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No.27457の一覧
[0] 【Bルート完結】せいびのかみさま【IS 転生チートオリ主】[巣作りBETA](2012/02/26 15:05)
[1] 第一話「そうだ、宇宙行こう」[巣作りBETA](2011/04/29 14:50)
[2] 第二話「物語の始まりだ」[巣作りBETA](2011/04/29 03:25)
[3] 第三話「私の名前は、織斑千春」[巣作りBETA](2011/04/30 15:55)
[4] 第四話「友情、努力、勝利」[巣作りBETA](2011/05/04 00:10)
[6] 第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」[巣作りBETA](2011/05/06 00:37)
[7] 第六話「こんな事もあろうかと」[巣作りBETA](2011/05/13 21:23)
[8] 番外編「機体解説:強羅」[巣作りBETA](2011/05/07 02:40)
[9] 第七話「カッコイイからだ!」[巣作りBETA](2011/05/07 23:32)
[10] 番外編「弐式開発記」[巣作りBETA](2011/05/09 23:17)
[11] ネタ解説という名の言い訳その1[巣作りBETA](2011/07/20 11:38)
[12] 第八話「ご迷惑でしたか?」[巣作りBETA](2011/05/12 00:55)
[13] 第九話「地獄に堕ちろ、この野郎」[巣作りBETA](2011/05/15 21:00)
[14] 第十話「これはISですか?」[巣作りBETA](2011/05/21 11:03)
[15] 第十一話「篠ノ之束の憂鬱」[巣作りBETA](2011/05/23 21:45)
[16] 番外編「【夏コミ】ISジャンルサークル実況スレ【実況】」[巣作りBETA](2011/05/27 19:53)
[17] 第十二話「ブルー・ハワイ」[巣作りBETA](2011/05/28 21:33)
[18] 第十三話「姉の屍を越えていけ」[巣作りBETA](2011/06/05 15:37)
[19] 第十四話「鉄鍋のヴァン」[巣作りBETA](2011/06/17 11:09)
[20] 第十五話「かいちょーおねがいします!」[巣作りBETA](2011/06/25 19:27)
[21] 第十六話「出会えば死ぬと言うけれど」[巣作りBETA](2011/06/29 10:53)
[22] ネタ解説という名の言い訳その2[巣作りBETA](2011/11/11 23:36)
[23] 第十七話「F99(やまやのバストサイズではない)」[巣作りBETA](2011/07/29 18:19)
[24] 第十八話「甘き死よ、来たれ」[巣作りBETA](2011/07/29 18:19)
[25] 第十九話「虚無」[巣作りBETA](2011/07/20 12:03)
[26] 番外編「小ネタ祭り」[巣作りBETA](2011/07/29 18:17)
[27] 第二十話「Bルート:34の鍵穴」[巣作りBETA](2012/02/16 22:03)
[28] 第二十一話「Bルート:パルスのファルシのルシがコクーンでワールドパージ」[巣作りBETA](2012/02/26 10:36)
[29] 第二十二話「Bルート最終回:IS学園ハンサム」[巣作りBETA](2012/03/12 22:06)
[30] ネタ解説と言う名の言い訳その3+おまけ[巣作りBETA](2012/03/12 22:06)
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[27457] 第二話「物語の始まりだ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/29 03:25



 第二話「物語の始まりだ」


 やぁ、佐倉源蔵だよ。今回は若干長めだよ、機体解説と『アレ』があるから。

「で、どうだ? 各国の機体の見立ては」
「んー、自信満々に第二世代って言ってるけど……【夕紅】の敵じゃないな。汎用性を求めすぎてる」

 まあそうなるように第一世代を組んだんだけどね! 量産機のロマンはカッコいいけど特化型には負ける運命なのさ!
 あ、暮桜は研究所行きになりました。ぶっちゃけ無くても勝てる相手ばっかりだし、たまには機体のタイプ変えないとな。
 ここ数年の訓練のお陰で千冬もまともに銃器扱えるようになってきたしね。あ、もっかしてやまやのお陰か?

