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No.27133の一覧
[0] (新話追加)僕の恋人はお兄ちゃん?(インフィニット・ストラトス オリキャラ転生系 R15)[ゼミル](2012/02/22 21:06)
[1] プロローグ(上):彼女が彼と出会うまで[ゼミル](2011/06/11 09:53)
[2] プロローグ(下):彼がISを使える事に気づくまで[ゼミル](2011/06/11 09:57)
[3] 1-1:バカップルの来日と再会[ゼミル](2011/06/11 10:00)
[4] 1-2:決闘の経緯/刺激的過ぎる再会[ゼミル](2011/06/11 10:04)
[5] 1-3:決闘対策期間[ゼミル](2011/06/11 10:10)
[6] 1-4:サムライハート[ゼミル](2011/06/11 10:13)
[7] 1-5:伝染?[ゼミル](2011/06/11 10:18)
[8] 1-6:School days(一部改定)[ゼミル](2011/06/11 10:23)
[9] 1-7:再会TAKE2[ゼミル](2011/05/06 23:51)
[10] 1-8:Fire in the hole!/友情[ゼミル](2011/05/11 10:14)
[11] 1-9:約束の行方/恋は戦争?[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[12] 1-10:決闘者×乱入者×突入者[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[13] 1-11:決着/少女達の答え[ゼミル](2011/05/22 23:32)
[14] 2-1:ボーイズトーク/銀の嵐・序章[ゼミル](2011/05/25 11:54)
[15] 2-2:結構気にしてるんです/ランチタイム[ゼミル](2011/05/28 11:12)
[16] 2-3:銃声の記憶[ゼミル](2011/06/03 00:46)
[17] 2-4:ガールズトーク[ゼミル](2011/06/06 00:20)
[18] 2-5:Black vs White:1st Round[ゼミル](2011/06/11 00:06)
[19] 2-6:家庭の事情/タッグマッチに向けての一幕[ゼミル](2011/06/14 11:47)
[20] 2-7:八者四様[ゼミル](2011/06/19 11:57)
[21] 2-8:Black vs White:Bullet & Blade[ゼミル](2011/06/24 00:03)
[22] 2-9:Black vs White:Fake & Real/掌[ゼミル](2011/06/27 00:24)
[23] 3-1:とある朝の風景/一夏にまつわるエトセトラ[ゼミル](2011/08/09 00:38)
[24] 3-2:イントゥ・ザ・ブルー[ゼミル](2011/08/13 18:44)
[25] 3-3:疑わしきは/イントゥ・ザ・スカイ[ゼミル](2011/08/27 10:42)
[26] 3-4:許されざる者/理由[ゼミル](2011/09/01 23:59)
[27] 3-5:バースデイ[ゼミル](2011/09/10 00:25)
[28] 3-6:アナタノオト/覚悟完了[ゼミル](2011/09/18 18:36)
[31] 原作3巻終了時までの設定[ゼミル](2011/12/13 10:26)
[32] 4-1:Summer Time・序[ゼミル](2011/12/25 17:22)
[33] 4-2:Summer Time・ある夫婦+αの場合[ゼミル](2011/09/26 17:44)
[34] 4-3:Summer Time・トライアングラー+αの場合(???追加)[ゼミル](2011/12/25 17:24)
[35] 4-4:Summer Time・そして仲間達の場合[ゼミル](2011/12/25 17:25)
[36] 5-1:Friends[ゼミル](2011/10/23 23:28)
[37] 5-2:影の軍隊/青猫と白猫[ゼミル](2011/10/28 19:04)
[38] 5-3:代表候補生と男性IS操縦者に関する部活動についての一幕[ゼミル](2011/11/01 10:57)
[39] 5-4:リアルバウトハイスクール[ゼミル](2011/11/07 00:31)
[40] 5-5:アフタースクール/ブレイクスルー[ゼミル](2011/11/13 23:49)
[41] 5-6:ロングキス・グッドナイト[ゼミル](2011/11/19 00:31)
[42] 5-7:千客万来(上)[ゼミル](2011/11/26 11:26)
[43] 5-8:千客万来(下)[ゼミル](2011/12/04 11:39)
[44] 5-9:ダブルチーム(上)[ゼミル](2011/12/11 12:18)
[45] 5-10:ダブルチーム(中)[ゼミル](2011/12/17 00:01)
[46] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ[ゼミル](2011/12/24 15:42)
[47] 6-1:水面下の憂鬱[ゼミル](2012/02/22 21:05)
[48] 6-2:Holiday -School side-[ゼミル](2012/04/27 10:25)
[49] 6-3:Holiday -Public side-[ゼミル](2012/04/30 13:17)
[50] 6-4:ACE COMBAT(1)[ゼミル](2012/05/05 10:18)
[51] 6-5:ACE COMBAT(2)[ゼミル](2012/05/08 10:25)
[52] 番外編:Year’s End[ゼミル](2011/12/31 18:38)
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[27133] 3-6:アナタノオト/覚悟完了
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:3f7ac6f3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/18 18:36

