※前半、別作品のキャラが登場しますので苦手な方は要注意
<帰郷>
広々と冴え渡る青空と、その中に程々に漂う白い雲。その下に広がるのは広大な農地。色とりどりの作物や花が鮮やかに地上を彩っている。
実家から借りてきた車―――国産車、つまりフランスの大手車会社が発売しているSUVの最高級モデルの車体に寄りかかりながら宙を見上げていたミシェルは、思わず煙草が欲しくなってしまった。
彼自身煙草は吸わないが、人を待ちながら絵画から切り取ったような風景を眺めているというシチュエーションに酔ってしまったのだろう。生まれ変わってからあまり欲しいとは思わなくなっていたのだが。
フランスの夏は海に囲まれた島国である日本のそれよりもかなり爽やかで、体感温度もそれほど暑く感じない。時折風が吹けば逆にひんやりと感じてしまうほどでとても過ごしやすい気候だ。
視線を上から本来の目線と同じ高さに戻して首を巡らせてみると、丁度建物の裏手から待ち人が現れる所だった。
自分の妻、シャルロット・デュノアが年老いたシスターに別れの挨拶のキス(もちろん頬)を交わし、ハグもしてから修道院から離れてミシェルの元へやってくる。
透き通るような紫の目が今は赤く充血しているのを見逃す筈もない。
それでもシャルロットはミシェルに笑いかけながら「待たせてゴメンね。それじゃあ行こうか」と助手席に乗り込む。敢えてミシェルも何も言わずに運転席へ。
都市部からそれなりに離れた距離に位置する農業地帯のとある田舎町。
ここがシャルロットの生まれ故郷であり―――――2年前に病死した彼女の母親が眠る土地だ。
「・・・・・・大丈夫か?せっかくシャルロットの故郷に戻ってきたんだ、他にも知り合いの所に回っても構わないんだが・・・・・・」
「ううん、ミシェルが気を遣ってくれなくても大丈夫。お母さんのお墓参りは済んだし、明日には日本に戻るんだから早めに帰った方が良いと思うよ」
これでもIS学園から戻ってからのフランス本国での用事―2次形態移行したミシェルの機体のデータ取りや2人の専用機のオーバーホール、デュノア社の跡取りとしての仕事や国と会社と軍の広告塔としての取材や代表候補生としての報告etc―を大急ぎで済ませて、無理矢理時間を空けてわざわざ遠く離れたシャルロットの故郷まではるばるやって来たのだ。
自家用ヘリでも使えばもっと速く行き来出来たに違いないが、それはシャルロットの『近所迷惑』とのお言葉で却下。尚、この地域では民家1軒につき隣の家まで数kmは離れている。
ちなみにミシェルはフランス代表候補生兼世界で最初の男性IS操縦者としての特権により、全世界で有効な乗り物の操縦免許を与えられていた。なので日本でも車は運転出来るし軍での訓練も積んでいるので戦闘ヘリだって操縦できる。流石にラウラの様に戦闘機までは無理だが。
地平線の彼方まで広がる農地を貫くハイウェイをそれなりの速度で突っ走る2人のSUV。
「でもまさか、この年で旦那様を連れて故郷に帰るなんて昔は全然想像してなかったなぁ」
車の窓(防弾ガラス)越しに延々と続く似たり寄ったりな風景を懐かしさの混じった眼で眺めていたシャルロットがふとそんな言葉を漏らした。
「・・・・・・実を言うと、俺もこの年で出会ったその日にプロポーズする事になるなんて全く思っていなかった」
「お互いさま、かな?本当は兄妹なのに、どんどんお互いに夢中になっちゃったもんね」
お母さんが生きてたら、何て思ったかな?
