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No.27133の一覧
[0] (新話追加)僕の恋人はお兄ちゃん?(インフィニット・ストラトス オリキャラ転生系 R15)[ゼミル](2012/02/22 21:06)
[1] プロローグ(上):彼女が彼と出会うまで[ゼミル](2011/06/11 09:53)
[2] プロローグ(下):彼がISを使える事に気づくまで[ゼミル](2011/06/11 09:57)
[3] 1-1:バカップルの来日と再会[ゼミル](2011/06/11 10:00)
[4] 1-2:決闘の経緯/刺激的過ぎる再会[ゼミル](2011/06/11 10:04)
[5] 1-3:決闘対策期間[ゼミル](2011/06/11 10:10)
[6] 1-4:サムライハート[ゼミル](2011/06/11 10:13)
[7] 1-5:伝染?[ゼミル](2011/06/11 10:18)
[8] 1-6:School days(一部改定)[ゼミル](2011/06/11 10:23)
[9] 1-7:再会TAKE2[ゼミル](2011/05/06 23:51)
[10] 1-8:Fire in the hole!/友情[ゼミル](2011/05/11 10:14)
[11] 1-9:約束の行方/恋は戦争?[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[12] 1-10:決闘者×乱入者×突入者[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[13] 1-11:決着/少女達の答え[ゼミル](2011/05/22 23:32)
[14] 2-1:ボーイズトーク/銀の嵐・序章[ゼミル](2011/05/25 11:54)
[15] 2-2:結構気にしてるんです/ランチタイム[ゼミル](2011/05/28 11:12)
[16] 2-3:銃声の記憶[ゼミル](2011/06/03 00:46)
[17] 2-4:ガールズトーク[ゼミル](2011/06/06 00:20)
[18] 2-5:Black vs White:1st Round[ゼミル](2011/06/11 00:06)
[19] 2-6:家庭の事情/タッグマッチに向けての一幕[ゼミル](2011/06/14 11:47)
[20] 2-7:八者四様[ゼミル](2011/06/19 11:57)
[21] 2-8:Black vs White:Bullet & Blade[ゼミル](2011/06/24 00:03)
[22] 2-9:Black vs White:Fake & Real/掌[ゼミル](2011/06/27 00:24)
[23] 3-1:とある朝の風景/一夏にまつわるエトセトラ[ゼミル](2011/08/09 00:38)
[24] 3-2:イントゥ・ザ・ブルー[ゼミル](2011/08/13 18:44)
[25] 3-3:疑わしきは/イントゥ・ザ・スカイ[ゼミル](2011/08/27 10:42)
[26] 3-4:許されざる者/理由[ゼミル](2011/09/01 23:59)
[27] 3-5:バースデイ[ゼミル](2011/09/10 00:25)
[28] 3-6:アナタノオト/覚悟完了[ゼミル](2011/09/18 18:36)
[31] 原作3巻終了時までの設定[ゼミル](2011/12/13 10:26)
[32] 4-1:Summer Time・序[ゼミル](2011/12/25 17:22)
[33] 4-2:Summer Time・ある夫婦+αの場合[ゼミル](2011/09/26 17:44)
[34] 4-3:Summer Time・トライアングラー+αの場合(???追加)[ゼミル](2011/12/25 17:24)
[35] 4-4:Summer Time・そして仲間達の場合[ゼミル](2011/12/25 17:25)
[36] 5-1:Friends[ゼミル](2011/10/23 23:28)
[37] 5-2:影の軍隊/青猫と白猫[ゼミル](2011/10/28 19:04)
[38] 5-3:代表候補生と男性IS操縦者に関する部活動についての一幕[ゼミル](2011/11/01 10:57)
[39] 5-4:リアルバウトハイスクール[ゼミル](2011/11/07 00:31)
[40] 5-5:アフタースクール/ブレイクスルー[ゼミル](2011/11/13 23:49)
[41] 5-6:ロングキス・グッドナイト[ゼミル](2011/11/19 00:31)
[42] 5-7:千客万来(上)[ゼミル](2011/11/26 11:26)
[43] 5-8:千客万来(下)[ゼミル](2011/12/04 11:39)
[44] 5-9:ダブルチーム(上)[ゼミル](2011/12/11 12:18)
[45] 5-10:ダブルチーム(中)[ゼミル](2011/12/17 00:01)
[46] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ[ゼミル](2011/12/24 15:42)
[47] 6-1:水面下の憂鬱[ゼミル](2012/02/22 21:05)
[48] 6-2:Holiday -School side-[ゼミル](2012/04/27 10:25)
[49] 6-3:Holiday -Public side-[ゼミル](2012/04/30 13:17)
[50] 6-4:ACE COMBAT(1)[ゼミル](2012/05/05 10:18)
[51] 6-5:ACE COMBAT(2)[ゼミル](2012/05/08 10:25)
[52] 番外編:Year’s End[ゼミル](2011/12/31 18:38)
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[27133] 5-8:千客万来(下)
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:27a72cf3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/04 11:39