「そんな事は解りきっている。詳細を話せと言っているんだ」
「ワーオ傲慢。でもそーだねー、どこも俺が渡した機体の発展系ばっかりだ」

 イタリアはフォルゴーレを発展させて【テンペスタ】ってのが出来上がってる。コンセプトはスピード特化で良い感じだけど、操縦者の技量が追いついてないな。
 イギリスがブルーハリケーンからの【メイルシュトローム】、【ミューレイ】って会社が作ったらしい。コンセプトは丁度アメリカとイタリアの中間くらい、別名器用貧乏。
 ドイツはヴァイサー・ヴォルフを研究して【シュトゥーカ・ドライ】。重装甲重装備とISとは思えない設計だがこういうのは大好きだ。単機での制圧能力を重視してるっぽいし、ひょっとしたら一番の強敵かも。火力だけなら現行の第二世代では最高峰だね。
 しかし、今度EUの方で【イグニッション・プラン】とか言うのやるって聞いたから期待してたけど……やっぱりまだまだだな。

 アメリカがダブルホーネットを突き詰めて作った【ビッグバード】は良いね、【クラウス】社の設計で『とりあえず銃載せとけ』って考えがよく解る。流石はアメリカ、大雑把過ぎてもう大好きだ。その分機体が大型化して機動性が犠牲になってるのはご愛嬌。
 日本に限っては俺が直々に打鉄を作ってやったけどね。夕紅ばっかりじゃアレだし、原作通りの堅実な仕様にしておきました。【倉持技研】と【ハヅキ】社の連中がやさぐれてたのが印象深かったね。

「他も似たり寄ったり。中国やオーストラリアなんかは第一世代の改良型で来るつもりみたいだな」
「舐められているのか純粋に開発が間に合わなかったのか……選手には同情を禁じ得ないな」
「どう見ても後者です本当にありがとうございました」

 結局デュノア社も間に合わなかったっぽいな。その代わりインナーはスウェーデンの【イングリッド】社との2トップみたいだが。アレか、デザインか。

「まあ何かトラブルでもない限りは大丈夫だろ。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「そうだな。しかし一夏達ももう中学生か……ようやく目を離しても心配がなくなったよ」

 それで今度の事件でまたブラコンが再発する、と。可能な限り手は尽くしたつもりだが、それで大丈夫だろうか……。



 現在時刻朝の八時、って言ってもイタリアの標準時だから日本は現在午後四時。もうすぐ日が暮れる頃だ。
 ついでに言うと現在俺はキーボード相手に格闘中。左手の超高速タイプ機能も長時間の使用によるオーバーヒート直前だ。

「源蔵、まだか!? まだ一夏は見つからんのか!?」
「落ち着け、って言っても聞かないよなオメーは。現在日本に残してきた端末で全力捜索中、ついでに千春は無事だぜ」
「当たり前だ、これが落ち着いていられるか! これで千春まで無事でなかったら貴様を磨り潰している所だ!」

 ドアがぶっ壊れんじゃねーかってぐらいの勢いで千冬が作業室に入ってくる。お前、一分前も同じ事やってたよな。
 あれから数日、決勝戦当日に当然のように一夏誘拐イベントが発生しやがった。無事であると知っているとは言え、その知識もどこまで役に立つか解らないのが怖いな。
 可能な限り監視をつけておいたが、結局は機械頼みだったのが仇になった。俺特製の『お守り』を一夏が家に放置しちまったのも痛いな、発信機入りなのに。

「現在各国にコネ使って捜索依頼中。それとやまや、千冬抑えてろ。作業の邪魔だ」
「む、無理ですよぉ~! あぁもう代表補佐なんてやらなきゃ良かった……」

 チッ、使えん乳眼鏡だ。これから暫くテメーはやまやで固定な。
 こないだだって無茶やってバイパスぶっ壊しやがったし。あれ直すのに何時間無駄にしたと思ってんだ。

「ハァ……千春の様子は?」
「メールの文面からは落ち着いた感じがするな。今は俺の家で隠れてるそうだ」
「そうか……まあ、お前の家なら安全だろう」

 伊達に何年も各国のエージェント達をホイホイで粘着液塗れにしてないからな。特に女だった時は思わず一眼レフを取り出してしまうくらいの芸術品だ。

「それにしても、お前のお守りとやらには何が入っているんだ? 発信機は想像がつくが……」
「トリモチ入りスタングレネード。一発限りだが千春は運良く使えたらしい」
「そうか……ハァ」

 さっきから溜息が多いぞ馬鹿者。少しは落ち着け……と考えてる俺の方がおかしいのかね、この場合。

「っと、ビンゴ! ドイツ特殊部隊さんからのお便りだ! 位置情報来たぞ、カッ飛べ千冬!」
「解っている!」
「……間違いなく協定違反ですよねぇ。それに決勝戦、不戦敗になっちゃいます」
「ハッハッハ、君と俺達が黙っていれば良いだけの話さ。それに千冬にとっては名声などより身内の無事の方が嬉しいんだよ」

