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No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
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[27655] 第二十話  幻影一丁へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:3759d706 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/28 01:59
【箒 SIDE】


…以前の礼を失した振る舞い、心よりお詫び申し上げる。では、ゴホン。
篠ノ之 箒だ。どうかよろしく頼む。

私は今、イギリスの代表候補生でありクラスメイトである。セシリア・オルコットと一緒に弾の捜索を行っている最中で、校内を歩き回っている所だ。

…はぁぁ。

小さく溜め気を吐いて、私の目の前をズンズンと歩いて行くオルコットの背中を少しだけ睨む。

…何故こんな事になったのだ。

別に私は、弾を探す事に関してはなにも異論はない。むしろ私も弾に謝罪をしたいと思っていたので、一人で探すよりは効率が良い為喜ばしい事だと思っている。

ただ、これで昼食をしっかり食べる事ができ、次の授業が織斑先生の実習じゃなければ言うことなしだったのだがなぁ。


「篠ノ之さん! 何をゆっくりしていらっしゃいますの!? そんなことでは五反田さんを見つける前に昼休みが終わってしまいますわ!」
「私の中ではもう昼休みは終わったも同然だ…。」
「それにしても・・・全く五反田さんは何をしているんですの!? 目撃情報を入手しても、一つの場所に留まらないから探し出すのに一苦労ですわ!!」
「…そうだな。」←米神が若干引き攣る


一瞬、食べ物の恨みがどれ程恐ろしいモノか叩きこんでやりたい衝動に駆られたが、此処はぐっと我慢だ。

ようやく弾が、PCルームに入っていった所を見たという生徒の目撃情報を入手したのだ。
此処まで来て、また行方が分らなくなるという事態だけは何としても避けたい。昼食まで犠牲にしたのだ、こうなってはもう意地だ。何としても見つけ出す!

本当ならば廊下を走ってでも移動したいのだが、ついさっき職員室前で織斑先生に出会ってしまい…こう言われたのだ。



『…貴様らまさか、あの害虫の起こす問題で手一杯な私に、一々注意させる気じゃないだろうなぁ…?』



はっきり言おう――――― 殺されるかと思った…!!

生気を失った瞳で、何処ぞのホラー映画の人形のようにカクンと首をもたげた姿は、とんでもなく恐ろしかった…!

逃げ出した私達の背後から。

『誰か! 胃薬持ってきて! 申請して配備された奴よ!』『織斑くんの写真は!?』『ここに!』『山田先生は!?』『書類処理を終わらせて、燃え尽きてるわ!』『昼休み中は寝かせておいて! 目蓋を冷やしてあげてください! 他の雑務は手が空いてる人が処理を!』『私が対応します。他の先生方はお二人のケアを。』『さ、榊原先生っ! 助かりますっ!』『私なら構いませんから。それにしても。ふふ、全く五反田くんには困ったものね。(優しい笑み)』『…え゛?』『まさか…え? マジ?』『いやでも十歳以上も歳離れてるし流石にそれはないで『五反田くん、年上って好みかしら?』こいつ本気だーっ!?』

という、教職員の先生方の人情溢れる言動が聞こえて。不覚にもホロリとしてしまった…一名言動が意味深な先生もいたが。

その一幕のせいで、廊下を走るなどという命知らずな事を行うことなどできず、今もオルコットと共々、早足での移動しか出来ずにいるのである。


「そ、それにしても、何故織斑先生はあのような極限状態になっていたのだ?」
「…あれですわ。二日前の一年の生徒のほとんどが大遅刻したあの一件です。」
「…ああ、あの部屋番号がランダムに張り替えられて、部屋を出た生徒達が自分の部屋が分らなくなってしまい早朝から大混乱になったあれか・・・。」
「私は運良く自室で全ての準備を整え部屋をでましたから気が付きませんでしたが、あんなことするのはこの学園で五反田さんしかいませんわよ。」
「織斑先生は一年の寮長だから、後始末に追われたという事か?」
「ええおそらく。一連の経緯説明から対処案、生徒達への配慮、正しい部屋番号の割り振りに事後報告書の作成。やる事はそれはもう山のようにあるでしょうし。」
「…そういえば弾の奴。あの日は織斑先生に首根っこ掴まれて連れて行かれた後、ズタボロになって屋上から吊るされていたな? 昼休みには戻って来たが。」
「きっと織斑先生の指導(という名の死刑)を受けたんでしょうが…。まるっきり堪えていらっしゃらない様子がまた、織斑先生の神経を逆撫でしていますわよね。」


移動しながら今日までの事を思い返して、二人して溜息を吐く。というかまだ終わっていなかったのか、あの騒動の後始末。

織斑先生、山田先生、他の教職員の先生方、心中お察しします。どうか挫けないでください…!

