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No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
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[27655] 第十六話  迷子一丁へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:6a99fb4e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/27 20:19
【一夏 SIDE】


…あー。
あ? ああ、どうも…織斑 一夏です。
こ、こんな挨拶だけど今は許してくれ。か、体が悲鳴をあげて辛いんだ…!


時間は過ぎて放課後。
俺はいつものようにIS操縦の特訓を終えて、ピット内で倒れ伏している所だ。


し、しかし今日はいつにも増して厳しかった。
いや、箒に徹底的に鍛えなおしてくれって頼んだのが俺だが、それにセシリアも加わるなんて聞いてないぞ俺は。
あんなの特訓じゃない。唯のイジメじゃねぇか!
畜生。二体一なんて卑怯だぞ。二人して俺をフルボッコしやがって!!(クラス代表決定戦を棚に上げる)


あー、弾がいりゃもう少しマシだったのによー。
なんだよ野暮用って、そういうのは早く言えってんだあの野郎…!


此処にはいない相方に、心の中でブチブチ文句を言いながら。俺はゆっくりと立ちあがる。


日はとっくに落ちた夜のアリーナ。
箒は先に部屋に帰り、俺だけピットに残っている状況だ。
流石に動けんと箒に言って、先に帰ってもらったのだが『・・・全く、軟弱者め。』と溜息吐かれたのはお約束。

心優しい幼馴染のお言葉は身に染みるぜ畜生…!! 見てろよ、次は必ず…必ず、勝てると、いいなぁ。(二人にフルボッコの結末しか想像できなかった。)

はぁ、と一つ溜息を吐いて。
俺はゆっくりと、シャワールームへと重い足を引き摺るように動かした。

とにかく今は思いっきり頭からシャワーを被りたい。落ち込んだ気分と一緒にさっさと洗い流しちまおう。
うん、それがいい。この後、弾と鈴。二人との約束もあるし。
部屋に戻る頃には、箒もシャワー浴び終わって着替えもすましている事だろうしな。

そう思った矢先―――――。


バシュッ。


「一夏っ!」


スライドドアが音をたて開くと同時に、俺のセカンド幼馴染がピット内に入って来た。
おお。来るの早いな鈴。

食堂では、急に不機嫌になり何処かに行ってしまったが。どうやら機嫌はなおったみたいだな。良かった良かった。

そんな俺に、鈴が近づき手に持っていたタオルと、スポーツドリンクを差し出してきた。


「おつかれ。はいこれ、タオルにスポーツドリンク。感謝しなさいよ?」
「おお、サンキュー鈴!」


これですよ。これが本当の幼馴染の対応というモノですよみなさん。
どこかのファースト幼馴染にも見習わせたいもんだ。…後が怖いから口が裂けても言えないが。

鈴の手からタオルを受け取り、顔を拭き。
続いて、スポーツドリンクを受け取り飲み込む。おお、温めとはこれまたありがたい。

そういや、中学時代の時もこうやって俺と弾に差し入れ持ってきてくれてたよなー。
少し懐かしくなって口元がゆるんでしまった。


「何をニヤニヤしてんのよ? 気味の悪い奴ねー」
「ぐ! 気味悪いって失礼な奴だな。昔を思い出してただけだよ。」
「昔って?」
「中学の時さ、俺と弾が何かと張り合って勝負した時とかに、汗だくになってる俺達によくこうやって差し入れ持ってきてくれたよなーってさ。」
「ああ、そういえばそうだったわねー。だってしょうがないじゃない? 汗臭い男が二人、
グラウンドで大の字になって寝てんのよ? さっさとどかさないと迷惑だと思って。」
「うわ、お前それはひでーぞ?」
「あはは、事実じゃん!」


楽しそうに笑うと、鈴はすぐ横の椅子に腰を落し俺を見上げてきた。
その表情に、不覚にも少しドキッとなる。

…こいつ、こんなに可愛かったけ?

弾じゃないけど、今の鈴はその、なんというか一年前よりも綺麗で、そして確かに女っぽくなったと思う。

あー。弾が今だけはいなくて助かったかもな、ぜってーからかわれる所だった。

そんな俺の心情を知りもしない鈴は、キョロキョロと周囲を見回しながら、俺にたずねてきた。


「そういえば弾の奴は? まだ来てないの?」
「ああ、まだ来てないぞ。野暮用ってのが長引いてるんじゃないか?」
「…野暮用ねぇ?」


野暮用という言葉に、鈴は急に顔を顰めて不機嫌な表情を作った。

どうしたんだ?
弾がまだ出来てない事が不満なのか?

疑問を受かべる俺に、鈴が言葉をもらした。


「一夏さぁ? 何で言い返さなかったのよ? あの馬鹿女二人にさ。」
「ん? 何の事だ?」
「何の事って…昼休みの時のことに決まってんでしょ?」
「昼休みって、何か言い返さなきゃならない事ってあったか? あったとしたら、鈴が急に怒って食堂出て行った位だし。」
「は?」
「なんで急に怒ったんだよお前? それと馬鹿女二人って、もしかして箒とセシリアのことか? お前それはちょっと酷くないか?」
「――― アンタそれ本気で言ってんの!?」
「へ? お、おう。」


