<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.27133の一覧
[0] (新話追加)僕の恋人はお兄ちゃん?(インフィニット・ストラトス オリキャラ転生系 R15)[ゼミル](2012/02/22 21:06)
[1] プロローグ(上):彼女が彼と出会うまで[ゼミル](2011/06/11 09:53)
[2] プロローグ(下):彼がISを使える事に気づくまで[ゼミル](2011/06/11 09:57)
[3] 1-1:バカップルの来日と再会[ゼミル](2011/06/11 10:00)
[4] 1-2:決闘の経緯/刺激的過ぎる再会[ゼミル](2011/06/11 10:04)
[5] 1-3:決闘対策期間[ゼミル](2011/06/11 10:10)
[6] 1-4:サムライハート[ゼミル](2011/06/11 10:13)
[7] 1-5:伝染?[ゼミル](2011/06/11 10:18)
[8] 1-6:School days(一部改定)[ゼミル](2011/06/11 10:23)
[9] 1-7:再会TAKE2[ゼミル](2011/05/06 23:51)
[10] 1-8:Fire in the hole!/友情[ゼミル](2011/05/11 10:14)
[11] 1-9:約束の行方/恋は戦争?[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[12] 1-10:決闘者×乱入者×突入者[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[13] 1-11:決着/少女達の答え[ゼミル](2011/05/22 23:32)
[14] 2-1:ボーイズトーク/銀の嵐・序章[ゼミル](2011/05/25 11:54)
[15] 2-2:結構気にしてるんです/ランチタイム[ゼミル](2011/05/28 11:12)
[16] 2-3:銃声の記憶[ゼミル](2011/06/03 00:46)
[17] 2-4:ガールズトーク[ゼミル](2011/06/06 00:20)
[18] 2-5:Black vs White:1st Round[ゼミル](2011/06/11 00:06)
[19] 2-6:家庭の事情/タッグマッチに向けての一幕[ゼミル](2011/06/14 11:47)
[20] 2-7:八者四様[ゼミル](2011/06/19 11:57)
[21] 2-8:Black vs White:Bullet & Blade[ゼミル](2011/06/24 00:03)
[22] 2-9:Black vs White:Fake & Real/掌[ゼミル](2011/06/27 00:24)
[23] 3-1:とある朝の風景/一夏にまつわるエトセトラ[ゼミル](2011/08/09 00:38)
[24] 3-2:イントゥ・ザ・ブルー[ゼミル](2011/08/13 18:44)
[25] 3-3:疑わしきは/イントゥ・ザ・スカイ[ゼミル](2011/08/27 10:42)
[26] 3-4:許されざる者/理由[ゼミル](2011/09/01 23:59)
[27] 3-5:バースデイ[ゼミル](2011/09/10 00:25)
[28] 3-6:アナタノオト/覚悟完了[ゼミル](2011/09/18 18:36)
[31] 原作3巻終了時までの設定[ゼミル](2011/12/13 10:26)
[32] 4-1:Summer Time・序[ゼミル](2011/12/25 17:22)
[33] 4-2:Summer Time・ある夫婦+αの場合[ゼミル](2011/09/26 17:44)
[34] 4-3:Summer Time・トライアングラー+αの場合(???追加)[ゼミル](2011/12/25 17:24)
[35] 4-4:Summer Time・そして仲間達の場合[ゼミル](2011/12/25 17:25)
[36] 5-1:Friends[ゼミル](2011/10/23 23:28)
[37] 5-2:影の軍隊/青猫と白猫[ゼミル](2011/10/28 19:04)
[38] 5-3:代表候補生と男性IS操縦者に関する部活動についての一幕[ゼミル](2011/11/01 10:57)
[39] 5-4:リアルバウトハイスクール[ゼミル](2011/11/07 00:31)
[40] 5-5:アフタースクール/ブレイクスルー[ゼミル](2011/11/13 23:49)
[41] 5-6:ロングキス・グッドナイト[ゼミル](2011/11/19 00:31)
[42] 5-7:千客万来(上)[ゼミル](2011/11/26 11:26)
[43] 5-8:千客万来(下)[ゼミル](2011/12/04 11:39)
[44] 5-9:ダブルチーム(上)[ゼミル](2011/12/11 12:18)
[45] 5-10:ダブルチーム(中)[ゼミル](2011/12/17 00:01)
[46] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ[ゼミル](2011/12/24 15:42)
[47] 6-1:水面下の憂鬱[ゼミル](2012/02/22 21:05)
[48] 6-2:Holiday -School side-[ゼミル](2012/04/27 10:25)
[49] 6-3:Holiday -Public side-[ゼミル](2012/04/30 13:17)
[50] 6-4:ACE COMBAT(1)[ゼミル](2012/05/05 10:18)
[51] 6-5:ACE COMBAT(2)[ゼミル](2012/05/08 10:25)
[52] 番外編:Year’s End[ゼミル](2011/12/31 18:38)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27133] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:27a72cf3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/24 15:42