織斑先生達への激励の祈りを込めつつ、早足で移動し続ける事数分。
ようやく『PCルーム』と表示されている教室のプレートが見えてきた。

後はあそこに弾が居ればいいんだが。

―――― バシュッ。

オルコットと共にPCルームの扉の前にたどり着き、ドアが開くと同時にPCルームへと入り込む。
そして、そのまま二人して室内をグルっと見回し弾の姿を探し始める。

室内にいる他の生徒の数は、幸いな事に数人程度のものだったので確認がしやすかったが、肝心な弾の姿はというと――――。


「―――――っいない!? くっ! 一足遅かったか…!」
「ああもうっ! あの方はどうして一つの場所に留まっていられませんの!?」 


弾の姿はPCルームには既に無く、数人の生徒がPCの前で各々作業をしている光景だけがそこにあっただけであった。

くっ! また振り出しかっ!


「篠ノ之さん、もしかしたら室内に五反田さんの行方を知っている方がいるかも知れませんわ! 聞き込みをしましょう!」
「う、うむ。そうだな。場所は知らずともどの方角へ行ったかは見掛けた者が居るやもしれん。」


オルコットの提案に頷きつつも、私は少したじろいでしまった。

…これ程、弾を探すことに熱意を出すとは、オルコットはどうしたというのだろうか? 
この様子を見ると、ただ謝罪だけが目的とは思えない。

オルコットの様子が少々気になるものの、とりあえず私達は室内の生徒から聞き込みを行うことにした。

オルコットと二手に分かれ、それぞれ聞き込みを始める。


「―――― もし? 少しよろしいだろうか?」
「…え?」


私は手初めに、PCルームの端の席に座っている一人の女子生徒に話し掛けることにした。
この位置からなら教室内を良く見渡せる為、もしかしたらと思い最初に声を掛ける事に決めたのだ。

それに、眼の前の女子生徒はPCの作業を中断しているようで、手の中にある携帯電に視線を落していた為、比較的声を掛けやすかったのである。

やけに上機嫌の様子だったとういのも理由としては強いかもしれんな。

口元に小さな笑みを浮かべ携帯画面に視線を落とす姿は、可憐の一文字しか浮かばない。
同姓であるにもかかわらず自然とそう思えてしまった。


「失礼。ここに五反田 弾という男子生徒がいたと聞いたのだが。見掛けなかっただろうか? 学園に二人だけの男で、赤髪の長髪に黒のバンダナを巻いている方なのだが?」
「…え、弾の…知り合い?」
「む? 弾を知っているのか? それでは話が早い、此処で見かけなかっただろうか? 用向きがある為ずっと探しているのだが。」
「え…っと。弾ならさっきまで…私と話を。」
「それは本当かっ!? オルコット、こっちに来い! 弾とさっきまで話をしていたと言う生徒を見つけたぞ!」


これは運が良い! 聞き込み一人目で情報を持っている生徒に当たるとは。
もし行き先を聞き出せれば、今なら追いつく事が可能かもしれん!

私の声を聞いたオルコットが、会話をしていた生徒に慌てて頭を下げ礼をした後、早足でこちらに向かってきた。


「――― 本当ですの!? 五反田さんは今どちらにっ!?」
「―――ッ!?(ビクゥッ)」
「おい、いくら何でも突然過ぎるだろう。少し落ち着け、怯えているではないか。」
「―――っす、すみません。私とした事が、いくらなんでも焦り過ぎでしたわね。申し訳ありません。」
「…あ。だ、だいじょうぶ…だから。」


頭を下げるオルコットに、少々焦ったように言葉を返す女子生徒。どうやら人に頭を下げられる事に慣れていないようだ。

純粋かつ、控えめな少女だ。一体弾とどういった経緯で知り合ったというのだろう? 

あの歩く自然災害のような奴との接点が全く見出せんのだが。(汗)


「それで話を戻すが―――っと、失礼した。自己紹介がまだだったな? 私は一組の篠ノ之 箒だ。そしてこっちが」
「イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ。」
「あ、四組の…更識 簪です。」
「―― で、だ。先程まで弾と話をしていたと言っていたが?」
「う、うん。あの…相談に乗ってくれて…。」
「弾が? あいつは本当に所々で色々行動する奴だな。」
「それが今の様な、善意溢れるものだけであれば言うこと無しなのですが…。」
「まぁ、それはいい。それで、弾はその後何処に行ったか知っているだろうか?」
「えと…考えをまとめたいって、教室から出て行った…けど。」
「ど、何処に行ったかまでは分かりませんの? 方角も?」
「う、うん。…『考えをまとめるなら、やはりあそこが最適だな!』って言った後…何処かに、それ以上の事は…その。」
「あ、ああいや。更識が悪い訳ではない。気にしないでくれ。」
「そ、そうですわ! 気に悩まないでください。」


申し訳なさそうに小さくなる更識に、私達は慌てて言葉を加える。

こういった大人しい気質の人間が、私達の周りにはいない為どう接していいか分からんな。

下手な事言えば傷つけてしまうかもしれないし、難儀なものだ。

しかし、さてどうしたものか。
これで弾の捜索が振り出しに戻ってしまった。

…此処は大人しく教室に帰った方がいいだろうか?


