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No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
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[27655] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:6a99fb4e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/27 17:54
「ちわっす! やってきました決闘日。ゲストの五反田 弾です。」
「お前な。」
「おい、勝手にゲストになるな主賓の片割れ。」



ついにやって来た、セシリ―ちゃんとの決闘の日。
只今俺と一夏は、第三アリーナ・Aピットにて、来る戦いに備え準備中。

俺と一夏の隣には、箒ちゃんが一人付いてくれている。
のほほんちゃんは、なんでもアリーナの客席で応援するとのことで、ここにはいません。

ああ癒しが、癒しが足りない!

まぁ、箒ちゃんもダイレクトに美人だからいいんだが、こう、優しさが…ねぇ?


「お前失礼なこと考えてないか?」
「師匠、貴女との修行の日々。この弾、生涯忘れません!」
「誰が師匠だ。全くお前という奴は。」
「まぁ、箒には色々世話になったし、あながち間違いでもないんだよなぁ。」
「シャワー浴びてる姿は眼福モノだったしな? うん世話になったな。」


ビシィッ!

おう、俺の発言に空気が凍った。箒ちゃんは顔が引きつり、一夏はモアイ像のような顔をしている。


顔芸のバリエーションが増えたなぁ。


「な、何っ今なんと言った!? の、覗いたのか貴様ら!?」
「してない! してないぞそんなこと!」
「このお兄ちゃんがどうしてもって言うから。僕は止めたんだホントだよ。」
「俺を主犯に仕立て上げる気か!?」
「僕良く分かんない。」
「そのムカつく子供声を止めろ!」
「こっこの変態共め! 許さん、成敗してくれる! そこに直れ!」
「まっ待て箒。出鱈目だ、そんなことしてないぞ!」
「黙れ! 聞く耳もたん!」
「聞けよっ!? 俺は別に興味ないって!?」
「…お前って、マジで馬鹿じゃない?」
「は? なんだよ弾。何を言って――――どわぁ!?」
「――興味ないっ!? 興味ないとはどういう事だ!?」
「なんで怒るんだ!?」


おおう。鈍感要塞はいまだ健在のようだ。

竹刀片手に、一夏に黒いオーラを向ける箒ちゃんを横目に、俺は今日までの事を振り返ってみた。

おー? 一夏の奴凄いな。真剣白刃取りとは腕をあげたな。感心感心。


あれから今日までの一週間。

俺達の修行は、簡潔に言うとこうだ。

放課後は、師匠と一夏に追いかけ回されるデットヒートを繰り広げ(捕まれば即剣道場へ強制連行)。

少しは仲が良くなった師匠に、名前で呼んでもらえるようお願いして、渋々OKもらったり。

『七代目五反田号』で基本動作の復習を行い。勝手に訓練場使った事がばれ、千冬さんに追い回されたり。

二人して部屋に集まり、あーでもねーこーでもねーと参考書開くも、ちんぷんかんぷんで揃ってダウンし、のほほんちゃんと箒ちゃんに縋ったり。

夜食作ると、のほほんちゃんや箒ちゃんが、いつの間にかテーブルに付いていたり。

人生ゲームで白熱のバトルを繰り広げ、怪我人が出たりと激動の一週間だった。

うん? 修行と呼べるかこれ?
まぁ、俺は自分なりに作戦もいくつか立てたし、一夏も何故か気合い入れて剣の稽古に打ち込んでいたし、悪かないとは思うがね?


―――――で、だ。別にそれはいい、それは良いんだが問題は。


「なんで決闘直前なのに、一夏の『専用機』が届いてないのかねぇ?」
「おい。お前人を散々な目に遭わせといて何言ってるんだよ一人で。」


ん? 一夏が戻って来たか。

おーおー、箒ちゃんもまた随分不機嫌そうで。


「なんだ生きてたんか。この覗き魔。」
「死にかけたわドアホっ!? 人を犯罪者扱いすんな!」
「まぁ、そんのことより。なんで未だに一夏の『専用機』が来ないのかね?」
「話をすり替えやがった…。」


ぶつくさ言う一夏は放置。ふむ、まぁ届いてないモンは考えてもしょうがないか。

それじゃ俺は一足先に自分の準備でも始めますかね?

