死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。
ルター
荒れ野を征く。
どれだけの時を戦い続けて来たのか、私にも判らない。だけど一度、言われたことがある。自分を戦いへと引き込み、その対価を与えたものに。
「君達三人は不思議だよ。普通ならもうとっくに消滅していてもおかしく無いのに、まだ戦い続けている。何がそれを可能にさせるのか、説明が出来ないんだ。まあ、君達ほど経験豊富で実力のある魔法少女は少ないから、ボクとしては有り難い限りだけどね」
長い? いい冗談よ。
私の戦いなんて短すぎる。彼女が背負った物に比べれば。
だけどそれも、もうお仕舞い。
眼前の荒野に魔獣が現出する。
きっと私はこれを倒し、そして消滅するだろう。円環の理に導かれて。
そう思った時、ふと、私よりも先に逝った二人を思う。
彼女達は、答えが出せたのだろうかと。
「生きたい」と、私は願った。
それはあの時、あの場所にいた私の心からの願い。それしか、私には無かった。
そして私は生き残った。あの地獄から、一人だけ。だけどそれが、本当に良かったのか。
親を失い、ただ一人。残されたのは、戦いの使命と消え行く運命だけ。
自分でも、随分と都合のいい考えだと思う。孤児などいくらでもいて、それ以上に突然の終わりを告げられた者は沢山いる。
それに比べれば、どんな形であれ生き残ることの出来た私は、幸せだったのだろう。
だけど、辛かった。
独りで戦い続ける事が、消耗と孤独に怯える日々が。
だから、仲間が出来たことが、どれだけ嬉しかったか。
辛い別れもあった。だけど得るものもあって、私たちは歩んでこれたんだと思う。
キュゥべえが言っていた、私達はイレギュラーなのだと。その時は理由は判らなかった。だけど、今なら判る。きっと私達は、暁美さんに惹かれたのだ。彼女の言う"概念"は、私にはちょっと信じられないけれど。
もう怖さは無い。
一つ心残りがあるとすれば、そう、最後まで見届けられ無い事かしら。
「マミっ!」
杏子さんの声が、遠く聞こえる。
深く切った額から流れる血が、左の視界を滲ませていた。
身体中ズタボロで、そこかしこから血が流れている。きっと魔法少女じゃなかったら、立っていることさえ出来ないのでしょう。
いやだわ、この服、結構気に入ってるのに。
血と泥にまみれ、ズタボロになった魔法少女姿をみて、そんなことを思う。
そういえば、あの時もお気に入りの服だったわ。
私の運命を変えた、あの事故の時も。
「まだまだ、よ」
そう言って、私は正面の魔獣達を見やる。
時々、場違いなほどに強力な魔獣が現れる。
それが人の業なのか、世界の摂理なのかは知らないけれど、今まで幾度となく相手をしてきた。三人で。
今回も、何も変わらない。ただ相手が少し強かっただけ。長いこと戦ってきたから、私の力が衰えていたのもあるわね。浄化じゃあ、賄いきれないから。
「くっ……」
歯噛みする暁美さんの声、二人とも、自分の敵と戦うのが精一杯なのだろう。
二人にはまだ余力がある。だけど私が倒れれば、二人も危ない。
だから。そう、だから。
私は一つの、決断をする。
「ごめんなさい、二人とも。私はここでお別れ」
息をのむ音が、聞こえた。
直後に、怒声が耳を叩く。
「ふざけんじゃねえ! 今更一抜けなんて許さねえからな!」
杏子さんらしいな、と思う。
優しい娘。私が、後輩を育成したいなんて突拍子もないことを言い出したとき、文句を言いながらも一番付き合ってくれたのは彼女だった。
昔は、もっと冷たい人だった気がする。あの頃はまさか仲間になるなんて、思ってもいなかった。
きっと彼女も、何かを失い、何かを得て、変わったのだろう。
そのきっかけとなった少女を思い浮かべながら、私はそんなことを思う。
「マミ……」
押し殺したような暁美さんの声。
本当に不思議な娘。きっと私の考えも何も見透かした上で、あえて止めないでくれるのでしょう。
