「ミシェルはオータムって方の相手を頼む。マドカって奴の相手は俺が!」
「心得た・・・・・・!」
「オータム、貴様は全身装甲型の方の相手をしろ。織斑一夏は私の獲物だ!」
「だからテメェが指図するんじゃねぇ!」
<白式・雪羅>を纏った一夏は<サイレント・ゼフィルス>のマドカと。ひたすら重厚感溢れる<ラファール・レクイエム>姿のミシェルは<アラクネ>のオータムとぶつかり合う。
まず先手を打ったのはミシェルだ。両手のアサルトライフルとフルオートショットガンを同時に発射。ライフル弾と散弾が入り混じった嵐がマドカとオータムを分断する。一夏はラックの陰に飛び込んだマドカを反対側から回り込んで追いかけ、反対方向で同じように動いたオータムに対し障害物もお構いなしにミシェルは撃ち込んだ。
ラックと整備道具が一緒くたに粉砕されて弾丸ごとオータムへ襲い掛かる。オータムは背中から直接生えているかのように展開されている8つの装甲脚のうち2つに実体盾を一瞬で装備させて防御。土砂降りの雨が当たったような音が何十も重なって響く。
反撃に残りの6つの装甲脚の先端を展開し、内蔵していた銃口を露わにすると一斉発射。PICのマニュアル操作によってアイススケートみたいに身体の向きを変えないまま横へ滑るように移動しつつ、遮蔽物もお構いなしにぶっ放す。
ミシェルもまた同じようにオータムの動きを追従しながら、両手の銃を撃って撃って撃ちまくる。互いに並走しながら撃っている上にラックや整備道具に当たって微妙に弾道が変化する為か、数発有効弾を食らいつつもどちらも戦闘不能に追い込まれる事はなかった。シールドエネルギーの消費も微々たるものだ
整備道具の壁が途切れる。列の終点に飛び出したのも同時ならば、今度こそ何の壁も無しに直接銃口を突き付けあうのも同時。
――――そして発砲も同時。
互いにトリガーを引いた瞬間、またも同じタイミングでその場から飛びずさって器用に身を捻る事により、相手の射線上からの回避に両者とも成功していた。弾が切れる。向こうも同じ。
「中々やるじゃねぇかクソガキィ!」
ミシェルは回避行動を取りながら弾切れの武器を捨てて新しい武器を展開しようとした。オータムは、短距離走者のスタートダッシュなど目じゃない瞬発力でもってミシェルとの距離を詰める。
閉じられた装甲脚の鋭利な先端が、ギラリと不気味且つ恐ろしさ溢れる鈍い輝きを放った気がした。
「・・・・・・っ!」
「ハッハァ!串刺しになんなぁ!」
装甲脚がバラバラのタイミングで突き出される。最初の2本は<ケルベロス>のバヨネットで弾いた。次の2本も<ケルベロス>で受け止めた代わりに手から弾き飛ばされてしまった。次の2本は盾代わりにした<ドラゴンブレス>の銃身を貫いた。1本は身を捩って逃れたが最後の1本は避けきれなかった。
鏃のような先端がこめかみ辺りを掠める。これが普通のISなら顔面への直撃として絶対防御が発動していてもおかしくない攻撃だが、<レクイエム>が顔まで装甲が包む全身装甲型だったのが幸いして装甲脚の軌道が逸れて直撃は免れた。代わりに少なくない衝撃がミシェルの頭部をシェイクする。
一瞬乱れたのは機体のHUDかそれともミシェルの視界そのものなのか。
「どうしたどうした、自慢の楯は使わないのかよ。ええ?」
「余計なお世話だ・・・・・・!」
<ラファール・レクイエム>の最大の特徴であり最強の兵装でもある大型シールドビット<シールド・オブ・アイギス>。
だが今ミシェルはそれを使えない。使わないのではなく、使えない。
アレを使うには場所が悪すぎる。<ブルーティアーズ>や<サイレント・ゼフィルス>のビット程度ならまだしも、用具倉庫という障害物が所狭しと並ぶ屋内空間では、あの大型のビットを運用するには向いてない。こんな状況ならむしろ通常の実体盾の方がよっぽどマシだ。