「…仕方ない、諦めて教室に戻って次の休み時間を狙うとしよう。授業前には弾もクラスに帰って来るだろうしな。」
「それを狙って何度も失敗をしているのは私たちなのですが…? 教室に戻って来るのも授業開始ギリギリですし、終わったかと思えば先生の授業終了の挨拶と共に『シュバッ』っと消えますのよ? こう…『シュバッ』っと。」
「忍者かあいつは。はぁ、こんなことならあいつの携帯の番号を聞いておくのであった。」
「私もですわ…いつもすぐ近くに居らっしゃいましたから、聞くのを失念していましたわ。」
「いつもすぐ近くに、か。…考えてみれば、そう思われるというのは凄いことだと痛感する。」


はぁ…と二人で溜息をつく。
何だかんだんで、弾は私達の中でも重要な存在になりつつあるようだ。

と、そんな私達の会話を聞いて、更識がおずおずと声を掛けてきた。


「あ、あの…。」
「ん? どうかしたのか。 ああ、私達の事なら気にしなくても良い。手間を取らせてしまったな。」
「それは別に…あの。」
「「?」」
「弾の、携帯の番号なら…知ってる。」
「なっ!? そ、それは本当ですの!?」
「う、うん。…さっき、番号交換して。…友達、増えた♪」


そう言って、手元の携帯電話に視線を戻し、嬉しそうに小さく笑う笑う更識。
…不覚にも可愛らしいと思ってしまった。

本当に弾との接点が分らない。
この先、弾に振り回されない事を静かに天に祈ることにして会話に戻ろう。


「それはありがたい。すまんが、弾に電話を掛けてもらえないだろうか?」
「私からもお願いしますわ!」
「う、うん。わかった…。」


そう言って、更識は自分の携帯を操作し―――― ようとして、ピタっ止まった。

どうかしたのか?

更識の様子に、オルコットと顔を見合わせて首をかしげる。

そんな私達に、更識が不安そうな顔を向けてきた。


「だ、大丈夫かな…?」
「ど、どうかしたのか?」
「突然電話して…だ、弾に迷惑だって…お、思われない?」
「い、いえ! それはないですわよ!? 絶対に!」
「で、でも、考え事をまとめたいって言ってたし…じゃ、邪魔しちゃうんじゃ…!(捨てられた子犬のような瞳)」
「そ、それなら安心して良いと思うぞ!? うむ、弾は女子には観音菩薩の如く懐が広いのだ! な、なぁオルコット!?」
「え!? ええ、そうですわね! 紳士を自称してらっしゃいますから、女性に対しそのような事を思う筈がありませんわっ!」
「…ほ、本当?」
「勿論だ!」
「私達が保証しますわ!」


私体の言葉に少し安心したのか、更識が小さく頷いて携帯の操作を始めた。

な、なんだか年下を相手にしているようだ。

ピッっとボタンを押して弾に電話を掛け携帯を机に置く更識。

そして―――。


『―――【プルr…ピッ!】へいお待ちっ! 淑女にはいつでもどこでもワンコール対応! 五反田 弾です! もしもしー? かんちゃんどうかしたのかね? いきなり電話くれるなんて嬉しい限りだねー♪』


携帯から、いつもの陽気な声が響いた。

…電話越しでも騒がしい奴だなお前は。そんな私を置いて、更識が言葉を発する。


「う、うん。ちょっと用事があって…あの、いきなり電話して迷惑じゃなかった…?」
『いつ何時でもウェルカムだっ! 気にする必要ないぞ! ラスボス戦の魅せ場であっても『あ、待って電話。ちょっとタイムね。』って迷うことなく中断するさっ!』
「…そ、それは流石に…。」
『それでどうかしたのかね? もしかして例の件? おおう! もしや今から!? 即断即決だねかんちゃん! 俺も付いて来てほしいってラブコール?』
「そ、それはまだ、心の準備が…」
『ふむ? では何故に?』
「えと、弾に用があるのは私じゃなくて…。」


そう言って、こちらに視線を向ける更識に一つ頷き。
私とオルコットが口を開く。

―――――――― ようやく話ができるな。


「私達だ、弾。」
「五反田さん! ようやく話が出来ますわ!」
『おおう!? そのボイスは箒ちゃんにセシリーちゃん!? 何故にかんちゃんと一緒に居るのか分からんが、とりあえずどうしたのよ?』
「う、うむ実は、お前に言わなけらばならない事があってな。会って話せないだろうか?」
『電話じゃ言いにくい事かね? 構わんけど、一体何事?』
「五反田さん! 今どちらにいらっしゃいますの!?」
『地球にいますが?』
「大雑把過ぎるわっ!? というか、その言動だといない時があるのか!?」
『あっはっはっは。』
「笑って煙に巻きましたわ!?」
『ふむ、まぁ俺の居場所の詳細を事細かに説明するとだなー。五反田 弾。只今学園の校門―――』
「…校門? 校門の前か? 何故そんな所に―――?」
『―――― の上にいます。』
「「なんでそんな場所に居るのだ(ですの)っ!?」」
『いやー、やっぱり考えるポーズとるなら、門の上じゃないと駄目じゃね?』
「…あ【考え○人】?」
「偉大な芸術家の作品を表現していますわ!?」
「何故そんな所にこだわりを見せるのだお前はっ!?」
『まぁまぁ、とりあえずそっちの戻っからさ? ちょいとそのまま待っておいてく『死ねぃっ! DANSHA【ボキャッ!】クボォォアッ!?』れるかね三人とも?』
「「会話の合間で何か倒したあああああっ!?」」
『ほんじゃね~? 今行くぜぃっ!【ピッ】』
「…だ、弾って、何やってるの…?」


私とオルコットの突っ込みに、更識が困惑の表情を浮かべてこちらに向き直る。

―――それは私が聞きたいっ! あいつは普段何をやっているのだ!?