さて、どうにかこうにか<銀の福音>を撃破した一同だったが、今更ながら待機命令を命ぜられていながら勝手に出撃したのはれっきとした命令違反である。一夏とミシェルに至っては約1時間前まで昏睡状態に陥っていた程の重傷人だ。

なので無事とはいかないものの<銀の福音>の操縦者を保護して旅館に戻ってきた一夏達に、待ち構えていた千冬達教師陣が雷を落としたかと思えばそうではなく。


「へえ、元はといえば先生達だって作戦海域にあっさり密漁船に侵入される程度の仕事しかしてなかったせいで最初の作戦に支障をきたしてそのせいでミシェルも一夏も殺されかけたのに自分達の責任は無視して僕達を処罰するんですかへえそうですか都合が良いですね他国の代表候補生を自分達のミスで死なせかけたのに無視ですかそうですか出るとこ出たって僕は十分に構わないんですよ(以下略」


と怒涛の勢いかつ抑揚の全く無い声でのシャルロット(ハイライト無し)による責任追及により有耶無耶と相成った。

なおミシェルのフォローによりようやくシャルロットの口撃が止んだ頃にはどん引きの箒達に涙目の山田先生、疲れた様子の千冬が居たが、前の2者はともかく千冬に対してはミシェルも同情はしない。無茶な作戦のGOサイン出したのは彼女自身なのだから自業自得だろうに。






で、今現在の状況。

旅館の部屋に戻った途端、一夏は後から付いてきていた箒と鈴に飛びつかれた。背中から押し倒された形になって、敷いたままだった布団の上に倒れ込む。

何すんだ、と口から飛び出しかけたが、俯きながら顔を押し付けてくる2人の身体の震えとISスーツ越しの熱い滴の感触に慌てて飲み込む。加えて、


「本当に・・・夢ではないのだな?」

「一夏・・・・・・良かったよぉ、一夏ぁ・・・・・・!」


絞り出すような涙声でそう言われては文句が言えるものか。散々ニブチンとか朴念仁扱いされるぐらい鈍い一夏でも、苦情を言わないだけの自制心はある。

それにだ。2人は自分を心配してくれて、心細いからこそこんな行動を取ってくれたんだから、その振る舞いが愛おしい以外の何だというのだ。


「そ、そうだ傷!傷はもう大丈夫なのか一夏!?」

「そう、そうよ。一夏が来てくれたのが嬉しくてすっかり忘れてたわ!怪我はどうしたの、何でそんなピンピンしてるのよ!」


そういうのはフラフラになったミシェルがシャルロットに心配されてた時点で聞くべきな気もしたがこれも口には出さないでおく。今度は彼女達の手で怪我させられかねない。

ちなみにそのミシェルは教師達に情け無用の死神の様に詰め寄っていたのが嘘みたいな如何にも心配そうな涙目を浮かべた妻に引きずられる様にして医務室に連行されていったのでこの場には居ない。他の6人の中でもダメージが大きかったラウラとセシリアも医務室行きだ。

