イストとの話が終わると、黒猫型の魔道人形ヴァイスは再び茂みの中に消えていった。マスターであるオリヴィアの元に戻るのだろうが、人間用の道を通るよりも獣道を用いたほうが、彼にとっては便利なのかもしれない。
「そういうところは流石猫だな」
どうにも人間臭い話をする黒猫の背中を見送ったイストは、「無煙」を吹かしながらそう呟いた。
一人になったイストは、焼け落ちた孤児院跡の廃墟をもう一度見上げる。反射的に脳裏に浮かび上がってくる記憶は、どうしてもあの夜のこと、悪夢のことだ。たが探せば確かに楽しい記憶もある。
視線を下におろすと、プーリアの人々が作ってくれたというお墓が目に入る。そのお墓の前に供えられた花束とそれを持ってきた一人の女性。死んだはずだと思っていたもう一人の生き残り、オリヴィア。
幼馴染と呼ぶには一緒にいた時間があまりにも短く感じるが、それでも同じ孤児院で一緒に暮らした家族だ。力になれる範囲なら、力になりたいとは思う。
「ま、やるだけやってみるさ」
墓の下で眠る、十年前からもはや年をとることもない兄弟たちにそう告げる。生き残った、生き残ってしまった理由、「自分ならできる事」とやらがあるのなら、それをやってみるのもいいだろう。
目をつぶる。意識の中に浮かぶのは、小さな兄弟の亡骸だ。その亡骸の脇にそっと膝をつき、開けっ放しになっている目蓋を閉じてやる。心なしか、穏やかな顔になった気がする。
目を開けて、イストは苦笑した。全ては妄想だ。何も変わらない。何も起こらない。誰も救われもしない。
「まあいいさ。それでも一つの区切りだ」
孤児院跡に背を向け、イストは歩き出す。一度立ち止まって振り返り、「また来るかな」と小さく呟いてから再び歩き出す。もう立ち止まることも振り返ることもしなかった。
プーリアの村に戻ったイストは、そのままキャラバン隊のところへ行くことはせず、一度村の宿泊施設によってニーナとジルドの二人に今後の進路について相談した。
「ワシはそれでかまわぬ」
「わたしも大丈夫です」
キャラバン隊の護衛の件を話すと、二人とも二つ返事で了承してくれた。そもそもニーナは弟子だしジルドは一緒に来ること自体が目的だから、イストの独断で決めてしまってもいいのだ。だが事前に一言相談しておくのが、一緒に旅をする仲間への礼儀というものだろう。
「でも師匠、わたし、戦えないんですけど………」
「大丈夫。もともと戦力には入れてないから。よかったな?無駄飯食い」
心配そうにおずおずと手を上げたニーナを、イストはバッサリと切り捨てた。「無駄飯食い」と言われ頬を引きつらせるニーナの肩にジルドが手を置く。
「キャラバン隊なら雑用の仕事が多いだろう。そちらを手伝えば良いさ」
「そういうこと。ちゃんと仕事しろよ?じゃないと本当に無駄飯食いになるからな」
最初からそういってくださいよぉ、と恨めしげに睨んでくる弟子を、恐らくは意図的に無視してイストは立ち上がった。キャラバン隊の隊長のところへ行って話を付けてくるという。
「うむ、承知した。ところで、夕食はどうする?」
そういえばもうそんな時間である。
「あ~、適当に食べてくるわ。おっさん達も各自で食べてくれ」
そう言ってからイストは宿泊施設を後にして、村はずれにいくつか露店を開いているキャラバン隊を目指した。キャラバン隊の規模は決して小さくない。日も暮れかかっているこの時間、露店はすべて閉じている。食事で村へ繰り出しているのか、人影も閑散としている。
「隊長さんいる?」
煙管(こちらは本物だ)を吹かしていたキャラバン隊の隊員にそう聞くと、煙管で一台の馬車のほうを示し、「あっちにいる」と教えてくれた。軽く礼を言ってから、教えてもらった方向に歩いていく。馬車の裏側をのぞくと、一人の男が煌々と輝く「マグマ石」の前に座っていた。どうやらお茶を入れているらしい。