と、とりあえずいったん落ち着くとしよう。
色々思う事はあるが、こちらに弾が戻って来ると言ったのだ。それで良しとしよう。


「え、えっと…これでいいの…?」
「あ、ああ。色々世話になったな。礼を言うぞ、更識」
「とりあえずは、五反田さんがこちらに来るようなので、後は待つだけですわね。はぁ、此処まで辿りつくのに苦労しましたわ。」


そう言って、近くに席に腰を下ろすオルコットの言葉にわたしも頷く。
何故探すだけなのにここまで苦労する羽目になるのだ?

まったく、あいつは本当に意味不明な奴だな。


――――っ!? ―――――――――――――…! ―――――――ぁっ!


…ん?


「おい。何か聞こえないか?」
「え? 何がですの?」
「…?」


二人に訪ねて見ても、たりとも困惑の表情を返すのみ。

…空耳か?

今一度耳をすましてみる。


―――――て―――――…! ―――――ップ―――――て――――――…!?


「――― あら?」
「…声?」
「二人も気が付いたか。 やはり何か聞こえるな、廊下からか?」


何やら廊下から声が聞こえてくる。
それもだんだんこちらに近づいてきているようだ。

…一体何だ?

顔を見合わせた私達は、そのままPCルームのドアまで揃って移動し、ドアを開ける。

そして廊下に顔を出して見ると、そこには――――。


『ふははははははははははははははははははははははっ!♪(シタターン! シタターン!!)』

【~~~~~~♪~~~~~~♪】← アルプスに住む。長ブランコの上でも笑みを絶やさない少女のメロディ。

『――― っなんか来たああああああああっ!!?』
『いやああああああっ!? 怖いっ! なんか怖いいいいいいいっ!?』
『凄い笑顔っ!? なんか凄い笑顔でこっち来るーっ!? いやああああぁぁーっ!?』
『きぃやあああぁぁーっ!? メチャクチャ速くて怖いいいいいいぃぃぃっ!?』
『ひぃぃっ!? お、お母さああああああぁぁぁぁぁーんっ!』


―――― 腰に手をあて、物凄い笑顔で超速のスキップをしながらこちらに向かってくるという不気味な事この上ない弾の姿と。


その弾に怯え全力で退避する生徒達の姿だった。


「「――――っ何をやっているんだ(ですの)!? お前(貴方)はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
「――――ひっ!?」←弾を見てビビる。




――――― その直後、私とオルコットの飛び蹴りが弾に炸裂した。




*   *   *




「全く! 貴方は一体何をしていますの何を!?」
「いや、廊下は走っちゃならんだろうと思ってね? スキップしたら相棒がナイスチョイスなメロディ流すもんだから途中から楽しくなっちゃってさー。」
「楽しむな! 腰に手をあて、もの凄い笑顔張りつかせ、その上走って逃げる生徒を追いぬかす程のスピードでスキップしている男など不気味以外の何物でもないわ!?」


数分後。
弾を迎え、一組のクラスへと戻る私達。

あの後、なんとか場を収拾した私とオルコットは弾を連れ教室に戻ることにしたのだった。
そろそろ昼休みも終わりそうだった為、仕方なく歩きながら会話を続ける。

更識とはPCルームで礼を述べた後そこで別れた為、今は私とオルコット、そして弾の三人だけだ。

…はぁ、それにしても本当に疲れた。

もう駄目だ、絶対に今日の午後の授業は持たない。


「…死にたくない。」
「へいどうしたの箒ちゃん! 死ぬなんて言っちゃ駄目だぞ! 話し付けてあげようか? 髭に。」
【相棒。なんか物凄い勢いでメールが来ました。【こないて】の一文字だけですが、焦りまくってるせいか文字が変です。】
「誰ですの髭って? はぁ、全く本当にいつもいつも…。」
「なんだ二人共元気ないな! 幸せ逃げるぜ!? ほれこれでも食って元気出しなさい。『弾特製悩んだ分だけ具があるのさオニギリ』! 残りもんだけどいるかね?」
「――――――っお、おおおおおおおぉぉぉぉぉっ…!?」
「ん? 箒ちゃん。どったのよ? まるで救世主見るような眼を何故俺に向けるのかね? オニギリ好きなの?」
「あ…篠ノ之さん昼食を摂っていらっしゃらなかったんでしたわ。」
「なんですと!? それはいかん! 昼食摂らなきゃ午後に変調をきたすぞ!? へい箒ちゃん! 全部食っちまえ! そして茶もあげるぜ! 相棒!」
【無論【貯蔵】してあります。へいどうぞ(にゅるり)】
「なんだか妙な出し方しませんでした!?」
「―――っはぐんぐ!!はぐはぐ! ―――っぐ! あむ!」←必死食い。
「おおう。見事な食べっぷり。犬耳と尻尾が見えるのは幻覚かね?」
「何ですのそれは?」


二人が何か言っているようだったが、今の私にそんなこと気にする余裕などないっ!!
弾の手からひったくる様にオニギリを貰い受け、口の中に詰め込む!