ついでに言えば、<レクイエム>が運用を得意とする大型の長物―双門機関砲やレールキャノンといった肩部搭載型兵装―もここではまともに扱えまい。長い砲身が障害物に引っかかって振り回せない。
<レクイエム>が得意とするのは屋外における中~遠距離における射撃戦。このような密閉空間での近距離戦には向いていないのだ。こんな場所では爆発物も下手に使う事も出来ない。
日頃用いてきた装備と戦術の大半が封じられているも同然だ。8つの装甲脚による大火力を有し兵装の切り替え無しで接近戦にも瞬時に対応できる<アラクネ>を相手にするには些か以上に不利な状況。
「(・・・・・・だからといって戦えない訳ではない)」
得物の大半は封じられても戦意は十分、それにただ相手がくたばるまで撃つだけが戦いの仕方でもない。
自分に残された手札を最高のタイミングで最高のやり方で発動させる事に成功できるかが鍵だ。
「(最悪でも会長達援軍がシャッターを突破して駆けつけるまで堪えなければな・・・・・・)」
ミシェルは新たな兵装を装備する。右手には2丁目の<ケルベロス>、ただしアサルトライフルのマガジン部分が大容量のドラムマガジンに変更されてより大量の弾幕が張れるようになっている。
左手には銃ではなく近接戦用装備。あのシャルロットも使ったハイレーザーライフル<唐沢>と同じ企業が開発した名作として名高い高出力レーザーブレード、その名も<月光>。
多少の弾幕はその類稀なる防御力で弾き返しながら弾をばら撒きつつ接近、光刃の一閃で一気に決着・・・・・・そんな企みが透ける組み合わせ。
勿論それはオータムも容易に読み取り、モデル顔負けの美貌が台無しになる位の嘲笑を更に深くする。
「バカが、見え見えなんだよ!」
「それはどうかな・・・・・・!」
言い返しながらも、オータムの予想通り<ケルベロス>のアサルトライフルをフルオートで撃ちながらミシェルは瞬時加速を発動。オータムは実体盾で敢えて弾雨を受け止める。
ライフル弾が悉く盾に弾かれた直後、続けざまに<月光>の射程圏内まで接近を果たしたミシェルが左腕を振るった。
瞬間的に展開されたのは1mを超す超高熱のレーザーブレード。攻撃時以外は必ず光刃を消しておかなければ数秒でオーバーヒートかエネルギー切れ間違いなしと持て囃される程のエネルギー消費と引き換えにトップクラスの攻撃力を得た<月光>の出力は、<シュヴァルツェア・レーゲン>のプラズマ手刀とは比べ物にならない。
その明らかに限度を超えたスペックを証明するかのように、レーザーブレードが触れた実体盾の表面に無残な痕が深く刻み込まれた。抉れた部分はその周囲まで赤熱化しており、光刃の軌跡を物語っている。
返す刀で斜め上に切り上げる。耐え切れず溶断される盾。だが肝心のオータム本体には届かず。
放棄されバラバラに落下する盾の向こう側でオータムが浮かべていたのは、まさに獲物が網にかかった瞬間の蜘蛛のような禍々しい笑みだった。
「かかりやがったな!」
「・・・・・・っ!!」
さっきから空手だった筈のオータムの手の中から白い何かが飛び出したかと思うと、まさしく蜘蛛の糸のような白い網と化してミシェルの身体を絡め取った。とりもちの類ではなくエネルギーワイヤーで構成された代物だ。
あっという間に両腕を拘束されてしまう。パワーに定評のある<レクイエム>でも中々引きちぎれず、もがく事しか出来ない。オータムの嗜虐心に満ちた笑みが一層強まる。
「ハハハ、楽勝だぜ!蜘蛛の糸をなめんじゃ――――」
途中でオータムの笑いが凍りつく。拘束が解けないと悟るや否や、完全に身動きが取れなくなるよりも早くミシェルが新たな行動に映っていた。
腰部両横に備えられたビーム砲、<アグニ>の砲口を真正面から覗きこむ格好にもなれば当然か。
「こんっ・・・・・・!」