「出てきやがったな、クソ野郎!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ミシェルは答えず、障害物の多い屋内である事を考え1枚だけ前面に展開したアンロックユニットを文字通りの盾代わりに用いながら射撃による反撃を開始した。

よく見れば盾の表面には血の色をした半透明の光の幕。<ラファール・レクイエム・ガーディアン>の単一仕様能力<アイギスの鏡>が発動している証左だ。

オータムの口元が一層の凶暴さを孕む。


「無駄無駄無駄無駄ァ!!」


砲口と共に<アラクネ>が放つ弾幕が一際激しくなった。4対8本の装甲脚のうち既に2本を失っておきながら更に厚くなった弾幕にミシェルは内心呆れすら覚えてしまう。

残り6本中2本の装甲脚と両手に抱えられたレーザーライフルの光弾は盾、正確には表面の膜に接触する度スポンジに吸い取られる水の如く跡形もなく消え去る。

4門の軽機関銃から放たれる銃弾は違う。悉くが盾にぶつかり、最低限の厚みしか持たない装甲を傷つけ、凹ませ、抉り、亀裂を生み出していく。だが辛うじてミシェルの元までは届かない。

これがミシェルの選択だった。実体弾ならば、AICを用いなくてもある程度までなら受け止めるか当たった時に弾丸の軌道が変わるかしてミシェル自身には届かないで済む可能性はかなり高いものの、レーザー相手では<アイギスの鏡>無しではあの盾ごと撃ち貫かれてもおかしくなかった。

ならば敢えてアンロックユニットが破壊されるのも承知の上でレーザー限定の防御措置を取る事にしたのだ。案の定有効弾は届いてこない・・・・・・今の所は。


「(盾が何時まで持つか分からん・・・・・・さっさとケリをつける!)」


ドラムマガジン装備の<ケルベロス>を捨て新たな<ドラゴンブレス>に切り替え。片手だけで構え散弾を撃ちまくる。何発もの散弾が<アラクネ>の装甲を叩く。1度に発射する量が多いのでミシェル側の弾幕も負けず劣らず派手だ。


「上等だテメェ!マッハでハチの巣にしてやんよ!」


軽機関銃を装備した装甲脚が量子変換の発光を伴って形を変える。そして現れた物を見て思わずミシェルは「ゲッ」と珍しく短い悲鳴を漏らした。

特徴的な十字架の形状。用途を考えると明らかに世界最大規模の宗教にケンカを売っていそうなデザインであるそれは、軽機関銃よりも更に大口径の弾丸を高速で吐き出すトップクラスに凶悪な兵装である。

重機関銃とミサイルランチャーを内蔵したその武器の名はその名も<パニッシャー>。もっとも長い足の部分に組み込まれた大の大人の握り拳ほどもありそうな大きさの砲口、がピタリとミシェルに向いている。

雷の絨毯爆撃みたいな連打が用具倉庫中を震わせた。そこら中に散らばった破片や天井板すら大きく震えるほどの轟音だった。


「ぎゃはははははははははは!!!」

「ぐううううううううううぅっ・・・・・・!!」


軽機関銃弾よりも強烈な衝撃が盾を襲う。あっという間にボコボコと表面に大穴が空き端の部分を抉り取る。もはや貫通しないでミシェルに届いていないのが不思議なぐらいの威力だ。