一夏は寝そべったまま、肩をグルグル回したり首を左右に動かしたりしてみて特に異常が無い事をアピールしてみせる。


「それがさ、最初に目覚めた時は急いで箒達の所に行くのに夢中で全然気づいてなかったんだけど、怪我とか痛い所も全然なんだよ。ほら」


ISスーツの短い袖をめくってみたり、鳩尾辺りまでしかない上部分の裾をまくりあげてみたりする。記憶の限りでは包帯なりガーゼなりで処置が施されていた部分に負傷の痕跡は残っていなかった。


「だがミシェルは怪我や肉体へのダメージもそのままだったというのに、何故一夏だけ怪我が治っているというのだ?」

「それは俺にもよくわかんねーけど」


と言いつつ一夏の視線は<白式>の待機形態である右腕の重厚な腕輪に向く。

何となくだが、<白式>のお陰な気がした。夢らしきあの砂浜で出会った少女と白い騎士の姿が思い浮かぶ。

ISが操縦者の怪我を治療した、なんて機能は初めて聞くしそんな考え信じてくれる人も全く居なさそうだけど、本能的に一夏は確信出来た。二次形態移行を遂げてくれたお陰で皆を守る為に駆けつけて<銀の福音>を倒す事も出来たし、<白式>には感謝してもしきれない。


「とにかく一夏が無事で何よりよ。ミシェルも命には別状がなさそうだったし」

「それは俺も安心したよ。また昔みたいなのは・・・・・・嫌だからな」


ミシェルが昏睡状態に陥ったのはこれで2度目。恩人であり友人のそんな姿を誰が好き好んで見たがるか。

おもむろに一夏の腕の中の箒が身じろぎして身体の位置を調節した。箒の頭が一夏の胸元に来る形になる。一夏がプレゼントした新しいリボンで束ねられたポニーテールが一夏の鼻先で揺れ、甘い匂いが鼻孔をくすぐる。


「な、なあ一夏――――しばらく、こうさせてくれないか」

「お、おう」


一夏の背中に廻された箒の両腕の力が強まり、きつく箒の頭が一夏の胸元に押し付けられる形になる。

そのままうっすら汗をかいた一夏が放つオスの香りを胸一杯心ゆくまで堪能したい衝動を全理性で押さえ込みつつ、瞼を閉じて感覚を耳へと集中させていった。




――――聞こえる。一夏の心臓の鼓動。彼が生きている証。




聞き取れた瞬間、無意識の内に強張っていた箒の身体がようやく解放されて脱力する。

夢じゃない。本当に、夢じゃないんだ。


「聞こえる・・・・・・一夏の鼓動が」

「そりゃあ生きてますから」

「・・・・・・冗談にしては、あまり洒落になっていないぞ、馬鹿」

「そうだな、ゴメン」

「心配を掛けさせないでくれ・・・・・・私は、絶対に、お前を失いたくないんだ・・・・・・」

「・・・・・・俺だってそうだよ」


箒の顔が当たっている辺りにまた温もりと湿り気が生じるのを感じはしたが、それを無視して一夏もまた箒の身体を強く抱きしめる。密着のあまり、一夏もまた箒の心臓が脈打つ音を肌で感じる事が出来た。

太鼓を叩いてるみたいにドッキンドッキン大きくなっている。多分、自分も似たようなものだ。


「箒の心臓の音スゲーデカいな」

「う、うるさい!一夏だって似たようなものではないか!」

「しょうがないって。箒みたいに綺麗で可愛い子をここまでくっついてれば誰だって興奮するぞ?」

「――――私は“お前“が相手だからこんな事になってるんだ!」


・・・・・・ヤバい。今のは完全にツボに入った。

あーもう箒ってホントにこんなに可愛かったなんてこのヤロこのヤロこのヤロこのヤロ!」


「こ、こら!そんなに女の髪を引っ掻き廻すんじゃない!」

「仕方ないだろ、箒の反応が可愛過ぎるのが悪いっ!」


断言した。嘘偽り無い本音だった。魂の叫びでもある。

直球ド真ん中ストレートな恋人からの言葉にサムライ少女の顔色が専用機のカラーリング以上に濃い赤となる。

密着し過ぎて恋人の変化に気付けない一夏の手の位置が上へとずれ、箒の髪に触れた。潮風に結構な時間弄られていた上に戦闘の余波で傷んでいてもおかしくないにもかかわらず変わらぬ絹のような手触り。

