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No.27133の一覧
[0] (新話追加)僕の恋人はお兄ちゃん?(インフィニット・ストラトス オリキャラ転生系 R15)[ゼミル](2012/02/22 21:06)
[1] プロローグ(上):彼女が彼と出会うまで[ゼミル](2011/06/11 09:53)
[2] プロローグ(下):彼がISを使える事に気づくまで[ゼミル](2011/06/11 09:57)
[3] 1-1:バカップルの来日と再会[ゼミル](2011/06/11 10:00)
[4] 1-2:決闘の経緯/刺激的過ぎる再会[ゼミル](2011/06/11 10:04)
[5] 1-3:決闘対策期間[ゼミル](2011/06/11 10:10)
[6] 1-4:サムライハート[ゼミル](2011/06/11 10:13)
[7] 1-5:伝染?[ゼミル](2011/06/11 10:18)
[8] 1-6:School days(一部改定)[ゼミル](2011/06/11 10:23)
[9] 1-7:再会TAKE2[ゼミル](2011/05/06 23:51)
[10] 1-8:Fire in the hole!/友情[ゼミル](2011/05/11 10:14)
[11] 1-9:約束の行方/恋は戦争?[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[12] 1-10:決闘者×乱入者×突入者[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[13] 1-11:決着/少女達の答え[ゼミル](2011/05/22 23:32)
[14] 2-1:ボーイズトーク/銀の嵐・序章[ゼミル](2011/05/25 11:54)
[15] 2-2:結構気にしてるんです/ランチタイム[ゼミル](2011/05/28 11:12)
[16] 2-3:銃声の記憶[ゼミル](2011/06/03 00:46)
[17] 2-4:ガールズトーク[ゼミル](2011/06/06 00:20)
[18] 2-5:Black vs White:1st Round[ゼミル](2011/06/11 00:06)
[19] 2-6:家庭の事情/タッグマッチに向けての一幕[ゼミル](2011/06/14 11:47)
[20] 2-7:八者四様[ゼミル](2011/06/19 11:57)
[21] 2-8:Black vs White:Bullet & Blade[ゼミル](2011/06/24 00:03)
[22] 2-9:Black vs White:Fake & Real/掌[ゼミル](2011/06/27 00:24)
[23] 3-1:とある朝の風景/一夏にまつわるエトセトラ[ゼミル](2011/08/09 00:38)
[24] 3-2:イントゥ・ザ・ブルー[ゼミル](2011/08/13 18:44)
[25] 3-3:疑わしきは/イントゥ・ザ・スカイ[ゼミル](2011/08/27 10:42)
[26] 3-4:許されざる者/理由[ゼミル](2011/09/01 23:59)
[27] 3-5:バースデイ[ゼミル](2011/09/10 00:25)
[28] 3-6:アナタノオト/覚悟完了[ゼミル](2011/09/18 18:36)
[31] 原作3巻終了時までの設定[ゼミル](2011/12/13 10:26)
[32] 4-1:Summer Time・序[ゼミル](2011/12/25 17:22)
[33] 4-2:Summer Time・ある夫婦+αの場合[ゼミル](2011/09/26 17:44)
[34] 4-3:Summer Time・トライアングラー+αの場合(???追加)[ゼミル](2011/12/25 17:24)
[35] 4-4:Summer Time・そして仲間達の場合[ゼミル](2011/12/25 17:25)
[36] 5-1:Friends[ゼミル](2011/10/23 23:28)
[37] 5-2:影の軍隊/青猫と白猫[ゼミル](2011/10/28 19:04)
[38] 5-3:代表候補生と男性IS操縦者に関する部活動についての一幕[ゼミル](2011/11/01 10:57)
[39] 5-4:リアルバウトハイスクール[ゼミル](2011/11/07 00:31)
[40] 5-5:アフタースクール/ブレイクスルー[ゼミル](2011/11/13 23:49)
[41] 5-6:ロングキス・グッドナイト[ゼミル](2011/11/19 00:31)
[42] 5-7:千客万来(上)[ゼミル](2011/11/26 11:26)
[43] 5-8:千客万来(下)[ゼミル](2011/12/04 11:39)
[44] 5-9:ダブルチーム(上)[ゼミル](2011/12/11 12:18)
[45] 5-10:ダブルチーム(中)[ゼミル](2011/12/17 00:01)
[46] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ[ゼミル](2011/12/24 15:42)
[47] 6-1:水面下の憂鬱[ゼミル](2012/02/22 21:05)
[48] 6-2:Holiday -School side-[ゼミル](2012/04/27 10:25)
[49] 6-3:Holiday -Public side-[ゼミル](2012/04/30 13:17)
[50] 6-4:ACE COMBAT(1)[ゼミル](2012/05/05 10:18)
[51] 6-5:ACE COMBAT(2)[ゼミル](2012/05/08 10:25)
[52] 番外編:Year’s End[ゼミル](2011/12/31 18:38)
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[27133] 5-7:千客万来(上)
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:27a72cf3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/26 11:26
※クロスキャラ登場につき注意!!