彼女は彼女で、大きな物を背負っている。真偽なんてどうでもいい。ただそれが、彼女をここまで歩ませて来たのは確か。
本当は最後まで見ていたかったのだけど。
そんな未練を断ち切るように、私は言う。
「本当、ごめんなさい。でも、私も譲れないの。今、この時を」
返事は待たなかった。ただスカートの裾をつまみ、優雅な、そう今までで一番優雅な会釈と共に、開幕を告げる。
「さあ、最後くらい派手に行くわよ!」
両の手に銀の銃を、哀れな獣達には葬送の円舞曲を。
死線を潜り、打つ、撃つ、討つ。
自分でも芝居が過ぎるとは思う。けれど命を賭すのだからこそ、私は役を演じきりたいの。
有象無象をなぎ倒し、私は最後の相手へと迫った。これまでとは比べ物にならない強さ。中途半端な攻撃で、倒せる相手ではない。
「……っ!」
攻撃を避けても、余波が肌を打つ。
消耗が激しい。きっと、チャンスは一度だけ。
失敗は許されない。だけど私は、これまでに無いほど充実している。身体が軽い。
隙を捉えて、私は跳躍した。そのまま射撃姿勢を取る。
両の手にも余る程の大砲と、周囲を埋め尽くす無数のマスケット銃。この一撃で、私は消えるだろう。これが本当の、「最後の射撃」。
狙いを澄ます。神経が研ぎ澄まされると同時に、時間の流れが遅くなる。
その時、私の脳裏に、これまでの日々が過ぎった。
走馬灯というのかしら。実際に体験すると、不思議なものね。
とりとめもないこと、本当に取るに足らないことばかり思い出される。
あの娘は誰だったかしら? 家に呼んでお茶をご馳走した、赤いリボンの似合う娘は。
……バカね。赤いリボンなら、暁美さんに決まっているじゃない。
「ティロ……!」
予令と共に、引金を引く指に力を込める。
自分が消えることに、恐れは無かった。
そういえば、前にも一度、こんな気持ちで戦ったことがある。あの娘の優しさが嬉しくて、孤独から逃れられるのが嬉しくて。
でもあの時は、ただ浮かれていただけ。だからそう、足元を掬われた。予期せぬ突然の終焉。それは事故の意地の悪い再現。あの時止まった時間が、何の前触れもなく動き出したかのような。
納得も、後悔も、理解すら無い。気付くより前に私は喰われ、意識が途切れて……
私は何を言っているのかしら。何を見ているのかしら。今ここで敵を討とうとしている私が、確かにいるのに。
気の迷いだと、別なことを思う。
そういえば、暁美さんとの出逢いはどうだったかしら? あまり友好的な最初では無かったような気がするわ。あの娘を巡って対立して……
まただわ。何かがおかしいの。経験したことの無いような記憶ばかりが思い起こされる。
そうよ、あの娘は暁美さんだって、さっき判ったじゃない。
でもそこまで考えて、あることに気付いた。
今までみた記憶の中で、暁美さんはリボンなどしていなかった。
……あの娘は、暁美さんじゃない?
時間が、止まったかのように緩慢だった。でもそれはきっと、私の意識がそう感じているだけ。
大切な事を思い出すために。思い出して、理解するために引き延ばされた時間。
そうよ、あの娘は暁美さんじゃない。
あの娘の名前は……
『マミさん。ありがと。皆を導いてくれて』
声が聞こえた。
そう。そうなのね。
あなたが全部、背負ってくれたのね。
そして私に、道を与えてくれた。答えを出すための道を。
だったら、私はとても幸せ者ね。あの事故で失った物を、その後の凄惨な繰り返しでも得られなかった物を、今得られるのだから。
納得した上での、最期を。
ありがとう、鹿目さん。
ありがとう、まどか。
……照準は過たず。唯一無二の砲口を手に、幾千もの銃口を従えて。
今、改めて言おう。
高らかに、謳おう。
もう何も、恐くない。と。
「フィナーレッ!!!」
引金を引ききった。
ハンマーが落ちる。寸分の狂いも無く。
斉発。
そして……
魔法少女なんてのは、なるもんじゃない。
大体さ、自分の存在と、平穏な生活を捨ててまで叶えたい願いなんて、本当にあるのかい?