表面の大部分が損傷した事により内部構造まで破損が及び、遂に<アイギスの鏡>も発動しなくなった。紅色のの膜が消える。

これ以上実体盾としての役割も務められず浮いた状態も維持する事が出来なくなってしまったアンロックユニットを左手で掴むと、それを掲げてオータムに突撃を試みる。その姿は全身の装甲と相まって中世の勇猛な重装騎士の如き光景。


「バカが!」


真っ向から突っ込んできたミシェルへオータムはレーザーライフルを向ける。盾が役立たずになった以上今なら紙のように盾ごとミシェルを引き裂けるだろう。

だが次のミシェルの行動には不意を突かれた。


「ふぅん・・・・・・!」


ボロボロの盾が投げつけられた。予想外の行動にほんの一瞬、されど一瞬オータムの思考が停止し動きもまた止まる。寸での所で装甲脚で受け止めるのが精一杯の反応だった。

ミシェルにはそれで十分だった。

<ドラゴンブレス>も捨て、切り札を解き放つ。

右腕のシールド、その表面装甲が脱落し中身が露わになる。<ウルティマラティオ>、『最後の切り札』の意味を冠すまさに一撃必殺の最終兵器。

投げつけたアンロックユニットが視界を覆い隠している隙に懐へ飛び込めさえすれば、この一撃で終わらせる事が出来る!


「かっとべ・・・・・・!」


狙うは左の脇腹。斜め下からのフックでもって叩き込むべく拳を突き上げ――――




――――白刃が煌めく。

とても嫌な雰囲気の軽めの衝撃と共に右腕が僅かに軽くなる感覚。




「・・・・・・っ!?」

「やっぱりテメェは大間抜けだな!そんなの見え見えなんだよ!」


<ウルティマラティオ>の肝心要である金属杭が本体諸共半ばから両断されていた。それどころか<ウルティマラティオ>が装着されていた腕部装甲部分にまで刃物らしき傷跡が深々と刻まれていて、その断面はとても鋭い。

それからレーザーライフルを装備していた装甲脚の1本の先端がまた別の、大型のナイフに変化しているのにようやく気付く。シャルロットの高速切替も真っ青の早業。


「新型の超振動ブレードだ!コア以外は機体ごとなます切りにしてやる!!」


超振動ブレードを備えた装甲脚が動いたかと思った次の瞬間には左手の<月光>、両腰の<アグニ>も半ばから切断されて使用不能と化す。これで今のミシェルは実質素手も同然。この間合いでは新たな武器の呼び出しも間に合うまい。それはミシェル本人が痛いくらいに理解できてしまった。






――――失敗を悟る事と、諦めて敗北を受け入れる事は断じて別物である。






まだだ、まだ終わっていない。よく思い出せ、これまで仕込まれてきた厳しい訓練の数々を。

弾も矢も底を尽き刃も折れ果てたのならば、この肉体そのものを武器にするまでの事。

その技術を自分は自ら選んで習得したのではなかったのか。


「くたばりやが―――――」


オータムが超振動ブレードをミシェルの身体に突き立てるよりも早く、腰を落としお手本のようなタックルの構えから瞬時加速を発動。全身装甲に覆われたミシェルは人間大の鋼鉄製砲弾と化し、オータムの腹部へとぶち当たった。

手を伸ばせば届くほどの近さから亜音速クラスまで加速したミシェルと機体を、予想外の行動で不意を突かれたオータムが受け止めきれる筈もなく。

オータムの肺から空気が強制排出されたかと思えば、そのままの速度で押し倒されて床に激突した事によって、シールドバリアーでも相殺しきれなかった衝撃のサンドイッチがオータムの内臓がシェイクする。なけなしの空気と一緒に胃液までが口から逆流を果たす。