侵入者の女性はIS装備開発企業<みつるぎ>所属の『巻紙礼子』と名乗り、一夏をどこかへ引きずっていきそうな勢いで強引な勧誘を仕掛けてきたそうな。


「・・・・・・下手をすればそのまま拉致されていたのかもしれないな」

「やっぱりそうだよな。振り払ってきて正解だったぜ・・・・・・」


『巻紙礼子』から逃げ切った後―しかし今も人混みに紛れてどこかから監視してきている可能性もあるが―すぐさま携帯でミシェルに連絡を入れると、忙しい中を抜け出してこうして一夏の元にすぐさま駆けつけてきてくれた。今はなるべく目立たないよう廊下の端で密談を交わしている。

ミシェルは周囲を見回し、行き交う人々の目がこちらに向いていない・・・・・・にはやや遠く、何人かが「ねえ、もしかしてあの2人が例の?」などとヒソヒソ漏らしている事で一瞬躊躇いつつも、結局ズボンの右裾を捲りあげて銀色に鈍く光る義足を曝け出した。

膝下から伸びる合金製の外側にほんの少し突き出ていた突起を押すと、隠しスペースに収められていた折り畳みナイフが姿を現し、ミシェルはそれを一夏に差し出す。

刃渡り10cm前後で刃が厚め。薄い鉄板すら易々と切り裂けそうな鋭さと頑強さを放つ、明らかに特注品らしき逸物。


「・・・・・・一応護身用に持っておけ」

「良いのか?」

「刃物の扱いに関しては一夏の方が上だからな・・・・・・手元に武器が無いからといって、いざという時こんな人混みの中でISを展開する訳にもいかん」

「確かにその通りだな。そりゃあありがたく借りとくな」

「だが気をつけろ・・・・・・相手が女で強硬手段も辞さないともなると、最悪ISまで持ち出してきかねないぞ」


ミシェルの警告に一夏は目を剥く。


「そんな!こんな人が一杯居るってのにもしそれで戦闘になったら!」

「・・・・・・それを防ぐ為にも、会長の策に乗るしか俺達には道は無い、という事だろうな。不本意ながら」

「何でだよ。楯無さんってそういう裏の仕事専門の人なんだから俺らよりよっぽどこういう事には頼りになるんじゃないか?」

「・・・・・・警護するのにわざわざ裸エプロン姿になるような人だぞ?」

「いや・・・・・・流石にこういう時ぐらい真面目にやって――――くれるよな?」

「聞くな・・・・・・」


ヤバい、早まったかも。がっくり肩を落として顔を見合わせる男2人。


「とにかく忙しい時に呼んでゴメンな。俺が抜けちゃって余計に大変なんだろ」

「いや、実はそうでもない。半分以上は一夏目当ての客ばかりだったからな・・・・・・そっちが居なくなったと知った途端、一気に客が減ったぐらいだ・・・・・それはともかく、良ければ俺もついて言って構わないか?」