 そういうものなんですか? と聞かれたのでそういうものなんですよ、と答えておく。実際はただのブラコンなんだが。

「とりあえずドイツさんにはこれで借り一つ作っちまったな、早い内に返さんと」
「どうするんですか?」
「んー、高官さんに緑の乳眼鏡をプレゼント、とか」

 おーうマヤさんIS起動しちゃ嫌ですよーう。

「まあそれ考える前に政府に何て言い訳するか考えようぜ」
「……あ」



「第三世代機……ですか?」
「ああ。ドクター佐倉の事は知っているだろう、彼から齎された技術だ」

 私、セシリア・オルコットがその名前を聞いたのは14歳になる頃でしたわ。先日から学び始めたISの教官が珍しく私を呼んだので何事かと思いましたわよ。
 ―――佐倉源蔵、またの名を『神の手』と呼ばれる世界最高峰のIS開発者。かの『大天災』篠ノ之束と共にISを作り出した『世界で最もISに詳しい男』。

「各国の第一世代ISを作り、第二回モンド・グロッソでも傑作機と名高い打鉄を世に出したもう一人の大天才……大天災の前に世界は彼に追いつく必要がある、とも言われているな」
「……正直、話を聞く限りではあまり好ましい人物とは思えませんわ。現在の風潮の責任の一旦は彼にある、とも言われてますわよね?」
「公の場で女の尻に敷かれていればそうも見えるか……功績に目を向ければ篠ノ之束と同等かそれ以上の物なのだがな。まあ、それは別に良い。それよりも今は第三世代機の話だ」

 そ、そうでしたわね。つい極東の猿の事などが話題になってしまって本来の話題を忘れてしまう所でしたわ。
 ……うぅ、やはり貴族たる振る舞いをする為とは言え、他人の事を猿などと呼ぶのは気が引けますわ、対策を考えませんと。

「現行の第二世代機と組み合わせたハイローミックス構想らしいが……注目すべきはむしろこの斬新な切り口だろう、読んでみろ」
「えっと、『思考操作技術による思念誘導攻撃機操作に関する基礎理論』……?」
「まあ早い話が【遠隔操作技術】だ。IS丸ごとと言う訳には行かないらしいが、研究するに値すると上は判断したらしい」

 遠隔操作……!? 無人機と並んで不可能と言われる技術ではありませんか!
 それにこの武装、まるで我が国で唯一発見された単一仕様能力【帰還者】を兵器化したような……。

「それにしても、どうして彼はこのような物を? 彼は強烈な日本贔屓と聞いていますが」
「それがどうも妙でな、世界各国にこれと同レベルの理論がばら撒かれているらしい。未確定情報だがドイツにも何らかの理論が渡っているらしい」
「一体どうして……?」

 私は渡された分厚い書類に視線を落としますが、当然ながらこんな事務的な文面からでは何も解りませんわ。一体何を考えていると言うの……?

「それがな、どうもこの理論は政府関係者に『本人から手渡し』されたらしい」
「で、ではドクター佐倉は欧州に居ると? 先日開校したIS学園に籍を置いていると聞いていますのに」
「ああ、昨年の夏頃から欧州各地で存在が確認されている。全く、神か悪魔のつもりか……?」

 教官のその言葉に、私の背筋がゾクリと震える。そうだ、彼はあの大天災と同種の存在。コアこそ作れないと聞くが、それに付随する技術では世界一であるかもしれないのだ。
 そして今彼が行っているのは、私達の第二世代の水準を『上から引き上げる』行為。まるで神か悪魔のように悪戯に知恵を与え、どうするのかを眺めるという行為。

「恐らく、そう遠くない内に第三世代ISの開発が始まるだろう。そして、その操縦者は恐らく君になる」
「なっ!? ど、どうして私なんですの!? 確かに光栄な事ではありますが、サラ先輩ならまだしも代表候補生でもありませんのに……」
「彼にとってこの国の情報を盗むなど造作もないのだろう。ご丁寧にその理論の一番最後に最適と思われる操縦者の事まで書いてあるぞ」

 心臓が高鳴り―――否、震え上がる。嫌な想像が頭の中を駆け巡り、そうであってほしい心とそうであってほしくない理性がせめぎあって指を震わせる。
 やっとの思いでページをめくると、そこは既に最後の一枚。分厚い紙の束を留めているクリップがカタカタと音を立てていた。

「……一体、何者なんですの?」
「さて、な。私はモンド・グロッソの時に一度だけ見た事があるが、その時の感想は『掴み所が無い』奴だった……気をつけろよ」
「……はい」

 ―――その数ヵ月後、私は彼と相対する事となる。そして、美しき蒼い雫とも。



「よっ」

 ……面倒な奴に出会ってしまった。

「無視すんなよボーちゃんよぉー」
「……私の名はラウラ・ボーデヴィッヒです」
「うん、だからボーちゃん」

 ―――面倒だ。

「まあそれはともかくラウラ君、どうよ最近調子は」
「上々です。これも教官のご指導の賜物です」

 相手をするのは非常に面倒だが、その頭の中身は間違いなく一級品だ。かの大天災と肩を並べると言うのも頷ける。
 新技術の研究のみならず整備や改良に強く、整備を依頼した我々の部隊のISが見違えるように性能が向上した。
 この性能を独力で引き出そうとするならあと数年、もしくは世代の更新が必要だろう。一体なにをどうやっているのか。