少し一夏達から距離をとり、待機状態の相棒に目を向け言葉を発する。


「『七代目五反田号』展開。」


まぁ。いつものようにIS装着の言葉を口にした俺だったのだが―――。







【ライダー風、宇宙刑事風どちらで?】







相棒に表示された文を見て、硬直した。




―――――なん…だとっ!?


「い、一夏ああああああっ!? 緊急事態だ! 俺に力を貸してくれええええ!!」
「ど、どうした弾!? 何があった!? ISのトラブルか!?」
「な!? 待っていろ! 今先生をよ――――っ!」
「ライダーと宇宙刑事ならどっちを選ぶ!?」
「「は?」」
「だから! どっちか聞いてんの! やはり変身ポーズの決まるライダーか!? それとも瞬間装着の宇宙刑事か!?」
「…何を言ってるんだお前は?」
「あーいやまぁ、なんとなく分るが。それは重要なのか?」
「ここはやはり腰に巻いてることだし、変身ポーズの決まるライダーで…いや待て!? 宇宙刑事なら『もう一度スローで見てみよう』とかナレーションが入ってリプレイが流れるんじゃないか!? 駄目だ! どっちも捨てがたいっ!」
「…聞いてないようだな。」
「もう好きにしろよ。はあぁ。」


おのれ『七代目五反田号』!

この究極の二択の一方しか選ばせないというのか!?

ええい、どうする。どうしたらいい。俺はどうしたら良いんだ――――!?


「若さって何だ!?」
「来ないな、IS。」
「うむ。」


苦悩する俺の背後で、二人のそんな呟きが聞こえた。




*   *   *



数分後。

しばらく苦悩した末、今回は宇宙刑事をとった俺。

やはりリプレイが流れやがった、恐るべし『七代目五反田号』。何気に一夏も「すっげ!」とか言って目を夏輝かせていた。野郎だもんね。


とりあえず、ISの装着を無事完了した俺は、腕を回したり、ハイパーセンサーやら各駆動系のチェック、エネルギーの確認等をして戦闘の準備を始めていた。

ふむ。特に異常なしだな。

カラーリングは碧に統一され、他のISに比べるとかなり武骨な外見をしている『七代目五反田号』。 見た目は強そうだから結構気に入っている。


そのまま黙々と準備を続ける俺の周りには、幼馴染コンビが並び、しげしげと俺の行動を観察していた。 


「ふむ? 二人してなんばしよっとね?」
「いや、いつ見てもなんかゴツイなぁと思ってさ。」
「うむ。 貫禄のある姿だ。 操縦者は別として。」

失敬な。
何処に出しても恥ずかしくない紳士な俺にむかって何てことを。

他愛もない会話を続けつつ、一夏の『専用機』の到着を待ち続ける

ちなみに視界の端には【待機状態のISを確認。ISネーム『ブルー・ティアーズ』。操縦者 セシリア・オルコット】と、表示されている。

もう待っているのかセシリーちゃん。 むぅ、レディを待たせるとは紳士としてあるまじき行い。

こうなったら、俺が出向いて担いで持ってくるか?

半分本気でそう思った時。


「お、織斑くん織斑くん織斑くん!」


男の夢の詰まった塊を揺らして、マヤたんが駆けこんできた。
おお、眼福眼福。

何? 『記録』した?

