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No.27521の一覧
[0] 【H×H】【オリ主】魔女の眼のコレクター[爆弾男](2011/05/30 02:23)
[1] 01話 美術商・1[爆弾男](2011/05/02 01:48)
[2] 02話 美術商・2[爆弾男](2011/05/04 15:56)
[3] 03話 美術商・3[爆弾男](2011/05/08 14:23)
[4] 04話 偽りの愛情・1[爆弾男](2011/05/16 02:35)
[5] 05話 偽りの愛情・2[爆弾男](2011/05/30 02:19)
[6] 06話 偽りの愛情・3[爆弾男](2011/05/30 02:20)
[7] 07話 鍼灸師[爆弾男](2011/07/06 02:46)
[8] 08話 約束・1[爆弾男](2011/07/06 02:46)
[9] 09話 非情な現実・1[爆弾男](2011/07/11 01:15)
[10] 10話 非情な現実・2[爆弾男](2011/07/21 21:32)
[11] 11話 約束・2[爆弾男](2011/07/21 21:32)
[12] 12話 蝙蝠・1[爆弾男](2011/07/26 02:05)
[13] 13話 蝙蝠・2[爆弾男](2011/08/03 01:22)
[14] 14話 約束・3[爆弾男](2011/08/11 01:10)
[15] 15話 一人[爆弾男](2011/09/07 00:27)
[16] 16話 開始[爆弾男](2011/09/14 00:08)
[17] 17話 試験[爆弾男](2011/09/21 01:32)
[18] 18話 解体屋・1[爆弾男](2011/09/24 01:46)
[19] 19話 解体屋・2[爆弾男](2011/10/03 00:08)
[20] 20話 解体屋・3[爆弾男](2011/10/31 02:03)
[21] 21話 解体屋・4[爆弾男](2011/11/15 01:50)
[22] 22話 解体屋・5[爆弾男](2011/12/24 03:01)
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[27521] 18話 解体屋・1
Name: 爆弾男◆90fedc9c ID:8aa83e82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/24 01:46
夜の帳が落ち始め、家の明かりが徐々につき始めてきた。
人々は家に帰り、街は静寂に包まれつつあった。。

と、一つの悲鳴が上がり、夜の静寂を切り裂いた。
悲鳴の主は中年の女性。あまりの恐怖と痛みに、地面を転げまわっていた。
その顔は、涙と鼻水で汚れ、恐怖で歪み、見るも無残なものだ。
だが、驚かされるのはその女性の右腕だ。二の腕の一部の肉が削ぎ落とされ、骨が覗いていた。
溢れる血を左腕で抑えながら、女性は目の前に立っている巨体の男を見る。

その男は、非常に大柄で筋肉質な体つきをしていた。その体どおり、筋力……それも握力が人間離れしていた。
何しろ、素手で女性の腕を掴んだかと思うと、その肉を毟り取ってしまったのだから。
その右手には、さっきまで自分の一部だった肉片が握られている。

――解体屋バラシや

女の脳裏に、その単語が浮かんだ。
一年ほど前からザバン市を騒がせている、大量殺人鬼。
殺した人数は、既に三桁に上っていたか。素手で人体をバラバラにして殺しているという、殺人狂。
誰が名づけたか、いつの間にかその名は定着し、ニュースでも良く聞く名となっていた。
その名は、この街の恐怖の対象となっていた。女性にとっても、例外ではない。
しかし、それはあくまでテレビの向こうで「怖いわねー」と言う程度のものだ。まさか、自分がこんな目に遭うとは思わなかった。

――どうして私が!?

女性に浮かぶのはそんな疑問。いや、理不尽な現実に対する憤りと言ってよい。
しかし、目の前の男にはそんなことは関係ない。
手に持っていた肉片を捨てると、次の作業に入ろうと近づいてきた。

――今日は、あのの誕生日なのに……

今夜は、娘の好きなシチューを用意するつもりだった。
が、そこで牛乳をうっかり切らしてしまっていたことに気付いたのだった。

夜一人で出歩くことは危険だと理解してはいたが、短時間の買い物なら大丈夫だろうと判断した。
何より、娘の喜ぶ顔が見れないのが嫌だった。
……それが、彼女の大きな過ちだったと、そして不運だったと知ることなく。

いつも通りの帰り道を、いつも通りでなくした不運な邂逅。
すれ違いざまにいきなり腕を掴まれ、肉をちぎられた。
そして、直感的に悟ってしまった。自分はここで死ぬかもしれないと。この時ほど、神様を恨んだ時はない。