俺の返事に、鈴がダンッ!! と音をたて立ちあがった。
先程までとは違って、その表情は憤怒に染まっていて、俺を見る瞳は驚愕に彩られていた。

な、なんだ急に? どうしたんだ?
そんな俺に向かって、鈴がピット内に響く程の怒声を上げた。


「信じらんない!! 何で一夏が気付いてないの!? あんた親友でしょうがっ!!? 真っ先に! 誰よりも先に!! あの馬鹿女達に言い返すのが当然じゃないの!!」
「お、おい。 一体何の事だよ?」
「弾の事よっ!! 何で分かんないのっ!? 鈍い鈍いとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかった!! あんた最低よ!! よくそれで友達面してられるわねっ!!」
「はぁ!? 何だよ急に!! 弾がどうしたってんだよ!?」
「あの馬鹿女達にハブられてたじゃないっ!! あいつら揃いもそろって一夏一夏一夏っ!! 弾が隣にいるって言うのにまるで眼中にないみたいな態度で!! 何を言っているのかも理解しようともしないで!! 自分の事ばっかり!! 弾が何も言わない事を良い事にあいつら――――!!!」
「弾がハブられてた? 何言ってんだよ鈴?」
「はぁっ!? あんたここまで言ってもまだ分かんないの!? 一体どういう頭の構造してんのよ!? あんたこそ何言ってんのか理解してるの!?」
「いや何言ってんだって、それは俺の台詞だ。弾がハブられてたって言うけど、そんなことある訳ないだろうが。」
「…はぁ?」
「というか、それが理由で怒ったのかお前? 何で弾がハブかれてるって考えつくんだ? 」
「…はい?」
「お前こそ何言ってんだよ?」


鈴がポカンとした表情で俺を見る。いや、それは俺がしたい事なんだが?

弾がハブられてたっていうけど、そんなことある訳ないだろうが。


俺と鈴の間に妙な沈黙が落ちる。


それから数秒して、鈴が一度深呼吸する。
うん。心を鎮めるのに深呼吸は効果的だぞ?

そして、米神を指で押さえながら眉間に皺をよせて考え始める。
なにやらちょっとした混乱が起こっているようだ。

さらに数秒して、鈴が口を開いた。


「え~…ちょっと待って? なんか一夏とあたしで色々噛み合ってないようだから。少し整理して冷静に分析しようか?」
「おう。別に構わないぞ。」


とりあえず二人で向き合って、近くの椅子に座る。
何故かお互い、椅子の上で正座するという傍から見たら珍妙な事この上ない体勢で。

よし、では存分に語るか鈴くん。


「えーっとまず先に、あの女達が言っていた台詞は覚えてる?」
「ん? ああ『一夏と訓練するのは私だ』とかなんとか言ってたやつか?」
「そう! それ! 他には?」
「えーっと…すまん、良く覚えてない。」
「こう言ったのよ。『一夏と私は特訓するのだ。放課後は埋まっている』『一夏の訓練には私は欠かせない存在なんですの』って。」
「おお、お前良く覚えてるな!」
「そんなことどうでもいいでしょ。それで? この言葉聞いてどう思う?」
「んー。言われて見りゃ変だな。」
「でしょ! そう思うでしょ!? あいつ等揃いも揃って弾を―――!!」
「なんか俺一人の為だけの訓練って聞こえるよなそれじゃ。実際は俺と弾の二人なんだし。」
「…は?」
「うん、言われてりゃ変だな。何もあんなに俺と特訓って強調する必要なかったんじゃねぇかな。 弾も一緒なんだし、言われて見りゃ変な事言ってるな? 箒にセシリアも。」
「ちょ、ちょと待ちなさい? なんでそこで弾が出てくるの?」
「へ? 何が?」
「だって! 今の話の中で、弾の事なんて一言も触れてないじゃない!?」
「何言ってんだ? 弾が一緒なのは当たり前だろ。」
「はい!? どういうこ…あ! わ、分かった! 弾とは、あの二人よりも先に約束してたとか!? 先約があるのも知らずに、勝手にあの二人が食い込んで来て、盛り上がってただけってこと!?」
「いや、特にそんな約束してねぇな。」
「はああああ!? じゃあなんでよ!?」
「なんでって、そりゃそうだろ。俺が特訓するなら弾が一緒なのは当然だろ?」
「え?」


さっきから鈴は何言ってんだ?
俺のことを、不思議なものでも見るような表情の鈴に、ちょっと呆れる。
UMAか俺は。

俺が特訓するのに、なんで弾が出てこないんだよ?
そっちの方が摩訶不思議だ。








「弾はいつだって俺の隣にいるんだぜ? 俺が何かするにしても、弾が一緒だってのは別に言わなくても分かんだろう? 前からそうだったじゃねぇか。」
「―――――――――――――――――っ。」







何やってても、すぐ隣で歩んでくれる。

何をするにも、すぐに手を差し伸べ支えてくれる。

いつだって横を向けば、あの気の抜けた笑顔でそこにいる。

いつだって俺と隣り合わせで立って、肩を並べていてくれる。




そんな親友が、なんで話の中に含まれてないなんて思えるんだ? 意味分かんねぇぞ。


「というか、弾がハブかれるなんて考えもしなかったぞ。なんだそりゃ? そっちの方が意味不明だ。」
「そ、それじゃあ。こういうこと? 一夏の中では、弾が一緒に特訓するっていうのは最初から確定だったていうこと? 約束もしてないのに?」
「ん? まぁそうだな。というか俺だけ地獄の訓練受けて、あいつだけ逃げるなんてそうは問屋が卸すかってんだ! だっていうのに、何だよ野暮用って、おかげで酷い目にあったぜ特訓で…二体一とか反則だろ~。」


そんな愚痴をこぼす俺の言葉を聞いているのか聞いていないのか分からないが。
鈴が小さく顔を伏せた。

どうかしたのか?