相棒っ! お前って奴ぁっ! まぁそれはともかく。


「俺の一夏を馴れ馴れしく呼ぶとは言い度胸だマヤたん。」
「え? ええええぇぇ!?」
「山田先生、コイツは無視してください。それよりも落ち着いてください。はい深呼吸。」
「箒ちゃん! ここで『一夏は私のだ!』って言わなきゃ駄目じゃないか!?」
「あっアホか!? そそそんなこと言えるかっ!」
「す~~~は~~~す~~~~は~~~。」
「はいそこで止めて。」
「うっ。」
「じゃあ、ちょっと上着脱いでみようか?」
「ぼほぉっ!? げほげほっ!」
「普通にセクハラ発言をするな馬鹿者!」


パァン! ガンッ!

ピット内に、軽快な音が鳴り響く。

おう、千冬さん登場ですか。
IS装備中の俺まで叩くとは、律儀な人やね? 全然痛くない。

隣で一夏が「お前だけずるいぞ・・」と呟いているが、知らんがな。


「ち、千冬姉。」


パァン!


「織斑先生と呼べ。学習しろ。さもなくば死ね。」
「ようし、介錯は俺が受け持とう。だれかフライパン持ってきてー。熱せられた表面で、顔を往復連打するから。」
「介錯ではなく拷問だそれは!」
「くくく、楽に死なすかよ…。(暗笑み)」
「ここここ怖いです! 五反田くんがすごく怖いです!?」
「はぁ。話が進まん、山田先生。」
「へ? あっはい! えーと、来ました、織斑くんの専用ISが届きましたよ!」


おーついに来たか。さて? 一体どんなISかね。






【一夏 SIDE】


――――― そこには『白』がいた。

白、真っ白、飾りの気のない無の色。 眩しい程の純白を纏ったISが、その装甲を解放して操縦者を待っていた。
弾のISを『剛』とするなら、こちらは『勇』といえるだろうか。洗礼された姿の奥に、強い力を宿しているように見える。

「これが…。」
「はい! 織斑くんの専用IS『白式』です!」
「おーすげぇな。真っ白で綺麗じゃないか―――いでで、やめい。お前が一番だから圧迫してくんな。おちおち、他のISを誉めることもできんのかい。」
「何をしているんだお前は」


周囲の雑音を無視して、千冬姉が近付いてきた。


「体を動かせ。すぐに装着しろ。時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやれ。出来なければ負けるだけだ。分ったな?」

「―――――― ふむ。」

せかされるまま、千冬姉の言葉に従い、ISに体をあづけていく俺。
その間も、体が馴染むようにISと繋がっていく。

集音率が高まったせいか、千冬姉の言葉を聞いた弾の、何かを考え込むように呟いた声も鮮明に聞こえる。

【戦闘待機状態のISを二機感知。右方向ISネーム『r【削除】七代目五反田号』。操縦者『五反田 弾』。戦闘タイプ中距離・近接戦闘型。特殊装備有り。前方上空。ISネーム『ブルー・ティアーズ』操縦者『セシリア・オルコット』―――――】

「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」
「聞こえってかー?一夏。」


いつもと同じような声。だけど、その二つの微妙なブレに気付く。

―――― 二人とも心配してくれているのか。


「大丈夫、千冬姉。いける。」
「そうか。」
「弾の方こそ大丈夫か?」
「俺はいつも通りよ。 毎日絶好調! でも最近妹分がっ!」
「そんなことまで聞いとらんだろうが。馬鹿者め」


いつも通りの台詞の奥に見える、あいつの緊張を解そうとしてくれる気遣い。
ホント。良い相棒に出会えて幸せもんだな俺は。

箒の方に意識を向けてみる。何か言いたそうな、けれど言葉に迷っているようなそんな表情。

弾が、そんな箒に気付いたようだけど、手を軽く振って止める。

一瞬キョトンとした弾だが、次にはヘラっとした顔で笑い、俺に頷く。


「箒。」
「な、なんだ?」
「行ってくる。」
「あ、ああ。勝ってこい。」
「帰ったら、のほほんちゃん含めた四人で祝勝パーティー開こうぜぃ! 俺の腕が唸るぜ!」
「…ふっ、気の早い奴だ。」
「ははは。ま、それくらいの意気がなくちゃな。―――行くぞ。弾。」
「あいよー。」


弾と並び立って、ピットゲートを進む。不思議な事に緊張はさほどないな。

弾の奴も鼻歌を歌いながらゲートを進む。まぁ、いつも通りだな。


「っと、そうだ一夏。一ついいか?」


不意に、弾の奴がこっちに振り向き声を掛けてきた。

なんだ? トイレか?