そこまで考えている間に、男は近づいてくる。

――嫌だ、まだ死にたくない。まだ、あのがいるというのに……

這うように、女性は逃げ出した。少しでも、生き永らえるように。
だが、男の前では無駄だった。
男は、そんな彼女の思いを踏みにじるかのように背中を踏みつけ、希望を砕くかのように、腕をちぎり始めた。




    第18話 解体屋バラシや・1




憂鬱な面持ちで、ユナは酒場を出た。そろそろ、日も落ちる頃だ。
今日ザバン市に着いたユナは、早速聞き込みを始めた。
しかし、もともと探偵のような聞き込みなどやったことがないため、話を聞くこと自体上手くいかなかった。

酒場でも情報を仕入れようとしたが、言い寄ってくる男ばかりで有益な情報は得られなかった。
その事実が、彼女の表情を暗くした。

とりあえず、日が完全に落ちる前に宿を取らないと。
ユナは、ホテル街へと、足早に歩き出した。
今、この街は非常に物騒だ。その理由は大きく三つ。

一つは、現在この街を騒がせている殺人鬼――解体屋バラシやの存在である。
人間を素手でバラバラにするという、常軌を逸した殺人狂。昨日も、一人殺されたらしい。

二つ目は、この街の不良少年達によって結成されているグループ「虎の牙」。
こちらは、殺人はほとんどないらしいが、金品を強奪することが多いらしい。
もともとストリートチルドレンの集まりなのだろうか。市での評判も良くなかった。

そして三つ目。A級首として名高い盗賊、幻影旅団。
その一人がこの街に潜伏しているらしい。
噂では、解体屋バラシやとは旅団員の一人なんだとか。
ただ、こちらについてはどこまでも噂であるため、ユナには今一確証が持てなかった。

これらのことが重なっているため、住民は皆、非常に神経質だった。
話を聞くこと自体、なかなか難しい。よそ者に対する視線が厳しいと言うべきか。
それでも多少なりとも噂を聞きだせたのは、彼女の能力、“偽りの愛情ホワイト ライ”のためだ。
この時ほど、ユナはこの能力を発現させた自分を誉めたことはない。




もうすぐホテル街に着くというころ、ふと前の方にニ、三人ほどの人影を見た。
いずれも、ガラの悪い男性だ。まだ若く見える。
いずれも、ユナと同じくらいか、それより下だろう。
特に、一人は明らかに体格が小さく、顔つきも幼かった。十歳前後だろうか。
しかしながら、発する雰囲気は子供のそれではない。

「姉ちゃん、一人でこんなところ歩いてちゃ危ねーぜ」
「俺らこの街に詳しいからよ。案内してやろーか」
言葉とは裏腹に、幾分脅迫めいた響きだった。
とはいえ、マフィアにかつて所属し、陰獣に殺されかけた経験のあるユナにとっては可愛いものだ。

面倒だし、ちょっと脅して追い払おうか。
そう思い、銃を取り出そうとジャケットに右手を突っ込んだときだった。
「あんたたち!!何やってんだい!!」
突如女性の叫び声が聞こえてきた。

「やべ、ヨソノだ!!」
「逃げろ!!」
少年達はそう言うと、一斉に横道に逃げ出した。
前からは、恰幅のいい女性が走ってくるのが見えた。
歳の頃は四十過ぎくらいだろうか。でっぷりとしているが肌つやは良く、案外もう少し若いのかもしれない。

その女は、ユナの前に来ると、息を切らしながら「あんたケガはないかい?」と尋ねてきた。
「大丈夫です」そう答えるや否や、頭を小突かれた。
「痛っ」
「全く、若い女がこんな街を一人で歩くんじゃないよ。今物騒なんだから。
 大体、何だい、その服装は。肌を見せすぎだよ」
「大丈夫ですよ、こういう街は慣れて――」
「口答えしないっ!!」
「は、はい!!」
ユナの言うことは全くその通りなのだが、勢いに押されてしまった。
とても逆らえる気がしなかった。歳を重ねた女は強い。

「全く、洗濯物を取り込もうとしたらこんなことになってるんだからね。
 あんた、この街の人間じゃないんだろ?
 『虎の牙』を知っててこんなところ一人で歩く女は、アタシくらいしかいないからね」
「あれが『虎の牙』……」
想像していたより、ずっと若い連中だった。というよりも、まだ子供だ。
ストリートチルドレンというのもあながちデマではなさそうだ。

「おや、知ってたのかい。まあ、アタシから見ればまだ子猫さね。
 悪さはするけど、可愛いもんだ。本当に危ないのはあんなのじゃないからね」
解体屋バラシやですか」
「そっちも知ってるんだったら、夜に一人で出歩くんじゃないよ。昨日も一人、られたからね」
「ありがとうございます。そろそろ――」
「ああ、日も落ちてきたしね。あんた、どこに泊まってるんだい?」
「まだ、これからです。昼間は忙しかったので」
「まだ部屋を取ってないのかい?呆れた」