だけどまあ、人間なんてのは……特にガキなんてのはバカだからさ、ロクでもないことをする奴が出ちまうのさ。
あたしみたいにね。
その点、マミは仕方ないと思うよ。
あいつにはあれしか無かったんだから。まあ、そこにつけ込むあの白いのは、大した詐欺師だろうけどさ。
マミの奴はお節介だから、ある時とんでもないことを言い出しやがった。「私達で、後輩を育成しましょう」だとさ。
バカな話だよな。もっといえば、余計なお世話だ。
でもまあ、さっきも言ったように世の中にはあたしみたいなバカも多いんだ。そういう奴がさ、右も左も判らずにやられるってのは、可哀想だろ。
普通に学校行って、友達と遊んで、誰かを好きになって……
そんな、誰でも手に入れられるような未来を捨ててまで選んだんだ。先の短い人生ならさ、長く生きて欲しいんだよ、精一杯。
……さやかの事、引きずってるって言われたら、否定は出来ないよ。でも、あたしはそれでいいと思ってる。あいつはあたしに大切な事を思い出させてくれたんだ。
覚えてくれてる人が居るってのは、幸せだと思う。だからあたしは、さやかを忘れたくない。
ま、そんなあたしも、お節介だよな。
そんなこんなで、随分長いこと戦ってきた気がするよ。キュゥべえの奴にも言われたっけ。
そうこうしてる内に、マミは逝っちまった。
まああいつはあいつで、「後輩も随分育って来たから、そろそろ引退かしら」なんて言ってたけど、何も本当に居なくなる事はないよな。
厄介事、人に残してさ。
ほむらも何だかんだで付き合ってくれる。こいつはよくわかんないけど、確かに仲間だ。
そういやあ、こいつの願いって、何だったんだろうな。
自分を賭す程の、願いってさ。
何度か訊ねたような気もするけど……わかんねーや。
でもま、なんとなく判るんだ。こいつは答えを探し求めて、歩き続けてるんだって。
いや、魔法少女っていう存在が、そうなのかもしれない。戦いに負けるんじゃなくて、限界を迎えて消滅するっていうのは、自分の存在の、魔法少女になったことの答えを見いだしたからなのかなって。
だからこいつは歩き続けてて、マミは逝っちまった。さやかもきっと、そういうことなのかな。
そして、あたしは……
半身に引いて、槍を構える。霞斬り一閃。瞬転、連結を解いて打ち据える。
皆これくらい楽に済みゃ、いいんだけどな。
雑魚の先、腰を据える大物を見ながら、そんなことを思った。
満身創痍。なんていえば聞こえはいいけど、要はみっともなくやられてるってことさ。
息が荒い。
あたしは敵から目を逸らさずに、横のほむらに声をかける。
「生きてるか?」
「……まだ大丈夫よ」
よく言うよ、声が全然大丈夫じゃねー。
はっ、あたし等も随分衰えたもんだ。まあ、マミが逝っちまった辺りから、自覚はあったんだけどさ。
一つ溜め息をついて、あたしは口を開いた。
「あいつを倒すには、生半可な攻撃じゃ無理だ。全力でいかないとさ」
「……ええ」
一瞬遅れて、答えが来た。