―――う、美味いっ! 美味いぞぉっ!
オニギリとはこれ程にも美味いものだったのかっ! 中の具も、色々詰まっていて良く合っている! 

歓迎に打ち震え、差し出された茶と一緒に胃に流し込む私を、二人が妙に生温かい瞳で見たいたのを、私は終始気付く事は無かった―――。

そして私が食べ終えた時には、既に教室の扉の前に到着していた。
そのまま教室内へ入り、手近な席に腰を下ろす。


「へい到着! そんで話って何ですかいお嬢さん方? スリーサイズまでなら答えるよ?」
「もの凄くどうでもいいですわ!!」
「オルコット、落ち着け。一々突っかかっていては話が進まんぞ?」
「うぐ…そ、そうですわね。」
「クールダウンだぜセシリーちゃん!」
「貴方は黙っていてくださいまし!」
「だから…はぁ。」


二人の様子に、また一つ溜息を吐く。
次は実習が待っているのだから、移動も兼ねると時間は残りわずかだと言うのに。

そんな風に呆れた私だったが ――――。


「あれ? 箒にセシリアと…それに弾!? お前何処行ってたんだよ!?」

背後から聞こえてきた一夏の声に、そのまま体ごと振り向く。
むぅ、タイミングの悪い。余計話がややこしくなりそうだ。

一夏と弾。

この二人が揃うと、色々と騒がしい事態になる事が多いからな。


「およ? どうした一夏? 何か用か?」
「何か用かって、お前この二日何やってたんだよ? 授業以外全然姿見えなかったじゃねぇか。」
「おおう。すまんのー? 寂しかったのか? この甘えん坊め!」
「茶化すなよ。はぁ…ちょっと厄介な事が起きてさ。話を聞いて欲しいんだよ。」
「い、一夏さん!? あ、あのちょっと待っていただけませんか? 今は私達が、その…。」
「え? 二人も弾に話があるのか?」
「うむ、まぁそうだ。」
「おおう? 俺大人気だな? まぁとりあえず、話が早く済む方から聞くかね?」
「は? 話が早くって、そんなの分かるのか?」
「箒ちゃんとセシリーちゃんの話は想像もできんが、一夏の話ってのはあれだろ? クラス対抗戦。一回戦の相手が鈴だって話じゃね?」
「お、お前知ってたのか!?」
「二日前に発表された事だぞ。知ってるに決まってんでしょうに。忙しくてもその辺の情報くらい掴んどるよ。ま、その点も含めて、俺もお前に話があるんだがね?」
「は? 弾、それって…。」


少し驚いた様子で一夏が弾に視線を向け。
そんな一夏に、弾も視線を返す。

…む? 何だ? どうしたというのだ二人共。

二人の様子にオルコットも困惑しているようで、二人に交互に視線を向けている。

そして―――。


「――――よう一夏。ちょいと【相談】に乗ってくれないか?」
「――――っ! 待ちわびたぞ馬鹿野郎…っ!」


顔を見合せながら、ニヤリと笑い合った。

な、なんだ? 何でそんなに嬉しそうなんだ二人共!?

状況を把握できていない私とオルコットを置いて、男同士だけでトントン拍子に会話をつなげていく一夏と弾。


「とりあえず今は時間も無いし、詳しい話は放課後か?」
「そう言いたい所だがねー? …悪い。時間くれね? 俺も頭整理してる途中なんよ。今日一日でいいんだが。」
「そうなのか? じゃあ明日にするか。時間と場所はどうする?」
「ちょいと人の耳にゃ入れたくないからねー? 寮の部屋がベスト。んでもってじっくり話す必要があるから、放課後だな。」
「じゃあ明日の放課後。場所は、俺の寮部屋でいいだろ?」
「へいへい。んじゃ明日、放課後お前の部屋で。」
「おう。…で? 俺はそれまで何やってりゃいいんだ?」
「舞台はクラス対抗戦って言えば分かるかね?」
「それに向けて猛特訓ってか? 随分、厳しい事言ってくれんじゃねぇかよ弾?」
「でも、ただ待ってるだけなんてしないんだろ?」
「当然だろ?」


そう言って、またどちらからともなく笑う二人。

…なんだこれは。

なんというか、面白くない。

なんだか…全く面白くないぞ!?

何だお前達は!? 二人だけで分かり合って! 
ちゃんと分かるように私にも説明せんか!