「して、ドクトルは何か私に用でも?」
「あーいや、こっちでの仕事もそろそろ終わりだしな。挨拶しとこうと思って」
「―――っ」

 彼――我々は畏怖と敬意を篭めてドクトルと呼んでいる――の仕事、それは日本代表IS操縦者織斑千冬専属整備士。それが、終わる。


 つまり、教官の仕事も、終わる。


「まあ、千冬の方はもう少しこっちに居るが、俺はこの後ロシアとフランスに行かねばならんのでな。だから早めの挨拶だ」
「そうでしたか。他の者にはもう?」
「ああ、クラリスには早く帰れとまで言われちまったよ。そんで漫画を送れ、と。まさかあそこまではまるとはな……」

 ドクトルは同じ部隊の一員である筈の私よりも皆と仲がいい。それに思う所が無い訳ではないが、私とて彼とこうして普通に会話している。
 ……眼帯をつけるようになってから、連絡や命令以外でまともに喋った相手は教官とドクトルだけだ。教官には私から近付いたが、ドクトルは気付けば今の位置に居た。
 そうして立場上無為に追い払う事もできず、仕方無しに応対していたらこの有様だ。恐らく、生来の喋り上手なのだろう。

 ―――ッ。

「……悔いの無いように、教わる事全部教えてもらえよ」
「え……?」
「そんないかにも『教官と別れたくないですー』って顔されても困るんだっつーの。もう少し前向きに生きてみろ」

 ぽん、とすれ違いざまに軽く頭を叩かれる。思わず反射で投げ飛ばしそうになったが、言われた言葉の意味を考えるとそうもいかなかった。

「とりあえず第三世代機の理論は置いてってやる。きっと気に入ると思うぜ?」
「……ありがとうございます」
「応、達者でな」



 ……ある日、私は新型機が出来ているらしいラボへ来ていた。沢山のサードパーティーを巻き込みながら、まともに完成しなかったあの機体が。
 更衣室で着替えていると噂が聞こえてきた。何でも新しい研究員が来て一日で山ほどあった問題点を解決していったそうだ。随分と下手な冗談だな、って思った。

「って言うかロシア経由でドイツから来た日本人って何なのさ……」

 確かドイツの機体はシュトゥーカ・ドライで……ロシアはフランカー、だったっけ?
 防御と近接戦に特化した単一仕様能力【流体装甲】を持っている機体がある以外は大した事ない機種らしいけど……。
 なんて考えている間にいつもの研究室に辿り着いちゃった。いつもここは空気がピリピリしててあんまり長居はしたくない。

「失礼しまー……」
「ハッピィブゥァァアスデェェェイッ! おめでとうっ! 君は今日新たに生まれた! そう、ラファールよっ!」

 おそるおそる扉を開けた私を出迎えたのは大音量でよく解らない事を言う声で―――、


 そこに、兵器という名の芸術品があった。


「ああ、君がシャルロット君だね? はじめまして、佐倉源蔵だ。好きに呼んでくれ」
「あ、え、えと……シャルロット、です。はじめまして」
「いやはやこんな機体が作れる自分の才能が怖い、とテンプレをかましたところで解説だ。コイツは【ラファール・リヴァイブ】、第二世代機だな」

 叫んでいた人はゲンゾウ、と言うらしい。どこかで聞いたような名前だけど……どこだっけ?
 よく解らないテンションをしたその人は私が考え事をしている間もつらつらとスペックを述べていく。
 それを聞く限り、決して突出した能力は無いけど全てが高水準で収まっている、といった印象だった。

「特に操縦の簡易化と素体の高性能化による汎用性の向上は素晴らしいの一言だな、まあ操縦系は各国のデータから俺が作ってるんだから当たり前だが。
 他にも多方向加速推進翼を四つも搭載してるが、コイツは航空力学に基づいて可能な限り低燃費で済まそうって考えだ。低燃費って大事だよな」
「はぁ……」
「ま、要するに何が言いたいかってーと、最後発機なんだからこれぐらいの性能ないとやってらんねーよなって話」

 台無しだった。

「ま、これでヴァンのハゲ進行も止まるだろ。最近アイツどんどん頭薄くなってるからなぁ……」
「―――ッ!」
「ん、あ……あー、悪い。ちょいと軽率だったな」
「い、いえそんな……」