「へ、あ、あああ。ちょっと人迎えに行くだけだし別に構わないけど、店の方は良いのかよ」

「・・・・・・ああ、大分暇になったから、シフトを入れ替えて今は休憩時間だ。後でシャルロットとも合流する手筈になっている」

「そっか、なら一緒に回ろうぜ。午後は午後で剣道部の方の出店に出なきゃいけないからあまり時間にゆとりないしさ。丁度良いから一緒に廻ろうぜ」


制服に着替えて女子としての姿に戻ったシャルロットと合流し、3人は一夏が人を待たせているという場所に向かう。やがて辿り着いた先は、IS学園の正面ゲート前。

待っていたのは五反田兄妹。一夏と鈴の分のチケットによって招待されたのだ。だがそこには弾と蘭以外にもにも一夏とミシェルの知り合いが居た。


「あれっ、のほほんさんのお姉さん?何でこんな所に」

「一般の来客者のチェックをしていた所なんですよ。もしや、彼らは織斑君のお知り合いで?」

「はい、中学からの友達なんですけど、って何だよ弾」


何故かいきなり弾が一夏に掴みかかるようにして顔を近づけてきた。しきりに虚の方に視線を向けつつ早口且つ小声で一夏に詰問する。


「(おい!あの人お前の知り合いなのか!?まさかまた性懲りもなくフラグ立てた相手じゃねーだろうな!?)」

「(いや、だからクラスメイトのお姉さんなんだって。あの人生徒会にも入ってて、前にここの生徒会長に呼び出された時に少し話をした事があるぐらいだっつーの)」

「(信用できるか!今まで何度会う女性会う女性にちょっと話しただけもフラグ立ててきたと思ってんだお前はええ!?)」

「(だあっ、苦しいから締めんじゃねえよ!)」


頭を小脇に抱えてヘッドロックまでかけだした弾。親友からの理不尽な行いに一夏もついむきになって技を返し、こちらはチョークスリーパーで反撃する。

見事に頸動脈を決められ、危うく意識を失う所だった弾だったが、それは呆気にとられて兄と思い人のぶつかり合いを呆然と眺めていた蘭の存在が一夏の目に入った事で未然に防がれた。

双方、気まずそうに口を閉ざしながら目を逸らす。何年も傍に居ながら恋心を抱き続けていた少女と、それに気づかないまま別の少女達と結ばれてしまった少年。


「ゲホッ、あぁ死ぬかと思った。とりあえず蘭、一夏と話したい事があるんだろ。待っててやるから、今の内に2人だけで話し合って来いよ」


どちらからともなく頷き合うと、2人は人気の無い物陰の方へと向かう。

立ち去る間際、ミシェルに何かあったらプライベート・チャネルを使ってすぐに呼んでくれと耳打ちされて、一夏は目線だけで首肯してみせた。本来は違法だが事情が事情である。

弾はやれやれと首を振りながらやれやれと溜息を洩らした。この場で唯一大まかな事情を知らない虚が、興味深そうな表情を浮かべる。


「どうやら織斑君と妹さんはただならぬ関係のご様子ですね」

「どんな結論が出るのか、大体の結果は予想はついてるんですけどね。兄貴としちゃ複雑ですよ。妹が朴念仁な親友に惚れたせいでずっと空回りしてただけでも面倒臭いのに、いつのまにかこっちが知らない間に他の女の子と付き合いだしちゃったんすから。しかも2人同時に」

「複雑だよねぇ。お互いよく知ってる相手なだけに尚更だよ」


シャルロットの言葉に弾は同意の苦笑を漏らす。


「とりあえず蘭を泣かせた分1発ぶん殴ってチャラにしてやるつもりではありますけどね。経緯はどうあれ、アイツの性格考えるとそもそも相手からの告白とか好意をちゃんと正しい意味で受け止めて答えを出した事自体奇跡的っすもん。むしろ褒めてやりたいぐらいと言いますか」

「・・・・・・そんなに織斑君って鈍い人だったんですか?」

「ええ、『付き合って下さい』って告白を単に買い物とかに付き合ってくれって意味なんだと当たり前のように考えて、告白した女の子達を悉く絶望させてきた程度には」

「・・・・・・それは酷い」

「おかげでこっちはそれの尻拭いに振り回されっぷりでしたよ」


あっはっはっはっは、という笑いの乾きっぷりが弾のこれまでの苦労を如実に示していた。それから弾はポツリと付け足す。


「ま、それでも良いヤツには変わりないからこれまで散々バカやってつるんできたんですけどね」

「それだけ仲がよろしいという事ですね」

「ええ、コイツになら可愛い妹を任せても構わない、って思ってた程度には」


弾がにやりと浮かべた男臭い笑顔を真正面から見つめてしまった虚は何だか気恥ずかしくなってしまい、思わず顔を背けてしまった。心なしか頬は赤い。

実は彼女、これまで同年代の少年と過ごしてきた時期が殆ど無いのである。

更識家に仕える家系として楯無や簪に幼い頃から付き従ってきてはいたが、更識家そのものが普通の家庭から遠くかけ離れていた為に常日頃から接する相手は年上の人間ばかり。男に慣れていない、という訳ではないものの、同じ年頃の異性のこのような凛々しさと野性味溢れた笑み(それも弾の顔立ちは平均以上に整っている)を間近で見せられては、胸が高鳴っても仕方のない事だった。