原作では会長との訓練とかドタバタとかあった気がするけどそんな事なかったぜ!


「酷い!?ただでさえお姉ねーさんのお色気シーンとか同棲シーンとか跡形もなく破壊されちゃったのに、これじゃあ謎の悪の組織の構成員とのバトルシーンぐらいしか見せ場がないじゃない!」

「・・・・・・そっちも(多分)おめーの出番ねーから!」

「ガーン!!!」











日が立つのは早いもので、あっという間に学園祭当日である。

一般公開はされてないが生徒1人に付き1枚の特別招待券が配布されているので、学園の生徒数とほぼ同規模の一般招待客が訪れるのは確定事項と言えた。

それに加え各国の関係者やIS関連企業の人間もそれ以上の規模で招待されていたので、IS学園はかなりの人出で賑わっていた。唯一学園と本土を結ぶ交通機関であるモノレールは臨時便を増やし、混雑の対処に当たっている。

更に裏側では学園周辺に配置されている各国諜報機関の規模も一時的に強化されており、外部から招待客が集まるという絶好の潜入機会に対する他勢力の抜け駆けを許すまいと日頃以上に目を光らせている状況だ。

銃火器の充実のみならず先進国から送り込まれた一部勢力に至っては偽装した装甲車両・戦闘ヘリ、挙句の果てにISまで極秘配備しているという有様で、今やご近所が1日限定で極東で最も危険な火薬庫と化しているという現実を知る者は決して多くない。






そんな中、一般客関係者のみならず校内の生徒達の目すら惹きつける一角があった。

そう、世界で2人しか居ないISを操縦できる男が所属する1年1組のメイド&執事喫茶である。

一般参加者と生徒達からは織斑君(&デュノア君)の執事姿が見られるという欲望から。それ以外の業界人からは世界でもトップクラスの重要人物になんつー恰好させてるんだという怒りとか呆れとか主に突っ込み方面で注目が集まっている。


「うわ、スゲー並んでる。これ本当にこの店のお客、だよな?」

「・・・・・・まず間違いなく一夏目当てだろうな。中にはサイン用紙まで持ってる女の子も見えるぞ」

「の割に男のお客も多いな。そっちは一般招待の人じゃなくて企業の人達っぽいな」

「・・・・・・軍人も混じってるぞ。というか、俺の知り合いも混じっている」

「マジか」


開店間際、既に準備を整えられた店内(教室)には3人の執事がスタンバイ済みである。

――――そう、『3人』の執事である。


「何で僕まで執事役になっちゃってるんだろ・・・・・・」

「で、でも結構似合ってるからそこまで気にする必要無いと思うぜ。こう、金髪の貴公子って感じであんまり違和感もないし」

「男の子の格好して似合うって言われるのも複雑だよぅ。うう、胸元が苦しい・・・・・・」


一夏とミシェルのみならず、執事服姿のシャルロットがそこに居た。彼女もメイド服姿で接客する筈が当日になって無理矢理この格好に着替えさせられたのである。

元々中世的な美貌だったし、年を考えると凶暴に過ぎるスタイルも今は執事服の下に封印されていてパッと見では確かに美少年にしか見えない。


「ふふふ、やっぱり見立て通り・・・・・・!デュノアさんなら男の子の格好も似合うと思ってたのよ!」

「やーん、宝塚の役者みたいでカッコいい!まさに貴公子って感じだわー!」


反省はしているが後悔はこれっぽっちもしていない、とは彼女達の言。中には「 計 画 通 り 」と新世界の神志望だった主人公兼ラスボスな天才高校生みたいな邪笑を浮かべる少女すら居てちょっと怖い。

これまで散々衆目を集めてきた豊満な胸は、現在さらしとサポーターで押さえつけられてちょっと背丈の割に胸板が厚い程度にまで押し込められている。どこから調達してきたのだろう?