一様に沈黙してしまう2人。
「・・・・・・後悔しているか?」
「それはむしろ僕が聞きたいくらいだよ・・・・・・愛人の娘なのに、こんなに幸せで、大事にしてもらっていいのかなって今でもたまに、不安になるんだ」
「・・・・・・今更だな」
「やっぱりそう思う?」
「ああ・・・・・・先に惚れたのは俺の方なんだ。その時から俺は、どんな事をしてでも俺はシャルロットを幸せにすると誓ったし、どんな事を言われようともシャルロットを愛し続けるとも決めた・・・・・・1人の男として、な」
「そんな恥ずかしい事をあっさり真面目に言ってくるのは反則だよぉ・・・・・・」
不機嫌そうに口を尖らせるシャルロットではあるが、顔は赤いし声色も心底嬉しそうでちっとも不機嫌そうには見えない。
「・・・・・・まあ、紛う事無き本心だからな。シャルロットにしかこんな事は言えん」
「へにゅう」
そして更に赤くなる。
土地柄真っ直ぐな直線ばかりの道のりとはいえ、片道を100km単位を走破してきた事で疲れと空腹を感じてきた2人は、少し離れた国道沿いにあるガソリンスタンドに立ち寄る事にした。
海外のこういった地域のガソリンスタンドは、地続きの国境を越えて長距離を運転するドライバーやトラック運転手向けに飲食店や雑貨屋も兼任しているのが珍しくない。
特に田舎町のこの地域ではやって来る客が顔見知りなのも珍しくないらしい。
つまり何が言いたいのかといえば、2人が立ち寄ったガソリンスタンドの店主はシャルロットの顔見知りだった。何でも彼女が母親と暮らしていた頃は時折纏めて注文された品物を家まで運んできてもらっていたのだとか。小さい頃からお世話になっていたそうな。
食堂と雑貨屋を兼ねたガソリンスタンドを経営している老夫婦はシャルロットに気付くなり強烈なハグで出迎えた。でもってミシェルも自己紹介。
元から傭兵かマフィアにしか見えない位険呑な顔立ちな上大きな傷跡が走っているにもかかわらず、老夫婦は実に友好的にミシェルにも接してきた。ちょっと泣きそうになった。
既に籍まで入れていると聞かされては驚きはしたものの、背中を強烈に叩かれながら「是非この子を幸せにしてくれ」とミシェルは頼まれた。言われるまでもない。
「にしても驚いたな、シャルロットほど可愛い娘なら同年代の男子もほっとかないだろうに」
「えーっと、ミシェルは僕と同い年ですよ?」
信じてもらえなかった。別の意味でまた泣きそうになった。
「やあやあ、今年もお世話になりに来ました!」
どもーおひさー。あー腹減ったー。お前何食う?
急に何人ものお客が入って来てワイワイガヤガヤ騒がしくなる店内。彼らもやはりここの常連なようなのだが、何だか声に聞き覚えが。
「ああいらっしゃい。今年も来たのかい?そろそろだと思って新しい商品も仕入れて――――」
「・・・・・・ココさん?」
「んっ?おおっ、何とミシェル君ではないか!久しぶりだねーいま日本に居るんじゃなかったのかい?」
ミシェルが声をかけるなり、銀というよりは白金色の長髪に白のビジネススタイルの格好に身を包んだ女性が近づいてきてミシェルの方を何度も叩く。2人のやり取りを聞きつけた女性のお仲間達もゾロゾロとやってくるなり驚きと喜びの声を上げ始めた。
ココと呼ばれた女性を入れて8人。白人も居れば黒人も居るしアジア系も居る。アジア系は東南アジア系の中年男性と最早身慣れた日本人らしき眼鏡をかけた青年。ミシェル並みに体格が良い坊主頭の男性も居ればおかっぱ頭の驚くほど巨乳の女性まで混じっていた。
しかし、白い女性も含め全員シャルロットの知らない相手である。気がつくと話から押し出され1人取り残されていた。少し気まずい。と、着ていたワンピースの裾を引っ張られる感触。
何時の間にか彼女の隣に幾分シャルロットよりかは低い背丈の少年の姿。ラウラよりもややくすんだ銀の短髪に浅黒い肌。その顔は無表情なように見えて興味深そうにシャルロットを見つめている。
「・・・・・・ミシェルの知り合い?」
「う、うん。一応そうだけど、君は?」
「僕はヨナ。僕は君を知らない」
そんな会話をしていると白の女性がシャルロットにも話しかける。もっと年下の様な明るく無邪気な笑顔。