あたしの言葉の意味を、こいつは正確に理解してる。全力の攻撃。要するに、さやかが、マミがやった、それさ。
だから後は、誰がやるか。
答えなんて、もう出てるんだけどね。
「バックアップ、頼んだよ」
「杏子!」
後を続けようとするほむらを制して、あたしは続ける。
「あんたがいう話は、正直、私にはとても信じられないんだ。あたしは何とかって言うあんたの友達に、会ったことは無いからさ。だけど、あんたは答えが出したいんだろ? だから、ここで旅を終えるべきじゃない」
らしくないこと、言ってるよ。
自分でも、判ってる。
でもさ、あたしは、答えをだしちまったんだ。
あたしが歩んできたことの、答えを。
「ここはあたしの戦場さ。それは譲れないよ」
「……」
何も言わずに、ほむらは頷いた。
なんか、前にもこんなことがあった気がするよ。いつなのかは、わからないけどね。
覚悟を決める。その前に、ふとあることを思い出したんだ。
「最期の晩餐……にしちゃ、ちょっと月並みだけどさ」
最後の一個のうんまい棒、忘れてたよ。
「食うかい? っと」
そう言って差し出してから気付いた。吹っ飛ばされた衝撃で、粉々だってことに。
「ごめんよ。これじゃあ……」
いくらなんでも、しけてるよね。
でも、あたしが引っ込ませるより前に、ほむらはうんまい棒をひったくったんだ。
「半分、貰うわ」
言って、あいつは袋を逆さにすると、口に流し込んだ。
きっかり半分そうしてから、あたしに突っ返して来る。
「……どうにも、締まんないね」
苦笑しながら、あたしもそれに倣った。
粉々になったうんまい棒は、食感も何も有ったもんじゃない。
だけどね。
不思議と美味しいもんさ。だれかと食べる食事ってさ。
突撃。
白兵っていうのは、相手に肉迫しなきゃ成り立たない。相手が一匹ならいいけど、複数いると結構大変でね。一人でやってた頃はそれでもやるしかないから、気になりもしなかったんだけど。
仲間が居ると、全然違うもんさ。
マミもほむらも射撃系で、あたしにとっちゃいい援護役だった。欲を言えば、もう一人くらい前衛が欲しかったかな。
……誰のことかなんて、言うまでもないだろ。
左右はほむらの弓任せ。あたしはただ眼前の敵を叩き斬る。
あたしの得物は槍だけど、もっぱら斬撃が主だ。突きは死に太刀で、乱戦には向かない。
多節棍も同じ。まあ、リーチが欲しい時は躊躇しない。何でも使い様さ。
袈裟に斬って横に薙ぐ。逆袈裟からの唐竹割。バラしてからのフレイル打撃。
別に武術を習ったわけじゃないんだけどね。よくもまあこう動けるもんだと、我ながら感心しちゃうよ。
そんなこんなで、大ボス様のご登場。
叩き斬ってやりたいのは山々だけど、ちょっとばかし荷が勝ちすぎてる。だからあたしの一番の大技で、仕留めてやるよ。
魔力を集中する。出し惜しみは無しだ。
手を組むあたしの背後から、巨大な槍が地面を突き破って現出した。
マミみたいのは柄じゃないけどさ、あたしだって、切り札の一つくらい持ってるよ。
だってそっちのほうが、正義の味方っぽいだろ?
