーっ!?』


「……何事だ……?」(渋い素敵ボイス)
「司令、王手です」
「……何……?」
「王手です」(ドヤぁ)
「…………」
「…………」
「……フッ……投了だ。強くなったな……」
「……いえ、これも司令の教えの賜物です」(照れ笑顔の黒兎)


『私の台詞ううううううううううううううううっ!!』
『お、お姉様落ち着いてー!』
『いきなりどうしたんですかああああ!?』
『ほらほらっ! 隊長の寝顔の生写真ですよ!? 今朝の撮り立てホヤホヤですよ!』
『ちょっと待て。アンタそれどうやって撮ったの!?』
『……プリン……上だけならまだ……!?』


「……賑やかだな……(ボリボリ)」
「司令、よろしければもう一局――あっ王将が……!?」




――遠く離れたドイツの空の下。最強部隊の夜は平和に過ぎて行く。




【 一夏 SIDE 】


「っ!? 一夏危なっ――くぅっ……!!」
「鈴っ!? くそっ!!」


敵の攻撃から俺を護って前に出た鈴がシールドを展開するが、その衝撃に苦悶の表情を浮かべるのを見て、これで何度目か分からない悪態を吐く。

だがそんな俺達の様子をあざ笑う用に、続け様に追い打ちを掛けてくるレーザーから慌てて二人同時に回避行動を取る。

――畜生っ! エネルギーさえ余力があればあんな奴、俺の【零落白夜】でぶった斬ってやるのに……!!

起死回生の一手さえも封じ込まれた今の現状に歯噛みする俺だったが、そこに鈴からの声が耳に届く。


『――ボサッとしてんじゃないわよ一夏っ! 止まったら落されるわよ!? あんたは常に動き回ってなさい!』
「そんな事言われなくても分かってる! けど、あんまり下手に動きまわって客席に当たったら元も子も無いだろうっ! ある程度は受けなきゃ――!」
『だからそれはアタシに任せて、アンタはなるべくあいつから離れなさいって言ってんの! それにアンタ私よりもエネルギーがほとんど残って無い状態でしょ!? そんな状態で攻撃を受け続けたら最悪命に関わるわよ!』
「お、お前だって俺の程じゃ無いにしてもエネルギー少ないだろう!? 鈴だって危険な事には変わりないじゃないか!」
『アタシの【甲龍】はアンタの【白式】程、大喰らいじゃないからまだ余力はあるわよ! って言うか何なのよアンタのIS!? 欠陥機も良いとこじゃない!』
「欠陥機っていうなっ!! その欠陥機相手に苦戦した『代表候補生』は何処のどいつだよ!?  俺の【白式】を馬鹿にすんな!」
『う、うっさい! 大体、一夏がさっさとアタシに負かされないのが悪いのよ! そうすればエネルギーの心配なんてせずに、あんな奴さっさと倒せてたって言うのに!』
「無茶苦茶言うなーっ!?」
『無茶苦茶って言うなら弾だってそうよ! 全く無茶な注文寄こしてくれるわね本当……!』


軽口を交えた言葉の応酬をかわしつつも、その間も敵ISからの攻撃は続いており。俺と鈴は必死でその攻撃を避け、そして時にシールドを展開させては防御に徹する。

さっきまではこちらが優位に敵の行動を牽制した攻撃側に回っていたが、エネルギーが心許ない状態になると途端に攻守は一転し、今度はこっちが相手に翻弄される状態へとなっていた。

お互いにこのやりにくい状況でも、そんな会話をするは今の現状から少し逃避したいって気持ちが一割、お互いの安否を気遣う気持ちが五割、そして互いに鼓舞し合うと言う気持ちが四割って所だろうか。それだけで、今の俺達の状況が切羽詰まったものだと言うのが分って貰えるだろう。

ついでに言えば、何故か俺と鈴が会話をすると僅かばかり相手の動きが止まるって言うのも理由の一つ。こちらを観察するように動きを止めるから、その理由が分らないにしても、それを利用しない手は無い。けど、流石にいつまでも止まってくれる訳じゃないが。