 ヴァン。それはヴァンサン・デュノアの愛称。そしてそれは、私の『父さん』の名前。
 そう呼ぶって事は、この人は父さんと仲が良いんだ……もしかしたら、ううん、きっと全て知っているんだろう。

「まあお詫びって訳じゃないが、一つ君にプレゼントだ。ついてきな」
「え……?」

 その全てを知っているであろう目には軽蔑や同情の類の感情などなく、眼鏡の奥で悪戯っぽく光っているだけだった。
 ……そう思うと、言動の一つ一つが全てわざとらしく見えてくる。考えている事は行動の通りなのだろうけど、必要以上に感情を露わにしているように見える。

「さ、着いたぜ。カスタム機……と言うか厳密にはラファールの別プランだな。使いやすさを重視したんで本採用は向こうになったって訳だ」
「これって……」
「ああ。その名も【ラファール・リヴァイブ・カスタム】、拡張領域の拡大と一部パーツの変更で若干ピーキーだが第二世代としては最高峰の性能だ」

 その戦衣装は先の芸術品よりも洗練されており、何よりも野暮ったいネイビーカラーから鮮やかなオレンジへの変更が目を引いた。
 それに私はほぅ、とため息をつき……要するに見惚れてしまったのだった。

「他にもプランはあるが……まあ後はそっちの都合で変えてくれ。でもこの【黒の棘尾】、通称『要塞殺し』は変えない事をお勧めするな」
「……どうしてですか?」
「決まってるだろう―――ロマンだよ」

 ……まあ、悪い人じゃない、のかな?



「アイッ! シャルッ! リタァーンッ! ちなみにここ数回の会話は全部外国語ナンダゼッ!」
「……はぁ」

 何だ何だテンション低いなイィィィチ夏クゥゥゥゥゥゥゥゥンッ! こちとら流体装甲のデータからナノマシン制御作ってデータ送り返した所なんだぜフゥワッフゥッ!
 睡眠時間が足りんぞ、睡眠時間がぁぁぁっ! どーせあの研究所じゃ流体制御なんざできんだろうがなぁっ! 今作ってる機体も流体装甲止まりらしいし!

「あー、とりあえず座ったら?」
「そうだな、そうしよう」

 自分でもあんまりだと思うテンションに一夏がドン引きしているので元に戻す。全く優しい子だ。千冬はもーちょいこういう所を見習うと良い。
 あ、コイツ双子葉類とかアホな事考えてやがる。なんでこう考えがバレるのかね、コイツは。

「突っ込まんぞ」
「え、な、なにが!?」
「慌ててるのがアホな事考えてる何よりの証拠、と。箒ちゃんへの手紙があれば今のうちに預かっとくけど」
「あ、じゃあお願い。でもまさか手紙もロクに出せない状況なんてな……」
「しょーがねーだろ。俺と違って束の奴は完全に失踪してんだから」

 要人警護プログラムの一環で日本中を転々としてる篠ノ之家だが、先日遂に親父さん達と箒ちゃんが離れ離れになったらしい。
 幸いにも情報管理がザルなので会いに行く位は簡単だがな。っつーか警護なんだからこんな簡単に会えちゃ駄目だろってくらい簡単だ。
 で、俺はと言えば原作中トップクラスに情緒不安定な掃除用具娘の精神安定に奔走している。具体的には一夏からの手紙を渡す事だが。
 あとたまに一夏と剣道の稽古をしてたりする。バイト三昧と言っても月に一日ぐらいだったら問題無いしな。

「ホント、何やってんだかあの人は……」
「だがそれが良い、とは昔の偉い人の言葉だ」
「誰だよ……」
「まあそれはともかく千春はどーした?」
「さぁ? 鈴と遊びに行ってるんじゃないか?」

 って事はまた何かしらの作戦の用意でもするつもりか。原作と違って箒との交流があるから適度に乙女心(笑)が刺激されてるみたいだな。
 なんて考えてると客人の来訪を告げるチャイムが鳴る。ようやく来たかミスターバレット、もといダダンダンダダン。

「誰がターミネートマシーンのテーマっすか、誰が」
「「お前」」
「……俺、なんで一夏の親友なんかやってんだろ」

 それはきっと見ていて楽しいからさ! 君にはハーレム非構築系のオリ主になれる才能がある! いずれ挨拶だけで年上眼鏡っ娘落とすしね! 死ね!