でもって弾も弾で顔色を主に染めながら恥じらう一見堅物そうな年上眼鏡美少女の姿に思春期の少年らしく興奮を抱いてしまい、彼も顔を赤くしてそっぽを向きつつも目は虚の姿を追いかける。

あ、目が合ったと思ったらお互いまたすぐに逸らしてしまった。


「ねぇねぇ、何だか2人とも良い雰囲気だね」

「・・・・・・これは是非とも応援しなければ」


出会ってすぐだが中々お似合いそうな2人である。既にゴールイン済みのミシェルとシャルロットからしてみれば、恋愛の先輩としてこれぞ青春の香り漂う甘酸っぱさを振りまく男女を応援したくなるのは仕方のない事なのだ。

そんな訳で助け舟を出してみる。


「・・・・・・もしよければ、俺達と一緒に見て回りませんか?」

「あらごめんなさい、申し出はありがたいんだけど、まだ一般のお客様のチェックをしなきゃならないから」

「だったらせめて携帯の番号を好感させてもらってもいいですか?」

「それなら大丈夫ですよ」


こうしてミシェルとシャルロット、そして弾も虚の携帯番号を手に入れる事が出来た。後はどちらかが勇気を出して相手に電話をかけさえすれば勝手に関係も発展していくだろう。そう思いたい。

「よろしければ貴方も・・・」「こ、光栄です!」などとやり取りしながら赤外線通信を行っていた弾と虚の姿にお見合いの場で照れ合う光景を連想してしまって微笑ましく思ってしまった事は内緒だ。

そんなやり取りの後、おもむろに弾が真面目な顔になってからミシェル達に向けて深く頭を下げた。


「アイツの事、よろしくお願いします。妹が振られても、やっぱり一夏は俺のダチなんです。俺が傍に居てやれない分も一夏を、そして鈴の事もどうかこれからも助けてやって下さい」


弾の言葉に自然と3人の口元が綻んでしまう。

本人がこの場に居ない時だからこそ、こうして友人の事を思って頭を下げられる誠実さを持つ少年に悪感情を持てる筈が無い。






仕事に戻る虚が立ち去るのと入れ違いになるように、こちらに戻ってくる一夏と蘭の姿が見えた。

離れていった時の違いを敢えて挙げるとすれば、蘭の目の周りが赤く充血しているのと一夏の頬に見事な紅葉マークが刻まれている点。


「話し合いは終わったんだな?」

「・・・・・・ああ、ちゃんとキッパリとけじめはつけたよ」

「よし、それじゃあ今度は俺の番な」


弾の拳が平手打ちの痕とは反対側の頬にねじ込まれた。弾は特に格闘技はしていないのだが、しっかりと肩と腰の捻りの利いた骨まで響く見事なストレートだった。

そのまま倒れる事もなくしっかりとその場に踏み止まる。目撃した周囲から悲鳴が漏れたが、彼らの関係を知る者達は誰も止めない。

これは彼らなりのけじめのつけ方なのだ。余計な口出しは必要ない。


「大切な妹を泣かせた罰だ。お前じゃなかったらそれこそ病院送りになるまでぶん殴ってただろうから感謝しろよ。もう2度と、蘭を泣かすんじゃねぇ」

「・・・・・・分かってるよ」

「ならよし。んじゃ、可愛い子でいっぱいのIS学園をさっそく案内してもらおうか。もちろん店とかの代金は全部お前持ちな」

「ちょっと待て、それは勘弁してくれ!」

「やなこった。大事な大事な人の妹を泣かした奴の言う事なんか知りまっせーん!」


先程までの事が嘘のようなバカ騒ぎを再び始める親友達のやや後方では、シャルロットが蘭にハンカチを差し出していた。


「言いたい事が言えてスッキリしたみたいだね」

「はい・・・・・・散々泣いて、散々言いたかった事を全部言っちゃいました。正直、もう頭の中が滅茶苦茶で自分が具体的にどんな事を言ったのかはあまり覚えてないんですけど」