なでなでなでなで。熱のこもった吐息が胸板に当たってくすぐったい。このままずっとこうしていようか―――――


「・・・・・・私の存在、忘れてない?」

「「にょわぁっ!!?」」


思いっきり一本釣りされたカツオかマグロ宜しく抱き合った姿勢で一夏も箒も飛び上がった。ほったらかしにされていた鈴が唇を尖らせてそっぽを向いていた。

鈴よりも体格の良い箒がほぼ無意識に一夏ともっと密着しようと積極的に身動ぎしたお陰で彼の元から弾き出される形になっていたのである。


「ふんだ、良いわよもう。私なんてお邪魔虫に決まってるわよね。そもそもこっちは割り込んできた側なんだし」

「い、いやゴメン。別に鈴の事を本気で忘れてたとかそうじゃなくてだな!」

「いーわよいーわよ。どうせ世間一般じゃ『2組だから居ない』って言われてるんだし2股でも気持ちが伝わってるだけまだマシ――――」


それいじょう いっては いけない!

ぐちぐち文句を言いながらもどんどん沈んでいく背中としんなりしていくツインテールの様子が、怒られて傷ついた猫そっくりだった。まあ元々猫っぽいキャラなんだから当たり前な気もするけど勿論ほったらかしには出来ない。


「というか箒、そろそろ代わりなさい!ずっと一夏の胸の中独り占めなんてズッコいわよ!」

「そっちが本音か!?だ、だがもうちょっとだけ待ってくれないか。もう少しだけ一夏の胸の音を聞いていたいんだ」

「・・・・・・私だってそうよ」


小さく呟かれただけだったがその声は2人には十分届いた。ほんの少し考える素振りを見せた箒がこんな提案をする。


「・・・・・・一夏の背中なら空いているぞ」


しばし沈黙。腕の中の恋人その1の提案に戸惑う一夏の顔とその後方に視線を行ったり来たりさせる恋人その2。今の一夏は柔軟体操のように股を開き足を伸ばした状態で座っており、箒は開いた股の間に収まっているという塩梅だ。

たっぷり10秒間は見比べた後、「じゃ、じゃあそうさせてもらうわ」と一夏の後ろに回ると、躊躇いがちながらもベッタリと一夏の背中に張り付いてみせた。

一夏の心臓が急速フル回転。幾ら大人の階段を3段飛ばしで上ってしまった関係とはいえ、改めて大胆なスキンシップをされて興奮したりしてしまう程度には一夏は青かった。

それに着ている物がお互い超薄手のISスーツなので、箒に比べればかなり慎ましくも女性的な曲線をハッキリ描くほどの起伏を持った鈴の膨らみ、のみならずその先端の感触までしっかり分かってしまったものだから一夏の興奮の度合いは倍プッシュである。

太鼓というよりはもはや巨大なドラレベルの凄まじさで脈打つ鼓動。もちろん筋肉越しにしっかりはっきり鈴の元にも伝わって来て。


「・・・・・・本当だ。一夏、本当に、生きてて、無事だったんだぁ・・・・・・!」


――――急速に理性を焼き尽くそうとしていた熱気が退いていく。

鈴の声がさっきみたいにまた、感極まった感じの鼻声になりかけていた。それだけ鈴も箒も、皆と一緒に心配してくれていたんだと再度理解できて、一夏は。


「――――心配かけてゴメンな、2人とも」


もう1度謝る。そしてここまで2人を心配させて、悲しませて、千冬姉達にも無断で<銀の福音>に戦いを挑ませるほど箒と鈴や他の皆を追い詰めさせた自分自身を不甲斐なく思う。

後ろから脇腹の辺りに廻されてきた鈴の手に、一夏は己の手を重ねた。更にその上から箒も2人の手にまとめて指を絡めてきて、3人ひっそりとくっつき合いながらそれぞれの体温と鼓動を、身体全体で感じ取り合った。

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。実際の所一夏に負けず劣らず派手に鳴らされていた箒と鈴の鼓動が、次第に落ち着きを取り戻す。