「おやおや、そちらは既に親交を深めているみたいだね。初めまして、というべきかな?ココ・ヘクマティアルというものだ。貴女がミシェルの細君であるシャルロット・デュノアでよろしいかな?」
「は、はいその通りです」
年上で初対面とあって礼儀正しく頭を下げる。ココの後ろから次々顔を覗かせてくる彼女の仲間達。
「おおっ、テレビで見るよりも可愛い子じゃん。何処で捕まえたんだよ」
「ルツ!初対面の女の子に失礼ですよ!それに彼女はとっくに彼のお嫁さんなんですから不埒な真似は許しませんからね!トージョにアールも肝に命じておいてください!」
「姉御、俺まだ何も話しかけてすらいないのに酷くね?」
「そうそう、人妻なんだから弁えてますって」
「にしても前にも増して厳めしいツラしてんなあミシェル君。どうにかならんのかね?」
「・・・・・・努力はしているんですが」
「初めましてだねシャルロットさん。私はマオ、こちらの彼はワイリで、この部隊一大きいのがウゴという名前だ。よろしく頼むよ」
「よろしく!」
「よろしく」
「あ、はい、シャルロット・デュノアっていいます。よろしくお願いしますね」
なし崩し的に皆で食事を取る事になりました。
ココは所謂武器商人。デュノア社のような生産側ではなく世界中を回って『商品』を売り歩くタイプで、ヨナ達はそんな彼女の護衛。
なんでも何年か前に仕事関係の催しにて父親と共に出席していたミシェルと知り合い、彼からの頼みでココの護衛の皆さんがミシェルに銃の扱い方などをトレーニングしたそうな。
今回この店にやって来たのは年に1~2度この先にある私有地に設けた訓練場を利用する度、この店で食事や物資の補充を行っていたかららしい。
「フフーフ、もしかすると彼女とも知らない間にこの店で会っていたかもしれないね」
人生、どんな時に道が交差しているか分からないものである。
<子連れデート?>
それは日本に戻って来てすぐの、とある土曜日。
買い物に行こう、と急にシャルロットに提案された。
「・・・・・・いきなりだな」
「だってラウラってば着る物とか全然持ってないんだよ?精々制服か軍服ぐらいしかなかったし、パジャマだって持ってないから寝る時は何時も裸だし」
「・・・・・・確かにそれは流石に、な」
クラリッサ辺りが隊長の持ち物の準備にかこつけてゴスロリドレスでも忍ばせていてもおかしくなさそうだったんだが。
これはいけない、という訳でラウラを連れて街へ向かう。その際ラウラが軍服で部屋から出てきたので慌てて制服に着換えさせたがそれはともかく。
本来3人がけのバスの座席もミシェルのあまりの巨体に3人並んで座るのは無理そうだったので最後尾の席へ。すると周辺の座席から乗客が居なくなってしまい、ミシェル達と他の乗客との間に数列分の空白地帯が形成される。
これって最早いじめのレベルじゃなかろうか。心に傷を負いシャルロットに慰められて癒やされるミシェル。そして周辺に乗客が近づかない事に頭を傾げるのはラウラ。
ちなみに今日のシャルロットは白と水色を基調とした薄手のワンピースで着飾っており、大きく盛り上がった胸元の布地と白く深い谷間は健全な男子学生には目の毒な事極まりないに違いない。
ミシェルはというと、カーゴパンツに黒のポロシャツと落ち着いた服装。顔の造形と体格のせいで今時の若者の格好が似合わないので私服では大体こんな感じだ。腰元には大型のウエストポーチに偽装したホルスターに拳銃と予備弾倉。
加えて夏休みでオフなんだし目立つ傷跡を隠そうと色付きのシューティンググラスをかけて目元を隠しているのだが――――ぶっちゃけ効果無し。いい所休暇で街に出てきた在日米軍の鬼軍曹にしか見えないし、周囲からもそう見られている事に気付いていないのは本人のみ。
そのくせ同行しているのが見た目麗しき金と銀の美少女なのだから、事情を知らない周りからしてみれば・・・・・・親子にしか見えない。ミシェルが父親でシャルロットとラウラが娘。母親はどうした。
ラウラが大きくカスタムされているとはいえIS学園の制服を着ているせいで、周囲は尚更混乱してしまっているのに3人は誰も気付かない。