「どうかしたのか? 弾。」
「おう、ちょっと話があってな?」
「何だよ?」
「な~に。大した話じゃないんだがな?」


そう言って、ヘラりと笑いながら。話を続ける


「ちょっとした作戦を思いついてな。乗らないか?」
「作戦?」
「おう、セシリ―ちゃんとこのまま戦りあっても、俺らの勝率は一割にも満たないんだぜ? 単純計算しても」
「うげっ。マジかよ?」
「相手はイギリスの代表候補だ。当然だろう? 何人退けているか聞きたいか?」
「いやいい。聞かないでおく」


ぐぐ、知りたくない情報を。

こういう時は嘘でもいいから、勝率半分くらいとか言ってほしいもんだぞ。気合と根性でどうにか…弾にそれを求めるのは無駄か。


「だが。」


そう言葉を区切った弾が。先程までの表情とは一変し、戦いに赴く男のそれへと変わる。


「勝率を引き上げることくらいは出来る。後は俺達次第な策だが、どうする?」
「――― 乗った!」
「――― そうこなくちゃな!」


中学の時と同じように、俺達はニヤリと笑い合う。

悪いなセシリア・オルコット。

こうなった俺達は――― 強いぞ。





【セシリアSIDE】


「あら、逃げずに来ましたのね。」

ゲートから出たきた、二体のISが私の前に現れた。

このわたくしを恐れずにやって来た、その心意気は認めても良いですわ。

いえ、勇気と無謀を履き違えた、勘違いを起こしている男二人に憐れみすら感じますわね。

「待たせたなハニー!」
「誰がハニーですか!? 待ってもいませんわ貴方達なんて!」
「戦闘待機状態って待ってる事にならんのかね?」
「なるんじゃないか? よく知らんが。」
「やっぱり待っててくれたんだねハニー! 照れんなよ!」
「だから止めなさいと言っているでしょう!?」


碧の、他のISに比べやけに装甲の厚そうな機体から、不愉快なあの男の声に、つい反射的に応えてしまいました。

全く腹立たしい! このわたくしを、あそこまで散々馬鹿にした挙句、今なお馬鹿にし続ける男は貴方達が初めてでしてよ!

ふん。まぁでも、それも今日までですわ。一体貴方達が、誰に挑み、また無知であったか思い知らせてあげますわ。

でも、最後の慈悲として一応降参も受け入れて差し上げましょう。


「最後のチャンスをあげますわ。」
「マジで!? 撮影はどのくらい近づいて良いんですか!?」
「はい? 何を言ってますの?」
「おい弾? 意味分からんぞ。」
「馬鹿野郎! 見ろ! あのISを纏ったセシリーちゃんのきわどい格好を! この姿をこんなに近くで撮影できるなんて確かに最後のチャンスだぞ!?」


―――――――― はっ!?

カッと、顔中熱が集まるのが分ります。

そして、勢いよく自分の肌が露出している部分を、大急ぎで押さえてしまいました。


「どっどど何処を見ていますのぉぉーっ!?」
「くい込みとか! チラチラ見える生肌とか最高ですね!」
「いやあああああああ!? 変態!! 痴漢がいますわああああ!?」
「お前は何処のエロ親父だ!?」
「そんなこと言って、一夏も好きなくせに♪」
「巻き込むな!」


目の前で、白と碧のISが、お互いギャンギャン言い合っている隙に、わたくしは自分の格好を、大至急チェックしました。 

く、くい込みってなんですの!? そんな所ありませんわよね!?