確実に血液を全身へ送り出している証明の音が2つ、一夏を挟んで静かに、そして次第にそのテンポが近づいていく。一夏の心臓もまた二重の鼓動に更に重ね合おうとばかりにゆっくりしたリズムになっていった。




トクン、トクン、トクン。3つの鼓動が重なる。3人が1つになる。




「(うわぁ、スゲェ落ち着く)」

「(何だか一夏と1つになったみたいだ・・・・・・)」

「(落ち着き過ぎてすっごく眠くなってきたわね・・・・・・)」


一塊になってまどろむ3人は思考能力も揃って急速低下させながら眠りへと引きずり込まれ――――――


「せめて別の格好に着替えてから寝たらどうだ?」


る前に耳朶を打った千冬の声にもう1回飛び起きた。


「ち、ちちちち千冬さん!?何時からそこに!」

「たった今だ。なあ織斑。女を連れ込むなと来た時にしっかりと通達しておいた筈だが」

「・・・・・・一応、俺も同室なんだが」


くんずほぐれつ3(ぴー)をされてるよりはよっぽどマシだろうがそれでも甘い空間を振り撒かれては流石のミシェルもあっさり踏み込めなかったようである。

ミシェルだけでなくシャルロットも包帯を巻かれた右腕を三角巾で吊るしていた。


「シャルロットも怪我したのか?ミシェルも大丈夫なのかよ」

「僕はちょっと変な体勢から派手な事をしたせいで腕を痛めただけだから心配しなくても大丈夫だよ」

「・・・・・・鎮痛剤は貰ったし、しばらくは無理な運動や戦闘訓練はしないで学校の保健室に通えと言われたが、もう平気だ」

「当たり前だ。そもそも鎮痛剤が投与されたからといって今からそうやって平気な顔で立ち歩いている方がおかしいんだ」

「・・・・・・丈夫なのが取り柄なので」

「まったく」


呆れ顔で首を振る千冬。まあ一夏達からしてみれば千冬の出席簿アタックの直撃を食らってもケロッとしているぐらいなんだから納得っちゃ納得だ。

セシリアとラウラの姿が見えないが、2人は不意を突かれてもろに攻撃を食らった為ダメージが大きく千冬命令でしばらく医務室で寝ているとの事。2人はミシェルほど頑丈じゃないだろうから仕方あるまい。

本人はピンピンしていたがやっぱり気になって(決して口にも顔には出さないようにしつつ)一夏の様子を見に来た姉だったが、まあやっぱり大丈夫そうなので安堵の念を周囲に気付かれまいと厳重に押さえ込みつつ、教員室へ戻ろうと踵を返す。

だがそれは、他ならぬ彼女の弟の声に呼び止められて断念する事になった。


「千冬姉―――――2人だけで、話したい事があるんだ」


振り向いて弟の顔を真っ直ぐ見つめる。極めて真面目な表情を浮かべる一夏。

――――だが何故だろう?何度か見た事がある筈なのに、微妙に千冬の記憶と食い違って見えるのは。


「・・・・・・良いだろう。付いて来い」















千冬が向かった先は別館の更衣室の裏手である。<銀の福音>暴走に関する緊急任務の関係で実習も中断したせいで他の生徒達は旅館の部屋にカンヅメにされており、別館周辺に人の気配は全く感じられない。

千冬は背広姿、一夏はISスーツと着の身着のままの格好で、真正面から向かい合う。


「それで、私に話とは何だ?」

「・・・・・・千冬姉はさ、一体何処まで知ってるんだ?」


―――我が弟は思ったよりも鋭かったらしい。しかしあっさりと馬鹿正直に答えてやるつもりも無い。


「さて、何の事だ?」

「分かってるんじゃないか、千冬姉なら」

「本当に聞きたいのならばもっとしっかりと簡潔に物事を纏めてから率直に聞いたらどうだ?」

「・・・・・・今回の事件は全て、束さんが仕組んだ事なんじゃないか?」


千冬は答えず表情も変わらない。一夏は続ける。


「考えてみたらさ、都合が良過ぎるんだよ。束さんが箒の専用機、それも<紅椿>なんてとんでもない高性能な新型機を持ってきた矢先に暴走事件が起きて、しかもその暴走機が『たまたま』合宿中の俺達の近くを通って、それを止める作戦に箒と<紅椿>が参加する――――専用機を手に入れたばかりの箒に箔をつけさせてやろうって魂胆が見え見えじゃないか」