そんな想いを込めて、二人を睨みつけ無言の非難を放つ私。
オルコットも、妙にブスっとしているから私と似たような心境なのだろう。

そしてそんな私に一夏がようやく気付く。


「な、なんだよ箒? なんで睨んでるんだ? ってセシリアもかよ!?」
「…ふん! 別に何でもない! この朴念仁が!」
「なんですの? なんですのそれ? 何二人だけで分かり合っちゃってるんですの?とても不愉快ですので止めてもらえません!?」
「何言ってんだ?」
「あっはっはっは! まぁまぁお二人さん。紳士にゃこういったやり取りが結構あるもんなのよ。気にしなさんな!」
「「むぅっ…」」
「そんな訳で、こっちはこれでOK。そんで淑女お二人の話は、放課後に時間作るからそん時でいいかね? そろそろ次の授業が始まっちまうから移動せんと不味くね?」
「――― なっ!? もうそんな時間か!?」
「うわぁ!? マズい! お、おい弾! 更衣室に急ぐぞ!」


弾の言葉に慌てて時間を確認し、バタバタと動き出す私達四人。
し、しまった! のんびりとし過ぎてしまった!

せっかく空腹のまま授業を受けると言う危機を回避したというのに、遅刻しようものなら…考えただけで恐ろしい!

そのまま教室を出て行こうとする一夏と弾。
その背中にオルコットが声を上げる。


「五反田さん! 放課後ですわよっ!? 忘れないでください!」
「淑女との約束を忘れる事など、紳士な俺がする訳なかろう!! 一夏じゃあるまいし?」
「――― ぐっ!? う、うるせぇ! 余計な事言うな! 俺なりに思い出そうと頑張ってんだよ!」
「ほんじゃね~?」


そう言って、バタバタと教室を出て行く二人を尻目に。
私達も大急ぎで次の授業の実習に向け、ISスーツに着替え始めたのだった。



ちなみに。
実習の時に姿を見せたのは、織斑先生ではなく他の教職員の先生だった。山田先生の姿も見えない。

理由は――――。


『…昼休みに、五反田くんが幸せそうにスキップする姿見てね? …なんかもう、ほら…察してあげて。』


とのことだそうだ。

…不憫な。



【弾 SIDE】

千冬さんマヤたん不在の実習からしばらく時間が過ぎて。
只今、放課後の時間帯へ突入しております。

しかし、千冬さんもマヤたんも一体どうしたのかね~?
昼休みの時、スキップ移動で職員室通りかかった時見たが割と元気そうだったのに妙だな?

『――― 何を幸せそうな顔しているんだ貴様ああああああああっ!?』

てな感じで。
ふむ? 急に調子が悪くなったのかね。よし後で見舞いに行ってあげよう。(←トドメ)

まぁそれも重要なんだが。
只今俺こと弾は、昼休みの約束通り箒ちゃんとセシリーちゃんの話を聞く為学園の屋上へとやってきています。

そして俺の視線上の先には、日本淑女に英国淑女の夢の競演が広がっている!!
最高ですね!

そんな二人に感涙している俺をよそに、二人は同時に動き―――。


「弾。」
「五反田さん。」
「へい、日本紳士の五反田 弾ですが何か?」
「――― すまんっ!」
「――― ごめんなさいっ!」


と、いきなり頭を下げられた。

…え? なんぞこれ? どういう事よ?

あれ? ちょい待って。これってもしかしてアレか?
俺に頭を下げる二人に視線を向けながら、俺のマイドレインはある一つのを事態を導き出した。


「…相棒。淑女二人に何故か突然フられてしまう珍しい事態に遭遇した時。一体どうしたらいいだろうか? はは…おかしいな。今日はやけに風が目に沁みやがる…!(ボタボタ)」
【相棒…辛いなら、いつだって自分に甘えてもいいんだよ…?】
「―――っ!? 相棒っ!(ガバッ)」←前掛けを外し、顔を寄せ付け抱きしめる。
【自分はいつも相棒と一緒だ…今は何も考えず泣けばいいさっ!】
「――― 何を突然くだらん事やっておるのだお前達は!?」
「え? 俺フられたんじゃないの?」
「そう言った意味の『ごめんなさい』ではありませんわっ!?」
「なんだよ!? 紛らわしいなっ!?」
「「その考えに行き着くお前(貴方)の、思考がおかしいんだ(です)っ!」」


ふー、何だフられた訳じゃないのか。あービックリしたぜ。

…ん? じゃあなんでいきなり謝って来たんだ?

別に二人に謝られる様な事をされた記憶はないんだが?
腕を組んで首をかしげる俺は、疑問の視線を二人に向ける。


「ふむ? じゃあ何で謝って来たのか分からんね? 何か俺に謝らなきゃならん事ってあったの? 特に覚えはないんだがねー。」
「あ、いや…それはその。」


俺の質問に、箒ちゃんが言い淀む。
んー? はっきり物事を言う箒ちゃんにしては珍しいな。一体何事?