「・・・・・・新しい恋を見つけられそう?」

「それは分かりません。出来ればこの際だから一夏さんよりもカッコいい人を捕まえてみせようとは思ってますけど、一夏さんよりもカッコいい男の人っていうのも具体的には思いつかないんですよ」

「実際男からしてもかなりポイントが高い方だからな・・・・・・・・・・・・鈍いのが珠に傷だが」

「そうだね、鈍いのが1番の問題だよね」

「今度からは女の子の気持ちがよく理解できそうな人を探してみます・・・・・・!」


顔が良くて家庭的で逞しくて優しくたって、露骨なアピールにすら全く気付けないほど女心が理解出来ないのが唯一にして最大の一夏の弱点と言える。

・・・・・・それこそ箒も鈴もなりふり構わぬ体面も何もかなぐり捨てた過激で直球な手段で告白していなければ、今のような関係にはなれていなかったかもしれない。


「ところで、1つ聞いても良いですか?」

「構わないよ。あ、でもミシェルをくださいっていうのは絶対ダメだからね?ミシェルは僕の旦那様なんだから」

「いえいえ、そんなつもりは全然!えっと、出来ればで良いんですけどお2人の馴れ初めを聞かせて貰えたら、その、参考になるといいますか」


失恋したばかりとはいえ蘭も多感な思春期の女の子。人の恋路にはかなり興味を持つ性質なのだ。

彼女の質問に対するデュノア夫婦の反応は、顔を見合わせながらの苦笑。


「・・・・・・多分参考にならないと思うぞ」

「いいえ構いません!お願いですから教えてください!」

「・・・・・・出会ったその日に俺からプロポーズした」

「えっ」


言われた通り、どうやら蘭の参考にはなりそうにない告白だった。












「何であそこでいきなり青を切るんだよ!」

「だって弾が金髪が好みって言うから」

「・・・・・・金髪と言えばシャルロットだろ常考」

「いやまあシャルロットの機体もオレンジだから赤っぽいっちゃ赤っぽいけど」


美術部で行われていた爆弾解体ゲームに失敗してやいのやいのと口論を繰り広げつつ幾つかの出し物を巡った後、思い出したかのように一夏が「あっ」と声を上げた。


「悪い、そろそろクラブの方の出し物に行かなきゃならないから俺行くな」

「そういや一夏って部活何処に入ったんだよ。やっぱ剣道部?」

「そうだよ。最初に一夏が部活をやった日なんか織斑先生も特別に参加して凄い盛り上がったんだって」

「相変わらず千冬さんバカみてーに強いんだろーな。なんつっても世界最強の称号を与えられちゃってるんだし」

「強いままだよ本当。結局その時も最後まで1発もまともに入れれずじまいだったからな。まだまだ千冬姉に俺の剣は届きそうにないや」


そう自己評価を披露しながら剣道部が出し物をしている教室に向かっていた一同だったが、彼らを出迎えたのは1年1組の時と負けず劣らずに長く続く行列だった。信じられないが、どうもこの行列は彼らの目的地まで続いているらしい。

無駄に注目を集めないように―図体の大きいミシェルで行列から一夏の姿を隠すようにして教室に入る。中には部長以外にも同じ剣道部である箒の姿。


「む、遅いぞ一夏」

「悪い悪い。でも何なんだよあの行列。そういえば剣道部が何の店やるのか教えられてないんですけど」

「・・・・・・それならちゃんと確認しておけ」


何で箒は微妙に不機嫌そうなんだ?と思いながら部長の方を見る。


「最初はね、剣道体験コーナーとか占いの館にでもしようかと思ったんだけどね?せっかく織斑君が入部してくれたんだからもっとそれを前面に押し出してみようと思ってね?」

「は、はあ」


見回してみると、教室にはいくつかのテーブルが配置してあって、その1つにはサイン色紙が山積みになっていたりブロマイドが何枚も飾られていたりって何じゃこりゃあ!