尤もその推測は作戦前にミシェルに言われるまできっかけすら出てこなかった内容だ。それとも無意識の内に『いや、そんな訳ある筈無い』と考えまいとしていただけか。


「ふむ。確かに“そう考えれなくもない”な。だが仮にそうだとしても証拠が無ければ証明は出来ないぞ」

「そうだよな。単に俺の考え過ぎってだけかもしれないし証拠だって持ってないさ」


それでもこう思えて仕方ないのだ――――『束さんならやりかねない』、と。

ISコアの開発者は彼女であり、彼女しか作れない。自分の作った代物なのだから暴走させて自立機動させるのだってお手の物な筈だ。何せ“無人ISすら開発できる”のだから。

そしてきっと、千冬姉もその事を一夏以上に遥かに深いレベルで踏まえているのだろう。

何故なら彼女は篠ノ之束の親友であり、人類の中で篠ノ之束を除けば最も早くからISに触れてきた操縦者であり――――2000発以上のミサイルと戦争規模の軍隊を単騎で完全勝利してみせた『白騎士』である彼女ならば。

でも。

だからこそ言いたい事がある。


「・・・・・・でもさ、千冬姉」

「何だ」

「何も思わなかったのかよ?いきなり過ぎるだろ、触れたばかりの機体なのに、箒をいきなりあんな危険な任務に送り込むなんて、考えてみたら無茶苦茶にも程があるじゃないか」

「私は<銀の福音>との相性を考慮して決定したまでだ。あの機体の機動力についていける機体は専用機といえど数は限られている上、<紅椿>と<白式>以外についていけそうな機体であるオルコットの<ブルー・ティアーズ>もパッケージを換装するのに時間が必要で、その時間が無かった。だからお前と篠ノ之、そして援護役のデュノアを送り込むほか無かった。“それだけ”だ」

「ああ、それは分かるさ。でも結果俺とミシェルは危うく死にかける羽目になった」

「つまり危険を知っていながらお前達を作戦に駆りだして挙句生死の境を彷徨わせた事に怒っているのか?裏切られたと感じているのか?」


姉の言葉がとても白々しく聞こえてきて、知らず知らずの内に手が持ち上がって胸元を押さえていた。こんな感覚は初めてだ。


「違うよ千冬姉。俺も、ミシェルも、あれが実戦で危険な内容だっていうのはちゃんと理解してたさ」


なら自分は一体何が言いたいんだ?






「――――でも、もしかしたら、箒もああなっていたかもしれないんだ」






今、織斑一夏という男の胸の奥底で静かに煮え滾って思考を焦がそうとしているのはそれに対する怒り。自分の女が危険に晒された事への雄としての激情。

もしかしたら箒か、それとも鈴か、もしくはセシリアやラウラ、シャルロットの中の誰かが自分とミシェルみたいになっていたかもしれない。下手したら死んでいた。実際自分達が駆けつけた時、皆傷ついててあと少しで止めを刺されそうになってたじゃないか。

それだけじゃない。ミシェルの情報が正しければ、IS学園を襲った無人ISを送り込んできた犯人も束さんである可能性が高い。あの時だって鈴がかばってくれなきゃ箒はどうなっていたか。鈴だって危なかった。

どの出来事も一夏の力が及ばなかったからそんな結果になったからか。だが突き詰めれば無人ISを襲撃させるという手段を取らせた存在こそが元凶であり。

篠ノ之束が黒幕なのだとしたら。


「なあ、教えてくれよ千冬姉。束さんは一体何がしたいんだ。何でこんな事を、どうしてここまでする必要があったんだ。千冬姉なら、分かるんじゃないのか」


織斑一夏は篠ノ之束という人間を知っていた。その筈、だった。

篠ノ之箒の姉で、千冬姉の親友で、ISの開発者で、凄まじい天才で、とんでもなくエキセントリックで、俺と千冬姉と箒以外の全ての人を受け入れようとはしない、世界に対応するのではなく世界が自分に対応する方を選んで実行するような、ちょっとどころではない変わり者。の、筈。