「あんたが隊長のオルギンさん?」
「そうだが、あんたは?」
「イスト・ヴァーレという。オリヴィアから護衛を探してるって聞いてな」
そう言うとオルギンの顔に笑みが浮かんだ。厳しい面構えのわりにそうやって笑うと妙に愛嬌のある男だった。
「おお、オリヴィアが言っておった男か」
どうやらオリヴィアが先に話をしておいてくれたららしい。オルギンは紅茶をもう一人分用意すると、イストに座るよう進めた。
「ふむ。では人数は三人だが戦えるのは二人、ということか」
「ああ、オレの本職は魔道具職人だからな」
荒事にも人並み以上に対処してみせる自信はあるがそれはあくまでも“オマケ”だ、とイストは言った。
「その二人で、どのくらい戦える?」
顎を左手で撫でながら、オルギンはそう尋ねた。やはり戦力を期待して雇う側としては、どれだけ実力があるか知りたいのだろう。
「一緒に旅をするようになってからまだ日が浅いからな………。ああ、でも二人で地竜の相手をしたことはあるぞ」
「地竜をか!?」
地竜。正式名称リザイアントオオトカゲ。牛ほどの巨躯と鋭い牙そして爪を持つ、獰猛な肉食獣だ。その体は硬いうろこで三重に覆われ、普通の刃物では傷つけることさえできない。食物連鎖の頂点に君臨する、人間など意にもかえさぬ野獣である。
仮に討伐するとしたら魔導士が最低でも三人、可能ならば五人以上で、と言われている凶暴な野獣をたった二人で相手にしたと聞いてオルギンは驚いた。その驚き方から察するに、彼は地竜について知っているだけでなく、もしかしたら実際に遭遇したことがあるのかもしれない。
「倒したのか!?」
「いや、尻尾ぶった切って追い払っただけ。しかもオレは牽制してただけで、ほとんどはジルドのおっさん、連れがやってくれたんだけどな」
そういってイストは謙遜して見せたが、実際これは凄いことである。討伐には魔導士が最低でも三人必要といわれている地竜を二人で撃退したこと。そして地竜相手に牽制をし続けられたこと。これならば十分に必要な戦力を満たしてくれると、オルギンは判断した。
「ではあなた方に護衛の仕事を依頼したい。あとの一人は雑用を手伝ってもらうことになるが、それでいいか?」
もとよりこちらが頼もうと思っていたことだ。尋ねるオルギンにイストは二つ返事で了承をかえした。
護衛は二人だけでいいのか、と聞いたら、オルギン曰く「俺たちだって戦えないわけじゃない。ただ先頭を切ってくれる精鋭が欲しいだけだ」とのこと。
次に二人は報酬の話に移る。
「まず聞きたいんだけど、三食はちゃんと付くよな?」
イストの言葉にオルギンは頷いて肯定を示した。こういった商隊の護衛など、数日にわたってまるまる拘束されるような仕事の場合、食事は雇い主の側が用意するのが普通だ。その分が報酬からきっちり引かれている場合も少なくないが。
「じゃあ、オレと弟子は食事だけでいいや」
あっさりとそういわれ、オルギンのほうが目を丸くした。これは「タダ働きでもいい」と言っているのと同じで、商人であるオルギンからすれば非常識紀極まりない申し出であろう。
「いや、しかしな………」
「いいって。どうせ本職じゃないんだから」
イストは軽くそういった。オルギンは喜ぶかと思えば渋い顔をしている。きっと「労働には報酬を」という商人たちの大原則に反するのが嫌なのだろう。儲け優先かと思えば、なかなか誠実な商人である。
もっともイストの側にもちゃんと理由はある。ニーナはもともと戦力外で雑用しかできないのだから、彼女の報酬は食費でトントンであろう。そしてイストは「護衛の仕事」よりも、ヴァイスに頼まれた「オリヴィアをなんとかする」のほうがメインだ。有事に手を抜くつもりはないが、彼からしてみれば「護衛の仕事」はキャラバン隊について行くための方便の感が否めない。