「お、俺の写真?」

「うん。だから有名人の君と先着限定の握手会と部活中の君の姿を撮影した生写真の特別販売をする事にしたんだよ?」

「だ、だから箒が不機嫌なんですね」

「大体それは盗撮なのでは・・・・・・」

「それを言うなら校内で密かに取引されている織斑君の写真もどれも盗撮だから今更な気もするね?」

「そういう問題じゃないのでは・・・・・・?」

「いーじゃねえの、女の子と沢山握手できて。あー羨ましいねえこの色男」


弾に羨ましがられつつも、当の一夏はと言えば非常にダルそうな気配を漂わせて肩をガックリ落としていた。

一夏からしてみればISを動かしてこのかた散々見世物扱いされてきてほとほと嫌気もさしていたし、自分のクラスの喫茶店で慣れない仕事をしたせいで予想以上に疲れが溜まっていたのだ。主に精神面で。

というか、しょっちゅう見られているのには気づいてたけど盗撮までされていたとは。俺ってそんなに人気者だったのかーなんて能天気に喜ぶような性格の持ち主ではない。

これには幾ら一夏でも箒が怒っている様子なのも納得できた。とはいえその理由が恋人が見世物にされる事に対してか大勢の女の子と接する羽目になる事への嫉妬なのかは分からない。

ここまでお膳立てされてしまっている以上突っぱねる訳にもいかなさそうだ。下手すれば暴動が起きる。


「すいません、このブロマイド今買ってもOKですか!」

「君は織斑君の知り合いみたいだから特別に安くしておくね?」


新しい恋に生きるんじゃなかったのかそこの中学生。

途方に暮れる一夏の肩に大きな手が置かれる。


「ミシェル・・・・・・」

「・・・・・・『有名人』の先輩として言っておこう」


ミシェルの目に浮かぶのは連帯感と同情。


「・・・・・・諦めろ。下手に有名になれば見世物にされるのが当たり前なんだ」

「ですよねー」












「なるほどねー、どおりでそんなにお疲れなわけなんだ」

「サインと握手のし過ぎで手首が痛いです・・・・・・」

「うふふふふ、たかが100人200人分ぐらいで根を上げるなんてまだまだ未熟ね」


会長の扇子には『修行不足』の文字。たかがサインと握手と侮るなかれ、興奮した女子と握手するたび手を握られた状態で激しくシェイクされるのを100回以上繰り返せば負担が蓄積するし、書き物のし過ぎは言わずもがなだ。

木刀の素振りなら1000回でもこなせるのだが。


「・・・・・・それで生徒会の出し物に偽装して侵入者をおびき出すと聞かされたのだが」

「うんそうよ。とりあえず2人ともこれに着替えて頂戴」


それぞれ衣装の入ったケースの中身を覗きながらミシェルと一夏は作戦内容を楯無に告げられる。

説明終了後、2人の顔は更に疲れがのしかかったかのように生気が失われていた。

内容は簡単、演劇中のハプニングを装ってワザと舞台裏で一夏に単独行動を取らせ侵入者を誘き寄せるという物・・・・・・なのだが、偉そうに胸を張る(そのせいで日頃からかなり目立つ大きく膨れ上がった胸元がより強調されている)楯無に2人が向ける視線は非常に疑わしげだった。


「それってかなり見え見えの罠に思えるんですけど」

「それはどうかしら?招かれざるお客さんからしてみれば、そんな絶好のチャンスを逃す訳にはいかないとおねーさんは読んでるわ。この機会を逃せば他に密かに一夏君を攫うなり、一夏君のISを奪うなりする機会が学園祭が終わるまでにまた訪れるかわからないもの」

「・・・・・・何故俺ではなく一夏を狙うと分かる」

「機体の開発元の問題よ。何せ一夏君の機体はあの篠ノ之束博士本人が直接手を加えて完成させた機体だもの。ミシェル君の機体もヨーロッパの第3世代機に使われている特殊技術の集大成だけれど、技術力の程度で言えば一夏君の<白式>の方がよっぽど上なの。IS先進国各国が未だ机上の空論状態の第4世代、その技術が取り入れられてるんだから」


楯無の推察を聞かされた一夏の顔が自然に苦々しく歪む――――――また束さんか。あの人はどれだけ周りを巻き込めば気が済むんだ。

一夏の顔色の変化にはもちろん楯無も気づいていたが敢えて気づかないふりをし、もちろんミシェル君が狙われる可能性も無きにしも非ずだけど、と続けてから唐突に一夏に向けて手を差し出す。


