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No.27133の一覧
[0] (新話追加)僕の恋人はお兄ちゃん?(インフィニット・ストラトス オリキャラ転生系 R15)[ゼミル](2012/02/22 21:06)
[1] プロローグ(上):彼女が彼と出会うまで[ゼミル](2011/06/11 09:53)
[2] プロローグ(下):彼がISを使える事に気づくまで[ゼミル](2011/06/11 09:57)
[3] 1-1:バカップルの来日と再会[ゼミル](2011/06/11 10:00)
[4] 1-2:決闘の経緯/刺激的過ぎる再会[ゼミル](2011/06/11 10:04)
[5] 1-3:決闘対策期間[ゼミル](2011/06/11 10:10)
[6] 1-4:サムライハート[ゼミル](2011/06/11 10:13)
[7] 1-5:伝染?[ゼミル](2011/06/11 10:18)
[8] 1-6:School days(一部改定)[ゼミル](2011/06/11 10:23)
[9] 1-7:再会TAKE2[ゼミル](2011/05/06 23:51)
[10] 1-8:Fire in the hole!/友情[ゼミル](2011/05/11 10:14)
[11] 1-9:約束の行方/恋は戦争?[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[12] 1-10:決闘者×乱入者×突入者[ゼミル](2011/05/22 15:49)
[13] 1-11:決着/少女達の答え[ゼミル](2011/05/22 23:32)
[14] 2-1:ボーイズトーク/銀の嵐・序章[ゼミル](2011/05/25 11:54)
[15] 2-2:結構気にしてるんです/ランチタイム[ゼミル](2011/05/28 11:12)
[16] 2-3:銃声の記憶[ゼミル](2011/06/03 00:46)
[17] 2-4:ガールズトーク[ゼミル](2011/06/06 00:20)
[18] 2-5:Black vs White:1st Round[ゼミル](2011/06/11 00:06)
[19] 2-6:家庭の事情/タッグマッチに向けての一幕[ゼミル](2011/06/14 11:47)
[20] 2-7:八者四様[ゼミル](2011/06/19 11:57)
[21] 2-8:Black vs White:Bullet & Blade[ゼミル](2011/06/24 00:03)
[22] 2-9:Black vs White:Fake & Real/掌[ゼミル](2011/06/27 00:24)
[23] 3-1:とある朝の風景/一夏にまつわるエトセトラ[ゼミル](2011/08/09 00:38)
[24] 3-2:イントゥ・ザ・ブルー[ゼミル](2011/08/13 18:44)
[25] 3-3:疑わしきは/イントゥ・ザ・スカイ[ゼミル](2011/08/27 10:42)
[26] 3-4:許されざる者/理由[ゼミル](2011/09/01 23:59)
[27] 3-5:バースデイ[ゼミル](2011/09/10 00:25)
[28] 3-6:アナタノオト/覚悟完了[ゼミル](2011/09/18 18:36)
[31] 原作3巻終了時までの設定[ゼミル](2011/12/13 10:26)
[32] 4-1:Summer Time・序[ゼミル](2011/12/25 17:22)
[33] 4-2:Summer Time・ある夫婦+αの場合[ゼミル](2011/09/26 17:44)
[34] 4-3:Summer Time・トライアングラー+αの場合(???追加)[ゼミル](2011/12/25 17:24)
[35] 4-4:Summer Time・そして仲間達の場合[ゼミル](2011/12/25 17:25)
[36] 5-1:Friends[ゼミル](2011/10/23 23:28)
[37] 5-2:影の軍隊/青猫と白猫[ゼミル](2011/10/28 19:04)
[38] 5-3:代表候補生と男性IS操縦者に関する部活動についての一幕[ゼミル](2011/11/01 10:57)
[39] 5-4:リアルバウトハイスクール[ゼミル](2011/11/07 00:31)
[40] 5-5:アフタースクール/ブレイクスルー[ゼミル](2011/11/13 23:49)
[41] 5-6:ロングキス・グッドナイト[ゼミル](2011/11/19 00:31)
[42] 5-7:千客万来(上)[ゼミル](2011/11/26 11:26)
[43] 5-8:千客万来(下)[ゼミル](2011/12/04 11:39)
[44] 5-9:ダブルチーム(上)[ゼミル](2011/12/11 12:18)
[45] 5-10:ダブルチーム(中)[ゼミル](2011/12/17 00:01)
[46] 5-11:ダブルチーム(下)/ネバー・セイ・ダイ[ゼミル](2011/12/24 15:42)
[47] 6-1:水面下の憂鬱[ゼミル](2012/02/22 21:05)
[48] 6-2:Holiday -School side-[ゼミル](2012/04/27 10:25)
[49] 6-3:Holiday -Public side-[ゼミル](2012/04/30 13:17)
[50] 6-4:ACE COMBAT(1)[ゼミル](2012/05/05 10:18)
[51] 6-5:ACE COMBAT(2)[ゼミル](2012/05/08 10:25)
[52] 番外編:Year’s End[ゼミル](2011/12/31 18:38)
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[27133] 3-5:バースデイ
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:caf7395d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/10 00:25
それはあまりにも唐突で、あまりにも不可解で、あまりにも理不尽な展開。