それでも反撃の意思を忘れないのはプロに相応しいのかもしれないが、ミシェルのターンはこれで終わりではなかった。

素早くタックルの姿勢から身体を起こすミシェル。ここからマウントポジションを取って動きを抑え込む気か、と先読みして身構えるオータムだったが、実際には全く違う。

オータムの片足を掴んで肩に背負ったかと思うや否や、そのまま変則的な一本背負いをミシェルは放ったのだ。


「なっ、へぶばっ!!?」


顔面・胸部・腹部へ床が叩きつけられオータムの視界に火花が散る。シールドバリアーが無ければ鼻と前歯が折れていたに違いない。

まだ続く。うつ伏せの体勢にさせられたオータムの両足を脚部パーツごと両脇に抱え込んだミシェルはその場で回転を開始。

その技の名はジャイアントスイング。数多く存在するプロレス技の中でもトップクラスの知名度を誇るまさに代表格でありながら、今ではほぼ使い手が存在しないという幻の大技である。

現実的な観点で言えば見栄えだけの殆ど実戦的ではない技ではあるが、敵の意表を突くのならばこういった大技はとても有効的だ。第一ISを用いてこの技を行えば、従来を遥かに超える加速度で相手を振り回せるので平衡器官への被害は桁違いとなる事うけあいだ。そもそもIS戦でプロレス技をかけるなんて状況そのものが聞いた事無いだろうが。

PICのマニュアル操作まで使っての超高速回転。10回。20回。30回。まだまだ回る。残像すら見えそうな速度でオータムを振り回す。加えて障害物や壁に何度を叩きつけておきながら、それでも回転は止まらない。

ミシェルは赤と黒の竜巻と化した。

正確な回転数なんて数えちゃいない。多分100回を越えたぐらいで、加速に加速した遠心力でもって思い切り壁へと激突させる。凄まじい轟音。装甲脚の殆どが破壊される程の衝撃。絶対防御が発動してたっておかしくないだろう。

最初は悪態混じりに聞こえていたオータムの悲鳴も、今や沈黙している。


「・・・・・・回り過ぎたな」


独りごち、自分もまた少し以上にめまいと吐き気を覚えつつもグッと堪えて手は休めない。もはや動かないオータムを掴む手を足から腰元に移動させるとしっかり保持し、とどめの大技を放った。


「ふぅん!!」



どごむっ!!!!



・・・・・・完全無欠のジャーマン・スープレックス。バックドロップ、ジャイアントスイングに並ぶプロレス技の大御所は、ブリッジをしたまま相手のクラッチを解く事無くそのままフォールすし終えるまでが肝心なのだ。

PICによって微妙に足先は地面から離れて浮き、尚且つ最新鋭の甲冑を全身に纏った格好でいながら見事なブリッジを形作ってオータムの後頭部を床に叩きつけたまま抑え込んでいるミシェルのその姿は、往年のプロレスファンならば感涙物だろう。

1、2、3、と心の中でカウントし終えてからようやくオータムから離れる。フォールされた状態のまま彼女は白目を剥いて失神していた。もしかするとジャイアントスイングの時点で気絶していた可能性もある。

ちなみにオータムも例に漏れず女物のスーツ姿から競泳水着とレオタードを足して割ったような極薄かつ面積の少ないISスーツ姿に変わっていた訳なのだが・・・・・・中身はともかく外見だけ見ればかなりの美女が大股開いてでんぐり返った体勢で白目で気絶している姿は女としてかなり致命的じゃなかろうか?

まあ良いか。殺そうとしてきた敵なんだし、やりあった相手の精神衛生なんてミシェルの知った事ではない。

それよりも、今は。


「一夏・・・・・・!」




その時、部屋の反対側で爆発が起きた。





















―――――本当に、ギリギリだった。

灼熱の激痛まみれの身体で銃剣突撃を受け止めれたのは半分偶然に近い。


「往生際の悪い奴め・・・・・・大人しく私に殺されろ!」

「誰が・・・・・・あっさり殺されてやるもんか・・・・・・!!」


確かに刺突は受け止めれた。だからといって窮地を脱せているのかと問われればそれには程遠いと評価せざるを得ない。

咄嗟に<雪片弐型>の刀身、その腹の部分を銃剣が突き刺さる寸前に割り込ませた所までは良かった。だが右手1本では瞬時加速まで用いたその突撃力までは到底受け止めきれず、<雪片弐型>の横っ腹が一夏の腹をグイグイめり込む結果となっている。内臓が口から飛び出さなかったのが不思議なぐらいの圧迫力。