「で、源蔵さん。例のブツは?」
「ん、ああ。ホレ」
「いやー、持つべき物は開発者の兄さんだよな」

 ニュアンスが近所の兄ちゃんって辺りに一夏のブラコン魂を見た。と考えながら月末発売予定のディスクをハードにセットする。

 その名も【IS/VS.SP】。スペシャルエディションの名に相応しく売り文句が『佐倉博士完全監修!』である。っつーかこれで最初の合わせて23種目だぞ。
 元々IS/VSは第二回モンド・グロッソをゲーム化した物であり、某巨大掲示板で『優遇商法』と新しい言葉を生み出した問題作だ。当然ながらKOTYにノミネートとかしたんだがまあ詳しい事は原作読め。
 このバージョンの最大の特徴は『機体エディット機能』を搭載した事である。流石に俺のようにネジ一本までこだわるのは不可能だが、シュトゥーカ・ドライにテンペスタの推進系乗せて強襲仕様とかが可能だ。俺も一回やったら強度不足で空中でバラバラになったが。
 そんな訳で大まかなパーツ単位でのオリジナルIS作成機能は本作品の目玉となり、最初の情報からドカンと某F通に掲載された。ぶっちゃけ俺監修って事より扱いがデカかったのは若干ムカついたよ。これでも世界的権威なんですが、俺。
 更に第一回大会の詳細なデータを俺経由で入手できたので容量が許す限りぶち込んである。勿論千冬のデータも入っており、暮桜が選べるってだけで予約が殺到してるらしい。ブリュンヒルデの人気恐るべし、だな。
 ついでに言うと俺完全監修なんで初期キャラの強さに操縦者の腕は入っていない。だから暮桜が割と弱い。でも某F通のインタビューでその事言ってあるから問題ないだろ。問題ない……よな?

 あと、隠し要素としてハミングバードのデータを入れてあるのは内緒だ。常時超高速戦闘みたいになってるから非常に扱い辛いが、それさえ超えればキャノンボールなら負けなしだぜ!

「うおおおおっ! マジでエディットできるぜオイ! よし、ビッグバードとシュトゥーカをミックスだ!」
「なにそのトリガーハッピー仕様」
「もしくはレッツパーリー。まず間違いなく飛べないな」

 まああいつらはISっつーか男のロマンですから。絶対開発チームにそういう連中いるから。

「一夏は当然ドノーマルの暮桜だよな?」
「え、いや、どうだろ……」
「ゲームとは言え戦術眼を鍛えるには丁度良いはずだ。千冬がどう考えてどう動いてどう勝ったか、それを知る良い機会だろ」
「じゃあ、まあそういうことなら……」

 そしてこれを足掛かりに織斑一夏改造計画がスタートするのだよ! 厳密にはもう始まってるけどな! ファファファ!



 珍妙な鐘が鳴り響き、授業の終わりを告げる。やっぱチャイムはキンコンカンコンだろって思うのは俺が日本人だからだろうか。
 なんて考えるのは鈴も中国へと引っ越していった次の夏。丁度期末テストの直前だ。このクラスの担任は理系がそれはそれはお粗末なので特別に授業を代わっている。

「ほい、そんじゃ今日はここまで。明日は実体弾の弾道計算についてやるからなー」

 うえー、と非常に女子らしくない声が聞こえてくる。その気持ちは痛いほどよく解るが、悲しいけどここって学校なのよね。

「よーし解った、こりゃ今度の期末のメインになるな。覚悟しとけよー」
「えぇーっ!? そんなぁーっ!?」
「ぶーぶー! 横暴だー!」
「そうだそうだー! 酷いよ源ちゃーん!」
「今度の薄い本佐倉先生総受けにしてやるー!」

 うっせぇ黙れ。っつーか最後のは俺有名になってからちょこちょこ出てるから。ちょっとどっかの代表と握手とかするとすぐ実況スレ立てやがってこの野郎。
 折角なら俺のホモとか千冬ばっかじゃなく束のエロ描けよてめーら。買ってやるから。

「そうか仕方ないな。上位五名くらいまでには一日目と二日目のサークルチケットを進呈してやろうと思ったんだが……旅費その他諸々全部俺持ちで」

 ぴた、と教室の空気が凍る。はっはっは、知ってんだぞ? 寮の中で薄い本が爆発的に市民権を得ている事ぐらい。

「やるしかないわ! 今日から合宿よ!」
「この殺伐とした空気……嫌いじゃないわ!」
「そう かんけいないね」
「ゆずってくれ たのむ!!」
「ころしてでも うばいとる」

 何をする貴様ら。っつーか誰だ今本気で殺気出してきたの。

 ……しかし、女尊男卑の世の中とは言え未だに世界最大の同人誌即売会は男がメインだ。いや、こんな風潮だからこそ、か。元々は女性参加者の方が多かったんだしな。
 メカミリからの派生でISジャンルが当然のように独立し、既に二日目西1全域が指定席だ。当然ながら俺の考察&1/8フィギュアサークルは半オフィシャルなんで壁配置。
 他にも企業とか色々顔突っ込んでるからチケットは割と手に入ったりする。それを期末頑張ったで賞として生徒に振舞って何が悪い。俺の分は確保してあるし。