肝心の夫の方はと言えば、そういえば原作でも初登場の頃は男装していたんだったな等とうろ覚えの原作意識をボンヤリと今更思い出してて、シャルロットを援護してくれる気配はない。それどころか、


「・・・・・・まあ、確かにその姿も凛々しくて悪くはないな」

「うわーんミシェルにまで裏切られたー!」

「俺は褒めたつもりだったんだが・・・・・・」


目の幅涙を流して崩れ落ちるシャルロットであった。

もっとも<ラピッド・スイッチ>の使い手なだけあって――――いや多分それは関係無い気もするが、すぐさま気を取り直して接客の練習をしだすシャルロット。


「ゴホン――――いらっしゃいませ、お嬢様。こんな感じで良いのかな?」


それらしく心持ち低めの声色であのミシェルも大好きな太陽の微笑みを浮かべた彼(?)にそう言われた途端、クラスメイト達が一斉に崩れ落ちる結果になった。


「まさかここまでお似合いになるとは思いもよりませんでしたわ・・・・・・」

「そ、そうかな?それが良いのか悪いのかよく分からないけど」

「むしろその格好で違和感を殆ど感じない事の方が驚きだな。とりあえずインパクトは十分だな」

「こういうのはよく分からないが、皆がそう言うのならば似合っているという事だろう。それで良いと思うぞ」

「あははははは・・・・・・」


ここまで言われてはもう笑うしかない。

まあ実際、夏休みの飛び入りアルバイトの時同様にこちらも執事服を着込んでいるミシェルと比べれば、周囲からしてみればシャルロットの執事服姿の方がよっぽど違和感を感じないのであった。













さて、開店の時間である。

分かり切っていたので一夏達も覚悟はしていたのだが、1年1組の執事&メイド喫茶は大繁盛のあまり店内は誰もがてんてこまいの様子を呈していた。

特に一夏は物珍しさに加え、元より整った顔立ちと滅多に見られない執事のコスプレをしているとあって指名率はダントツだった。しかも単に同年代の女子のみならず、喫茶店の客にかこつけてIS操縦者としての『織斑一夏』に自社の装備を使用してもらおうと勧誘してくる企業の人間に顔を覚えてもらおうと目論む各国の関係者も一夏を指名してくるものだから、一夏はほとほと対応に困る羽目に陥った。

時点はシャルロット(男装ver)。彼女を指名した相手はまず男装の執事という設定に驚き、それから想像以上に似合うその振る舞いに心をざわめかせ、どこに出しても恥ずかしくない男装故の凛々しさの増した美貌に見惚れる事になる。彼女を指名する客層は大半が女性ばかりだった。

意外にもミシェルを指名する客も多い。もっとも彼を指名するのは大体がミシェルの顔見知り、それも主にヨーロッパ方面IS関連企業の人間という学園側が招待した者ばかりである。

一夏と違い初代男性IS操縦者として活動してきた期間が長く、またデュノア社の跡取り候補としても度々公の場に顔を出してきたが為にミシェルとその実家が持つ業界内のコネクションはそれなりの規模を誇り、招待客もその方面の人間ばかりに偏っているので、必然的に顔見知りが多くなるのも致し方ない。

更には直接面識が無くともミシェルと直接一目会いたいとの事で彼を指名する客が居た。各国の軍部関係者である。

女尊男卑の蔓延で急速に追い詰められつつあった男性軍人の救世主であり、ミシェル本人も特殊部隊の訓練も経験してきた立派な軍人の端くれという経歴から同業者意識も働いて各国の軍隊にはミシェルのファンはかなり多い。