「ちょっと一夏君が向こうから渡された名刺を私に見せてくれない?」

「あれ、俺その事言いましたっけ」

「おねーさんは何でも知ってるのよ」


扇子を閉じてまた開いて、そこに書かれていた文字が『修行不足』から『千里眼』に一瞬で変わっていた。断じて手品なんてちゃちなレベルじゃぁない。どういう原理だ一体。

表面に指を滑らし明かりに透かしたりと少しの間どこにでもありそうなちょっと硬めの材質な名刺を調べてから「ありがとう」の言葉と共に名刺を返してから、楯無は一言。


「その名刺、発信機が仕込んであるみたいだからやっぱり一夏君が狙いみたいね」

「はい!?」


予想外の言葉に一夏は白黒。ミシェルの表情筋は無愛想に固定されたまま。

紙幣にもICチップが仕込まれるご時世だ、そこまで驚くような事でもない。むしろちょっと調べただけで発信機が仕込まれている事に気付く楯無の洞察力こそ驚くべきレベルだ。


「一夏君はその名刺を劇の間も肌身離さず持っておいてね。盗聴器までは仕込まれてないみたいだから一夏君が発信機の存在に気付いている事に向こうは知らないままだからね」

「は、はぁ分かりました」


開演の時間も迫ってきているので衣装に着替える事にする2人。

・・・・・・今度はどちらかが指摘するよりも早く、何時の間にか楯無は出て行っていた。












『観客参加型演劇』と銘打たれた生徒会公演による演目は『シンデレラ』――――なのだが、侵入者を釣る為の別の意味でのお芝居の筈なのに『あの』楯無が立案した演目なだけあって、その内容も設定も突っ込み所満載な内容と化していた。

そもそもアマゾネス化したシンデレラ達が王子の王冠に隠された軍事機密を巡って大争奪戦とか、グリム童話じゃなくてスパイ小説とかB級アクション映画との設定と勘違いしてるんじゃないだろうかと小一時間問い詰めたい。


「つかさ、何で皆も参加してんだよ!?楯無さんに何か吹き込まれたのか!」

「あの女と取引してな!嫁の王冠を奪えば生徒会長権限で1週間同居だそうだ!」

「だーれーがー許すと思うかそんな事!」

「箒の言う通りよ、そんな事していいのは私と箒だけなんだから!」

「ああもうやっぱりロクな事しないなあの人!わ、ちっ、この狙撃はセシリアか!」

『何という事でしょう、王冠を狙う立場でありながら王子との愛に目覚めたシンデレラがかつての仲間と敵対するとはまさに悲劇!そしてロマンス以外の何物でもありません!』


足元を跳ねる弾丸に脅威を感じた一夏は手近な遮蔽物―宮殿風の舞台のセット―に飛び込む。

少し離れた地点ではラウラが恋人達2人を相手取って激戦を繰り広げていた。流石特殊部隊の指揮官を務め、仲間内でもトップクラスの実力を誇るラウラである。IS無しでも数のハンデを背負っていながら、箒と鈴を相手取って一方的な攻勢を続けている。

勿論それには舞台上には居ない、だが間違いなく体育館の何処かに潜んでいるセシリアの援護射撃の影響も大きい。IS戦もロングレンジの狙撃が得意なだけあって一夏に箒、鈴の動きを先読みした狙撃が否応無しに標的となった3人の行動を制限してきて、とても厄介だ。

というかまさか実弾使ってんじゃないだろうな。セットに穴開いてるぞ穴。

一夏の身体がある辺りを狙って遮蔽物越しにも撃って来るものだから、さっきからしょっちゅう物陰から追い出されてはスポットライトと観客の歓声を浴びる羽目になった。

あ、シャルロット達見っけ。弾に蘭にいつの間にか合流していたのか簪にのほほんさんに虚さんまで一緒だった。笑ってないで助けて欲しい。


「うわっ!?」


すぐ近くで箒の悲鳴が聞こえた。振り向けば一夏に向かって倒れ込んでくる箒の背中があった。律儀にも役柄通りガラスの靴(強化ガラス製)を履いたまま激しい格闘戦を繰り広げていたせいで、ラウラの攻勢を捌いていた際バランスを崩してしまったのだ。