箒ちゃんの様子に、また首をかしげる俺だったが。
その時、箒ちゃんの隣に居るセシリーちゃんが、一歩踏みだして口を開いた。


「私達が謝った理由は、その…三日前の食堂での一件の事ですわ。」
「ふむ? 三日前?」
「実はその…私達、聞いてしまったんですの。」
「聞いたって何を聞いたのかね?」
「三日前、一夏さんとの特訓が終わった後に、私達、一夏さんのいるピットまで足を運んでいましたの。」
「ピット…あー、なーるほど。聞いちゃったわけか? 鈴の言葉。」
「ぬ、盗み聞きをするつもりはなかったのだぞ!? ただその…。」
「ああ、その辺は大丈夫よ? あれだけ大声出してりゃ聞きたくなくても聞こえるだろうし。その辺は疑ってないから安心しておくれやす。」
「す、すまん。」
「ですからその…ごめんなさい! 気付かなかったとは言え、五反田さんを軽んじる様な事をしてしまい。なんて謝ったらいいか…!」
「…私もだ。本当にすまなかった! 弾!」
「おあ~…参ったねこりゃ?」 


もう一度、俺に向かって深く頭を下げ謝罪する淑女二人の姿に。
俺は居心地悪い事この上ない気持ちになってしまった。

あー。こういうのは慣れとらんのだよね~。

まさか、此処まで思い悩んでいたとは。こりゃ俺のフォロー不足だな…。

とりあえず、俺はこの場を治める為に口を開くことにした。


「そんな気にせんでもよかよ~? 俺は全然気にしとらんからさ?」
「――― っだが!?」
「二人にそんな意図は無かったってのは、今のお二人さんの姿見りゃ痛いほど分かるよ。大丈夫だって、二人の気持ちも分かってるつもりやし?」
「私達の?」
「気持ち?」
「二人共、焦っちゃっただけだろ? 突然現れた、一夏に近しい淑女の登場にさ? 鈴は付き合いで言えば俺以上に一夏と付き合いが長いし。箒ちゃんは長年のブランク、セシリーちゃんは出会ってまだ一カ月に満たないって事が、二人に危機感を煽ったんじゃない?」
「「――― なっ!?」」
「そうなると、なりふり構ってなんてられないと思うぜ? 恋は戦争だ。二人の行動は仕方ない事だと思う。だから気にしなくても全然構わんのよ俺の事は? 恋は盲目。恋せよ乙女ってな?」
「…弾。」
「…っ!」


俺の言葉に、呆けたように呟く箒ちゃん。
セシリーちゃんは、顔を少しだけ伏せ唇を轢き結んでいる。

…ふむ?
少々、セシリーちゃんの様子が気になるが、とりあえずこの場を治めちまおう。


「そんな訳で! この話はこれにて終幕! 俺の事を気にするより、あの鈍感要塞を落城させる手段を考えた方が、よっぽど良いと思うぜ? お二人さん?」
「弾。…本当にすまなかった!」
「だーから気にしとらんてば。今日はやけに素直じゃないのよ箒ちゃん?どったのよ?」
「―――なっ!? それはどういう意味だ!?」
「おおう!? やべ、ついのほほんちゃんがポロっと。」
「のほほん…?」
「布仏姉妹の妹と掛けまして、人の心の声と解きます。」
【その心は?】
「どちらも本音というでしょう♪」
「誰が上手い事言えと言ったぁ!? 全く! お前は何故いつもそうなのだっ!? 人が素直な気持ちで真面目に謝罪をだなっ!?」


ギャーギャーと騒ぎ出す俺と箒ちゃん。

ふはははっ! いつまでもシリアスな空気なんて、俺はご免被るっ!!
みんなで愉快に楽しく騒がしく! 人生明るく行こうじゃない♪

ついには、どこから持ち出したのか木刀を抜いた箒ちゃんが俺を追いかけ回し始めるまでに事態は発展。
ちなみにその中で、何気に木刀に『京都にて 1000円』と書かれているのを発見する。

…え? 実は結構、気に入ってたりするの箒ちゃん? ナイス趣味だ!!


――― とその時だった。
どうやら、シリアスの女神様は、いたく俺と戯れたいらしい。



「――― っ! 何故、人の事ばかり気に掛ける様な事しか言わないんですのっ!?」



突如、まるで悲鳴のような叫びが屋上に響いた。

突然の大音声に、俺と箒ちゃんが追いかけっこを中断し、声の発信源であるセシリーちゃんに視線を向ける。

その先では、セシリーちゃんが射抜くような瞳で俺を睨みつけており、両手をきつく握りしめ何かを堪えるよう震えていた。


「オ、オルコット…?」


箒ちゃんの戸惑った言葉も無視し、セシリーちゃんが言葉をまくし立てる。
まるで、溜めこんでいたものを吐き出すかのように。


「言い返せばいいじゃないですかっ!? 怒ればいいじゃないですかっ!? 蔑めばいいじゃないですかっ!? 責め立てればいいじゃないですかっ!? どうして私達を気遣う様な事を言うのですかっ!? 何故貴方はそうやって笑っていられるんですのっ!?」
「お、おおう?」


セシリーちゃんの様子に、俺は少し怪訝な呟きを洩らす。

…何かセシリーちゃんの、心の底に触れるような事があったのだろうか?