『――そうだ。弾の通信って言えば気になってる事があるんだけど!』
「何だ!?」


再び迫る敵の攻撃を回避しつつも、鈴の言葉に反射的に返事を返す。ていうか結構余裕あるよな俺達って……。


『アンタってば弾の通信入るまで頭に血が上ってたくせに、弾の妙な言葉を聞いた瞬間にウソみたいに治まったわよね!?』
「――あ、ああその事か……いや別に鈴が気にする事じゃないぞ?」
『何を言ってんのよ! あんだけ我を失ってたくせに! 弾のあの『金の卵』って何の事!? 内容から察するとあのISの事よね!? どう言う事よ!』
「い、いや俺も詳しくは……けど、あいつが言うなら恐らく――」


弾が俺達に通信を介して話掛けて来た内容――それはアリーナ内部に残されている学園の生徒達の避難が完了するまで敵を引きつけていて欲しいと言う事だった。

確かに敵の保有する戦闘能力を考えてみれば、観客席のシールドを貫通する恐れがある。だから俺達は学園の生徒達の避難が完了するまで、なるべく敵の攻撃の射線が観客席に向かわないようさっきから行動を徹底して動いていた。

その分動き方に制限が掛かる為、はっきり言って動きにくい事この上ないんだが――それでも俺達はそれを止めようとは思わない。全員の無事が確認されるまでの辛抱だと己を叱咤し、時に回避し、防御しと行動を徹底し続ける。

だがそれよりも俺が一番気になった弾の言葉に含まれていたある言葉だった。

それは――。



『――へい一夏っ!! 気持ちは分かるが落ちつけっ! まだ全部台無しになった訳じゃねぇっ! むしろこの状況は使えるっ! 熱くなり過ぎて、折角飛び込んできてくれた『金の卵』さんを、一時の感情に身を任せブチ壊すなよっ!? 我に秘策ありだっっ!!』



(――アレが『金の卵』って、どう言う意味なんだよっ!?)


『金の卵』……全てを台無しにされたと思って怒りに我を忘れていた俺だったが、その言葉のお蔭で少しだけ冷静さを取り戻す事が出来た。

俺には、未だあのISがそんなモノには到底見えず、唯の舞台を滅茶苦茶にした鉄屑以外のなに物に見えていないけど――弾にとっては、どうやら違うらしい。

もしかしたら、弾の『金の卵』って言葉は本当は俺に理性を取り戻させる為の物で、その場凌ぎの以外の何物でもないんじゃないか……そんな考えがさっきから俺の中に浮かんでは消えて行く。

それは心の奥底では今すぐにでも、あの鉄屑をぶった斬ってやりたいと言う感情から派生した代物だったが、俺はその奥底で蠢く感情を深く呑みこんで必死に抑えつける。

それは一重にあの弾が、そんな安易な考えであんな事を口にする筈がないという確信が、俺の薄暗い感情よりも遥かに勝っているからに他ならないからだ。

こんな状況であいつに何か考えがあるっているなら、それはきっと本当の事だ。あいつは何時だって、ここぞという場面ではいつだって頼りになってくれた。俺の力になってくれていた。

なら、俺がするべき事は簡単だ。ぐちぐち悩むより、感情に身を任せて暴走するよりも――あいつを信じて力の限り突き進むっ! 昔からそうやって、俺達は突っ走って来たんだっ!