連携と連続攻撃で<銀の福音>を撃破した――――と思った矢先に起きたのは、<銀の福音>の第2形態移行。それはつまり、暴走機が新たに強大な力を手に入れたという証。

破壊された筈の特殊兵装、<シルバー・ベル>の断面から巨大な光翼が姿を現す。明らかに本来の燃費など度外視された高出力のエネルギーで構築されたその翼そのものが強力な兵器である。

それを証明するかの如く、異変の意味を理解し再度戦闘態勢を取ろうとした次の瞬間にはラウラが撃破され。

友人が撃破され、それ以前に夫を意識不明の重体に追いやられていた時点でこれ以上無く頭に血が上っていた・・・・・・のを通り越して絶対零度の殺意を漲らせていたシャルロットは、一片も躊躇わず2丁ショットガンを構えて迎撃に移る。

ショットガン、それも日頃使っていたセミオートタイプではなく、この時に備えてミシェルが愛用している物と同じフルオートショットガン<ドラゴンブレス>を2丁分、マガジンに残っていた分を全弾纏めて零距離射撃。

一瞬で叩き込まれた数百発の弾丸。瞬時にシールドエネルギーを食らいつくすであろう散弾の雨はしかし、<銀の福音>を繭の如く包み込んだ光の翼に阻まれ、1発たりとも届かない。

いや、それだけでは収まらなかった。光翼がまた広がったかと思うと、そこからお返しとばかりに光弾の雨が放たれたのだ。


「La―――――!!」

「がっ、ぎっ・・・・・・!」


自慢の盾も近過ぎて間に合わない。全身を叩く爆発と衝撃。持ったまま破壊された両手のショットガンが弾切れのお陰で暴発しなかっただけまだマシ、とは全く言えまい。


「シャルロット!」


全身を煙に包まれながら空中機動の制御も出来ず、重力に退かれて落下していくシャルロットの耳に届いた声の主は誰だったのか。

最早声を判別する努力すらも放棄しながらも、シャルロットの視線は<銀の福音>に固定されたままだった。世界よりも大事な愛する者を自分から奪おうとした存在に。

掠れゆくのは視界か意識か両方か。


「(ミシェル―――――)」


口には出さず、心の中だけで愛しい者の名を呟く。

刹那、意識共々消えかかっていたシャルロットの瞳が光を取り戻す。<銀の福音>を見つけ、ひたすら追い立て続ける最中ずっと宿していた、凶暴にギラつく獣じみた眼光を。


「(許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!!)」


意識を繋ぎとめるのは復讐心という名の執念。身体中を軋むような苦痛が包んでいるが、それすらも糧にしてシャルロットは足掻くのを止めない。

それこそ手負いの獣そっくりの雄叫びを腹の底から絞り出しながら、右手を振り上げ<銀の福音>に向ける。

<銀の福音>の方に反応は見受けられない。シールドエネルギーをほぼ失い、墜落していくだけのシャルロットにもう興味は無いという事か。その視線は既に箒達へ移っている。


「油断大敵、だよ」


痛みでも隠し切れない憎悪と不敵さを孕んだ呟きと共に“右腕のシールド”の装甲がパージ。

姿を現したのは100口径電磁加速型徹甲爆裂射突型ブレード<ウルティマラティオ>。

幾らシャルロットの機体が文字通りのカスタム機とはいえ原形である<ラファール・リヴァイヴ>とのパーツの互換性は勿論存在し、それは世代差から一部のパーツに限定されても第3世代機でもある<レクイエム>でも言える事。故に<リヴァイヴ・カスタムⅡ>もまたこの兵装を装備できる。そもそもこれはミシェルの機体から借りてきた分だ。