ため息をつく女性に対し、ユナは若干ムッとしたが、表には出さなかった。
と、女性がぽんと手を叩いた。
「あんた、うちに来ないかい?うちも宿屋をやってるんでね。そんな上等な部屋じゃないけどさ。
 どうせ他に客なんていなし、安くしとくよ」
少し考え、ユナは頷いた。どの道、探さなければいけないのならばこの誘いは渡りに船だ。
少しでも経費を浮かせたいし、目の前の女性がそう悪い人物にも見えなかった。

「決まりだね。アタシはヨソノ。あんたは?」
「ユナです」
「いい名前だね。じゃ、行こうか」
名付け親である母親を誉められたような気がして、ほんの少しばかり喜んだ。
そんなユナの想いを知ってか知らずか、ヨソノは歩き始めた。





「これで、お荷物は全部ですかね」
丸顔の男性が、壮年の髭を生やした男性に向かって話しかけた。
「そうですね。ありがとうございます」
「いえいえ。引越しの準備、大変だったでしょう。お疲れ様でした」
丸顔の男性が言ったとおり、壮年の男性は、ここザバン市に引っ越してきたばかりだった。
彼の他に、妻と、子供が二人。小さい子は、壮年の男性の足に引っ付いて、隠れている。
丸顔の男は引越し業者で、もう一人同僚と一緒に荷物を運び終えたばかりだ。

丸顔の男性は、ため息をついてぼやいた。
「本当にねえ。この街は、ちょっと前まで本当にいい街だったんですよ。シュローさんも、住んでみればわかります。
 ……本当に、あんな奴さえいなければねえ」
解体屋バラシやですか」
「ええ。……と、早く帰らないと怒鳴られちまいますわ。では、失礼します」
「ええ、本日はありがとうございました。ミリア、バイバイは?」
そう言われると、足に引っ付いていた子供は、遠慮がちに手を振った。
丸顔の男は、笑顔で「バイバイ」と言いながら手を振り、トラックに向かった。
その後を、彼の隣に無言でいた、筋肉質の髭の大男がついていった。



「ったくよお、ジョネス。おめえは愛想がわりいんだよ」
トラックが走り出し、運転している丸顔の男が助手席の男に話しかけた。
ジョネス、と呼ばれた筋肉質の男は「興味がない」とだけ返し、寝入ってしまった。

思わず、ため息をついてしまう。この男は、本当に何を考えているか分からない。
引越し業者と言うのは人付き合いが下手な人間もよくいるが、中でもジョネスは群を抜いていた。
何にも興味を示さず、淡々と仕事をこなすのみ。
サボるわけではないが、どうにも人付き合いが悪い。いつかお客さんに文句を言われないか心配だ。

そんなことを考えている男は気付かない。
彼は、実は今ひどく喜んでいるのだと。
昨日久しぶりに人の肉を抉った感触を味わった。
今は、その余韻に浸っていて、それを邪魔されたくないのだ。

そして男は気付かない。
助手席の男こそが、先ほど自分が話した殺人鬼――解体屋バラシやなのだと。




「ペンソー!!遅えぞ!!」
ペンソーと呼ばれた、体格の小さな少年は息を切らしながら、買い物袋を持ってきた。
「す、すみません……」
その謝罪に応えるものはいなかった。皆、苛立ちを隠そうとしない。
少年達の中で、一番体格のいいものがペンソーから袋を奪い取り、中を漁った。
中には、食料が入っている。皆が好きなものを取っていったため、ペンソーの分は残らなかった。

「そういや、リーダー」
先ほどの一番体格のいいものが話しかけられ、振り向いた。彼こそこのグループ……「虎の牙」のリーダーだ。
「あの絵、どうしようか。まだ売り先見つかんねえよ」
「ああ」と少し頷く。

「まあ、まだとっとけ。あの運び方からしていい絵っぽいし、誰か買ってくれるだろ」
リーダーは、倉庫においていた、一枚の絵を思い出しながら答えた。
正直、どこがいいのかはよく分からないが、しかし見ると妙に圧倒されるものを感じた。
まあ、上手くいけば50万くらいにはなるだろう。そんな期待を込めて言ったのだった。
実は、8億Jもする絵だとしることはなく。