ともかくバスに揺られて目的地の駅前に到着し、2m近い図体には小さ過ぎるバスの乗降口で頭をぶつけつつ駅前のデパートの中へ。
この中で最もファッションに詳しい年頃の少女代表であるシャルロットの意見を受け、上から順に服を見て回る事になった。
「・・・・・・人が多いな」
「他の学校も夏休みだしね。皆も遊びに来てるんだと思うよ」
「ううむ。ここはこれだけ人の出入りが激しいにもかかわらず警備の数が少な過ぎるのではないか?無差別テロでも起きようものなら混乱した民衆の流れを到底制御できないぞ」
「・・・・・・まあ日本だから仕方ない」
バッグが放置されていたって不審物ではなく置き引きもせず、落し物だと考えて届け出るのが日本人クオリティ。
「あのさ、はぐれないように手を繋いでいこっか」
この人ごみだ。ミシェルは全く問題ないだろうが、一旦ラウラが呑まれてしまえば目立つ頭をしていても背丈の問題で探すのは困難になるだろう。シャルロットも小柄な方だから下手すれば彼女もそうなる可能性がある。
ラウラがミシェルとシャルロットに挟まれる形で手を繋ぐ。鬼軍曹とグラビアアイドル顔負けの美少女に挟まれるより小柄な少女。正直目立つ。
「・・・・・・そういえば、こういう風に手を繋ぐのって何だか親子みたいだね」
「そうなのか?一般家庭の親子というのはこんな風に手を繋いだりするものなのか?」
ラウラが不思議そうに聞いた。
母親が亡くなるまではフランスの片田舎で2人暮らしだったので実際にシャルロットがそんな経験をした事は無い。ミシェルも家族で揃って買い物や遊園地に行くような家庭でもなかったから、こちらもそんな覚えは無いし、ラウラは試験管ベイビーでそもそも家族のふれあいそのものすら知らない。
様々な意味で目立つ容姿も相まって周りからはそう想像し難いかもしれないが・・・・・・シャルロットの言う通り、全く似てはいないが一応親子連れに見えなくは無い、のかもしれない。
そう考えてみた瞬間、無性に嬉しくなってシャルロットは思わず笑み崩れた。如何にも幸せいっぱいですといった感じにふにゃふにゃした笑顔である。
「んーふふー♪親子、ミシェルとラウラで親子かぁ。えへへー♪」
「よく分からないがやけに嬉しそうだなシャルロットは」
「・・・・・・だが悪い気はしないな・・・・・・ラウラが娘というのも決して悪くはない」
やっぱり良く分からないといった様子で首を捻っているラウラの小さな頭に手を置きながら、ミシェルも唇を薄く笑みの形に歪めるのだった。ラウラもそうされても満更そうではない。
まずは7階は『サード・サーフィス』という名の店を訪れた。店中お客はやはり女子ばかり。早くも帰りたくなってきたのはミシェル。
何故ならば、ミシェルの存在に気付くなり揃いも揃って顔を引き攣らせて、中にはミシェルを見るや否や小さく悲鳴を上げて逃げ出す少女も居るのだ。思いっきり失礼ではあるが今の風潮は女尊男卑、悪いのはミシェルの方と思われやすいのが何とも世知辛い。
だが中には彼と共に手を繋ぐラウラやシャルロットの方に強く興味を惹かれて見惚れている女性客も多く居た。同性を魅了するぐらい2人の少女は美しいのだ。
現に店長らしきパンツスーツ姿の女性が夢遊病みたいな顔と足取りで3人の元までやってきた。彼女の視線はシャルロットとラウラに固定されていてその後ろにミシェルに気付いているのかいないのか。
「ど、どっ、どんな服をお探しで?」
「・・・・・・とりあえず彼女に似合いそうな服を見繕って欲しい」
「こ、こちらの銀髪の方ですね!はい喜んで!」
注文通りラウラに似合いそうな服をあれこれ持ってくる店長に対し、シャルロットがあーだこーだと意見を挟む。
2人が降ってくる感想などを適当に受け流そうとしてシャルロットに封じ込められるラウラをぼんやり眺めつつ、ミシェルは所在なさげにぐるりと店内を見回した。店内の女性描くと目が合った途端勢い良く目を逸らされるのは傷つくのでご遠慮願います。
ハイテンションなシャルロットと店長、その2人から矢継ぎ早に意見を聞かれたり着せ替え人形にされていくラウラ。スマンが俺は役に立てそうもない。密かに合掌。