うううう! こ、このような辱めを受けるなんて!?

やはり男なんて獣ですわ! IS装備の女性をそんな目で見るなんて、これですから極東の猿は嫌なんです!


もう良いですわ。

慈悲を掛けて差し上げましょうと考えた。私が間違っていたようです。

身に程を弁えない、愚かな猿には調教こそが必要ですわね!?


「―――― 覚悟なさい。」


手に持った【スターライトmkⅢ】を二機のISに向け、エネルギーを装填する。
自分のISからの警告があったのか、二機がこちらに目を向ける。


「―――って! 狙われてんじゃねぇかよ!?」
「おう。せっかちだなセシリーちゃん?」
「ふざけてる場合か! 来るぞ!」
「――― 武装展開っ!」


「――― お別れですわ!」


狙いを定め、トリガーを引く。

同時にキュイン! と鋭い音が響き、二機に向かって閃光が走る。

―――まずは挨拶ですわ。 存分に受け取りなさい!

そのまま、二機を貫く閃光――――のはずだったのですが。



「五反田食堂秘伝!【中華鍋バリアー】!」


キュワン!


「なっ!?」


甲高い、聞き覚えのない音が響くと同時に、私の放った砲撃が、碧のISの手前で霧散してしまった。

そんなっ!? 一体何が起きたといいますの!

理解できないまま、碧のISを纏う男に視線を向ける。

視線に映る碧のISは。先程までは持っていなかった、身の丈を超える程の円盤状の巨大な楯を持ち、白いISを守るように自ら前に出ていた。


「ふいー、危ねぇ。なんとかなったか。」
「お、おい弾!? お前今何したんだ!」
「ん? ああ、ちょいとコイツを使ってな、なんとか防げたな。」
「それは一体なんだ? さっきまで持ってなかったよな?」


ごく自然に、そう返した男の言葉に驚愕する。

そんな馬鹿な! わたくしの初弾を防いだというのですか!? 素人同然の男が!?


「そんなに驚く事じゃないぜ。そういう武装なんだからな。『七代目五反田号』についているこの武器はな?」


カンカンと、男が手に持つ巨大な楯を指で弾く。

あの楯は一体? ビーム兵器を無効化する特殊なシールドなのかしら・・・?


「これぞ! 『七代目五反田号』の主力武器。【業火鉄板鍋】だ! この鍋に耐えられないモノは無い!」
「鍋ぇ? 楯じゃないのかよ? なんだそれ?」
「鍋だ! 誰が何と言おうとこれは鍋です! 俺が決めた今!」
「やっぱりお前が勝手に命名したのかよ…。」


ま、また妙なネーミングの物が出てきましたわね。まぁ、でも調べればすぐに正式な情報が――――――。


【敵ISの武装確認。武装名称【業火鉄板鍋】。砲撃の威力を弱め、霧散させる能力有り】


…。

こ、これは突っ込んだら負けなのでしょうか?


「まぁ、それはそれとして。随分過激な挨拶じゃないかセシリーちゃん。」


男が私に話しかけてきた。

くぅ、まさか防がれるとは。けれど、いくらその楯が優れていようと、私の【ブルー・ティアーズ】にいつまで耐える事が出来るのかしら?


「ふん、わたくしの初弾を防いだことがそんなに嬉しいのかしら?」
「超嬉しい! やったぜ! 防がれてやんの! だはははははははははははは!!」
「―――――――ッ!(わなわな)」
「嘘だよ?」
「大笑いした後に、そんなこと言われて誰が信じるというのですか!?」
「一夏、お前は信じてくれるよな?」
「素で爆笑したよなお前。今。」
「ちっ! 話し合わせろよカスが。」
「おいコラ。どさくさに何言ってんだお前。」
「やっぱり馬鹿にしたんじゃありませんのっ!!」


く、屈辱ですわ! こんな風にコケにされるなんて! 許しません! 絶対に許しません!