右手で刀ごと、左手でライフルの銃身を握って押し返そうと思っても、マドカはライフルに加える力を巧みに操る事でそれを許してくれない。スラスターを吹かしてまで更に押し込んでくる。全身を苦痛に苛まれる一夏にはかなり酷な情勢だ。


「離れ・・・・・・ろっ!」


マドカを蹴り飛ばそうと悪足掻きの前蹴りを放とうと試みるも、そんな抵抗も織り込み済みのマドカは容易く受け止め、更に圧迫力を強めていく。

唇の端をつり上げて、マドカが引き裂いたような笑みの色を強めながら押す力を全く緩めず、少しずつライフルの先端の角度を変えていった。やがて一夏の顔を真っ直ぐ覗き込む銃口。






そしてマドカの唇から決定的な処刑宣告が紡がれる。






「―――――死ね」


死の直前、何もかも全ての動きが非常に遅く見えるという。

一夏の場合も例外ではなかった。<銀の福音>の復讐戦や最初の一太刀の瞬間に発動できた瞬時加速の際に垣間見たそれよりも低速に感じるほどの世界に、今一夏は置かれていた。

<スターブレイカー>の引鉄にかけられたマドカの人差し指がゆっくりと、本当にゆっくりと絞られていくのがハッキリと目に見えてしまう。それがまた一夏の焦りと恐怖心を余計に駆り立てさせる。にもかかわらず、一夏の身体もまた超スローモーションでしか動いてくれようとしないのでどうにもならない。無駄に思考だけが加速し続ける。

どうする、どうすればいい。絶対防御が発動してもエネルギー切れで<白式>が使えなくなれば一貫の終わり。

そうなれば、俺は死ぬ。間違いなく殺される。

せめて首だけでも動かせばこの超至近距離からのレーザーを避けられるかも。いや、どっちにしたってこの状態で撃ちまくられれば逃れようなんてない。『死』からは決して逃げられない。

引鉄が遊びを無くし、撃鉄が落ちる。ブラックホールのような暗黒が広がる銃口の中で火が灯る。一夏の頭蓋を撃ち抜く超高熱の弾丸の光。


「(俺は―――――ここで死ぬのか?)」


<銀の福音>の時とは全く違う、生の殺意に満ちた人の手によって与えられようとしている『死』。

思考も本能も文字通り鼻先に突き付けられた『死』によって凍りつきそうになった、その時だった。停止しかけた一夏の脳裏にその情報が伝えられたのは。


『<雪羅>荷電粒子砲、チャージ完了』


藁にも縋る思いというのはまさにその時の一夏の事を指し示していた。

脊髄反射で以って後先もその選択に待ち受ける結果も全く考えず、意識の中だけで荷電粒子砲のトリガーを引いた。

大出力の荷電粒子砲によって左手の中にあった<スターブレイカー>の銃身はいとも容易く溶解し、発射寸前だった膨大なエネルギーは行き場を無くすどころかそれ以上の高エネルギーの直撃を受け、その結果。




一夏とマドカの間で大爆発が起きた。















いつの間に自分は倒れていたのだろう。

顔の半分と右の平に床と細かい破片の冷たくざらついた固い感触が伝わってきて、じんわりと冷たさが染み込んでくるのが実感できた。いつの間にか<雪片弐型>を手放してしまったらしい。

自分が倒れているのに気付いて一夏は身を起こそうとしたが、激痛に襲われて断念。全身がトラックか解体用の鉄球と正面衝突したかのように悲鳴を上げている。出来る事なら一夏だって悲鳴を上げたい所だ。