「とにかくっ! きっと弾には何か考えがあるんだろ。なら今は、俺達は任された事をやり遂げれば良いって事だ。それでいいだろうっ!?」
「っ! ……ああもうっ! あんたも弾も揃いも揃って……っていうかその弾は何をしてんのよっ!? 通信から結構たつけど、あれから何も音沙汰無しじゃないっ! まだ避難に手間取ってんのあいつ!?」
「……確かにそれは言えてるな。それに、そろそろこっちも限界が近いし、結構ヤバいな」


鈴と並び立つようにして、敵を警戒するように睨みつける。

敵は俺達から少し離れた場所で制止し――まるで俺達の事を観察するかのように不気味な静けさを伴い存在していた。

派手に動けない分こちらが不利な事には変わりがないが、さっきから敵の攻撃が次第に俺達を正確に捉える様になって来た。

動きが制限されてる為、俺達の動きが単調になってしまうのは仕方ないが……どうやら敵は俺達の動きを把握し、的確に読んできはじめている。最初から不利な状況なのは解っていたが、それでも動きを読まれるようになって来ると、状況はさらに厳しくなってくる。

くそ……っ! このままじゃ良い的だ。『白式』だって、後何分動けるか分からなくなって来た所だ。

あちらさんは、ハンデ付きな俺達を考慮してくれる様な相手じゃ無いんだぞ……!? まだか? まだなのか弾っ!?

そんな俺の焦りを見透かしたように、敵のISが再び攻撃の体勢を取った。それを見た瞬間、俺と鈴は即座に身構えて相手の動きに注視し、いつでも動ける体制を取る。

だけど、はたして次の攻撃を凌ぎ切れるかどうかは正直分からない。けど、此処でやられる訳には――


「一夏、来るわよっ!」
「分かってる! 何とか凌ぐぞっ!」
「ったく本当に面倒だったらありゃしないっ! しかも頼んできた張本人はこの場に居ないとか……! あーもーっ!! 弾っ!? アンタ今一体何処で何してんのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!?」


痺れを切らしたらしい鈴の絶叫ともとれる声がアリーナに響いた――その時っ!!





『――此処に居るぞおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォォっ!!!!』





鈴の叫びを打ち消すような音量で、あいつの――待ちに待った声の返答が辺り一面に響き渡った!

まさか返答が返ってくるとは思わなかったらしい鈴は目を白黒させて驚き、敵のISも突然の第三者の声を聞いて、攻撃に移ろうとしたいた体勢から、瞬時に声の発信地点を探すように周囲を見回す。

そんな鈴と敵のISとは裏腹に、俺は口元を笑みを浮かべた。全く……! 遅いんだよお前はっ!


「――なっ!? この声っ!」
「――ははっ! やっと来やがったなっ!」


そして俺も弾の姿を見つける為周囲を見回したその瞬間。アリーナを震わせる轟音と共にあいつは姿を現した――

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!




『――っ御免なさいよおおおおおおおおおおおおっ!?』
【つちーのなーかかーら、こーんにーちはー♪】




――地面から。

――っておいいいいいいいいいいいいいっ!?

驚愕目を見開いた俺と鈴の事など無視するように、アリーナの地面を砕き、その中から跳び上がる様にして姿を現した弾は、既に碧色のIS『七代目五反田号』を身に纏い、何だか無駄に華麗な動作でアリーナに着地する。

そしてビシィッ!! と一指し指を敵ISに付きつけ、言葉を叩きつけ始めた。


「――はっ! 見たか其処のISめがっ!? この俺を差し置いて派手な登場など出来ると思うなよっ!? 貴様が空から来るならばこっちは地底よっ!! 俺を出し抜くには一万とんで二千年早いわっ!? 穴夫婦大好きだっ! もうお前等結婚しちゃえよ!!」
【既に通路が開いていた観客席まで一端戻り、そして観客席の床下に穴を掘り、そしてアリーナの地表下まで掘り進むっ!! 特殊コーティングされた壁を壊すよりも土を掘る方が断然エネルギーの消費は少なく済みますからねー。これぞ我が秘策っ!】


どうやら敵のISがアリーナのシールドを貫通し、空から現れた登場の仕方に変に対抗意識を燃やした弾の、敵ISへの意趣返し込めた上での行動みたいだ……。

お、おお、お前なっ!? そんな事に対抗してんじゃねぇよっ!?