そうさ。あたしはね、誰かを幸せにしたかったのさ。
マミだったら、多分、魔獣を狩るのが間接的に人を助けて、幸せを守っているとか、そんなことを言うんだろうね。
まあ、それは間違っちゃいないし、現に今はそう思ってる。だけどそれだけじゃないんだ。私は、私に親しい人の幸せな姿を見たかったんだ。
それを他人に叶えてもらったのが、あたしの最初の間違いで……手にした力で叶えることを忘れてたのが、最後の間違いさ。
それに気付かせてくれた奴を、救えなかったけどね。
だからあたしが今ここでほむらを助けて、あいつが納得して答えを出せたんなら、それであいつが幸せなら、あたしは、それでいいんだ。
それがあたしの答えさ。そしてあたしは、あいつを信じてる。
頼むよ神様。こんな人生だったんだ。せめて最後くらい、幸せな夢を見させて。
巨槍が、龍を成す。
もたげた鎌首に飛び乗って、あたしは槍を躍らせた。
三人で育てた奴らは、そう簡単には負けない筈さ。いずれ答えを得て、そして消えていく。
願わくば、その答えに幸あらんことを。
そしてほむら、あんたは答えを、見つけなよ。
龍が顎を開く。
そういえば前にこの技を使ったのはいつだっけね。なんだかとても辛い戦いだった気がするよ。
あたしはさやかを助けたくて、でも自分じゃ出来ないって知ってたから、あいつの親友に頼んだんだ。
赤いリボンの優しい奴。初めてまともに話をしたとき、挨拶代わりにお菓子を渡したら、きょとんとしてたっけ。
一緒に過ごした時は随分短かったけれど、もし別な形で出会ってたら、あいつともいい友達になれたのかな……って。
あいつって、誰だ。
なんかおかしいんだ。ぜんぜん覚えのない記憶を、あたしは思い出してる。
あのリボンは、いつもほむらがしてる奴だ。だけどあいつは、ほむらじゃない。
そもそも、あたしは何と戦ってたんだ? さやかを助けるって、さやかは力を使い果たして……
そうだ。あの日、あたしはさやかを探して、駅のホームでようやく見つけたんだ。随分しょぼくれてるからさ、お菓子でもやろうかと思ってあいつの側に行ったら……
ソウルジェムが、真っ黒で。
魔女になっちまったあいつを、私は助けたくて……
『さやかちゃんは、ああするしかなかったから……寂しい思いをさせてごめんね、杏子ちゃん』
声が、聞こえた。
ああ、そっか。あんたか。そういや、マミの家で話したもんな。
ごめんよ、今まで忘れてて。
そっか、それがさやかの答えか。
あいつはあたしなんかより、よっぽどしっかりしてたんだな。
あいつが納得したんなら、それでいいさ。
それにしても……ひとりで全部背負い込んじまって。ほんと、優しすぎるよ、まどか。
宣言してやるよ。あたしがここで消滅して、意識もなにも無くなっても、あたしはあんたの力になってやる。
あたしだけじゃない。マミも、さやかも、ほむらだって来るさ。
それが友達ってもんだろ?
一人ぼっちは、寂しいもんな。
……敵を見据える。迷いは無く。
ただ一閃、槍を、振り抜いた。
閃光が、全てを包む。
失ってばかりの人生だった気がする。
私はこの世界が生まれた時から、一番大事な物を失った。
彼女はどこにでもいると言ってくれたけれど、でも、私は、彼女に普通の幸せを歩んでほしかった。
それが出来なかったことが、切なくて。
一つ不思議なことがある。私はこの世界で、何を願って魔法少女になったのか。
私の魔法少女になった動機は、まどかに起因している。だから彼女という個が喪われた世界で、私が魔法少女である理由は存在しない。
でも私は、魔法少女だった。
インキュベーターには訊ねなかった。きっとそれは、私が自分で気付くべきことだから。
そして魔法少女として戦い、幾多の出逢いを経て、そして失った。
あの終わらないループを共にした、二人さえ。
そして今、私の番が回ってくる。
今なら判る。私が何を望んだのか。
それはきっと「魔法少女になる」こと。
それだけが、その有り様だけが、私とまどかを繋ぐ接点だから。
魔獣達との距離を、ゆっくりと詰める。
私の背中からは黒い翼が生えていた。
それは私が魔女になったときの姿なのだろう。だけど今は、それを、まどかが引き受ける。
私自身が、まどかを苦しめてしまう。それが辛くて、悲しくて。
だけど、歩みは止められない。それが、約束だから。
『頑張って……!』
不意に、声が聞こえた。
驚きは無い。喜びしか、無い
側に居てくれたんだ、ずっと。
それだけで、何処までも行けそうな気がする。
答えを得て、私は飛ぶ。高みへと。
まどかの、元へと……
fin