そんな訳で、学園祭への招待にかこつけて今や世界中の男達のヒーローとも呼べるミシェル・デュノアに礼を言いに来たという軍人は意外な程多かった。


「Hey,ツーショットを撮らせて貰っても構わないか?息子も君のファンなんだ。お土産に1枚頼むよ」

「・・・・・・構いませんが」


軍人というのも意外とミーハーなようである。しかしスーツに身を包んだ企業関係者はまだしも、少女ばかりの行列の中にちらほらと混じる屈強な軍服姿の男達という構図は、ミスマッチ以外の何物でもない。

それ以外では男性のタイプが年上好き・・・・・・ぶっちゃけてしまえばオヤジ好きの極一部の女生徒に好評なミシェルの執事姿であった。






ともかく客の人種にバラつきはあれど大繁盛には変わりない。1年1組を訪れた客達の長蛇の列は、他の店にも影響を及ぼすほどだった。

有体に言ってしまえば、1年1組に客を取られたお蔭で他の店は閑古鳥が鳴いている訳で。


「ちょっとそこの執事、テーブルに案内して頂戴」

「何だ鈴も来てくれたの――――か?」

「仕方ないじゃない、この店に全部お客が行っちゃって暇なんだもの・・・・・・何固まってんの?」


営業時間中にもかかわらず暇を持て余した鈴が来客してきた。

しかし一夏が動きも思考もフリーズさせた理由は単にそれだけではなく、鈴の服装にあった。

――――――真紅のチャイナドレスに身を包んだ鈴がそこに居た。髪はいつものツインテールではなくシニョンに纏めて東洋風らしいエキゾチックな雰囲気に仕立てられている。

スリットの深さも中々の物で、鈴が少し身動ぎしただけで健康的な白さが眩しい太腿が白日の下に晒される上に、背中も菱形に布地がくり抜かれていてお尻の割れ目近くまで達しそうな位に大胆な仕様。おまけに脇の部分も広めにくり抜かれているせいで細やかながらしっかりと隆起している膨らみが横からちらちら見え隠れする始末。

うん、ぶっちゃけ中々にエロい。敢えて言うならチラリズムに特化した色気を感じさせる衣装である。


「も、もしかしてそれノーブラ?」

「五月蠅い!せっかく見惚れてくれてると思ったら最初の感想がそれって何よ!?あと一応専用の下着もつけてるわよ!」

「あ、いや、その、そんなつもりで聞いたつもりじゃなくてああもう、鈴!」

「な、何よ」


お怒りの恋人になじられ、ついでに不意打ちで叩きつけられたチラリズム効果によって少々暴走気味の一夏は顔を赤くしたまま、鈴の両肩に手を置いてまっすぐ彼女を見つめ。


「か、可愛いぞ!似合ってる!!」


直球ど真ん中剛速球に叫んだ。


「・・・・・・あ、ありがとう」


そしてストレートな言葉に弱い鈴の顔はチャイナドレス以上に真っ赤になった。

しかしここはクラスメイトのみならずお客も犇めく店内である。数十対の熱視線が注がれているのに気づくや否や、すぐにお互い目を逸らしてとても恥ずかしそうに小さくなってしまった。


「・・・・・・・・・・・・」

「だから無言でISを展開するな、外から来てるお客さんも多いのだからな・・・・・・」


そして嫉妬に駆られたセシリアをミシェルが止めるまでがテンプレである。あとその隣ではチャイナドレス姿を褒められた鈴を羨ましそうに見つめる箒の姿があったとか。

結局その流れで鈴の相手は一夏がする事になった。執事スタイルの恋人が相手してくれるとなって、早くも鈴の口元は綻びつつある。

そんな鈴が注文したのは『執事にご褒美セット』。それをオーダーした瞬間一夏の顔が引きつった気がしたのだが、どうも一夏絡みのメニューのようだ。


「で、このポッキーでどうしろと?」

「・・・・・・執事に食べさせてあげるんだよ」

「何それ、お客が金払って店員に食べさせてあげるって本末転倒でしょ」

「反論のしようもございません」


一夏だけでなくミシェル達もまったくの同意見だったりする。

しかし何故か女性のお客様には好評で、時間が経つにつれこのメニューの注文が数を増やしつつある。お陰で一夏とシャルロットは早くも一生分のポッキーを食わされた気分になっていたりする。