ミシェルを蹴り飛ばすと同時にオータムが大きく身を後ろへ倒した直後、鼻先を2本の光条が通り過ぎた。レーザーライフルクラスの威力を誇る光の弾丸が天井へと着弾し威力を解放、熱波や破壊された天井の破片をばら撒いた。
損害は天井だけではない。<アラクネ>の装甲脚のうち2本が今のビームで先端が破壊されていた。操り手が目を剥き、次いでもはや周囲の空気すら凍りつかせそうなレベルの殺気を放ちだす。
「テメェ殺す!殺して殺して殺して殺してやる!!」
「・・・・・・吠え過ぎだ。逆に弱く見える」
「こんの、ドグサレがあああぁぁぁぁっ!!」
挑発も立派な戦術であり、どうやらオータムという人間は煽り耐性を殆ど持ち合わせていない類のようだ。微妙に残りの装甲脚から放たれる射撃の精度が低くなっている。
だがそれもほんの短い間の話だった。すぐにオータムは戦い方を、それもよりミシェルに対し効果的な戦法へと切り替える。
「なら今度はこれはどうだぁ!」
罵声と共に装甲脚の先端部とオータムの両手に新たな武器が装備される。残った装甲脚6本のうち4本にはIS用軽機関銃。残りの2本とオータムの両手にはレーザーライフルが。
それらが一斉に放たれ、先程よりも更に強力な飛び道具の嵐が用具倉庫を蹂躙していく。高い連射力を持つ軽機関銃の曳光弾と直撃すれば絶対防御が発動してもおかしくない威力のレーザーライフル、2色の光弾がバラバラのリズムでミシェルに降り注いだ。
ミシェルはIS戦としての回避法ではなく、PMCのインストラクターや軍隊内で習得した屋内戦闘における場所取りの仕方によって弾幕を凌ぐ。身は低く、絶えず動き回り的を絞らせない。遮蔽物の陰から片目と銃口だけ出して牽制射撃。
それでも歩兵対歩兵の戦闘であれば十分有効的だろうが、加えられる攻撃そのものの規模と1発1発の威力が大きく違い過ぎた。大口径の弾丸が容易く整備道具やラックを粉砕し、レーザーに至っては濡れた指で障子紙を突いたも同然の脆さであっさり装甲も何も施されていない遮蔽物を貫通する。
既にまともな遮蔽物になりそうな場所は残っていない。今ミシェルが潜んでいる場所も数秒持つかどうか。
「どうしたどうした、ええ!デカい図体ばかりの腰抜けかよテメェ!ご自慢の盾とやらを見せてみやがれってんだ!」
向こうの言う通り、こうなったらミシェルも切り札である<シールド・オブ・アイギス>を展開したいのはやまやまだったが――――恐らくはそれこそが向こうの狙いだろう。
何故わざわざ実弾とレーザー、両方織り交ぜて攻撃を行ってきているのか。
「(・・・・・・盾対策だなやはり)」
<シールド・オブ・アイギス>のAICは実体攻撃には非常に効果的だが、エネルギー兵器には殆ど効果が無い。
<レクイエム>の単一仕様能力である<アイギスの鏡>は全てのエネルギー攻撃を吸収・攻撃に転化できるが、実体攻撃を防ぐ事は出来ない。
前者を発動させればレーザーに撃ち抜かれ、後者を発動させれば大口径弾によって盾ごとハチの巣にされる。どちらも御免こうむりたい所ではあるが・・・・・・
視線を動かさずハイパーセンサーだけで一夏の様子を探る。一夏も一夏で苦戦しているようだ。相手がビット使いなだけあって擬似的に多対1の状況が構築されているのに加え偏向射撃を織り交ぜる事で包囲網が形成され、本体に攻めきれていない。
一夏本人は自分だけで決着をつけたがってはいたが、仲間としてはあのまま放っとく訳にもいくまい。
だが助けに加わりたくても今は己が受け持った敵を退けなくては。
その為に自分はどうするべきなのか。
「・・・・・・・・・・・・」
ミシェルが選んだ選択は―――――――――――
「潔く私に撃ち抜かれて殺されろ、織斑一夏ぁ!」
「誰がそんなの認めるかってーの!」
姉の顔で殺意を向けてくる。
姉の声で俺を殺すと宣言してくる。
―――――それがどうした!