「ただジルドのおっさんはコッチが本職だからな。正規の報酬を払ってやってくれ」
「………分った。少し色を付けさせてもらおう」
固いねぇ、とイストは茶化した。しかし商人は少し固いくらいが信用できるというのがイストの持論である。はじめて魔道具を店(もちろん非合法だが)に売りにいったときには、業突く張りな店主に安く買い叩かれたものである。もっともその店は後でオーヴァに潰されたらしいが。
(この人は信頼できるかな)
少なくとも商人としては。イストは内心でそう評価を下した。
「ところで、夕飯はもう食べたか?」
仕事の話が一段落着いた頃、オルギンはそう切り出した。イストが「まだだ」と答えると、どこに用意してあったのかサンドイッチや簡単なつまみが盛り付けられた大皿もって来た。
「随分と用意がいいな」
「需要を見越して品を仕入れるのが、いい商人の条件だからな」
大皿にはどう見ても一人分には多すぎる量の料理が盛り付けられている。恐らくオルギンはオリヴィアからイストのことを聞いた後、夕方に彼が来ることを見越して買っておいたのだろう。
オルギンはさらに酒瓶取り出し、杯を二つ用意した。
「一杯、付き合ってくれないか」
「喜んで」
**********
大皿に盛られたサンドイッチとおつまみが半分ほどなくなった頃、オルギンは唐突にその話を切り出した。
「イスト、オリヴィアを嫁にもらってくれないか」
「ん?いいよ」
至極あっさりと返され、オルギンのほうが焦った。焦りすぎて言葉が上手く出てこないのか、口をパクパクさせている。その様子をイストは“してやったり”の意地の悪い笑顔を浮かべて眺めていた。
「………な、ならぁん!!」
「どっちだよ」
とても焦った様子で思わず立ち上がってしまったオルギンに、イストはニヤニヤと意地の悪い笑みを向ける。からかおうとして逆にからかわれてしまった事にようやく気がついたオルギンは、額の冷や汗を拭いながら腰を下ろした。
「花嫁衣裳は、やっぱ白かな」
「まだ言うか」
自らまいた種とはいえ、その場面を想像してしまったオルギンは慌ててそれを頭の外にたたき出す。まったく心臓に悪い絵面だ。酔いが醒めてしまったではないか。
「まあ、冗談はさておき、だ」
一つ咳払いをして話をそらす。イストが「おや、冗談だったのか」などと茶化してくるが断固無視する。
「俺はな、オリヴィアには幸せになってほしいんだ」
「まあ、その意見に反対する理由はないわな」
嫁ネタでそれ以上オルギンをからかうことはせず、イストは杯を傾けながらそう言った。
「けどまあ、だったらオレとはくっつけない方がいいと思うよ。オレと一緒にいたら忘れられないだろうし、色々と思い出してしまうだろうからな」
何を、についてイストははっきりとは言わなかったが、それでもオルギンには十分伝わったようだ。苦い顔をして、杯を両手で握り締めている。
「………少し、昔話に付き合ってくれないか」
イストが「いいよ」と答えると、オルギンはぽつぽつと思い出すように話し始めた。
「個人で行商なんてやっているヤツは、ほとんどが将来自分の店を持つことを夢見ている」
かく言うオルギンもそんな大多数の一人であったという。だが現実問題として自分の店を持つには先立つものがいる。言うまでもなく“資金”だ。
土地や建物を買うにしろ借りるにしろ、まとまった額のお金が必要になることは想像に難くない。その上、商品を仕入れるための元手や、商売を始めるあたり必要になる税金等々など。商売に関してはまったくの素人であるイストは具体的な金額など思い浮かばないが、それでも個人で用意するにはなかなか大変な額であろう。