視界が歪んで、いや違う、ぼやけているのか。煙によって世界が白くおぼろげに見える。すると少し間を置いて天井から水が降り注ぎ始めた。スプリンクラーでも作動したのかそれとも天井を通っていた水道管が破裂したのか、一夏には判別がつかない。

室内の雨によって煙が収まっていく。全身が濡れて冷えた為か、ほんのちょっぴり痛みがマシになった。代わりに左手だけ何も感じていない事にも気づいた。首だけ動かしてみてみると肘から先より構築されていた<雪羅>が丸々消失していた。荷電粒子砲の暴発で根こそぎ吹き飛んでしまったのだ。

シールドエネルギーの残量は2桁を大きく割り込み、<白式>そのものが未だ展開した状態を保っているのが不思議だった。

世界が明確さを取り戻し始めたその時、マドカの姿が見えた。

一夏と違って、彼女は倒れ伏していない。機体の右半身が手酷く損傷し、マドカ自身にもかなりのダメージが通っている様子だが、無傷の左手にIS用ハンドガンを構えてしっかりと一夏に照準している。

一夏は気づいていなかったが、荷電粒子砲が発射される寸前にマドカは咄嗟にライフルを手放していたのだ。故に爆発圏内からは逃れられず右半身に大きな被害を負いながらも、しかし一夏ほどの手傷は負っていない。


「・・・・・・今度こそ、死ね」


絶対零度の殺意と決意に満ちた言葉。2度目の死刑宣告。

身体は動かない。動いてくれない。今度こそ逃げられない。




銃声。




だが火を噴いたのはマドカの手の中でなく別方向からの銃撃だった。数発が着弾し衝撃にマドカの身体が捻れる。


「織斑マドカ・・・・・・っ!」

「この、邪魔をするなあああああああっ!!」


ミシェルが駆け付けて来てくれたのだ。<ケルベロス>の連射。吠えるライフル片手にミシェルが一夏の元へ向かってくる姿を捉える。

マドカは温存していた残り2つのシールドビットを展開し、残りの銃撃を受け止めた。一夏に対して使用していたビットは爆発の余波に巻き込まれ瓦礫に埋もれてもう使い物にならない。

ハンドガンの銃撃を受けてミシェルの足が止まった所に、シールドビットがミシェルへと矢の如く突っ込んだ。次の瞬間爆発が起きる。巻き込まれるミシェル。

それでもミシェルは爆炎の残滓を纏わりつかせながら抵抗を止めない。身体の各所に着弾する毎に火花が散るのもお構いなしでマドカと激しい銃火を交わす。


「ミシェル・・・・・・・・・」


横たわったまま、一夏の喉から掠れた声が漏れた。屋内の雨に晒されどんどん身体が冷えていくにもかかわらず、胸の中に熱が宿るのを自覚した。

殺されそうになった時、ミシェルはまた自分を助けに来てくれた。本当にミシェルには感謝してもし足りないと心の底からそう思う。

誘拐された時と全く同じように、ミシェルは自分がボロボロになるのもお構いなしに戦っている。一夏を守る為に。






―――――なのに今、自分は何をしているんだ?






「ぐうぅぅううううぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・」


傷ついた獣みたいな弱々しい呻きを漏らしながらも一夏は自分の身体を持ち上げようと試みる。

動け、動け、動いてくれ俺の身体。痛みのせいで気絶しそうな自分の意識を痛みで以って繋ぎ止める。痛みを感じるという事は、まだ自分が生きているという何よりの証。

何故立ち上がろうとするのか。それは動かなければならないからだ。何故動くのか。少なくとも逃げ出す為では断じてない。仲間を置き去りにして逃げてたまるか。

『死』からは逃れる事は誰にも出来ない。

だが、『死』と戦う事は誰にだって出来る筈だ。例えば一夏に『死』を与えようとしたマドカを阻む為に、彼女と戦いを繰り広げているミシェルのように。


「動け・・・・・・」


錆びて朽ちかけたブリキ人形のようにぎこちなく、生まれたての小鹿以上に震える足で、それでも一夏は立ち上がってみせた。


「死んでたまるか・・・・・・殺られてたまるか・・・・・・」


一夏の人生はずっと守られたばかりだった。千冬に守られ、ミシェルにも守られ、だからこそ今度は自分の力で大切な誰かを守れるようになりたいと誓った。

だけど現実はそう甘くない。<銀の福音>の時だって箒と鈴を泣かせて他に皆にも心配をかける羽目になったし、今だって自分の力が及ばなかったせいでミシェルに迷惑をかける形になってしまっている。