「余計な事なんて考えるな・・・・・・!」
彼女は『織斑千冬』じゃない。それは向こう自身別人だと認めたじゃないか。
『私はお前だ』だの『私の名は織斑マドカ』だの、そんな事は今はどうだっていい。余計な考えなんてボーリングマシンで掘った穴に埋めてからコンクリートで塞いでしまえ。
ただ、斬る。
雑念は刃を鈍らし、曇らせる。それではどんな名刀も鈍らに貶める事になる。故に、考える事を止める。
思うがままに、ただ『斬る』という意志のままに動け――――
「疾っ!!」
<雪片弐型>を両手で握り締め、左の腰元に構えながら一夏は摺り足を用いた歩法でもって接近を試みる。一夏のイメージを反映した<白式>が独自にトレースを行い、清流のような滑らかさと素早さで瞬く間にマドカとの距離が詰まる。
「ふん」
対してマドカの方は避ける事すらしようとせず、拡張領域からIS用格闘ナイフを召喚し左手に握ると脇を狙って打ち込まれた斬撃をあっさりと受け止めた。
すかさず切り替えし上段から首筋めがけ振り下ろす。それも左手のナイフで受け止められ、がら空きになった胴体へ右手に握られたライフル<スターブレイカー>の先端に備えられた銃剣による刺突が繰り出される。<雪羅>の手の甲の部分で弾いて防御。
するとマドカは<雪片弐型>を受け止めているナイフを傾けて刃を滑らせ、一夏のバランスを崩すと同時に左手を自由にすると長大なライフルを両手で構え直し、切り上げを放ってきた。大きく後ろへ身体を逸らし躱す。
今度は振り上げたライフルの銃床を側頭部に振り下ろしてきたので、たまらず一夏の方からマドカと距離を取らざるをえなかった。間違いない、今のは軍隊流の銃剣術だ。IS操縦者でこんな技術を用いそうな人間は他にミシェルぐらいしか思いつかない。
冷たい悪寒が背筋を撫でる。咄嗟に横っ飛び。肩を掠める閃光。
いつの間にか背後に<サイレント・ゼフィルス>のビットが回り込んでおり、危うく無防備にレーザーを背中に受ける所だった。だがマドカは一夏が自分の前から離れた事でビットの砲口が己に向いたままにもかかわらずそのまま発射する。
発射した本人に直撃する寸前、ほぼ直角にレーザーが曲がった。その先には一夏の姿。
「くそっ!」
身を捩る。回避成功。最初見たく背後に飛んで行ってからまたUターンしてこないかと警戒していたが、1発につき1回曲げるのが限度なのか。
「これならどうだ?」
ビットの展開数が倍どころか4つに増えた。ミシェルから提供されたデータによれば<サイレント・ゼフィルス>のビット搭載数は6つ。残りの2つは予備なのか、もしくはこの障害物が多い屋内空間で6つ全て駆使するには向いてないと判断した可能性もある。
ふとセシリアと最初に戦った時の事を思い出す。あの時は比較的余裕を持って躱し続ける事が出来たがはてさて――――
ビットから熱戦が同時発射。それぞれがてんでバラバラの方に向けられて放たれたかと思った次の瞬間、おもむろに急カーブして上下左右から一夏に襲い掛かった。
訂正。やっぱりセシリアの時とはてんで比べ物にならないぐらいヤバい。カーブする光線という初めて相対する攻撃に一夏の反応が遅れてしまう。
「こなくそっ!」
PICで天井スレスレまで浮き上がる事で4つの熱線を回避した一夏はラックと天井との間に身体を滑り込ます。PICのマニュアル操作による細やかな制御が必要な機動を、一夏はそう考えずとも反射的に行えるほどの能力をいつの間にか手にしていた。
マドカの姿は障害物に阻まれるがそれは向こうも同じ。左腕の<雪羅>を荷電粒子砲・集束モードに選択すると、マドカが居るであろう位置へ障害物ごと撃ち込んだ。
手ごたえ――――無し!やはり一夏が遮蔽物の反対側に移った時点で向こうも移動していた。最初の時点で奇襲時に1回瞬時加速を発動させた―もっともその時の一夏は感情のままに動いたので発動させた自覚は無かった―せいでエネルギーを消費しているからこれ以上無駄弾は撃てないどこだ、どこに居る。
・・・・・・・・・・・・殺気!