「あの頃の俺は、文字通り金稼ぎに必死になっていた」
仕入れはなるべく安く。そして売るときはできるだけ高く。詐欺まがいのことをやったこともあるし、魔道具の抜け荷や密貿易、禁制品に手を出したこともあるという。
「頭の中は金勘定のことばかりでなぁ。どうやったら上手く稼げるか、そんなことばかり考えていた」
そんな時、まだ新しい戦場跡に出くわしたという。当然のことながら、そこには死体と一緒に剣や槍、甲冑などが転がっていた。
「正直な話、金が転がっているようにしか見えなかった」
夢中になって、拾ったという。なるべく質のいいものを選ぼうとして戦場をさまよった。兵士の死体が握り締めている武器を奪ったり、鎧を脱がしたりするようになるまでそう時間はかからなかった。
「あの時、俺はどんな顔をしていたんだろうな」
そうやって集めた武器や甲冑は少し離れた街で売りさばき、結構な額の利益を出せたという。なにしろ元手はタダだ。売却益はまるまる収入となる。
「そりゃ嬉しかったさ。もう一回戦場跡に戻って集めてこようと思ったくらいだ」
その矢先、葬儀の行列に出合った。聞く話によると、その若者は戦場での傷が元で亡くなったのだという。
「そうしたら、途端に怖くなってなぁ」
自分が鎧を脱がせ武器を奪った兵士の中には、もしかしたらまだ生きていて助かった人がいるかもしれない。自分が夢中になって武器を拾っているその横で、呻き声を上げ助けてくれと叫んでいる人がいたかもしれない。
あの戦場跡で自分は金を拾う代わりに何を捨ててきたのだろうか、と。そう考えたら、途端に怖くなったという。手に入れたお金がまるで呪われているかのように感じて、一晩で散財しつくした。
「やめようと思った」
商人を。
そんな頃だったという。オリヴィアと出会ったのは。
「最初は適当な人か施設に預けるつもりだったんだけど、妙に懐かれてな」
結局、二人で旅をすることになった。当然、生活費も二人分必要になる。オルギンはその二人分の生活費を稼ぐために行商を続けた。
二人が生活できて赤字にならなければいい。そう考えるようになったオルギンは、利ザヤが少なくてもリスクの低い商品を主に扱うようになった。仕入れのときも無理な値切りはせず、売るときも相手の足元を見るようなまねは止めた。金にならないと分っていても、何か頼まれれば出来る範囲で手を貸したしたりもした。
「そうしたら不思議と縁ができてな………」
人との縁が。そしてせっかくできた縁を壊さないように、つまり信頼には信頼で返すようにしていたら、色々な人たちが少しずつ割のいい儲け話を持ってきてくれるようになったり、便宜を図ってくれるようになったりした。
「一度夢を捨てようと思った男が、今じゃキャラバン隊の隊長だ」
穏やかに、しかし確固とした自負と自信をこめてオルギンは言った。それから長話で乾いた喉を潤すように杯に口をつけて煽った。
「大仰な言い方だが、ここまでこられたのはオリヴィアのおかげだと思っている」
だからって言うのも変だがあの子には幸せになって欲しいし、してやりたいと思っている。そう言ってから、照れくさかったのかオルギンはもう一度杯を煽った。
「一つ聞いて良いか?」
「なんだ?」
「あんた、本当はもう自分の店を持つくらいのことは出来るんじゃないのか」
イストがそういうと、杯を傾けていたオルギンの手がピタリと止まった。
自分の店を持つのが夢だ、と先ほどオルギンは言っていた。商売関係のことはイストにはよく分らないが、これだけのキャラバン隊を率いているのだ。小さな店の一つぐらい、簡単に始められそうな気がした。
「………そうだな。伝手を頼れば店の一つくらい任せてもらえるだろう」