でも、だからと言って。

そのまま他の誰かの手にあっさりと委ねる訳にはいかない。

相手が例え最愛の姉と同じ顔の持ち主なのだとしても、守りたい相手に仇為す『敵』である以上。






「守るって誓ったんだ。戦うって決めたんだ!・・・・・・どんな奴だろうが、誰が相手だろうが・・・・・・・・・!!」


動け。

足掻け。

戦え。

戦え。

戦え。


「戦ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!!!!」


雄叫びと共になけなしの体力をかき集め、勢いよく身体を持ち上げてからそのまま獲物へ飛び掛かるネコ科の肉食獣の如き低い姿勢を取り、一夏は一気に跳躍を果たした。

もはや執念レベルで一夏を殺す事を望んでいながらも、ミシェルの対処に意識の大半を裂いていたマドカは反応しきれない。


「らああああああああああああああっ!!!」

「ぐぅっ!!?」


空中でバランスを崩しかけるぐらいに全身を大きく捻じって繰り出された回し蹴りがマドカの側頭部を直撃した。クリーンヒットを証明するかのようにマドカの黒髪を濡らしていた水気が爆発でも起きたみたいに、頭の表面から弾け飛ぶ。

その威力にマドカが吹き飛ばされた先は、ついさっきまで一夏が追い込まれていた壁際。一夏と入れ替わる形で背中から激突し、彼女を中心に壁に蜘蛛の巣のような亀裂が放射状に広がる。

視界の端に瓦礫に埋もれた<雪片弐型>の柄がチラリと、だがしっかりと見えた。拾いに行くか?――――そんな暇はない。実際渾身の飛び回し蹴りをまともに食らって壁に叩きつけられながらもマドカは顔を苦痛に歪ませつつ、ハンドガンを一夏に照準し直そうと腕を持ち上げようとしている。

それに・・・・・・まだ『武器』なら残されているではないか。

そう、<雪片弐型>という『刀』を手放し<雪羅>という『矢』(荷電粒子砲)を失ったのであっても。




ならばこの拳で戦えばいいだけの話・・・・・・!!




僅かな躊躇もしなかった。一瞬でも迷えばマドカの弾丸が己を貫くと一夏は確認していた。

もはや瞬時加速を使う余裕もない。最速の1歩でもってマドカの懐へ飛び込む。間に合え、間に合え、間に合え、間に合え―――――

マドカの方が速かった。肩から先をまっすぐに伸ばし、一夏の頭部にポイント。マドカの口元に会心の笑みが張り付く。

発射。

放たれた弾丸は的を外す。極度のダメージを負った身体に無理をさせて動いたが為に急加速に対し身体が付いて行かず、前のめりにバランスを崩してしまったからだ。的の小さい頭を正確に狙ったせいで、弾丸は一瞬前まで一夏の頭が在った位置を通り過ぎるに留まった。

左腕を持ち上げて伸ばしたままのマドカは、もう一夏を撃つ事が出来ない。一夏を止める事は出来ない。

姿勢を崩しながらも一夏は岩よりも金剛石よりも硬く握りしめた右手を振り上げた。




ゴギィ!!!と凄まじい打撃音が鳴り響く。




確かな手ごたえ。だけどまだだ。この一撃だけじゃ、まだ足りない。現に顔面を強打されたダメージに加え、すぐ背後にある壁に再度叩きつけられて二重の衝撃に頭蓋を揺さぶられながらもマドカの瞳には光がまだ宿っている。