ミシェルが含まれていない理由は言わずもがな。


「ま、キャンセルは出来ないけど一応任意だから、したくなかったら別にしなくていいぞ」

「んー、でももったいないし、せっかくだから食べさせてあげるわよ」


すると鈴はおもむろに椅子から立ち上がり、たった今まで自分が座っていた椅子を指差した。


「それじゃあそこに座りなさい」

「え?あ、ああ。座ったぞ」


一応席は他にもあるのだがとりあえず鈴の指示通り、さっきまで彼女が座っていた椅子に一夏は腰かけた。




――――そして躊躇いなく、鈴は一夏の膝の上に腰を下ろした。




「ちょwwwおまwwwwww」


ネットスラングっぽい発音をしてしまうぐらい混乱状態に陥った一夏へ更なる鈴の攻撃!


「んー」


再び一夏の思考が強制停止。

単に手に取ったポッキーを差し出すのではなく、端の方を口に銜えて強請るように突き出してくるその姿は破壊力満点。

90度横を向いて一夏の膝の上に乗った状態で、鈴は一夏の首に両腕を回してまでアピールしてみせる。


「な、な、な、何ばしよっとですかお嬢さん!!?」

「はっへ、べふにあげはたにしへいはないんでひょ?(だって、別にあげ方に指定はないんでしょ?)」

「そういう問題じゃないだろこれ・・・・・・」


恥ずかしい。でも可愛い恋人がこんな感じで甘えてくるのは嬉しいし可愛いしああよく見たらまつ毛長くて綺麗だな、と後半はやや現実逃避気味にそんな感想を抱きつつ、覚悟を決める。

ここで逃げたら鈴に泣かれそうな気がしたのもあるが、チャイナドレスによっていつもと違った美しさと色気を感じさせる鈴の攻勢に追い詰められつつあったのだろう。

状況に流されるがまま、一夏は鈴が銜えるポッキーの先端へ口を近づけた。


「ん・・・・・・」


今や静まり返った教室内にポッキーを両端から咀嚼する音だけが小さく響く。どんどんと接近していく一夏と鈴の唇に、周囲の視線は太陽の光を虫眼鏡に通した時以上に熱く集束していた。

2人の唇を結ぶポッキーが残り1㎝足らずになった所で僅かに両者の動きが止まる。が、すぐに鈴の方からその距離をゼロにしてしまった。


「んんんんっ!?」


一夏の目が見開かれた。そりゃいきなり舌が侵入してきたら驚きもするだろう。

チョコの甘さとか砕けたプリッツェルのざらついた感触なんかよりも、鈴の舌の熱さと柔らかく滑らかな感触の方がよっぽど官能的で素晴らしい味わいだった。

そうしていたのは果たしてどれだけの時間だろうか。次々流し込まれてきた唾液にポッキーの残骸が全て流し込まれた段になってようやく鈴が身体を離す。


「どう、だった?私からのご褒美は?」

「・・・・・・えっと、十分に堪能させていただきましたですハイ」

「ならよろしい♪」


鈴の視線がポッキーの刺さったグラスの方へと泳ぐ。


「それじゃあ、もっと『ご褒美』をあげるわね」


ともう1度ポッキーを口に銜える鈴だったが、唐突にその身体が浮き上がって一夏の膝の上から離れた。

そこいらの筋者も道を開けそうな厳つい顔に呆れの感情を滲ませたミシェルが片手1本で鈴の首根っこを釣り上げていた。


「・・・・・・せめてそういう事は2人きりの時にしてくれないか?」

「それってそっちが言える立場じゃないと思うんだけど」

「・・・・・・否定はしないし自覚はあるが、今は他の『お客さん』が居る前だからな」

「・・・・・・あっ」


たった今その事に思い至ったみたいに鈴が間抜けな声を漏らす。

見渡してみればこっちをじっと見つめたまま固まったままのクラスメイトに客である他のクラスの生徒に上級生に一般招待の人々。ニヤニヤと面白そうだったり興味深げな表情を浮かべているのは人生経験豊富な業界関係者に軍人勢。教室の外で並ぶ順番待ちの人々も以下同文。

今度は鈴がカチンコチンに凍りつく番だった。何やってんの私何やってんの私何やってんの私皆の前で皆の前で一夏にちゅーしてちゅーしてあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう・・・・・・


「お、おーい、りーん」

「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう(ry」

「・・・・・・とりあえず、気の迷いだったという事にしといてやろう」


これ以上下手に指摘して鈴を刺激したら、余計に面倒になりそうだった。


「おい、一夏!」

「何だよ箒」

「・・・・・・ん!」


そして何負けじと真似してポッキー銜えて顔突き出してやがりますかそこのモップ。

そこの女性客も私も私もと真似するな!








