完結したのでチラ裏の多分続かない一話だけの短編集から移動です。
注意。これは、先輩があくまでも身内同士のネタプレイ、という事で作ったキャラで、身内同士のネタプレイ用に作った世界に入ってしまうと言う話です。
俺TUEEE志向のイタタなキャラ作成入りますが、あくまでもネタプレイのつもりだったと言う事でご理解ください。
鬱注意。これはあくまで、ソードワールドRPGを参考に荒木先輩が作ったなんちゃって世界なので、ソードワールドRPGを読みたい方はダッシュで逃げて下さい。
誰もいない教室、私は先輩二人と一緒にキャラクターシートなる物を眺めていた。
「荒木先輩のキャラクターシートってこれですかぁ? わー、可愛い! えーと、15レベルって強いんですかぁ?」
TRPG。私はそれに興味があったけど、周囲に一緒にやる人がいない為、ずっと触れないでいた。といって、この学校には弓道の特待生として入って来た私の入る部は決まっている。だから、弓道の先輩経由でゲーム研究部の先輩と知り合えたのは幸運だった。
キャラクターシートでは、愛嬌のあるドワーフがこちらを見つめていた。絵も字も凄く綺麗だ。
ファイター15レベル、プリースト10レベル、クラフトスキル15レベル。それが荒木先輩のレベルだった。
「本来の最高レベルは10かな。常人に到達できるレベルって事だけど。鍛冶屋って設定なんだ」
荒木勝也先輩……猛々しい名前とは裏腹に、痩せて地味な先輩は、そっけなく告げた。
「すごーい! それってもう英雄なんじゃないですか?」
私が声をあげると、荒木先輩は苦笑して首を振った。
「大分下駄を履かせてもらっただけだから。っていうか、今回やるのはオリ大陸のオリ設定だから。ハウスルールって言うんだけど、いきなり強いキャラで遊ぶ奴。爽快感があって面白いよ。何せ、最低レベルをいきなり10……人間が達成できる最高のレベルに設定しているし。今日はキャラクター作って、説明は、明日するね。じゃあ、美紀ちゃんのキャラクターを作ろうか。凄く時間掛かるけど、いい? 奈木には悪いけど、美紀ちゃんと俺を補う形のキャラメイクしてくれないかな」
「はい!」
「ええ、構いませんよ」
奈木先輩は頼もしく答え、ダイスを手で弄んだ。
「じゃあ、種族は何がいい? 色々制限があるけど、初めだし好きなキャラを選ぶといいんじゃないかな。美紀ちゃんはどんなキャラを作りたいの?」
「えっと、魔法をぜーんぶ使えるようになりたいですっ」
荒木先輩は少し動きを固めた後、あはは、と笑う。
「そっか、ぜーんぶかぁ。ドラゴンプリーストや暗黒神官の魔法、信仰する神以外の魔法は使えないけど、それでもいい?」
「はいっ」
「じゃあ、人間だね。このページに神様の教義が乗っているから、好きなのを選んでくれる?」
私はじっくりとそれを眺める。うん、私は……。
「ラーダ様がいいです! だって魔法使いですし」
「うんうん。じゃあ、生まれのサイコロを振ろうね。はい、サイコロ」
荒木先輩に渡されたサイコロを、えいっとばかりに投げる。
「2と3です!」
「産まれは旅人だね。バード能力の1があるよ。バードって言うのは吟遊詩人で、一つレベルをあげるごとに歌を覚えられる。それと、金額と経験点はボーナスあげるから保留ね。年齢、性別、名前を決めて。副能力……強さはこっちでサイコロ振ってボーナス振りつつ適当に決めてあげるよ」
「十七歳、女の子、ミリー・ロウゼンがいいな。歌はモラルで」
「オッケーオッケー。セージ、ソーサラー、シャーマン、プリースト、全てレベル10にしておくよ。それと、おまけでレンジャー5レベルも追加しちゃう。美紀ちゃん、弓道部だからね。奈木は、グラスランナーのシーフ10、レンジャー15、バードの10レベルでいいかな。奈木はこの前、大会で優勝したしね」
「本当ですか? ありがとうございます! 後、先輩がせっかく鍛冶屋なんだから、私もその仕事、お手伝いしたいです!」
「僕は構いませんよ」
「ははは。まあ、三人だけのお遊びだし、いいか。じゃあ、二人でなら魔法道具を作れる設定にしようか。となると、装備品もいい物にしないとね。ただ、クエストも相手が強くなるから、奈木の言う事良く聞いてね。僕はゲームマスターも兼任するから、アドバイスはあまりできないし」
「はい! 荒木先輩、奈木先輩、守って下さいね」
それから、一時間ほど、私と先輩は楽しくお喋りしあった。
キャラクターメイキングが終わった時点で日が暮れてしまったので、翌日にまた教室に集まり、三人で冒険をしよう。
そう約束をした。
私は手に入れたキャラクターシート……。先輩が全て記入してくれた、可愛らしいショートヘアの女の子がこちらに向かってピースサインをしている絵を眺めながら眠った。
翌朝、少し皺くちゃになってしまったキャラクターシートと、昨日お店で買ったダイスを鞄に突っ込み、身支度を整えて私は急いで学校に向かった。少し、遅刻気味だ。
小走りして、教室のドアを開ける。その瞬間、私は落下した。
「きゃああああっ」
わけもわからず落下して、私は気を失った。
うう……なんなの、一体……。
目を覚ました私は、平原の道のような場所に横たわっていた。
起き上って、服についた埃を取る。その時に、私は気付いた。
「何、この服……」
違いは服だけではない。手が小さい。手に持っていた鞄は無く、背に荷物を背負っている。私は急いで背負い袋を覗いてみる。
初めて見る者なのに、何故か用途がわかった。たいまつだ、これ。竪琴もある。
思い出すのは、昨日のキャラクター設定。
私はくるんと回ってみた。短いスカートがひらり、と舞う。
黒のストッキングと、ミスリル銀のクロース。その上から、スカートがぎりぎり隠れないほどの可愛いローブ。手を広げて見れば、魔法の媒体であるルーンの指輪と物を出し入れするという腕輪。腕輪には弓が収納されており、腰には矢筒が下げられている。
「うそ、ゲームに入っちゃったって奴!?」
やった! と思うと同時に、普段やっているゲームだったらよかったのに、と落胆する。
でも。
「荒木先輩、ありがとうっ」
そう、私はチートなのだ。
大丈夫、この世界でも生きていける! ……あれ、でも、私、前衛能力全くないよね?
一応、バードは武器を選ばずだから、魔法の短剣は持っているけれど。
でも、バードのレベル一の短剣の扱いなんて、高が知れている。
これは、早く町を見つけてしまった方がよさそうだ。
先輩が言っていた、使い魔も手に入れたい。梟だ。絶対に梟を手に入れるのだ。
私は、両方の道を眺め、それから右の道の方に向かってみる事にした。