「…弾が隣にいることが、一夏の中ではそれが至極当然の事だから。あの馬鹿女達が何言おうが、弾がハブかれてるなんて考えつきもしなかったってこと? だから私が怒った理由が一夏には分からなくて、そして弾も一夏がそう思ってくれているって分かっていたから、本当に気にしてなかった…?」


ん? なんだ鈴の奴、 何か呟いてるな。
聞きとろうにも、声が小さくて聞きとりにくい。

おい、まさか俺の悪口じゃないよな?
今は体力的にも色々きついから、そういのは勘弁してほしいんだが。


「そっか…一緒にいるのが当然って思えるくらい、お互い必要としてるんだ。こいつら…。」
「おい、なんだよさっきからぶつぶつと。変な奴だな?」
「…。」
「おーい? 鈴? 聞こえてるかー?」


急に大人しくなって、顔を伏せる鈴。
なんだ? 笑ったり、怒ったり、困惑したりと忙しい奴だな。

何か様子が変だから、俺は椅子から立ち上がり鈴の傍へと歩み寄る。

ちょっと失礼かもしんないけど、仕方ないよな。
そのまま腰を屈め、伏せている鈴の表情を覗き込んで見た。

そこにあったのは―――。


「…ずるい。」
「は? 何が?」
「なんか、そういうのずるい。」
「何言ってんだお前? っていうかお前、何拗ねてんだよ?」
「何よ。二人だけで分かり合っちゃってさ。男って、何かずるい!」
「いや、ずるいって言われてもなぁ?」


唇を尖らして、俺の視線をプイッと避け、拗ねた顔をした鈴の表情だった。
なんだよ、今日はホントに意味分かんない奴だな。

とりあえず、鈴の言っていた言葉を少し頭の中で思い浮かべる。

えーっと、つまりこいつは。
何でか知らんが、弾が仲間外れにされてるって思って、それで二人にくってかかったてことか?

んー? やっぱり何か変だ。
なんというか、鈴らしくない返し方だ。

仮にそんな事があったとしても。
前まで鈴なら、『ちょっとー、弾。あんたハブられてるわよ~?』って弾に振って、弾の奴が『いいよいいよ。どうせ俺なんて…!!』ってな感じで冗談交じりに返して、周囲の人が慌てて謝って、全員を交えた話に発展させていく。
そんな光景が、俺には鮮明に思い起こせる。

場の空気を悪くするのを嫌う、弾の性格を知っている鈴なら、そうするのが自然と思えるんだけどな?


もしかして、弾が言っていた『鈴の事を、気に掛けといてやれ』ってのは、この妙な違和感を含めてってことか?


あいつ、本当に鋭いな。特に親しい奴に関しては。
全く、言われなくてもそうするっての。


今はいない相方に、内心苦笑し。
俺は鈴に視線を戻す。…まだ拗ねてんのかよ。


まぁでも、弾の為に怒ってくれたってのは、友達としては嬉しいもんだ。
しかし、あの鈴がな~?


昔を思い出し、ニヤニヤしてしまった俺に、鈴が気が付いて怪訝そうな視線を向けてきた。


「何ニヤニヤしてんのよ? 何かムカつく!」
「いや、だってなー? あの鈴が、弾のことでここまで怒るまでに変わるなんて思いもしなかったからさ。」
「はぁ? 何がよ。」
「だって、お前一番最初の頃はさ。弾の事嫌ってたろ? それが今じゃここまで仲が良くなるなんて最初は思えなかったからよ。」
「あ、あれはしょうがないじゃない!」
「いや、まぁそうだけどよ。」


そう、鈴の奴は最初。弾の事を嫌っていたんだ。
理由は単純。俺と弾が中学時代にファーストコンタクトをした翌日の事だ。


~ 回想 ~


『おはよー』
『あ、一夏おは…って!? いっ一夏!? どうしたのよその怪我!?』
『あ、ああこれか。ちょっと隣のクラスの奴と昨日やらかして。あ、ちなみに頭のコブは千冬姉のだからな?』
『そんな事聞いてないわよ!? なんで喧嘩なんかになったのよ!?』
『いや、何か知らんが突然『死に腐れこの外道が――――!! 喰らえシスコン釘バット―――!!』って、背後から襲われて。』
『な、何よそれ!? 大丈夫だったの!?』
『ああ、回し蹴りで返した。伊達に千冬姉に鍛えられてないぜ? その後、何か知らんが『蘭いの―――ち!!』とか叫んだ奴と乱戦になってこの様だ。いや、あいつ以外に強くてよ。』
『誰!? そいつ名前は!?』
『名前は確か、五反田とか言ってたな。いやでもその後の事の方が地獄だったんだ。学校に連絡がいったみたいで、千冬姉呼ばれて散々怒られてさ~。あいつも、たぶんお姉さんだと思う人に空き教室に連れ込まれて『ま、待ってくんろ! ネギは! ネギは嫌ああああ!?』って絶叫が聞こえたから相当な目にあったんじゃねぇかな?』
『隣のクラスの五反田ね!?』

ダダダダダダダダダダダ!!

『え? あ、おい鈴!?』

――――― ガラッ!!

『―――― このクラスにいる五反田ってどいつよ!? 今すぐ出しなさい!!』
『こいつですっ!!』
『え?』
『あんたね!? よくも一夏をっ!! この最低野郎――――!!』

バキィ!!(顔面蹴り)

『ごはああああっ!? ち、ちがっ!? 俺ちがっ!?』
『この! このっ!! このおおお!!』

バキ! ドカ! ゴス!