お客の波はまだまだ収まらず、接客担当も調理担当も雑務担当も悲鳴を漏らしながら仕事を続けていると、様々な種類の人種・国籍が入り混じったお客の中でも一際異彩を放つ団体客が入店してきた。

プラチナブロンドの若い女性に銀髪褐色の少年、目の覚めるような美貌を誇る中年女性と背広にサングラスの屈強な男性にどこにでも居そうな日本人男性といまいち繋がりの読めない組み合わせなのだが、実は全員ミシェルとシャルロットの知り合いだった。


「フフーフ、招待ついでに顔を出させてもらったけど中々繁盛しているみたいじゃないか」

「お久しぶりねミシェル君もシャルロットちゃんも。あらあら、中々似合ってるじゃない」

「来てくれたんですかココさん。それにアマーリアさんも、お久しぶりです!」


IS関連企業関係者として招待されたココ・ヘクマティアルにアマーリア・トロホブスキー、そしてその護衛達である。

無用な騒動を防ぐ為に護衛の数も最低限に制限されているので、ココの護衛は通訳担当も兼ねたトージョに少年兵なので一見護衛には見えないヨナ、アマーリアの方は日頃から秘書としても働いてくれているサングラスの男性を引きつれていた。

店内に大きなざわめきが走る。特にヨーロッパからやって来た留学生はあからさまに動揺している様子だ。セシリアに至ってはアマーリアを指差し、あんぐりと大口を開けて淑女にあるまじき形相を浮かべている。


「しゃ、しゃしゃしゃしゃシャルロットさん?もしやこの方とお知り合いですの!?」

「うん。ミシェルと一緒になってから、よく実家と同じ業界の人達が集まるパーティでお話をしたり色んな事を教えてもらったりしてね。僕も最初に会った時は驚いたよ」

「ミシェル君がこんなに綺麗な女の子をお嫁さんにしたって聞いた時はふふっ、とっても驚いたものだったわ。シャルロットちゃんもとても良い子だしついつい気に入っちゃって色々とおせっかいをかけちゃった間柄なのよ」

「いやー最初にミシェルが15にもならないのに結婚するって聞いた時は驚いたぜ。まさかココさんが先を越される事なんてへぶぁ!?」


余計な事を言い終わる前に繰り出されたボディブローによってトージョの発言は中断された。入れ違いにまるで恋する乙女の如く顔を赤くし、目を輝かせたセシリアが一団へ接触を試みる。


「は、初めまして!わたくしはイギリスの代表候補生を務めております、セシリア・オルコットと申しますわ!」

「初めまして、こちらこそ貴女のような優雅なお嬢さんに会えて光栄だわ」

「じ、実はわたくし、ミス・トロホブスキーのだだだ大ファンですの!特に最後に出演なされた『ハムレット』の最終公演にはわたくし両親と共に観賞させていただきましたわ!」

「あらあら、最後に舞台に上がったのももうずっと前なのに覚えていてくれたなんて、おばさん感激だわ」


文字通り大ファンのアイドルと直接対面したようなテンションのセシリアに一夏は面食らう。


「あのさ、あの女の人ってもしかして有名な役者さんだったりするのか?セシリアなんか凄いハイテンションになってるし」

「・・・・・・正確には元舞台女優だ」

「アマーリア・トロホブスキーさんっていってね、アマーリアさんは昔はすっごく有名な舞台女優だったんだ。何年か前に結婚して引退したんだけどすぐに旦那さんが亡くなってね。今は兵器ディーラーをしてるんだって」

「そして彼女も私もそこの彼とは個人的にも仲良くしているという事さ」

「そうなんですか。やっぱ実家が大企業の社長さんなだけあるよな――――あ、初めまして。織斑一夏っていいます。えっと・・・・・・」

「ココ・ヘクマティアル、HCLIの兵器運搬部門に従事している者だ。武器商人、っていえば分かり易いだろうね。ミシェルの実家みたいな作る側じゃなくて売って運ぶ側だけど」