そして言いたいと言ってスッキリしたらしい弾は、そのまま俺と鈴の方向に顔を向け、いつものようにヘラっとした笑みを浮かべた。

――って敵のISが何だかポカーンとして固まってるぞ!? い、いや確かに一体どんな反応返せばいいのか困るのは当然だが……シリアスな雰囲気が台無しになってるぞ!? 何処行ったさっきまでの緊迫感溢れる空気はっ!?


「――ようっ! お二人さん待たせたなっ!」
「「お前(アンタ)は一体何処から出てきてんだよ(のよ)っ!?」」
「…………?」
「『こいつ見て無かったのかな?』みたいな顔で地面の穴指差してんじゃねぇっ!? 何で地面から出て来るなんて登場するんだよ!?」
「驚いた?」
「そりゃ驚くわっ!!」
「…………ッシ!」
「右手握り絞めて小さくガッツポーズ取ってんじゃないわよ!? 何がしたいのよアンタはっ!? もっと普通の登場の仕方があるでしょうがっ!」
「そんな事、教科書に載ってねーよ?」
「載ってる訳ないでしょうがああああああああああっ!?」
「あっと、そうそう一夏。危ないからその穴ちゃんと埋めとけよ?」
「はぁっ!? ちょ、ちょっと待て何で俺がしなきゃならないんだよ!?」
「じゃあお前一体何なら文句言わずにやるんだよっ!?」
「何をちょっとイラッっとしてんだよ!? ちゃんと自分で埋めろよっ! お前の後始末なんて御免だからなっ!」
「……何かお前必死だなぁ(しみじみ)」
「――っだあああああああああぁぁぁぁぁっ!? お前やっぱもう帰れっ! 少しでもお前の事を当てにして待ってた俺が馬鹿だったわっ!!」
「一夏……そんな事は俺が一番良く理解してるよ」(馬鹿な子を見守る優しい瞳)
「――ッ!! ……ッッ!? っな、なぁ鈴? ああああ、あいつ先に殺っちまわないかっ? 残り僅かなエネルギー全部使って、あの馬鹿ぶった斬っちゃ駄目かなぁぁぁああ!?」
「ま、待ちなさい一夏! 気持ちは分かるけど落ち着いて! あんた今凄い顔してるわよ!?」
【はいはーい、お三方共落ち着いてー。状況分かってるー?】


ギャーギャーと喚き合う俺達に向かって、パンパンと手を叩く音を響かせ【七代目五反田号】が仲介する。

ぬぐっ……!? まさかISに仲裁されるとは……! でも確かにその通りだ。今はこんな事してる場合じゃない一端落ち着こう。

それにしても【七代目五反田号】……お前って本当に無駄に小技が多いよな。どんだけ効果音内臓してんだよ……主人同様にこいつもまた変方向に力入れてるな。

それを見た弾が『おっとそうだった!』と一言口にすると、飛び上がり俺と鈴の方まで飛んで来て、俺達に並び立つようにして空中で静止する。

……今こいつ十分俺の間合いに入ってるな……って違う違う、そうじゃないだろう。

あーもういいや……こいつの行動に一々突っ込んでたら話が進まん。とにかく今は目の前の事に集中する事の方が先決だしな。鈴も大きく溜息を吐いて気持ちを入れ替える事にしたようだ。


「ほい到着! いやーしかし待たせたなー二人とも」
「お、お前なぁ……どうしてお前って奴はそう毎度毎度……!」
「はいはい愚痴は後にしなさい。でも本当に遅いわよ弾っ! 御蔭で動き辛いったらありゃしなかったわ。それで? アンタが来たって事は生徒の避難は済んだって事で良い訳?」
「おうバッチリだ! もう観客席を気にする必要はないぜ?」
「あーそうかよ。ならこっちも後ろを気にせず派手に動き回れるって事だな。――丁度良い。さっきまでやられてた分、この憤りも含めて存分に返してやるっ!」
「そう言うのは良いんだけど……一夏、あんた大丈夫な訳?」
【意気込みは良いのは結構ですが一夏殿? 【白式】のエネルギー残量は残り僅かでは?】
「うっ……!? そ、それは……」


その指摘に俺は言い淀む。ハッキリ言って【白式】に残されたエネルギーはほとんどないと言っていい。後数分動ける程度しか残っていない。

だけど此処まで来て、後の事を弾と鈴の二人に任せるだけなんてのは許容できない。俺はまだあのISに何もやり返しちゃいないんだ……!!