食事だと言われ、ユナはリビングに降り立った。本当に、自分以外に宿泊客はいないようだ。
テーブルには、パンとスープ、サラダにローストビーフ。いい匂いだ。
「質素ですまないねえ。何せ、久しぶりのお客さんだからさ」
「結構いい宿屋だと思うんですけどね」
これは、掛け値なしの本音だ。値段の割りに、部屋は綺麗だし、結構広い。
食事も朝晩付きだ。これなら、しばらく滞在するのにもいいだろう。

「今物騒だからね。うちに限らず、宿屋や観光業は儲かんないさね。
 そういえば、あんたはこの街に何しにきたんだい?まさか、観光ってことはないだろ」
仕事ハントです。一週間ほど前にこの近くで盗まれた、スザンヌの自画像を探すことを依頼されてまして」
「知らないねえ」
「運送用のトラックが襲撃されていた事件ってありませんでした?」
「ああ、それならあったような気がするよ。
 まあ、解体屋バラシやはそんなことしないだろうから、十中八九あのガキどもだろうけどね」
なるほど、とユナは頷き、同時に厄介だとも思った。明日以降は、あのグループに接触することも考えないといけない。

と、ユナは棚の上にかけてある写真に気が付いた。小さい子供の写真だ。三つか四つだろう。
「ああ、息子だよ。この頃は可愛かったんだけどね、全く」
ユナの視線を察したのか、ヨソノが苦笑いしながら答えた。
一方、ユナは驚きを隠せなかった。その写真の人物に見覚えがあったからだ。
多少歳は離れているが、先ほどあった少年達の中の、一番小さい子。その人物にそっくりだった。

「失礼なことをお伺いしますが、この子って……」
「そう。さっき会ったクソガキ達の一人さね。本当、泣き虫だったのに、何やってんだかね」
「……大変ですね」
それ以上、何も言えなかった。知った風な口をきくと、失礼な気がしたからだ。

「まあ、あいつらもアタシに取っちゃバカな息子みたいなもんさ。
 世間ではとやかく言われてるし、バカやってるけど、性根はいいはずなんだ。
 だからほっとけないんだけどさ、あっちは『うるさいオバサン』くらいにしか思ってないだろうね」
「叱られてるうちは、なかなか分からないものですからね。いなくなって、初めて大切さが分かると言うか」
「あんた、まだ若いのにいいこと言うね」
今は亡き母親のことを思い出しながら言ったユナの言葉に、ヨソノが機嫌よく頷いた。

と、ヨソノが奥に言ったかと思うと、ブランデーの瓶と氷、それからオレンジジュースを持って戻ってきた。
「あんた、明日は早いのかい?」
「いえ、そこまでは」
「じゃあ、今夜はとことん付き合いな」
そう言うと、ユナの前にオレンジジュースを置いた。
「……付き合えって言って、私はジュースですか」
「あんた、まだ未成年だろ」
「シラフで酔っ払いの相手をするほど辛いものはありませんよ」
「やだねえ。その歳でそんなこと言って。子供はそういうこと言うもんじゃないよ」
この人には敵わないな。そう思いながら、ユナはジュースを手に持ち、ブランデーを注いだヨソノのグラスと音を鳴らした。




*     *     *     *     *     *




おまけ

~本日の原作考察~

 ジョネスさんは何のお仕事をしていたのか


原作では、超長期刑囚として登場したジョネスさん。
しかし、彼も捕まる前は一般市民だったはず。ということは当然、生活の糧を稼ぐ必要があったはずだ。
だが、彼が事務職や店員をしている様子は想像できない。
大体、あんな店員がいたら怖すぎる。自分なら、真っ先に逃げ出す自信がある。

では、一体何の仕事をしていたのか。真っ先に思いついたのは精肉業者だ。
生の人肉ではないが、好きな肉を掴み、バラバラにすることが出来る。まさに天職だ。

が、ちょっと考えてこの案は却下となった。
精肉業者と言うのは、肉を食べやすい形にする仕事だ。
細かな作業が求められ、単純にバラバラにしたいジョネスさんの方向性とは真逆である。
これではストレスがたまってしまい、続かないだろう。

次に思いついたのは、工事現場だった。
力はあるし、物を運ぶような単純作業なら普通にこなすだろう。
が、これまた道具を壊しているイメージしか思い浮かばない。
アスファルトの舗装なんて器用な真似、ジョネスさんが出来るんだろうか。

いい案が思い浮かばないまま、工事現場ということにしようかなあと思っていたときに閃いた。
それが、本編で描写している引越し業者だ。
これなら、物を運ぶので力を生かせるし、何より獲物を物色するのにもってこい。
車を運転できるのか、という疑問があるが、そのくらい何とかしてくれるに違いない。

と言うわけで、この話ではジョネスさん=引越し業者ということにしています。


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