それにしてもやはり、若い女子―そういえば俺も実年齢は立派なオヤジか、とちょっとしみじみ―が主な客層の専門店なだけあって、様々なカジュアルな服が所狭しと並んでいる。落ち着いたデザインのものから派手派手な羽を広げた孔雀みたいな奇抜な服まで取り揃えられていた。
シャルロットはラウラに夢中になってるけど自分の服も買うつもりは無いんだろうか?あの服も結構似合いそうなんだが・・・・・・等と考えていると。
『それ』が目に留まった。
「ん?どうかしたのミシェル」
肩を叩かれたシャルロットと、ついでに彼女に釣られて振り向いた店の店長の前に差し出された物。
それは黒いドレスだった。もっと正確に言えば、フリルとか羽根とかいっぱい付いたゴスロリ服だった。黒のフリル付きカチューシャのおまけつき。
シャルロットと店長、しばし顔を見合わせ。
「「ナイス!」」b
満面の笑顔で同時に親指を立てた。仲良いなオイ。
何故ミシェルがこの服を選んだかといえば、単純に彼なりにラウラに似合うと思ったからだ。
ラウラといえば黒である。銀色の髪も特徴的だが、軍服も黒、ISも黒、眼帯も黒、ついでに言えば部隊名まで黒が入ってるとくればラウラのパーソナルカラーとくれば黒しかあるまい。
それに長い銀髪に黒のゴスロリドレスときたら先駆者が居るではないか。アニメで胸が特盛りに描写されてしまったせいで姉妹達の中でただ1人巨乳キャラとして世間に定着されてしまった某薔薇人形が。
微妙にキャラが被っている以上ラウラには似合わないなんて道理がある筈無い。
「ねえねえこれ着てみてよラウラ!絶対似合うから!きっとすっごく可愛いよ!」
「か、可愛い?本当にこれを着れば、かっ、可愛くなるのか?」
手渡されたラウラも満更ではなさそうなご様子。彼女の脳内ではフリフリのゴスロリ服を着飾った自分に「可愛いよラウラ」と愛でてくれる一夏の妄想が繰り広げられた。
数分後、そこには指示された通り黒のゴスロリドレスに身を包んだラウラの姿が。
黒と銀。黒の布地が銀そのものをより合わせたかのような美しい長髪を引き立たせ、ラウラそのものの造形が人形の様に整っているお陰でもはやその美しさは神秘的ですらある。なにせ他の女性客までゴスロリ姿のラウラを一目見ようと集まって来ている程だ。携帯のカメラで記録に収めている者も多数あり。
「か~~~~~わ~~~~~い~~~~~い~~~~~~!お、お持ち帰りぃ~~~~~~!」
「・・・・・・落ち着いてくれシャルロット。どっちにしたって帰る先は同じ学生寮だぞ」
「あーもー!ねえねえラウラ、本当にこのまま僕らの所の家に来ない?この可愛さは反則だよ!!」
ダメだこりゃ話全然聞いてねえ。このシャルロットの反応は流石のラウラも白磁の肌を赤く染めて、恥ずかしいやら嬉しいやらが入り混じった微妙な表情を浮かべてしまっている。
もはや一緒に写真を撮らせて欲しいだなんてお願いをしてくる女性客の群れにより、ミシェルは人だかりの外へと弾き出されてしまった。
彼はもう1回小さく溜息を吐き出したものの、慌てず騒がず傍に居た店員にクレジットカードを渡す。
「・・・・・・あの服、お幾らで」
お買い上げありがとうございます。
「うーん、かなり時間を取られちゃったけどまだ大丈夫そうだね。他の店にも行こっか」
「服はあの店でもう充分な量を買ったと思うのだが」
「あれだけじゃまだ足りないよー。それにラウラも女の子なんだからもっと大事なのも買わなきゃいけないでしょ」
「大事な物?」
「・・・・・・おい、この店は、まさか―――――」
「ほら、下着だって軍の官給品だけじゃなくてちゃんとした予備も多めに有った方が良いよ。僕もまたブラのサイズが小さくなってきた所だし、ねえミシェル、ミシェルはどんなデザインのブラが好き?」
――――みしぇる は にげだした!
しかし よめからは にげられない!
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やっつけ感漂っててさーせん。
やっぱりネットで逐一調べながらでないと色々間違ってそうで怖い・・・・・・早くパソコン元通りにならんだろうか。