俺の表情を見て、俺の内心を悟ったのか、弾が『ふむ?』と呟いて鈴に視線を向ける。


「鈴。お前は後どん位エネルギーは残ってる?」
「アタシは全体の三分の一程度ね。でもこれだけあればまだ十分戦えるわよ」
「一夏は?」
「俺は……十分の一あるか無いか位だ」
「なーる程……って事は7:3で良いか……」
【そうですね。対比的にそれが妥当でしょう】
「は?」
「何の事だ?」
「――なぁに、安心しろ一夏! 此処まで来てお前だけ仲間外れになんかにゃしねぇよっ!! 現時点で戦力的にはお前の方が俺よりも上だからな? 最後まで付き合って貰うぜぃ! 相棒っ!」
【武装展開! 【業火・鉄板鍋】っ!!】


弾の叫びに呼応し、七代目五反田号が瞬時に『業火・鉄板鍋』を粒子展開させ具現する。

そしてすぐさま、弾は【業火・鉄板鍋】を掴み取ると、高々と頭上に持ち上げた。

い、一体何をする気なんだ!? 困惑の中俺は弾に注目し――それを見た。


「行くぜ! 今こそ『業火・鉄板鍋』のもう一つの特性を魅せる時。これぞ勝利への隠し玉っ!! 相っぼおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!」
【――【業火・鉄板鍋】! エネルギー射出っ!!】


「【エネルギーッギフトオオオオオオオオオオオオオッ!!】」


――瞬間。【業火・鉄板鍋】から眩い光を放つ膨大なエネルギーが大空目掛けて解き放たれた。

俺も鈴も突然の高エネルギーの射出に驚くが、驚きも冷めやらぬまま大空目掛けて飛んで行ったエネルギーは、途中で二つに分かれたかと思うと――


「――なっ!? こっちに戻ってくるっ!?」
「ちょっ!? 嘘でしょおおおおおおおおおっ!!」


軌道を変えた二つに分かれたエネルギーが、俺と鈴に向かって迫り来ていた。咄嗟に俺達は回避行動移るとするが、それを弾の厳しい声が押し留める。


「――避けんなっ!! そいつは味方だっ!!」
「はぁっ!? 何言って――うわあああああああああああああっ!?」
「きゃああああああああああああああああっ!?」
【しっかりと味わってくださいな。【白式】に【甲龍】♪】


途端に俺と鈴に射出された高エネルギーが直撃する。思わず両手を交差させて身構えてしまうが――直撃を受けたと言うのに、俺の体を吹き飛ばす様な衝撃など一切起きなかった。

な、何だ? 一体何が起きたんだ? 恐る恐る交差させた両手から顔を上げる。周囲を見回しても、何処か悪戯っぽく笑う弾と、俺と同じように困惑した鈴の姿しか見えない。


「何が起きたんだ……? オイ弾! お前一体何をしたんだよ!?」
「それは自分で確認しな♪ 鈴。そっちはどうよ?」
「あ、あたしは別に何ともないみたいだけど……一夏は?」
「ああ、俺も別段変わった所は無いみたいだけど……?」


鈴の言葉に思わず自分の体を確認してみる。体は特に正常だ。身に纏った【白式】にも見た所目立った外傷無く、シールドエネルギーの残量にも問題は見られない。一体何だったんだ……? 弾は俺達に何をして――

瞬間。其処まで考えた所で、ハタッと思考を中断させた。

――待て、何か変じゃ無かったか? 今までの一連の考えの中で俺はある違和感に気が付いた。

待て……ちょっと待て……! 