反射的に箒の身体を受け止める一夏。片手で背中を、もう片方を腰下辺りに伸ばして自然と横抱きになる形でドレス姿の箒の身体を受け止めた。

――――どこからどう見ても完全無欠のお姫様抱っこである。

たちまち鳴り響く『えんだあああああああああああああああ!!』とのシャウト。今時の若い世代にボディガードネタが通用するのか甚だ疑問である。

次の瞬間、狙撃の規模が単発から弾雨へと変貌した。周囲を通り過ぎていく弾丸の多さに泡を食った一夏は再度手近な物陰へ滑り込む・・・・・・箒を抱き上げたまま。


「だ、大丈夫か箒?」

「う、うむ。平気だぞ・・・・・・」


未だ一夏の胸の中に居る箒はここぞとばかりに一夏の胸板の感触を堪能する事にして、心なしか強く顔を胸板に押し付けた。

そんな箒にとっては甘い一時も狙撃がセットに着弾する心臓の悪い音にたちまち霧散する。一夏は一夏で連射間隔とフルオート連射可能な辺りボルトアクションじゃなくてオートマチックタイプかな、とセシリアの得物について冷静に分析中。


『さあどうする王子様。このままあえなく愛を選んだシンデレラ共々凶弾に倒れてしまうのでしょうか?』


その時またもBGMが大音量で流れ出した。今度は歌手のシャウトではなく、腹に響く重低音が一定のリズムで作り出す威圧感溢れるメロディーだ。

ダダッダンダダン!と特徴なテンポを1小節も耳にすれば自然と答えが思い浮かぶ位知られている名作SF映画のテーマ曲。




そして『彼』が姿を現す。

屈強な筋骨隆々な肉体を覆うのはバイカー風の黒いレザージャケット。目元にはこれまた威圧感たっぷりの分厚いサングラスに両手にはアサルトライフルにショットガンの2丁持ち。背中には中折れ式グレネードランチャーまで背負っている






『何と、王子様を守る衛兵の正体は未来から送り込まれた殺人マシーンだったのです!』

「「「「「「な、何だってー!!?」」」」」」






というか全く違和感感じねぇ!?と観客のほぼ全員の内心が一致した瞬間であった。元ネタよりもよっぽどしっくりくるってどういう訳さ。

ターミ○ーターに扮したミシェルはまずはショットガンをラウラに向け、片手撃ちで威嚇射撃。散弾の連射に脅威を覚えたラウラは鈴との戦闘を中断するとした内と共に後ろへ飛び、一夏達と大きく距離を取る。

すぐさまミシェルは弾切れになったショットガンを捨てると背中のグレネードランチャーを抜き、またも片手1本で狙いを定めるとミシェルの登場によって狙撃ポイントからの移動を失念していたセシリア目がけ発射した。

白煙をたなびかせた40mm擲弾は観客達の頭上を飛び越えまっすぐセシリアの元へ。爆発と共にセシリアの悲鳴が聞こえたが人体に無害な(?)砲弾を使用しているのでセシリアの身体そのものは全くの無傷だからご安心を。


『さあここからはフリーエントリー戦!果たして強靭な衛兵の守りを突破して王冠を手にするのは誰になるのでしょう!!』


地響きを伴って舞台袖から乱入してきたのは、セシリアとラウラ同様一夏との同居権を求めてエントリーしてきた少女達である。

もはや一夏と箒と鈴の関係は学園中にしれ渡っている筈なのだが、2人纏めて恋人になったが為に自分達も加われるかもしれないと往生際の悪い者がまだこれだけ残っていたのだ。


「「「「「「織斑く~~~~~~~~~・・・・・・」」」」」」


バッファローの群れの如き足音と迫力を伴って一夏に襲い掛かろうとする女子達。その声はしかし、あっという間に尻すぼみになって途切れた。

何故ならば1人ミシェルが立ちふさがったから。だが重要なのは今彼が構えている代物の存在であった。

彼が両手で腰だめに抱えているのは本体重量18kg、電動駆動と6連銃身により毎秒100発を吐き出す怪物銃。

――――ゼネラル・エレクトロニック・M134ガトリング。通称『ミニガン』。

本来は軍用車両やヘリコプターに搭載して運用するものであり、個人で携行するには大き過ぎ重過ぎ剣呑過ぎるその6つの銃口が凍りつく少女達にピタリと向けられていた。


「・・・・・・死ぬほど痛いぞ」


回れ右して脱兎のごとく逃げ出そうとした少女達だがもう遅い。




少女達の悲鳴は超巨大なチェーンソーのような銃声に掻き消された。















――――――同時に誰にも気づかれる事無く、一夏の姿は舞台から消えていた。








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劇場版リリなのAsのHPを見て最初に思った事:はやてがメインなのになんでなのフェイがトップなんだよ!?(はやて好き
戦闘シーンは原作からかなり変わる予定。


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