 でもさー、幾らISスーツがエロいからってコスプレ絡みで問題起こすのやめてくれない? 準備会から真っ先に俺ん所に連絡来るんだけど。喧嘩とか俺に言われても困るから。

「ねぇ、山田先生。そう思いません?」
「佐倉先生……主語抜きでいきなり声をかけられても困るんですが」
「そこはホラ、その眼鏡で何でも見通すって設定で」
「設定って何ですか設定って!」

 相変わらず片手間で弄れて楽だなコイツは。



 やまやを弄りながら昼食を取り、自分の城である第一多目的工作室――通称『注文の多い整備室』――へと戻る。午前に実機の授業があると整備実習が入るが、今日は特に無いのでのんびり出来る。
 と、珍しくプライベート用のケータイが唸る。誰だ、と開いた画面には酢豚の文字。鈴か。

「応、どーした? アレか?」
『解ってるなら話は早いわ……源さん、何アレ』

 恐らくアレと言うのは先日『佐倉源蔵著 ISパーフェクトガイドブック 入門から応用まで』と一緒に送ったアレの事だろう。

「上手く使えって書いてあったろ? なら上手く使えよ」
『あのねえ! 【空間圧作用兵器】なんてどう考えても第三世代兵器じゃない! どうしろってのよ!』
「そいつを渡せば第三世代機ができる。優秀な成績を残せば国家代表になれる。そうすれば一夏もメロメロですよ旦那」

 どうよこの見事な三段論法。

『う……そ、それホント?』
「まあ少なくとも奴のシスコンは治るだろうな、千冬に勝てば」
『出来るかぁっ!』
「あきらめんなよ! 俺だって気温30度近い外に一歩も出ないでクーラーにあたってんだから!」
『あんたこそちったぁ外に出なさいっての!』

 むぅ、怒られてしまった。一体何処に問題があったのやら。きっと全部ですね解ります。

「ま、そいつ使うつもりなら学園に来ると良い。日本に来れば一夏にも会えるしな」
『むぅ……ま、まあ考えとくわ。ありがと、源さん』
「どーいたしまして。年末までには決めとけよ、推薦状出すのって時間かかるからよ」
『うん。じゃあまたね、一夏達によろしく』

 これでラストの仕込み終了……と。あとは本番だけだな。



 寒い。クッソ寒い。帰ってコタツで寝たい。いやホントに。

「まーそーも言ってらんない訳で。はい皆さんこんにちは、代表候補生の皆さんですね? 佐倉源蔵と申します、と」
「「「「「………。」」」」」

 返事ぐらいしろや。こちとら掻巻無しで行動してんだぞ。まあ別に良いけど。
 ふむ、ちょろい、酢豚、根暗眼鏡は居るな。オッケーオッケー、ここ一つ変わったよ。
 ……正直、シャルロットとラウラも呼ぼうか考えたが流石の一夏さんもキャパオーバーしちまうよなと考えてやめた。

「それじゃあ各人手元の資料にあるように動いて下さい。終わり次第一般入試始めるんで」
「「「「「はいっ!」」」」」

 元気があって大変よろしい。んじゃ俺は試験用の打鉄とラファールの準備があるんで戻りますよ。

「源さんっ!」
「佐倉先生、だ。試験の時くらいはそう呼べ」

 と思ったら声をかけられたので文句と共に振り返る。しかし鈴、お前相変わらずちっこいな。

「あ、えと……教本とか、ありがとう」
「どーいたしまして。しかしお前凄いな、IS歴一年未満で代表候補生なんてそうそう居ないぞ?」
「大したこと無いわよあれくらい。あの教本もだいぶ役に立ったしね」
「それでも実技クリアせにゃならんだろ。そこは完全にお前の努力と才能の結果だよ」

 べふ、と頭を撫でてやる。体格差からか非常に撫でやすい位置にあって良い。殴られたが。

「ったく、いつもいつも撫でんなって言ってるでしょ!」
「いやぁ、つい。一夏だったら良かったのか?」
「え、いや、えと、だめってことはないんだけど……」

 流石一夏さん。妄想だけで好感度上げやがったでぇ……。

「とりあえずさっさと戻って試験受けなさい。今日は割と忙しいんだよ俺」
「あ、ごめんなさい」
「まー頑張りな」

 ばっははぁーいと背中越しに手を振る。まあ鈴の成績ならまず大丈夫だろう。セシリアと良い勝負かな。



 さて、ここからが問題だ。現在朝の九時二十六分、そろそろ試験が始まる時間であり、運命が動く時間だ。
 要するに一夏が迷い込んできてる訳だが、このシーンってかなり切羽詰ってたのね。あと四分で女子ゾロゾロ来るぞ?