そこに浮かんでいるのはもはや余裕も嘲笑も捨て去り、混じりっ気無しの殺意と憎悪が混沌と融合した負のブレンド。

終わらせるな。手を休めるな。打ち砕け。叩きのめせ。粉砕しろ。2度と立ち上がれなくなるまで殴って殴って殴りまくれ。


「おお、おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


未だ感覚の無いボロボロの左腕が、意志の力だけで復活を果たし上段の順突きを放つ。マドカの顔面を殴り飛ばした瞬間、左腕の感覚もまた復活したと同時に他の四肢よりも更に酷い激痛の大合唱を歌いだしたが、それでも一夏の動きは止まらない。

続いて右の掌底。バリアー越しでも強烈な衝撃が横隔膜を叩く。突き出された右手が真上へ跳ね上がって顎を強打。弧拳と呼ばれる動きだ。

右下段回し蹴り。マドカの左膝がくの字に曲がり傾く。左側へ崩れた分がら空きになった右脇腹へ左の中段膝蹴り。

まだ終わらない。返す刀で右中段回し蹴りを右の脇腹へ。右足を振り回した遠心力でマドカに背中を向けてから左上段後ろ回し蹴り。側頭部を蹴り飛ばされ大きくのけ反った所に左中段猿臂。相手の内臓を痛打した代償に、肘先から突き抜ける痛みもお構いなしに右下段熊手。

本来は金的狙いの一撃だが女相手でも威力は十分だ。恥骨が粉砕されれば男女問わず再起不能は間違いない。前かがみになった所で渾身の頭突きを顔面へ。一撃一撃が叩き込まれる度にマドカの身体は壁に叩きつけられ、次第に亀裂は広がり崩壊の兆しが露わになっていく。

裏拳。裏打ち。鉄槌。肘打ち。手刀。鉤打ち。肘打ち。両手突き。手刀。貫手。

そして渾身の右上段正拳。ある空手家が生み出したとされる、全身の関節を増やすイメージと極度の脱力が作り出す究極の一撃。


「らあああああああああああああああああああっっっ!!!!」


放たれた一夏の拳は衝撃波さえ纏い、音すらも置き去りにした速度でマドカの顔面へと突き刺さった。






連打の始まりとなった一撃を遥かに上回る激突音が、衝撃波混じりに水浸しの装具倉庫に轟いた。






今度こそ一夏は限界だった。右拳を突き出した姿勢で前へ倒れ込む一夏の視界が、急に光に包まれた。度重なる解体用の鉄球もかくやな衝撃に何度となく打ちのめされたせいで、遂に壁が限界を迎えたのだ。

一夏が地面とキスする寸前、その身体を背後から近寄ってきたミシェルが慌てて抱える。礼の一言でも言いたい一夏だったが、何故か口が上手く動いてくれない。またも視界がボンヤリと歪んで段々暗くなってきている。

背後の方でバタバタと騒々しい足音が聞こえてくる。身体ごとそちらの方を向いたミシェルの動きそのままに移動した一夏の視線の先には、完全武装の教職員勢とその先頭に立って駆け込んできた生徒会長の姿。




もう目を動かすだけでも億劫な気分だったが、それでも外の世界につながる壁の穴の方に目を向け直す。

織斑マドカは倒れ伏し、ピクリとも動こうとしない。起き上がる気配も無い。




「遅いですよ全く・・・・・・」


最後まで言い終える事が出来たのか、気絶してしてしまった一夏にはもう分からなかった。














============================================
メカバトルなのにプロレス技や格闘戦で決まったって良いじゃない。対人戦だもの。
真マッハ突きは有名だけど、その前のコンボの元ネタが分かる人はいるかな?

原作5巻分はこれで終了。今年の更新は後は小ネタか絶賛放置中な他の作品の再開で最後になるかと思います。
コミケ&2ちゃん風小ネタでも書いてみたい所なんですが・・・コミケに参加した事の無い自分が書いても大丈夫なんだろうか。


批評・感想の他、こんなネタが読んでみたいなんてリクエストも一緒にどうぞお待ちしています。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029255867004395