『おおう。見事な蹴りだ。すごいな~』
『――― お、おい!? 鈴!? お前何してんだよ!?』
『止めないで一夏!! こんな最低な奴、蹴られて当然よ!!』
『あ、お前昨日の。織斑だっけ? はよー。』
『お、お前!? 五反田っ!?』
『へ?(ピタ)』
『昨日ぶり。お互い大変だったな昨日は。』
『あ、ああ、そうだな。って、なんで鈴がお前じゃなくて他の奴攻撃してんだ!?』
『ご…ふ…(ガクッ)』
『数馬ーっ!? しっかりしろ!! くっ!! 誰がこんな酷い事をっ!?(駆けより抱き起し、悔し涙を流す小技披露)』
『『『『『お前だ―――――――――――――――――――――――っ!!』』』』』
『はぁ!? こいつが五反田!? そ、それじゃあこの倒れてるのは!?』
『御手洗 数馬というジェントルマンだ! なんてひどい事を!!』
『わ、わああああああ!! ごめんなさい! ごめんなさいいいいい!!』
『良いってことよ。』
『何でお前が答えるんだ!? というか何があったんだよ!?』
『身代りにした♪(爽やか笑顔でサムズアップ)』
『『この外道おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?』』


~ 回想終了 ~


何故だろう。目頭が熱くなってきた。
今度、数馬に電話しようかな…。

鈴も昔を思い出していたのか、何ともいえない微妙な顔になり、視線を泳がしていた。
うん、気持ちは分かる。弾は最初からあんな感じだったからな。最初は苦労の連続だったよな。


「ま、まぁ何にせよ。最初の頃とは変わったよな。鈴も。」
「それを言うならあんたもでしょ? なんだかんだ言いながら、すぐゲーセン一緒に行ったりするまで仲良くなってたじゃない。」
「ん? ああ、まぁなんだか変に馬があってな。気付いたらそうなってた。でも、その中にいつのまにかお前も入ってたじゃないかよ。」
「う…ま、まぁ。弾もそんなに悪い奴じゃなかったしね。極度のシスコンなだけで。一夏と同じで。」
「なっ!? お、俺は違うぞ!」
「はぁ? 何言ってんのよ。いつも千冬さん、千冬さん言ってたくせに。あんた達ある意味似た者同士だから馬が合ってんじゃないの? シスコンなのも大概にしときなさいよ。」
「ち、ちげぇよ!! 人聞きが悪い事言うなよ!」
「そうだそうだ!」
「はぁ? いい加減認めなさいよ。このシスコン♪」
「だから違うって!!」
「俺はマザコンぶりも大概じゃないぞ!?」
「「そんな事カミングアウトせんでいい!!」」
「当り前だ!! あんな美人で優しくてちょっと天然入ってる母親持ってみろ! 誰だってマザコンになるわ! 俺の母魂舐めるなよ!? 妹魂に匹敵するぞ!!」
「た、確かに蓮さんは美人だけど…って、いつの間にか弾が混じってる!?」
「でも姿見えない!? おい弾! お前何処にいるんだよ!」
「上見てみ?」
「「上?」」


いつの間にか、俺達の会話に入り込んでいた弾の存在に驚愕する俺と鈴。
でも、姿が見えず困惑する俺達は、弾の言葉に沿って頭上を見上げる。

そこには――――――――――――。

何処から持ってきたのか、吸盤を手と足にとりつけ。
天井に張りついて、俺達を見下ろす弾の姿が―――――――って怖っ!!?

不覚にもビビって、尻もちをつく俺。
鈴も『ひいいいいい!?』って、顔を青くし同様に尻もちをついていた。

なんでお前は毎度毎度、妙な登場をするんだ!?


「よう。おっ待たせー♪ 良い子にしてたかマイフレンド共!!」
「お待たせじゃねぇ!? なんで天井に張りついてんだお前は!? 気色悪い上に怖いわ!!」
「だから昔、軟体動物目指したっていったじゃないかよ。話聞いてたか?」
「あれマジ話だったのか!!」
「というか、いつから居たのよ!? 入って来る気配なかったじゃない!?」
「え? 鈴が入った時俺も入った。その後ずっと頭上で待機してた。」
「「ずっと上で見てたの(か)!? めっちゃ怖いわ!!?」」
「いや~」
「褒めてない!! リッ○ーかあんたは!?」
「話してみたら、これが意外と良い奴だったぞ。」
「話した事あんのかよ!?」
「おう、『これ、うんめぇよ~? 喰ってみれ、ほれ。』って言ってくれてなぁ」
「なんか妙になまってないか!? というか何を分けてもらったんだお前!? 死肉じゃないだろうな!?」
「え? 大根。」
「「なんでだよ!?」」
「いや、肉ばっかで栄養バランスが偏ってるの気にしててさ。今じゃもっぱら野菜中心らしい。自分で栽培するまでになってる。『今じゃ、ベジタリアンですわな。はははは』って笑ってたな。」
「「内容は良い事だけど、色々台無しだ!!?」」
「ところで、そろそろ脚立持ってきてくれないか? 降りられなくなった…!!(半泣き)」」
「「木に登った子猫かお前(あんた)は!!? なら最初からするなっ!!」」