「お、来た来た」

 一応設置されてる監視カメラに一夏が映り、打鉄が低い起動音を上げ始める。あ、他の先生達気付いた。

「はいはいお邪魔しますよっと」
「え、げ、源兄ぃ!? どうしてここに!?」
「俺ISの学者さん、ここIS学園の試験会場、どぅーゆーあんだーすたん?」
「あ、あいえすがくえん……?」

 起動させた本人である一夏を放って皆が騒いでいる。そりゃそーだろーな、一夏って男だもん。でもきっとこれ束の差し金だもん。
 だって本当は『動かす予定が無かった』この打鉄が昨日起動してたし。どう考えても束が性別ロック解除したって事だよな。
 ……むしろ個人的には『関係者以外立ち入り禁止』の部屋にどうして入ってきたかが気になるぜよ。一夏君。

「静粛に! この件については私が預かる。以後この事については国際IS委員会からの発表があるまで口外厳禁とする! 良いな!?」
「「「は、はいっ!」」」
「では時間が押している、さっさと起動試験を始めろ。私は彼を別室へ連れて行く、何かあれば連絡したまえ」

 わかりました、という声を背中に聞きつつ一夏の首根っこを掴んで部屋を出る。うん、やっぱこの部屋立ち入り禁止なってるよ。

「まあ、試験会場がここになった段階で薄々気付いてたんだけどな。そっから束の仕業だったんだよなー、きっと」
「えと……源兄ぃ、離してもらえると助かるんだけど……って言うか束さん?」
「そ。まあ部屋に着くまで待ってろ、と言いたいが一つだけ良いか?」

 一夏の首根っこを左手で掴んだまま右手はドアを指差す。さあ読め。

「お前何で入って来てんねん」
「あ……」
「気付けド阿呆」



 カクカクシカジカジカサンマンエン

「とまあ、こんな具合だ。何か解らない事は?」
「えっと……俺、これからどうなるんだ?」

 ほほう、早速そこに思考が及ぶか。教育してやった甲斐があるというものだ。

「そーだな、最悪の場合解剖されてホルマリン漬け」
「げっ」
「まあそりゃ最後の手段だろ。とりあえず一ヶ月以上は政府か国際IS委員会の護衛と言う名の監視がつくかな」
「……それも嫌だなぁ」

 そう言うな。俺だってIS発表直後はそんな感じだったんだから。

「とりあえず珍しいケースだし、一回試験受けてみるか? 丁度別口のアリーナが空いた所だ」
「試験って……ISの?」
「ああ、試験官と一対一で戦う至極シンプルなもんだ。別に負けても問題ないぜ、勝てる奴なんて一年に一人いるかどうかだから」

 と言いつつ今年は既に二人勝ってるんだよね。お陰でやまやが絶賛沈鬱中だが。
 っつーか代表候補生五人と連続で戦った上にこんなジョーカーだもんな。そりゃ壁にぶつかりもするか。

「ん、じゃあまあ少しだけなら……」
「オッケー。ホントは保護者に連絡とらなきゃならんが、まあ千冬だったら事後承諾でも問題無いだろ」
「……また殴られるよ?」
「それもまた一興。んじゃ着いてきな」

 ―――さぁ、物語の始まりだ!



 やっとプロローグ終わった……長ぇ……。

 チート全開で介入しまくってみました。でも修正力みたいなのが働いてる気がしないでもない。
 源蔵の行動は大体原作通りに進んでいきます。物語を変えるのは実働部隊である千春の役目。

 本編は誰の視点で行くか……いきなり変わってる部分があるんでその辺にご期待下さい。
 次回の更新は、まあGW中には……。



 痛い!

「……どういうつもりだ」
「どうもこうも、言ったままの意味だっつーの。原因は不明、束なら何か知ってんじゃねーの?」
「はぁ……どいつもこいつも」

 あ、そーいえば千春がIS学園受験してたっけ。よし受からせよう。えこひいき万歳。

「現在国際IS委員会が発表の準備中。機体は倉持の所に良さそうなのがあったから唾付けといた」
「待て、まさか専用機を与えるつもりか!?」
「データ取りにはそれが一番でしょ。それに万が一の時に手元に無いなんて事にならないようにしないと」
「それはまあ、そうだが……」

 今ごろ委員会は上から下への大騒ぎだろーなー。明日からまた暫く忙しくなるなー。

「騒動が落ち着いたらどこの所属にするかでまた揉めるだろうな」
「そうだな……束め、今度会ったら絞り倒してやる」
「えー、だったら俺にやらせてよ。鎹作ってくるから」
「死ね」




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