実際過去にそういう話は何度かあったと言う。しかしオルギンはその話を断り、今も“行商人”を続けている。
「………なあイスト、お前さんはなんで旅を続けている?」
唐突に、オルギンはそんなことを聞いてきた。
「そうだな………。改めて聞かれると難しいが、あえて言うなら『面白いものを見たいから』かな」
アバサ・ロットだから、とか、一所に留まると自分の作る魔道具関連で厄介事が起きそうだから、とか色々とそれらしい理由はあるが、それが一番“イスト・ヴァーレらしい”理由だと思った。
「そうか。これは俺の勘でしかないが、恐らくオリヴィアはどこかに定住することを怖がっている」
「………それは、顔の火傷が原因?」
「………」
オルギンは何も言わなかったが、その沈黙がなによりの肯定だった。そしてオルギンが自分の店を持たない理由、それは「オリヴィアが旅を望んでいるから」なのだろう。
「いい人だなぁ、あんた」
なかば呆れ気味にイストはそういった。娘とはいえ血のつながっていないオリヴィアのために自分の夢を後回しにするとは。
「まあ俺のことはどうでもいい」
問題はオリヴィアが旅を望んでいる理由だ、とオルギンは言った。
「お前さんみたいに少なくとも前向きな理由であれば俺も心配なんてしない。だけどあの子の理由は後ろ向きだ。いわば『逃げるため』に旅をしている」
いつか追いつかれて潰されやしないかと心配なんだよ、とオルギンは杯を両手で包むようにして持ち眉間にシワを寄せながら言った。
「何とかしてやってくれないか」
「………十年間一緒にいたあんたに出来なかったことを、オレにやれと?」
オルギンは何も言わなかった。無理なことを頼んでいるという自覚はあったのだろう。
「あの火傷のあとはもう治らない。だったら受け入れるしかない」
「その意見にはオレも賛成」
それは正論で唯一の正解だろう。そうだ、正解など、たどり着くべき地点などもうすでに分っている。しかしそのことを気楽に指摘できるのは、結局のところイストやオルギンが他人だからだ。
「簡単に受け入れられるなら、そもそもあんなに苦しみはしない、か………」
夜空を見上げ、呟くようにしてオルギンはそう言った。彼とて分かっている。オリヴィアがどんな答えを出すにしろ、その答えは彼女の中にしかない。ここで野郎二人が酒を飲みながら相談したところで、何にもなりはしないのだ。
ふう、とオルギンは息を吐いた。それで気分を入れ替える。
「ところでイスト。お前さん、魔道具職人なんだよな?」
「流れの、だけどな」
「なにか売ってくれないか」
魔道具を、ということだろう。すっかり商人の目になったオルギンに苦笑しながら、一つの魔道具を取り出した。手のひらサイズの筒型の魔道具「鷹の目(ホーク・アイ)」だ。イストはそれをオルギンに向かって放り投げる。
「望遠鏡の魔道具だな。懐かしくて久しぶりに作ってみたんだ」
受け取った「鷹の目(ホーク・アイ)」を覗き込むオルギンが「ほう」ともらしているところを見ると、なかなかの好印象のようだ。
「それなら規制にも引っかからないだろう?」
魔道具の商取引には様々な規制が付きまとう。特に武器などの魔道具はその規制が著しく厳しいが、その一方で危険性のないものは一般の商品と指して変わらない扱いだ。
「幾らだ?」
「タダ」
気に入った相手にはタダで、って言うのがオレの流儀なんだ。そうイストが言うと、オルギンは商人の顔を崩して苦笑した。
「まるでアバサ・ロットみたいなことを言うんだな」
「本人だったらどうする?」
意地悪な笑みを浮かべるイストに対して、オルギンは大真面目な顔でこう言った。
「専売契約を結ぶ」
「………あんたやっぱり骨の髄まで商人だよ」
イストは呆れ気味にそう言って、杯を煽るのだった。