頭上でプルプル震えだした馬鹿に、俺と鈴の怒声がピット内に木霊した。

本当に何やってんだお前は。




*   *   *




「いや~助かった。持つべきものは脚立だな。」
「おい、礼ぐらい言えよお前。」
「報酬はいつも通り、スペイン銀行の口座でいいか…?(劇画風)」
「口座持ってねぇよ!!」
「はぁ~。全くあんたらは本当に成長してないわね。」
「…一夏の奴の、成長した部分、興味ないか…?(コソコソ)」
「――――――っ!!? ばばばば馬鹿じゃないの!! なな何を言ってんの!?」
「え? 何の話だ?」
「これは風呂場での一品でな…?」
「そそそっそんなのきょきょ興味にゃいわよ!?(真っ赤になりながらも、視線は弾の手元へ)」
「おい、二人して何コソコソしてんだよ?」
「ほいこれ、一夏ブロマイド【風呂掃除バージョン】、風呂掃除の腕前はそりゃもう達人の極みへとぼるぐらっしゅ!!!」
「こんの馬鹿弾ーっ!(羞恥と怒りと、そして少しの落胆の混じったローリングソバット)」
「なんでいきなり喧嘩してんだお前ら!?」


脚立を用意してやって、天井から降りた弾を交え。
俺達は談笑を始めていた。

うん。やっぱ俺達三人集まると、なんかしっくりくるよな。

中学時代メンバーには、他に数馬や人里さん。中入江さんに灯下さんっていう友人もいるけど。
俺と弾と鈴の三人は、その中でも特に一緒に行動する事が多かったからなぁ。うん懐かしい。


それからまたしばらくして。


とりあえず、一気にシャワーを浴び終えた俺。

その間、弾と鈴が離れた場所で談笑していて、着替え持済ませた俺は、そのまま二人に合流して現在に至っている。ちなみに今だピット内だ。

まぁ、他に行く所なんて食堂くらいしかないし。
それに食堂に行くのを、何故か鈴が渋ったからな。

『ひ、久しぶりなんだし。私達三人水入らずでいいじゃない?』『え!? ミネラルウォーターいらないのか!?』『そっちの水じゃないわよ!!』って会話が繰り広げられた末の事だ。

やっぱり違和感を感じる。

弾に視線を向けても、弾も『ま、今は鈴の希望に沿ってやれボーイ』ってなアイコンタクトを返すだけだった。・・・まぁそれは別に構わないけど。


なんか、鈴が他の奴ら避けてる気がするんだよな。


思い起こすのは、鈴が箒やセシリアを見るあの眼だ。
最初から、あの二人に対して小さな敵意みたいなのを持ってた風に見える。そして最後は明確な敵意をぶつけていた。理由は聞いたけど、それだけじゃない気がする。

でも、鈴がそんな行動をとる理由が分らない。
たぶんだけど、弾の奴は大体察しが付いているんだと思うが、それを俺に言わないのは、まだ確信を持っていないからだろう。

そういう大事な話は、弾は必ず情報を集め、自分で確信を持った上で俺に打ち明けてくれるからな、昔から。
だから俺からは絶対に弾に聞かない。

俺達が二人で問題を解決する具体策を一緒に練るのは、弾からの相談という合図が出てからだ。下手に俺が動くと、弾の邪魔になるからな。その辺の事は暗黙の了解って奴だ。

でも、まぁ何をしていたのか気になるのは人の性って奴だ。


「そういや弾。野暮用って一体何だったんだ?」
「―――! だから一夏! それはっ!!」
「へい! 鈴さん! ストップだ! 野暮用があったのは本当だぜ?」
「…本当に?」
「おう。でも俺の為に怒ってくれたのは嬉しいぜ! サンキュー鈴! 俺涙が止まらないっ!(ダバダバダバ)」
「べ、別にそんなんじゃ…!!(照れ)」
「まぁそれはいいから。とりあえず涙止めろ弾。」
「おう(キュッ!)」
「今、蛇口を捻る音しなかったか!?」
【背景彩る効果音は任せてください】
「やっぱりお前か!? 『七代目五反田号』!? いらん小技はせんでいい!!」
「な、何この前掛け? 気になってたんだけど、まさか弾のISの待機状態なの?」
「おうよ! 俺の相棒『七代目五反田号』だ!!」
「七代目? あんた三代目どうしたの? あんなに大切にしてたじゃない?」
「待て鈴!! その話はきげえええええええええええええ!!?(メキメキ!!)」
【鈴嬢。 その話もう少し詳しく。】
「い、いいけど。あんた本当にIS?」
【勿論です。二代目の為に怒ってくれた事。AI(心)より感謝します。鈴嬢。二代目は誠に素晴らしいご友人を持ったようです。】 
「あはは、なんか照れるな。鈴で構わないわよ?『七代目五反田号』。」
【承知しました。鈴…さて二代目。キリキリ話せやおんどりゃあっ!?】
「ごあああああああああああ!? (ボキボキ!!)」
「「とりあえずちょっと待ってみようか!? 『七代目五反田号』!?」」


ある意味では、『七代目五反田号』も弾のストッパーだよな。
持ち主同様、悪乗りするのは勘弁してほしい所だが。

とりあえず、主人を痛めつける『七代目五反田号』を宥め。
俺達は談笑へと戻った。

本当に変なISだ。『七代目五反田号』


「ふー。助かった。サンキュー二人とも」
「まぁ、いいけどよ。それで? 今まで何をしてたんだよ弾?」
「ん? 人に会ってた。ちょっと調べ物を頼んでた人から、内容が揃ったから来てほしいって連絡あってな。お前が特訓してる時にな?」
「調べ物?」
「まぁ、ちょっとな。淑女には少々過激な物を…。」
「あ、あんた何調べてんの!? この助平!!」
「俺程オープンな助平そうはいないぞ!!」
「威張ってんじゃないわよ!?」