そして、この兵装には裏技がある。




本来パイルバンカーという兵器は殴りつけると同時、大型の鉄杭を一気に加速・射出させて装甲を打ち抜くと接近戦用兵装である。その原理と特性、ISでも用いられている剣や槍といった武具よりも短い射程からむしろ格闘戦用兵装、と呼称した方が近いかもしれない。

複数回使用出来る様鉄杭はピストンのように前後はするがそのまま飛び出したりはしない仕組みで、その鉄杭を射出する為の動力源はもっぱら炸薬がポピュラーだ。射程が極端に短い大砲、とも言える。

接近戦の切り札――――だが、<ウルティマラティオ>はそんなイメージを逆手に取った、ある機能が加えられていた。

敵機に叩き込む使い捨ての鉄杭をレールガンの要領で放つこの兵装だからこその真の切り札。それをシャルロットは切る。決して許せない存在を討つ為に。

砲身内エネルギーチャージ完了。安全装置解除。信管作動確認――――ロック機構解放。

激発。

電磁力により一瞬で音速の数倍まで加速された鉄杭がソニックブームすら引き起こして射出口から飛び出す。その射程はせいぜい数十cmにも過ぎず、シャルロットの身体はとっくに何mも下に落下しているのだからどんなに手を伸ばしたって届く訳が無い。




ただし。

それは鉄杭全体が飛んでいかない様にする為の強制停止機構が働いていれば、の話だが。




全長数十cmに及ぶ鉄杭は文字通り砲弾と化した。前半分のみならず後ろ半分も一緒に射出口から放たれ、標的に触れた瞬間信管が作動し起爆。一点集中された衝撃波を解き放つ。

やった事は片腕1本で大砲をぶっ放したのと同然故、その反動に右腕が大きく跳ね上がるどころか右半身に急激な衝撃が加わったせいで錐もみしながら海面へ向け落下していく。

それでも、身体ごと視界が回転しようと視線は標的を捉え続ける。

手応えあり。<銀の福音>は爆薬の煙に包まれてどれだけの被害を与えられたのは確認できないが、直撃したのは間違いない。出鱈目な構えで無理矢理射出したものだから<灰色の鱗殻>以上の反動を受けとめた右腕が言う事を聞かなくなっているが・・・・・・敵の首1つと引き換えと考えれば安いものだ。

口元を捻くれた満足感に歪めながら、姿勢を回復させる気配もなく落下していくシャルロット。海面まで100mを切った辺りで落下先に滑り込んだ鈴の<甲龍>がようやくその身体を受け止める。鈴もまたあちこちの装甲を失いかなりのダメージを負っていた。


「今の何よあれ、あんな機能付いてるなんて全然聞いてないんだけど」

「言ってない・・・・・・からね」


鈴の腕の中でようやく、シャルロットは苦痛の呻きを吐き出した。右腕が特に酷く痛み以外にも骨の髄まで浸透した痺れのせいで、指先を動かすのも一苦労な状態だ。

煙が潮風に流されていく。<銀の福音>の姿が露わになる。

光翼の片側半分が消し飛び、頭部装甲も失った側の根元周辺に細かな罅が蜘蛛の巣状に走っている―――――“だがそれだけだった“。




次の瞬間。4人が見ている前で再生される光翼。

形を失おうともエネルギーが残っている限り何度でも生やし直せるのは容易い事なのだろう。

生き残りの少女達はその一部始終に目を見開き、そして歯を食いしばる。得にシャルロットに至っては彼女を支える鈴の耳に奥歯の軋む音が届く程強く、強く歯を噛み締め、顔を強張らせた

まだだ、まだ終わらない。終わってたまるか。コイツに、報いを受けさせるまでは。

<銀の福音>が動く。次の撃破対象に選ばれたのはセシリア。複数のスラスターを同時に用いた瞬時加速で瞬きする間に距離を詰められ、取り回しの悪いレーザーライフルでは対応し切れず光翼で袋叩きにされてしまった。

残るはシャルロットと鈴と箒。体力・エネルギー共に尤も余裕があるのは箒と<紅椿>だが、経験の差と燃費の悪さから長くは持つまい。

ゆっくりと顔面部分を覆うバイザーがシャルロットと鈴を捉える――――否応なく、次の標的が誰なのか教えられる。急加速、そして光翼を広げる<銀の福音>。


「鈴、僕が盾になるから下がって!」

「馬鹿言わないで、それだけの損傷にあんな出鱈目な攻撃受けたらもう持たないわよ!置いてける訳無いでしょうが!」


口論している間にチャージを終え、攻撃が放たれる。光弾が7に空が3という視界を埋め尽くす凶弾が、仲間を支え支えられているせいで動きの鈍い2人へとまっしぐらに降り注いだ。