狐みたいな笑みと共に自己紹介。しかし武器商人、と名乗られてもいまいちピンとこないのは一夏もまた平和ボケに浸りきった日本人の一因だからかもしれない。

ココのような千冬姉とさほど変わらなさそうな女性やアマーリアのような華美な雰囲気を纏った人間が、危険な戦場を巡って兵器を売り歩くという武器商人のイメージと一致しないのもある。

あとそんな物騒な職業な人が子供引きつれて仕事する訳ないよな普通、とヨナの素性を知らないせいでそんな考えまで思い浮かぶ。


「フフーフ、あまりピンときていない様子だね?」

「う゛、す、すいません・・・・・・」

「何、謝る事はないよ。いくらISという世界を引っくり返す兵器を生み出した国とはいえ、まだまだ日本は平和だからね。君みたいな感想を抱く人間も珍しくはないさ」

「グッ、それにしても、プッ―――――ぶははははは!やっぱり我慢できね!話にゃ聞いてたけどマジでそんな恰好して働いてんのかよミシェル!!ぎゃはははは!!」

「・・・・・・似合ってないのは自覚してる」


大爆笑のトージョに怒る気配も見せずほんの数mmだけ唇を歪めて諦めの笑みを形作るミシェル。

こっちもこっちで単なる顔見知り以上の親密さを漂わせていた。思い当たる節を思い出して思わず一夏は問いかける。


「もしかして、ミシェルに最初に銃の撃ち方とかを教えたのが貴方達なんですか?」

「ぶひゃひゃひゃひゃ・・・・・・あー面白ぇ、こりゃ絶対皆にも教えてやらないと。ん?ああそうそう、もう何年も前になるかな。ココさん繋がりで俺と仲間達が少しの間ミシェルにトレーニングしてやったんだ」

「そうだったんですか」

「いやー来た甲斐があったよ!まさかこんな面白い物が見れるなんて!似合ってるじゃないか2人とも」

「アハハ、恐縮です」


いつの間にやら相手のファンだったり知り合い同士が対面したりで自然とそれぞれの空間が構築されていく中、1人所在無さげに運ばれてきた紅茶を啜っていた少年兵ことヨナだったが。


「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・何をジロジロ見ている」


その紅茶を運んできた無愛想なメイド、ラウラにあまり感情を感じさせない透明な視線を固定した。

ロリ系銀髪眼帯無愛想メイドという人種はヨナにとって初めて接する相手なのである。背丈も同じぐらい小柄でミシェルと同い年には見えないし(そもそも比較対象が間違っている)、眼帯をしている辺り何だかバルメに似ている。でもって不機嫌そうに文句を言われた時にも気づいた事があった。


「・・・・・・ココと同じ声だ」

「何の話だ一体」


中の人の話です。

ラウラと睨めっこを始めたヨナに気づいたミシェルが声をかけた。今度もまた年下の少年兵は上から下までミシェルと、そして同じ格好をしたシャルロットを興味深そうに眺めまわす。


「何でそんな恰好をしているの?」

「・・・・・・そういうコンセプトのお店だからな」

「・・・・・・変なの。男の人の服装の筈なのにシャルロットまで同じ格好をしてるなんて」


ストレートにそう指摘されては、半ば男装を受け入れだしてきていたシャルロットは乾いた笑いで誤魔化すしかない。

もう言わないで、クラスの皆に無理矢理着させられて突っぱねられなかっただけなんだから。













そして更なる闖入者登場。


「お邪魔するわねー♪」

「邪魔するんなら帰ってください・・・・・・シャルロット、塩」

「外人なのに吉本ネタで返すなんて意外と日本通よねデュノア君ってば」


猫座の生徒会長こと更識楯無の登場である。とりあえず何故1年1組のと同じメイド服を着ているのかは突っ込まないでおこう。面倒だし。

こうして見ると、つい数分前までここに居たココと楯無の笑顔の差がミシェルにはよく理解できる。笑顔の仮面という点においてはここの方が数段上手く演じているとミシェルには感じた。経験の差か過ごしてきた世界の差かはたまた人間的な本質の差かはさておき。