鈴の言葉をそれとなくかわす弾。
成程ね。鈴のことで何か動いてたのか。ま、弾らしいな。相変わらず行動が早いな。

「で? その調べ物は役に立ったのか?」
「一夏も、さりげなく助平だよな。気になるなんて♪」
「一夏っ! あんた!!」
「ち、違うぞ!? そうじゃなくてだな…!! だあああ! 結局野暮用は終わったのかって事だよ!」
「ふむ、実はそれほど成果がなかった。というか、罠だった。」
「「罠っ!!?」」
「ああ。まさか、あんな事になるなんてな…(劇画風)」
【激しい攻防だった。】
「一体何があったんだよ!? 罠!? 物騒すぎるぞ!?」
「ちょ、ちょっと弾!? あんた危ない事したんじゃないでしょうね!?」
「いや、まさか俺もあんな事態になるとは思わなくてなぁ――――――――――――・・・」



~ 回想2 ~

『よ! 待たせたな。』
『いえいえ、待っていませんよ。』
『そうかい。しかし悪かったな~・・・脱会した身なのに図々しい事頼んでさ。』
『いえいえ、そんなお気になさらず。』
『そう言ってもらえると助かる。』
『ええ本当に…こちらも手間が省けたというモノですらねぇ?』
『…何だと?』
『クククククク…(パチン!)』

ザザザザザザザザザザザザザザザッ!!(周囲に現れる黒い影)

『――――――――っ!? これは一体どういう事だ!?』
【周囲に敵影あり。二代目、申し訳ありません。ハイパーセンサーの索敵を怠っていました。】
『ふふふ、まさか貴方の様な子供が、かの有名な『DANSHAKU』だったとは…まぁ、今となってはどうでもいい事ですが。』
『お前!? 『セバスチャン』じゃないな!? 誰だ!?』
『(びりびり)…お初にお目にかかります『DANSHAKU』、私は『ドーベル』と呼ばれております。まぁ、覚えても貰わなくても結構です。ここで貴方には消えてもらいますからねぇ?』
『『セバスチャン』はどうした!?』
『ああ、彼ですか? 惜しい所で『いっくん』の邪魔が入り取り逃がしてしまいましたが…まぁいいでしょう。おかげで貴方と言う大物を仕留める事ができるのですから。』
『一郎か…お前達【世界紳士連合】じゃないのか!?』
『いえいえ、勿論【世界紳士連合】ですよ。といっても貴方達のいた頃とは大きく変わっていますがね? ようやく貴方と、『いっくん』という障害が消え。動き易くなったというのに、今再び貴方と言う存在が現れるというのは私共としては困るんですよねぇ。』
『…どうやら、俺と一郎が抜けた後【世界紳士連合】に何かあったようだな。お前らの目的は?』
『選りすぐりの淑女のみを支える。それが我らの目的。素行の悪く、品性の欠片もない女などに、救いの手を差し伸べようなど一体何の大義がありましょう? 淑女として相応しき女性のみ残し、他など見限ってしまえばいい。その先に我らが望む真の『紳士と淑女の世界』が待っているのですから。』 
『クズだな。それは紳士じゃない、凝り固まった野郎そのものの考えだ。どんな女性であれ救いの手を差し伸べる。それこそが紳士だ!!』
『ふん、昔堅気な考えだ。しょせんガキか。まぁいい、どうせ貴様はここで消えるのだから。』
『舐めるなよ? 俺が【世界で二人、ISを使える男】の一人だと忘れてないか? 『七代目五反田号』!!』
【展開。いつでも行けます。】
『もちろん忘れてません。――― お前達。』

『『『『『『『『『『装着完了』』』』』』』』』』

『―――― これは!?』
【正体不明の敵影を多数補足! ロックされています!】
『ISだけがパワードスーツだと思われては困りますねぇ? ISには遥か遠く及びませんが【世界紳士連合】は、独自のパワードスーツの研究を重ねてきました。ISを扱う淑女を支えようという理念の名の元に。世界はこれだから愚かなのです。何故ISだけの研究のみを追求するのか。全く嘆かわしい事です。』
『まさか、実用化まで漕ぎつけたのか!?』
『そんなまさか、まだまだ試作段階です。今回は特別です。貴方を仕留める為ここまでしたのですから、これで心置きなく逝けますね?『DANSHAKU』?』
『…。』
『ISには性能で大幅に劣ります…が、IS一体に対し数十体で掛かればどうでしょう? 装着している同志達は訓練を積んだ精鋭です。まだISを使いこなせない貴方で対処できますか?』
『…。』
『ふふふふふ。もはや言葉もありませんか? 『DANSHAKU』とは名ばかり、所詮ガキですねぇ? ははははははっ!!』

『…御託はそれだけか?』

『何?』
『お前ら、俺が『DANSHAKU』と呼ばれている所以を忘れたか? 『DANSHAKU』は【男爵】であり、そして同志達が『弾爵』と親しみ込め俺を呼ぶからだ。』
『それが何か? 唯の呼び名でしょう?』


『違うな【世界紳士連合】で、呼び名が付くこと…それは同志達が認め。紳士に恥じない存在であるということだ。【ギュピ――――――ン!!!!!】』


『―――――――――っ!!? ば、馬鹿な!? こ、この凄まじいプレッシャーは!?』

『『『『『『『『『『ひぃ!?』』』』』』』』』』

『お前達に、本当の紳士の力というものを魅せてやる。全員まとめて掛かってこい! 『七代目五反田号』!! 展開!!』

カッ!!!