今の一夏には束の事が理解できない。<銀の福音>の事だけでもどれだけの人間が被害を被り恐怖と混乱に陥ったのか、男でありながらISが動かせる特性さえなければただの高校生に過ぎなかったであろう一夏には想像がつかない。

それでも、天才的な頭脳やひらめきの持ち主ではない一夏でも理解できている事柄が存在する。




この事件のせいで恩人であり親友であるミシェルが自分共々死の淵を彷徨い、それによって箒も鈴もシャルロットもセシリアもラウラも嘆き悲しんで、報復を望んだ挙句彼女達もまた一夏達の二の舞になりかけた。

その現実が、一夏には我慢ならない。




あの人は自分の妹を晴れ舞台に上げたかったわけではない。彼女に与えた自分の作った新しい機体の派手なお披露目をしたかっただけだ。

一夏にはもはやそうとしか思えない。そんな極端に偏った考えが思い浮かぶような思考状態だから、今の一夏からしてみれば束が箒を本当に家族として大切に思っているのかも怪しくなってくる。

世界を引っ掻き廻すだけ引っ掻き廻してさっさと姿を消すような無責任な人間だ、束本人が自分のそんな思考を自覚しているのかも怪しいものだが。

そして自分の姉はその片棒を担いだ唯一の共犯者でもある。簡単に認めたくない現実が迫りつつあって、一夏の中で千冬の立ち位置がグラグラと揺らぐ。


「どうして自分の妹まで危険な事に巻き込めるんだ。あの人にとっては箒もその程度の存在なのかよ。どうして関係無い皆まであっさり巻き込んでこんな事が出来るんだよあの人は!千冬姉も何で見てるだけなんだ!」


己にとっての大切な存在の立ち位置に対する揺らぎが千冬の中でも起きている事に、激情に駆りたてられて吠え散らす事に夢中な一夏は気付けない。

織斑千冬にとっての織斑一夏は自分に残されたただ1人の血縁者であり、見どころはあるがまだまだ目の離せない鈍感な弟である。何時かは自分の傍から旅立つ事はあれど今までも、そしてこれからもその評価は変わらないだろうと―――――そう思っていたのに。

なら今自分の目の前に居る弟は、一体何なのか。


「(―――――お前も、そんな顔が出来るようになったんだな)」


千冬が抱いたのは、ずっと自分を追いかけ同時に支えてもくれた小生意気な小僧が、僅かな間にここまで激烈な人間としては大いに正しい生々しい激情を纏って自分へ叩きつけるようになった現実に対する感慨の念。

例えるなら、手塩にかけて育てた娘を他人の嫁に送り出す頑固親父にも似た感覚。

それが自分の親友への、ましてや千冬本人に対する疑念が原因というのがとてもとても悲しい事だけれど。

嬉しくも思う。しょうがない、と諦めも混じる。

自分が一夏に嫌われる心当たりもない事もない。そもそも最近まで自分の仕事も明かさず家の事を一夏1人にほったらかしにした挙句、止むにやまれぬ事情からとはいえ弟を置いてドイツに旅立ったりもしたのだから、ずっと良好な関係を維持できていた事の方が奇跡的とも言える。


「・・・・・・仮にだ。仮にもしお前の考えた推測が全て現実だったとしたら、お前はどうするつもりだ?」


俺は、と顔に手を当てながら一夏は俯く。

流石にこの事柄に関してはどれだけ悩み苦しんでも仕方あるまい。千冬はすぐに弟から答えが返ってくるとは考えていなかった。根本的にまだまだ甘い弟の事だ、自分の女の姉に対してあっさりと敵対するなりなんなり、そんな明確な立場を選べないだろうと。