――『シールドエベルギーの残量にも問題も見られない』だって!?


それに気付いた俺はすぐさま【白式】のエネルギー残量を確認する。そんな俺の行動を見た弾が『気付いたな?』といった笑いを浮かべた。

そして――やっぱりだ! 【白式】の残量エネルギーが回復してるっ! 十分の一程度だった残量が、今確認したら三分のニ位までに跳ね上がっていた!

驚く俺と、そしてその事に気付いたらしい鈴も、揃って弾へと視線を向けた。


「――だっ弾!? お前まさか自分の持つ残量エネルギーを俺達に譲渡したのか!?」
「バッ……バッカじゃないのアンタ!? 何してんのよ!? そんな事したらアンタがっ!!」
「うーん? その解答は半分は当ってるが、正解とは言えんな?」
「ど、どう言う事だ?」
「確かに俺はお前等にエネルギーを譲渡した。一夏に七割、鈴に三割って配分でな。けどな? 【七代目五反田号】のエネルギーはビタ一文だってお前等にはやってないぞ?」
「はぁっ!? どう言う事よ!? それ以外のエネルギーなんて何処から持ってきたってのよ!?」
「おいおい良く聞いてたか鈴? 【七代目五反田号】のエネルギーはって言ったろ?」


弾の言葉に俺と鈴は揃って疑問の表情を浮かべる。

【七代目五反田号】のエネルギーは使ってない? ならさっきのエネルギーは一体……? そんなの俺達に向かい、弾は再び口を開いた。


「おい一夏。セシリーちゃんとの決闘の時の事を思い出して見ろ。俺はお前の【白式】が一次移行するまで、お前の守りに徹して攻撃を防御してたろ?」
「あ、ああ。そうだったな」
「此処でおかしいと思わないか? 俺はお前が一次移行するまでセシリーちゃんの攻撃を受けて、その分のエネルギーを消費していた筈。けど、お前の一次移行が済んだ後、俺はそれでも尚エネルギーをフル活用して動き回ってたろ? 膨大なエネルギーを一度に消費する【食の寝台・まな板領域】。それから【五反田包丁 初代・二代】。さらには【特注コンロ・炎の料理人魂】と【剛・鉄球お玉】の連続使用。――普通なら最初の【食の寝台・まな板領域】を使用した所でエネルギー切れを起こして即リタイアしていた筈だ。だけど俺は試合終了の直前まで動いていた……三十分近くも攻撃を受けてシールドエネルギーを消費していたのにも拘わらず……だぜ?」
「――あっ!? 言われてみれば……一体何であそこまで動けたんだ!?」
「……もしかして、アンタの今手に持ってる楯のお蔭なんじゃないの?」
「うん鍋な?」
「いや楯でしょ」
「鍋な」
「いやだから――」
「……鍋なんだってばよ……!?(涙目)」
「あ……うん鍋ね……もうそれでいいから。とにかくその鍋とやらに秘密があるんじゃないの?」
「その通りっ! 流石鈴だ。すぐに気が付いたな」
「どう言う事だよ?」
「変だと思わない一夏? 元々ISにはシールドエネルギーを消費して形成されるシールドが備わってるのよ? だからご丁寧にも態々たt「鍋」――な、鍋なんて装備を準備する必要なんて何処にも無いの。だって言うに弾はその鍋とやらを常備して持ってる」
「確かに変だな……その……な、鍋? を態々使って防御しても、シールドエネルギーを使う事には変わりないんだから、むしろ普通にシールドを展開してやった方が楽だし速い。それにそんな馬鹿デカイ代物を持って行動するのは……正直色々と邪魔になるだろうし、持っていたって仕方ないよな……?」


そう疑問を口にした所で――俺はふと一つの事に気が付く。

いやちょっと待て? もしもだ……もしも弾の持っている楯が、エネルギーの消費が必要の無い物だとしたらどうだ? いやエネルギーの消費が必要無いんじゃない。その楯で敵の攻撃を防御したとしても――



――弾の纏うIS【七代目五反田号】の保有する内包エネルギーに、何の影響も及ぼさないとしたらどうだ……!?