「うおおっ!!」
身を前方に投げ出した瞬間、ラックと整備道具を貫通した数発のレーザーが、たった今一夏の上半身が在った地点を貫いた。右手を床に突いての前回り受け身を取ったその瞬間、背中を刃物で突かれたような鋭い錯覚に襲われた。
本能に従い振り向きざまに<雪片弐型>を振り回す。刀身に光弾がぶつかり閃光を散らした。延々と並ぶ整備道具を収めたラックの壁の端にマドカの姿。
「(さっき撃って来たビットは囮か!)」
マドカはおそらく瞬時加速を使って一瞬で回り込んだに違いない。本命のレーザーライフルによる狙撃を切り払えたのは偶然に過ぎなかった。
壁の向こうからまた多数のレーザーが飛び出してきた。まるで昔の冒険映画に出てくる古代遺跡のトラップみたいだ。壁の穴から次々矢が放たれるアレである。もちろん危険性は容易く複数の金属製の障害物を貫通するレーザーの方がよっぽど危険なのは言うまでもない。
セシリアと違い、マドカはビットの操作と己の戦闘機動を同時にこなせている。お陰で複数の相手を同時に戦っている錯覚に陥ってきた。厄介にも程がある。それが改良型BT兵器として当初の欠点を潰した為か、マドカ自身の技量によるものか―――――今はどうでもいい事。
遮蔽物越しのレーザーの連射に加えマドカ本体からの攻撃も苛烈になってきた。<スターブレイカー>の射撃は偏向射撃のによって照準そのものは微妙にズレているせいで切り払いで対応できない。たまらず雪羅のシールドで防御一辺倒に追い込まれざるを得ない。
――――それがマドカの策。
何発目だっただろうか。レーザーの連射に耐え続けて反抗のタイミングを窺っていた一夏の身体が、唐突に大きく後方へ弾き飛ばされた。
膨大な熱量を有しはしても、質量はほぼ持たないため着弾時の衝撃は左程感じない筈のレーザーの弾幕。今一夏の身体を貫き体勢を崩させた衝撃はレーザーとは全く違う。
「(実弾・・・・・・!?)」
思い出す。ミシェルから渡された<サイレント・ゼフィルス>のデータ――――<スターブレイカー>。エネルギー弾と実弾の両方を発射可能な特異な性能を持つ。
衝撃に押された一夏の背後にはいつの間にか壁が立ち塞がっていた。前には敵、背後は壁、他に逃げ道は。
「なっ・・・・・・!!?」
そして、ようやく気付く。
残る退路、左右はどちらも先回りして配置されていたビットによって塞がれていた。一夏が驚愕と焦燥に顔を歪ませ、動揺によって一瞬硬直してからビットを切り捨てて脱出を試みようとしたが、もう遅い。
左右からレーザーの連打を浴びた。
「がっ、ぐっ、ぐああああああああああああっ!!!?」
全身がレーザーに叩かれる。赤熱した杭で身体中を突き刺されるような苦痛。
シールドバリアーの許容限度を超えた威力が一夏の全身を痛めつけ、獣のように一夏は絶叫した。シールドエネルギーが瞬く間に奪われていく。
「これで終わりだ、織斑一夏!!」
勝利を確信したマドカが邪悪な喜悦に満ちた宣言と共に、銃剣の切っ先を一夏に向けながら瞬時加速を発動。
直撃を食らえば絶対防御が発動するどころか、ライフルごと串刺しになる事請け合いの致死の突撃――――――
避けられない、と一夏は苦痛で朦朧とした意識の中で漠然と悟る。
そして――――――――――
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思ったより戦闘シーンが長くなったので区切ってみたら短くなってしまったという。
感想・批評・ご意見・リクエスト、いつでもお待ちしております。