『ひ、怯むな!! 相手は子供で、しかも一人だ!! かかれっ!!』
『『『『『『『『『う、うおおおおおおおおおおおおっ!!』』』』』』』』』』


ドガアアアアアアアア――――――――――――――ンッ!!!!!!


~ 回想2終了 ~


【続く】
「次回もお楽しみに。」
「「一体何やってたんだあああああああああああああああああああ!!?」」


駄目だ!! こいつ一体何やってたんだ過去に!? 意味分からん!!

【世界紳士連合】!?
IS以外のパワードスーツ!?
そして『弾爵』ってなんじゃそらあああ!?

お前此処じゃない何処かで、なんか主人公やってないか!?


「しかし、俺の抜けた後に【世界紳士連合】に一体何が…?(窓から空を見て、シリアス顔)」
「いやいや待て!? その前にお前体は!? 無事なのか!? 襲われたんだろう!?」
「そ、そうよ!! 数十体に襲われたんでしょ!?」
「あ、瞬殺したから。」
「「敵弱っ!? あの前振りの割にザコだった!!?」」
【最後は見物です。相手のパワードスーツを、一枚一枚目の前で引き裂いてやりました。『や、やめてくれえええ!? それを造るのにどれだけの予算をか【ビリリッ!!】うわあああああああああああ!?』と、叫んでいました♪(ゾクゾク)】
「「鬼だ!? そして真性のSだ!!?」」
「まぁ、そんな割とどうでもいい事はほっといて。あんまり収穫はなしでな? ま、別の手で調べ直すさ。」
「いや、割と重要っぽいぞ…?」
「あんた本当になんなのよ一体?」
「紳士!」
「「…はああぁぁ。」」


と、とりあえず。まぁ、大事にならなくて良かったってことで良いか。
真剣に考えると、色々疲れるからな。こいつの場合は特に。

しかし収穫なしか。それはちょっと俺も残念だ。鈴に関する事だろうし。
しょうがないか、俺は俺で鈴を気に掛けておくかな。

そう思って、ふと時間を確認。

結構遅い時間だし、そろそろお開きかな?

弾に視線を向けると、弾も小さく頷く。


「―――― さて、そろそろ部屋に戻ろうぜ? 随分遅くなっちまったしな。」
「え? あ、本当だ。流石に不味いわね。」
「夜更かしは、紳士の肌に悪いんだよな~。」
「はぁ。またこの馬鹿は変な事を。」
「気にしたら負けだぞ? 鈴。」
「今、気にしたから俺の勝ちだな!!」
「…。」
「あ、痛っ!! 無言で拗ね蹴りは…!! 痛っ!! ちょ、待てぎゃあああああ!!?」
「ははは、何やってんだよ。行くぞ二人とも」


騒ぐ二人に呼び掛け、ピットを後にする俺達。

しかし、結構時間を掛けたな。なんだかんだ言いつつも、やっぱ楽しいよな。三人で馬鹿騒ぎするのは。

そのまま、三人で並びながら廊下を歩く。
その間も、ワイワイギャンギャンと騒がしい俺達だけど。
やっぱり居心地は良かった。うん、楽しい。


そして――――― それは起こってしまった。

それは、廊下で別れ道にたどり着いた時の事だった。


「おっと? そんじゃ俺はこっちだからよ。また明日なマイフレンド共!!」
「ん? そうか。それじゃあな弾。また明日。」
「…え?」
「おう、一夏よ。お前鈴を部屋に連れ込んだりするなよ? この狼野郎! 無理矢理事を運ぼうとした時は…ターミネートモードに移行する。(眼が赤く点滅)」
「するかアホ!! というかお前本当に人間だろうな!? 俺の部屋には箒だっているんだぞ!!」
「…は?」
「いなかったら連れ込む気だったのか!? 辞世の句は済んだかこの外道っ!?」
「違うってんだよ!! 話聞け!」
「俺という者がありながら!!」
「気色悪いこと言うなっ!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? 一体どういう事よ!? あんた達一緒の部屋じゃないの!?」
「「ん?」」


お互い胸倉掴むまでに接近した時、鈴の声が響き渡った。

俺と弾が一緒の部屋って、あー。そうか普通に考えりゃそうだよな。
とりあえず、弾とは一時休戦して鈴に向き直る。

俺と弾の視線の先には、あり得ないって表情の鈴がいた。
なんか、物凄く驚いてるな。
まぁ、気持ちは分からんでもないが。俺も理由は良く知らんからなぁ。


「お、おう。部屋は別だぞ。俺と弾は。」
「はぁ!? 何でよ!? 男二人なんだし一緒にするのが普通じゃないの!?」
「まぁそうなんだけど、俺も理由は知らないんだ。色々あったとしか聞いてなくて。」
「あー…あれだ、早く淑女達だらけって状態に慣れるようにって意味じゃないかね? ほら、やっぱ野郎二人って環境は色々きついしな。」
「お、そう言う考えもあるか。実際どうなんだかは不明だけどな。」
「そ、それじゃあ!? 二人とも女子と一緒に寝食共にしてるって事!!?」
「ん? そうだけど。まぁ、俺の場合は箒だから助かってるな。幼馴染だし、これが他の娘だったりしたら緊張して大変だったろうしなぁ~」
「あー…俺はのほほんちゃんって言う萌え生物だったおかげで、毎日癒されてるぜ!!?」
「箒って…あの昼間の?」
「ん? そうだけ「おい待て一夏。それ以上は言うな。」ど?」
「あいつが…一夏と同じ…部屋…!?」
「…やべ、不味った。」
「へ? 何か言ったか弾?」



―――――――― その瞬間だった。俺達のいる廊下に、何かを叩き付けるようなとんでもない音が響いた。


その音の大きさに驚いた俺は、音の下方向に咄嗟に視線を向けた。

発生源は鈴の足元。思いっきり廊下に足を振り落としたらしい。

お、おい? 廊下でそんな音立てたら…っていや平気か? 部屋は防音だって聞いたし。
――――って、そんなこと考えてる場合じゃない!!