その事に思い至った俺は、弾の持っている【業火・鉄板鍋】へと視線を向ける。まさかこの武装って――!


「もしかしてお前の持つ【業火・鉄板鍋】って! 【七代目五反田号】からのエネルギー供給が必要ない武装なんじゃないのかっ!?」
「――その通りっ! この【業火・鉄板鍋】と【七代目五反田号】はそれぞれ独自の内包エネルギーを持っていて、完全に独立し合ってんのさっ!! お前等に譲渡したのは【業火・鉄板鍋】が内包していたエネルギーなのよん。ちなみにこの【業火・鉄板鍋】の持つ内包エネルギー量は【IS】一機分に相等する! そして俺は此処に来るまで、一切【業火・鉄板鍋】を使用していない。エネルギー満タン!! 【白式】、【甲龍】! 美味かったかい!?」
【腹が減っては戦は出来ませんからねー。エネルギーの出前一丁上がりです。ISのISによるISの為の出前! 我っ! 出前機の名に偽りなしっ!!(ドヤぁ)】


「【これぞ【業火・鉄板鍋】に隠されたもう一つ技能! 【真・岡持エネルギーギフト】っ!!】」


弾の言葉に、俺も鈴も愕然とする。

こいつの話からするとだ……つまりこいつは、弾はいつも【IS】ニ機分のエネルギーを所持しているって事になるんじゃないかっ!?

これはとんでもない事だぞ! 長期戦に関してはこいつ――いや【七代目五反田号】程有利に事を運ぶ【IS】はいないって事になるんじゃないか!?

そして味方への【業火・鉄板鍋】によるエネルギー譲渡も可能……味方にすればこれ程心強い奴はいない。そして反面、敵に回したら厄介所の話じゃ無い……!! 団体戦でのこいつのアドバンテージはかなりの物だぞっ!?

【七代目五反田号】……こいつはもしかしたら団体戦でこそ、その真価を発揮する機体なのかもしれない。

そして、俺は改めて自分の認識が正しかった事を実感する。


――弾は……俺の親友は本当にいつも…っ! ここぞという場面で頼りになりやがるっ!!


「――さて、ネタばらしは此処までだ。あちらさんもそろそろ痺れを切らしてきた所だぜ?」


不意に弾がそう口にして、ヘラヘラした表情から一転、表情を引き締め前方を睨む。

その視線を追うようにして、俺達も前歩へ視線を向け――こちらを観察している敵ISの姿を捉えた。

弾の規格外の行動のせいで敵は戸惑っていたのか攻撃は仕掛けて来なかったけど……少しずつこちらへと攻撃を仕掛ける体勢を取りつつあった。

それを見て、俺達も瞬時に迎撃の体勢を取る。


「さーてお二人さん守備はどうよ? 準備はOKかね?」
「――はっ! 全く余計な事してくれるわね。……まっ別にエネルギーの供給なんてあたしには必要無かったけど、一応感謝しとくわ」
「一応かよ~手厳しいね~このチャイナっ子さんは? 一夏はどうよ?」
「ああ、何時でもイケる。……むしろあの鉄屑を今すぐ打った斬ってやりたくてウズウズして仕方ないんだ……!」
「戦意は上々ってか。ほんじゃま行きますか? アリーナ内の避難は完了した所だし、どれだけ派手にやっても人的被害は無いから、思う存分暴れられる。俺達三人のエネルギーも大体同じ位の残量で、容量も十分と……舞台は整ったな」