特に思い当たる節がない為、どう返したらいいのか分からん。

此処は慎重に行こう。

こんなにも激情に呑まれたセシリーちゃんは初めてだし。

それにきっと、これはセシリーちゃんにとって大きな分岐点になると、俺の紳士の勘が告げている。


「うーん? 責めるも、蔑むも。特にそんなことする必要なんてないと思うんだがね?」
「だからそれが理解できないと言っているんです!! 五反田さんは、ご自分の事をそこらの石と同じような扱いをされたのですよ!? どうして笑って許せるのですか!?」
「うーん…そう言われても。当の本人である俺がそう言っているんだしどうしようもないなぁ。」
「悔しくないのですか!? 私…女である私にそのように扱われて!?」
「俺は紳士だからねー? 女性にならそんな扱いされても、特に気にせんな!」
「―――っまたそうやって濁さないでください!! 男なのでしたらもっと堂々と構えてはどうですの!?」
「おおう? こいつは手厳しいねぇー? あっはっはっは。」
「―――っ何がおかしいんですか!? 男らしくない言って言われてるのに気付いてらっしゃらないんですか!? 笑ってないでちゃんと答えてください!!」
「うーん? セシリーちゃん。 何か変だぞ? どうしたんだ一体?」
「私の事は今はどうでもいいでしょう!! 話を反らさないでください!!」
「そう言われてもなぁ?」
「―――っいいから気にしないでください!!」
「いやでもね?」
「いいと言っているじゃないですかっ!!」


けほけほと、そのまませき込むセシリーちゃん。
呼吸を整えようと肩で息をする様子に、俺は内心頭を捻る。

うむん? セシリーちゃんて…たしか女尊男卑の傾向が高い娘じゃなかったっけか?

けど今の言動を聞くに、実はそれほど男って存在を否定していない気がする。

ってことはだ…。

セシリーちゃんの男に対する偏見は、何かしら理由がある。もしくはトラウマ。

その点を踏まえて頭を整理する俺。


――― もしかしてセシリーちゃん。俺と誰かを重ね合わせてるのか?


それもセシリーちゃんの男嫌いを構築する極めて重要な存在と。

誰かは知らんが、その人物と俺の行動、もしくは性質が似ているせいでセシリーちゃんの奥底の感情を荒立てちまったってことか。

おおう? これまた、厄介な問題発生か。


さてさて…どうするかねー?


困惑する箒ちゃん。
俺を誰かと重ね合わせ、感情に呑まれているセシリーちゃん。


そんな俺達三人のいる屋上に、五月の風が吹き抜けていった―――。



【楯無 SIDE】


「あらら、ダーリン探してたら…まさかこんな事態に遭遇しちゃうなんて。これは予想外ね。」
「会長? 流石に此処に居るのは少々不味いかと、盗み聞きですこれは。」
「あわわ…だ、だんだん大丈夫かな~?」


屋上の入り口付近の壁の死角から頭だけ覗かせ、ダーリン達の様子を窺う私と虚ちゃんに本音ちゃん。

本音ちゃんに、ダーリンが二人の女子生徒に連れられ屋上に行ったという情報を得た私は。二人を連れやって来たんだけど。

まさかこんな事態になるなんてね。
本当、ダーリンってば所々で騒動を起こす子ね。


「ん~。私としては、もしかして愛の告白っ!? て事態を期待してたんだけどなー?」
「期待通りではなく残念でしたね。会長。」
「あら? さっきまで不安そうに成り行き見てた生徒会会計さんのお言葉とは思えない発言ね~?」
「な、何を言っているのか分かりかねますね?」
「あら? ダーリンって結構優良物件よ? ん~♪ いらないなら私が貰っちゃおっかなー?」
「―― っな!? ほ、本気ですか…?」
「うっそ★」
「…お嬢様?」
「やーん♪ 虚ちゃんがこわ~い。 本音ちゃん助けて~。」
「…む~っ。」
「あ、あら? もしかして私ピンチ? ふ、二人共眼が怖いよ?」
「…。(ポキポキ)」
「…む~っ。」
「ほ、ほら! 今はダーリンの様子を見守る事が先決よ!? ダーリン大丈夫かしらね~? あ、あははは。」


ちょ、ちょっとからかい過ぎたみたい…危ない危ない。

今だ怖い視線を向ける幼馴染二人から強引に意識を外して、向かい合う三人の姿を視界に収める。


――― さて? ダーリンはどうこの場を治めるのかしら?


内に湧きあがった一つの興味に、私は口元に小さな笑み浮かべ成り行きを見守る事に専念する。
今一度、見極めさせてもらうわ。五反田 弾くん?


本当に、興味が尽きない子っていうのは面白いなぁ♪



生徒会が見守る中――― ダーリンはどこかやれやれといった様子で、頭を一つ掻き苦笑を浮かべていた。





後書き


更新を待っていただいた方々、大変お待たせして申し訳ありません。釜の鍋です。本当ならもっと早く更新する筈が、二十話目書いてる途中、パソコンの電源が落ち、しかもマメに保存しとらんかったせいで半分以上消えるという不幸に見舞われてしまいました。今度からマメに保存する事にします。さて次回、セシリー救済。生徒会本格介入に、凹凸コンビがこちらもようやくエンジンかかります。自分、物語をポンポン進めるのが恐ろしく下手みたいです。次の更新は出来るだけ早くしようと頑張ります。


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