ついに入学式当日になった。
先輩のアドバイスもあってあいさつの内容もそれなりにまとまったと思う。
あとは僕がしっかりしゃべれればいいんだけど…。
「あ~あ、やっぱり緊張するなぁ。」
「おいおい、そんなこと言ってした噛んだりすんなよ?」
レイドはからかうように軽口を言ってくる。
「全く、他人事だからいいよな。」
「そりゃあ俺にとっちゃ他人事さ。そもそも首席入学したお前が悪いんだからな。」
「それって別に悪気があってやったわけじゃないし。」
「もういい加減腹くくれって。お前が気にするほど周りも見てないって、さぁ行こうぜ。」
そういってレイドは部屋を出た。
「そんなことないような気がするんだけどなぁ。」
「これより1198年度入学式を始めます。」
入学式が始まった。
司会進行は生徒会長であるメイベル先輩が務めていた。
先輩はこういうことに慣れてる感じがするな。
僕とちがって堂々としてる感じだもんなぁ。
あと何分かしたら僕があの壇上に立って挨拶をするんだよな。
「続きまして、学園長からのあいさつです。」
そんなことを考えていると学園長のあいさつとなった。
この次が僕の番だ。
ま、まずい本気で緊張してきた。
「おい、悟飯」
「な、なに?」
「そろそろ行ったほうがいいんじゃないか?次お前の番だろ?」
そうだ、ひとつ前のあいさつのときに来るように先輩に言われたんだった。
「じゃあ行ってくるよ。」
「おう逝ってこい。」
レイド、字が違うよ……。
「悟飯さん少し遅いですわ。怖気ついて逃げてしまったのかと思って不安でしたわ。」
「さすがに自分の仕事を放り出すわけにはいかないですよ。」
「いい心がけですわ。それにしてもずいぶん緊張してらっしゃるようで。」
やっぱり顔に出ているのかな?
「はい、朝からずっとなんです。」
「まぁ、それは大変ですわね。でも私が手伝ったのですから、失敗などないでしょうから期待してますわよ。」
そう言って先輩はものすごくいい笑顔を見せてくれた。
「うっ、そ、そうですね。」
正直かなりプレッシャーがかけられてるよような気がするな。
というか先輩のあの顔は僕が困るの楽しんでいる顔だ、だって先輩口に手を当てて笑いこらえてるし。
「学園長ありがとうございました。」
えっ!?
いつの間にか終わったの?
「では次は新入生代表の挨拶です。新入生代表孫悟飯さん。」
こうして僕は壇上に上がった。
あいさつの内容を書いた紙を自室に置き忘れたことも知らずに。
「なかなか、個性的なあいさつでしたわね。」
「先輩、いじめないで下さいよ。」
そう、壇上に上がった僕は紙がないことに気づいた瞬間五秒くらい静止してしまった。
何とかうる覚えの内容を言ったけどほとんど即興で考えたものばかりだった。
「いい経験になったと思いますわよ。今後このようなことも増えてくるでしょうし、少なくとも学園の生徒に顔を覚えてもらえたことも収穫になったでしょう。」
そんなものかな?ん!?今後ってどういうことだ?
「それよりこれから生徒会室に来てもらえませんか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「生徒会役員と面通ししないといけませんから、向こうは今日のことで悟飯さんのことは知っているでしょうけどね。」
ははは、もう笑うしかないよな。
生徒会室
「悟飯君なかなかおもしろかったよ~。」
「メリル先輩うれしくないですよ…。」
さっそくメイル先輩がからかってきた。
「メリル、初めてのことだったんだから仕方がないだろう。むしろあの状況で全うしたことを評価すべきだ。」
「……。」
メリル先輩以外にふたり知らない先輩がいた。
「じゃあ早速自己紹介といきましょうか。」
「じゃあまずは俺から。俺は生徒会会計のキース・ランバート、メイベルやメリルと同じ三年生で学科は社会科学科だ。わからないことがあれば何でも聞くといい。よろしくな孫。」
「はい、よろしくお願いします。」
そういって先輩と僕は握手をした。
何となくだけどこのひとは僕の味方になってくれそうな感じがした。
「じゃあ次はカヤちゃんだね~。」
「え、えとウチはカヤ・ヘイムダールいいます。よろしくな孫君。ちなみにうちは先輩たちの一期下だから孫君の一つ上やね。」
「はい、よろしくお願いしますカヤ先輩。」
小柄でおとなしそうな感じがする人だな。
「え~と今度は僕の番ですね。僕は孫悟飯です。学科は自然科学科です。いろいろと迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」
「それじゃあ自己紹介も一通り終えたところで下におりて食事でもしながら親交を深めましょうか。」
「ナイスアイディア♪」
「いい考えだな、行くぞ孫。今後お前とは連携を取らないといけないからな。」
「ま、待ってください。」
なかなかみんな友好的な人たちばかりだうまくやっていけそうな感じがするなぁ。と思っていたが…。
「ねえねえ、悟飯君好きな人とかいないの?」
「そうですわね、ぜひとも聞いてみたいですわ。」
この後行われたメイベル先輩&メリル先輩の質問攻めもとい拷問をを前に早速くじけそうだった。
「孫辛いだろうが頑張るのだな、俺はこの状況で二年間生徒会に所属してきたのだからな。」
「先輩はなんか達観してるような感じしますね。」
「お前も二年もこの状況が続けばこうなるはずだ。」
キース先輩とはうまくやっていけそうな予感ではなく確信が芽生えた瞬間だった。
このあと食事をとりながらみんなと談笑して僕の記念すべきはずだった入学式が終わった。