鈴の様子が変だ。
うつむいて表情は見えないが、体中を怒りに震わせている。
はっきり言って、こんな鈴は初めて見た。

な、何だ? どうしたんだよ鈴!?

隣の弾も、いつもと違って表情を引き締めてる。こいつがこんな表情する時は・・・・とんでもない緊急事態ってことじゃねぇか!!?


「あいつが…!? あの、弾を蔑にしたあの女が…!? 一夏と一緒に居る!? 一夏の隣にいるですって…!?」
「お、おい鈴?」
「待て、一夏。下手に口を開くな。お前じゃ刺激しかねん。それに…今の鈴に何言っても聞こえてねぇよ。」
「ど、どういうことだよ?」
「不味った。俺とした事が…久しぶりに三人で盛り上がったから気を抜いちまった。完全に俺のミスだ。」
「だ、だからどう言う事だよ!?」
「お前は悪くない。よく鈴を気にしてたしパーフェクト。俺のせいだスマン一夏。」


弾のミス?

何言ってんだ? それこそ変だ、こいつはいつだって人の事を考えてる。きっと、俺が余計な事を言ったに違いない。

くそ!! 何やってんだ俺は!

何を言ったのかも分からない自分に腹がたつ。でも今はそんなことより――――!!


「…ったら…いいわけね…。」


鈴が低く唸るように呟き。
俺と弾は、揃って鈴に視線を戻した。


「り、鈴?」
「幼馴染なら、いいわけよね…!?」


そう呟いた鈴は、ギッと顔を上げる。


その表情は―――― 憤怒と憎悪――― そして…怯え?


なんだ? なんで鈴はこんな顔をしてるんだ?
この一年の間に、一体何があったんだよ鈴?


「渡すもんか、絶対渡すもんか! あんな女に…私に残った最後の居場所を絶対渡すもんか…っ!」


「―――― っそういうことかよ!!」
「弾?」
「おい鈴! ちょっと待――――!!」


弾が鈴を呼んだ瞬間。

鈴はその声も聞こえてないのか、俺と弾をおいて走り去ってしまっていた。









嫌な沈黙が落ちる。
弾も苦い表情を隠せないまま、鈴の走り去っていった方向を見ていた。

鈴、一体どうしちまったんだよ。

そんな風に考える自分にまた苛立つ、なんで分かってやれないんだ俺は!
弾は気付いてるって言うのに!!


「…悪い。一夏、最悪の展開になっちまうかもしれん。」
「お、お前のせいじゃねぇだろ!? 俺がどうせ余計な事言ったんだろ!?」
「遅かれ早かれ、鈴には話しとくべきだったんだ。そうすりゃ今みたいにあそこまで激昂はしなかった筈だ。突然の事に鈴の感情が堪え切れなかったんだ。先延ばしにした俺のせいだ。お前は悪くねぇよ。」
「―――――――っ!」


まただ。

なんでお前は、全部抱え込んじまうんだよ…!
辛いだろ? 痛いだろ? 悲しいんだろ?

だったら半分俺に渡せよ。
俺はお前の相方だろ? 俺にも頼ってくれよ。 俺にも支えさせてくれよっ!!

そんな俺の表情に、弾はヘラリと笑顔を返す。
いつも通りの気の抜けた顔を。

とぼけた表情という【仮面】を。


「何て顔してんだよ? イケメンが台無しだぜ一夏?」
「…。」
「―――― ま、何にせよだ。」


そう言って、弾は鈴の走り去った廊下の先を見据え―――――



「――――― 鈴は、絶対助けるぞ。力を貸してくれ、一夏。」
「――――― 当り前だ。捨て駒だろうが何だろうが好きに使え、弾。」



沈黙の降りた廊下に、俺達二人の声が力強く鳴り響いた―――――――。














それは暗く深い森の中。

何も見えず、ただ手元の小さなランプを頼りに、迷子は進む。

頼れるのは自分だけ。頼れるのはこのランプだけ。

今にも消えてしまいそうな小さな光。

それだけが、迷子が縋る唯一の希望。

深い深い森の中。

暗い暗い森の中。

出口も分からず、迷子は進む。

でも迷子は知らない。

そんな深く暗い森に、足を踏み入れる者がいる事を。


――――― 白い騎士と碧の道化が、自分を探しに森に踏み込んだその事を。


迷子はまだ、その事を知らない。



後書き

更新しました。どうも釜の鍋です。―――― なんでしょうかこのシリアスは!? うわぁ鈴が大変な事になってます。でも、二人と過ごした日々が楽しかった分だけ、彼女に落ちる影は深いんじゃないかと。で、なんか裏で弾が主人公してますね(笑)。さて次回。一夏との約束に、弾のフォローにクラス対抗戦前の一騒動です。次回はちょっとだけ鈴もケアします。はっきり言ってダーク過ぎますから(汗)。


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