それに日頃の行動の違いによる印象も大きい。事ある毎に他人をからかい倒して振り回す姿しか見せようとしない以上、楯無の笑みに胡散臭さのバイアスがかかるのは当たり前の事。


「・・・・・・他のお客様のご迷惑になりますし割り込みは厳禁ですので並び直してくれませんか」

「もう、デュノア君ってば融通が利かないんだから。それにおねーさんは客としてではなくて店のお手伝いにやって来たのよ?しばらくの間抜ける一夏君の為にね」

「何かスケジュール把握されてる!?」

「ま、それはそうとして、ちょっと2人ともお耳を拝借できないかしら?」


一見笑顔、だがこの時ばかりはいつもと違い、楯無の目は笑っていなかった。初めて感じる楯無の真面目な気配に、半ば渋々ミシェルも一夏も耳を貸す。


「もっと耳を近づけて」


そう言われるがまま更に身を乗り出す2人。

そして、


「ふっ♪」

「のっひょあ!?」


耳に吹きかけられた生温かい吐息のくすぐったさに一夏は奇声と共に飛び上がった。


「・・・・・・・・・・・・」

「わーっ!?タンマミシェル、流石に銃抜くのはやり過ぎだって!!」

「安心して、ここからはちゃんと真面目なお話をするから」


楯無の手に魔法の様にPDAが現れた。今一体どこから出した、と不思議そうな顔をした一夏の鼻先に突き付けられた扇子には『企業秘密』の文字。

楯無は2人にしか聞こえないギリギリの音量で話し出す。


「約30分前の事よ。未確認勢力の一員と思われる人間が身分を偽ってIS学園内に潜入しているのが確認されたわ。複数の可能性もある」

「「―――――!!!」」


基本(見た目は)無愛想で固定されているミシェルはともかく、一夏は周囲に動揺を悟られないようになるべく表情を変えないようにするので必死になった。

瞳だけ真剣な光を放って表情を1mmたりとも変えない楯無の姿に、やっぱり対暗部用暗部の出は伊達じゃないんだなと今更ながら感心する。

楯無のPDAには若いロングヘアーの女性が映し出されていた。画像の様子と角度からして監視カメラの画像であるのは間違いない。


「1人は学園直通のモノレールに乗って学園前駅に到着した所までは足取りは終えたけどそこから見失っちゃったわ。校内に設置してあるどの監視カメラにも引っかかってないし、多分敷地中の監視カメラの場所も把握してるんじゃないかしら」

「だったら今すぐ他の人達を避難させなきゃ・・・・・・!」

「・・・・・・いや、それは無理だろう。本土とを結ぶ脱出路がモノレールしかない以上、無理に避難させようとすれば人の流れが1ヵ所に集中する・・・・・・無用な混乱を引き起こすだけだ」

「デュノア君の言う通り。そうやってパニックになったら無駄な被害が出ちゃうかもしれないし、それが向こうの狙いなのかもしれないわよ?他の場所の警備を手薄にするにはうってつけの搖動だしね。こんな事態だからおねーさんの出番なわけだけど」


楯無の笑みの質が変わる。霧のように掴み所を感じさせない雰囲気から獲物を見定めた豹のような獰猛さを含んだ微笑へ。


「単刀直入に言うわ。この招かれざるお客さんを捕まえるのに協力して頂戴」

「分かりました。俺に出来る事なら出来るだけ協力します」

「・・・・・・俺達は何をすれば?」

「女の子のお願いに即答してくれるなんて流石男の子♪」


その時が来たらまた連絡するから今はそう気負わずに学園祭を楽しんできなさい。相手を見かけるような事があっても私の仕込みが終わるまで手出しはしないでおいてね。

そう生徒会長に言い含められた一夏とミシェルは、当初の予定通り行動を別にする。
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・30秒後、画像に映っていた侵入者の女性ににこやかに話しかけられる事になるとは、一夏は予想だにしていなかった。






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ぶっちゃけ鈴の部分で燃え尽きたせいで後の部分おざなりだよ!
箒ばっかり一夏とイチャイチャしてる気がしたから鈴の分も補おうと思ったらご覧の有様です。どうしてこうなった。


ドラマCD版のココの中の人がラウラと同じである事を知る人ってどれだけいるんだろ?


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