千冬はこれ以上自分がこの場に居ても仕方ないだろうと、じっと考え込んでいる弟に背を向けて立ち去ろうとする。


「俺は―――――」


一夏の右手が自然と顔から己の胸元、心臓辺りに下がっていく。

――――――――未だ掌に残る少女達の確かな温もり。重なる鼓動のリズムと流された涙の熱さ。






ああ、なんだ。

答えなんか、とっくにその手の中にあるじゃないか。






「・・・・・・・・・俺は、守るって誓ったんだ」


千冬の足が止まる。振り返ると弟と目が合う。日本刀の如く研ぎ澄まされた決意の眼差し。


「自分がどれだけちっぽけで、幾ら頑張ったって限界があるのは俺だって痛いぐらい分かってる。それでも今の自分の世界だけはどんな事をしてでも守り通したい。俺にとって大切な人達だけは絶対に」


情を交わし合い、愛し愛される事の温もりを身を以って知った。

不誠実な関係であっても決して失いたくないと、強く思った。


「これ以上箒や鈴達には誰にも手出しさせるつもりもない。だからってその為に俺自身が犠牲になるつもりもないけどさ」


だって自分が傷ついたら少女達が泣いてしまうから。そんな事で皆を泣かせて心配させたくないから。

だから一夏はもう自分の身を犠牲にするつもりは更々無い。必ず五体満足で生き延びて皆の元へ帰るんだと、固く誓う。


「せめて身の回りの近くに居る皆を守れれば俺はもうそれで良い。俺は千冬姉や束さんほど凄くないんだから―――――だから、それ以外の他の誰かを切り捨てる日がいつかは来るのかもしれない」


要は優先順位の問題だ。今や一夏の中では博愛主義的な一面は鳴りを潜め、愛する女や信頼できる友人達の身を優先する考え方が強さを増している。

度々彼らの身が危険に晒され、一夏の手から零れ落ちそうになったからこその、ヒトとして当たり前の変化。


「俺も千冬姉や束さんの事をそんな風にしたくはないさ。2人の事だって俺にも大切なんだから」


それでも、限度がある。

もし、もし最悪の想像が現実になるのだとしたら、2人を止めるのは一夏でなければならない。こればかりは誰にも譲れない。


「・・・・・・だけど、もし、もしそっちの都合で他の皆にこれ以上危害が及ぶっていうんなら・・・・・・!」


―――――極限まで研ぎ澄まされた名刀の様にギラリと煌めく一夏の瞳。

目が口以上に一夏の決意を雄弁に千冬へと教えてくれる。

それで良いさ、と千冬は堪らず微笑を漏らした。


「ふっ、いつの間にか一端の男の顔が出来るようになったのだな、お前も」


嬉しそうでもあり、寂しそうでもあり。


「お前の選んだ答えだ。私はそれで良いさ。お前はお前の大切な物をどんな事があっても手放さない様、精々足掻き続けろ・・・・・・だが、これだけは覚えておいて欲しい」


声に込められた感情が色を変える。微かに浮かべた笑みと同じ親愛の念。




「私はずっと、お前の味方だよ――――――なにせ私は、お前の姉なのだからな」














「・・・・・・もー、ちーちゃんってば束さんの話を聞いてるのー?」

「ああすまない。少し考え事を、な」


そして今、千冬の目の前に篠ノ之束が居る。

本人の口から聞いた訳ではないが一夏の語った事はほぼ全て的を得ていると、千冬はそう確信している。全てを引き起こした彼女はきっと、一夏の決心をまったく知りはすまい。

もし一夏が、自分の行いが原因で敵として立ち塞がりかねないと知ったならば束はどんな反応を見せるのやら。


「ねえちーちゃん――――今の世界は楽しい?」

「そこそこにな」

「そうなんだ」

「・・・・・・だが束、1つだけ忠告しておくぞ」

「?」


心底不思議そうな顔で振り向いた親友に織斑千冬は警告する。






「お前にとっては今この世界がつまらなく映っているのだとしても、中には今の世界を十分気に入ってる人間も居るんだ―――――下手に引っ掻き廻そうとすると、足元を掬われるぞ?」












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家のPCがネットに繋がらなくなったのでネカフェから更新。実技試験で大ポカやらかして微妙に傷心状態ですorz
そして原作主人公、もう性格変わりすぎてね?シリアスぶらせすぎた気がします・・・

夏休みに入る前にオリジナルの展開をやる予定です。最近人気の妹キャラが参戦?
でもそろそろ設定集も追加すべきかと思う今日この頃。


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