瞬間、弾が両手に【特注コンロ・炎の料理人魂】を粒子展開させ装着。それを敵に向けて両腕を構える。

鈴も【双天月牙】を演舞の様に振り、そして敵に付きつけた。

そして俺も【雪片弐型】を下段に構え腰を落とし、敵ISを鋭く睨み据える。


「鈴、お前は俺達に中じゃ一番技量が高いからな、出来るだけ一夏を気にして遊撃を心掛けつつ、相手を翻弄してくれ」
「……まっしょうがないわね」
「一夏、お前は敵に接近して近接戦闘に持ちこめ、鈴と協力して奴を叩け」
「お前はどうすんだ?」
「現段階じゃ俺はお前程の技量が無いからな~。特訓不足が祟ったぜ。俺はお前等の後ろで援護しつつ防御と回避に徹するわ。頼めるかいお二人さん?」
「「上等」」
「――さぁ行くぜっ! 『鈴と愉快な仲間達』!! 中学時代の俺達の三位一体トリプルフォーメーションが今蘇るっ!!」
「ちょっと待て! 何だその『鈴と愉快な仲間達』って!? 俺らはオマケか!」
「何驚いてんのよ? 当然じゃない」
「おい!?」


思わず弾の言葉にツッコミを入れ、それに然も当然のようにケロッとした表情で返す鈴に反応を返してしまった。

――が、その時不意に


『そうだぜ一夏? 俺らはオマケだ。此処で重要なのは『代表候補生の鈴が、世界で二人だけの【IS】を起動させる事の出来る男子である俺達を率いて、襲撃者を鎮圧した』っていう事実だ』


――プライベートチャンネルが開き、俺の耳に弾の言葉が聞こえてきた。

驚いた俺は思わず弾に視線を送るが、弾は俺の方へ視線を向けず前方を見据えていた。

……どうやら小声で話してるみたいだ。


『こっちを見んな鈴に感づかれる。説明は後でしてやる。お前は奴を叩く事だけを考えろ。――『金の卵』取りに行くぞ?』


それを聞いた俺は、慌てて弾から視線を外して敵に意識を集中させる。だが弾の言葉をしっかりと頭に刻みつけた。

……確かに今は細かい事は考える場合じゃないな。聞きたい事は山ほどあるけど、それも後でも構わないか。分かったよ弾。お前を信じる。

そしてその時同時に、俺の眼が敵がハッキリとこちらに向けて攻撃態勢を取る姿を捉えた。――来るっ!!


「――来るわよ! アンタ達! アタシの足を引っ張んじゃないわよ!?」
「――分かってるよっ! 自分の身位自分で守って見せるっ!! 弾っ!!」
「――へいへい……一丁派手に行きますかぁっ!!」


瞬間、敵のレーザーが俺達に向かって打ち出され、それに対抗するように弾の右腕に装着された『特注コンロ・炎の料理人魂』から、高熱減の火球が打ち出される

そのままその二つは、敵と俺達の間で衝突し――激しい轟音を響かせ大爆発起こしたっ!!


暴風が起こり、その衝突の激しさを物語る様な閃光に、俺は思わず眼を細めてしまったけど――


それが俺にはまるで……俺達の反撃の狼煙が上がる合図のように見えたのだった。



――覚悟しろよ鉄屑……っ! この俺達三人を相手にして、まさか無事で済むと思ってないだろうなっ!!!


【 後書き 】

お久しぶりです。ようやくと言うか何というかssを書く時間が何とか確保できました。……連休……何て素晴らしい響きでしょうか……!? 一日そこら休んでも家の事とかで本当一日潰れますよね。とにかくお待たせしました。さて次回は後編ですが……何ていうかやり過ぎ……? これコア無事なのかな。では次の更新でお会いしましょう。……内容思い出す為読み返してみたんですが、最初の方の誤字脱字や文字並びの悪さが半端ないですね……改正しようかな……でも時間が……。

【追伸】リハビリついでに此処のチラ裏に『アクエリオンEVOL』の一発ネタを投稿しました。興味の惹かれた方は覗いてやってくださいませ。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029806137084961