良いですわ、全力を持って排除してあげますわ!


「【ブルー・ティアーズ】!!」


四つの『ブルー・ティアーズ』を展開し、砲身を二機のISに向ける。


「「げっ!?」」


展開された私の『ブルー・ティアーズ』を見て、二人の男が驚愕の言葉を口にし、盛大に顔を顰めた。


ふふっ! もう遅いですわ! わたくしをコケにした報い。存分に受けるといいですわ!


「おいおい冗談だろ! ビットなんて反則だ! セシリーちゃんてもしかして、『種』持ってたりする!? ストライクなフリーダム好きですか!?」
「訳分かんない事言うなよ!? 何とか防げないか!?」
「そう言うお前こそ何か持ってないのかよ!」
「俺のは――― あ、【近接ブレード】が一つだけ。」
「帰れ役立たず!」
「なんだと! お前こそ楯以外の装備ないのかよ!?」
「料理人が武器持ってる訳あるか! 今はこの【業火鉄板鍋】だけだ!」
「お前なんか攻撃手段持ってねぇじゃねぇか!? お前こそ帰れ!」
「なんだと!?」
「なんだよ!?」
「「――――っ!!」」


お互いの顔を突きつけて、睨みあう男二人。その二人を私は冷めた瞳で眺めました。

呆れてものも言えませんわね。協力するどころか、お互いの欠点を罵り合ってこの状況で仲間割れ。

なんというか、先程までむきになっていた自分が、馬鹿みたいです。

ふぅ、とんだ茶番ですわね。

所詮、男なんて無知で馬鹿な人種ということを再確認しただけの結果となりましたわ。


「さあ、終わりにしましょう。」


もう、終幕まで後わずか、せいぜい踊って下さいな。


「―――― 踊りなさい! わたくしと【ブルー・ティアーズ】の奏でる円舞曲で!」


四つの【ブルー・ティアーズ】が、わたくしの命令に従い、愚かな二人の男へと向かっていった。





【千冬SIDE】

「あわわわわ!? どうしましょう! どうしましょう~!? 織斑くんと五反田くんが喧嘩しちゃってます~!」


二人の罵り合いを見ていた山田君が、オロオロと慌てふためく姿を視界の端に収めながら、私は、二人の姿をモニター越しに見つめ続ける。

ふと。篠ノ之が、真剣な表情で画面を食い入るように見つめている姿を見つけ、近づく。


「どうした篠ノ之? そんなに二人が心配か?」
「っ!? あ、いえ。別にそう言う訳では。」
「…ふん。しかしこの状況で【喧嘩】とは、のん気なものだな。」


そう言って、モニターに視線を戻す。

モニターの中では、一夏が【必死】に『ブルー・ティアーズ』の攻撃を避け続け、五反田は、我武者羅に楯で【護り】に徹している。


ふん。全くとんだ【茶番】だ。


「さて、篠ノ之? お前はこの状況どう見る?」
「…二人は勝ちます。」
「ほう?」


確信めいた声に、少々目を見張る。こうまで断言するとはな。

そのまま、篠ノ之はモニターに視線を戻し、真剣な眼で二人に無言のエールを送り続ける。

その口に、僅かな微笑みを宿して。


「――― ふふっ。」


いつの間にか、私も小さく笑いをこぼしてしまった。まったく、本当にとんでもない【茶番】だ。

モニターに映る。金髪の少女に目を向ける。


「早く気付かないと、大変な目に遭うぞセシリア・オルコット。」


お前の言う円舞曲は、まだ始まってもいない。

気付いたころには、道化師によって作り上げられた舞台が始まってしまうぞ?


騎士と道化師の奏でる【協奏曲】が。











後書き

更新が遅くなり申し訳ありません。ちょっと忙しくなってきましたのでSSを書く時間が極端に減ってしまいました。気力は衰えてませんので、どうかお付き合いください。さて次回、弾と一夏が暴れます。


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