そこへ割り込む影。箒だ。<紅椿>の展開装甲へと半ば無意識に残りのエネルギーを注ぎ込み弾雨を受け止めた。

今まで受けてきた光弾が握り拳大の投石ならこれは頭部大の岩の濁流だ。着弾する度連続する爆発。装甲とエネルギーシールド越しですら防ぎきれない衝撃が箒の全身を苛む。防御機構が防ぎきれなかった熱波が箒の髪を纏めるリボンを焦がし、艶やかな黒髪がバサリと広がった事にも箒は気付けない。

火砕流にでも呑まれたかのように叩きつけられる暴虐の苦痛―――――――一夏やミシェルも同じ体験をしたのだろうか?

遂に<紅椿>のエネルギーも果てた。丁度エネルギー切れと同時に攻撃の手が止んだのは幸運ではあったが、最早身を守る盾が存在しないも同然であるだけにエネルギー弾の餌食になる瞬間がほんの僅か先延ばしになったに過ぎない。




それでも。

少女達は間もなく自分達の命を刈りうるであろう白銀の死神を睨み続ける。

最早この先の運命が死なのだと確定していても、コイツだけには―例え相手が狂気や殺意を持ち合せた人間などではなく、狂ったプログラム通りに動く機械でしかないと理解していても―決して情けない姿を見せてなんかやるものかと、そう己を奮い立たせて。

だって、きっと、間違い無く。自分達が愛した男達も絶対に死神の鎌を目の前にしたって絶対に泣き喚いたりなんて醜態を晒す筈、しないだろうから。




だけど、やっぱり。彼女達は死にたくはなかったし、表面は取り繕ったって死ぬのがどうしても怖くて怖くて仕方なくて。

一夏、一夏ぁ、ミシェル、と。気がつくと名前を呼んでいた。

ほぼ無意識に漏らしたその声は蚊が鳴くよりも小さい音量で、それに応えたのは大きく広げられた光翼から3人まとめて押し潰す勢いで解き放たれたエネルギー弾の濁流―――――――
















「・・・・・・呼んだか?」


そして、名を呼ばれた少年の片割れ。















自分達目がけて放たれた死の砲撃から反射的に目を叛け、瞼をきつく閉じてしまっていた少女達は、その声を聞いてゆっくりと目を開く。

直前まで瞼の上からでも焼きつきそうなほど眩かった光の濁流は何処へと消え去っていて、代わりに視線の先に現れたのは黒と赤に彩られた全身装甲の巨体。その後ろで背負う様にして浮遊しているのは2枚1組の大の大人も簡単に隠れられるぐらい巨大な盾。

少女達はこの声を知っている。この機体を知っている。この男を知っている!


「みしぇる?」

「ああ、俺だ」


シャルロットの名を呼ぶ声に男は・・・・・・ミシェル・デュノアは簡潔に、しかしこれは現実だとしっかり理性が理解できるだけの音量で返事をした。

思惑通り愛しの夫の声が脳に沁み渡り、目の前に居る彼の機体の存在が現実そのものだと数秒かけて理解出来たシャルロットは、一気に顔をクシャクシャに歪め早くも瞳から雫を溢れさせながらからミシェルに抱きつこうとする。

しかしそれを許さない存在が1機。幾度目か分からぬ光翼の羽ばたきと共に砲火を放とうとする<銀の福音>。


「ミシェル、後ろ!」

「・・・・・・大丈夫だ。問題無い」


特大の死亡フラグっぽい言い方ではあったがしかし、ミシェルの言葉は正しかった。

砲撃が放たれるよりも速く、迅く。宵闇へと沈みかけた空を駆け抜けた白の閃光が<銀の福音>の片翼を斬り飛ばしたのだから。

集束されていたエネルギーが暴発し<銀の福音>自体が大きく弾き飛ばされていく。その間にミシェルの隣に降り立つ白い機体。

今度は箒と鈴が涙を浮かべる番だ。嬉しいやら驚いたやらでとんでもなく奇妙な泣き笑いの顔になっている事が分かっていても整える事が出来ない。

これは決して、今わの際の幻想なんかじゃない―――――こんな頼もしい背中が幻であってたまるものか。


「ギリギリだったけど、間に合って良かった」

「一夏っ・・・・・・!」

「いぢがぁ・・・・・・!」

「皆に心配かけてゴメンとか、こんな見ちゃしやがってとか、色々言いたい事はあるけど・・・・・・」

「・・・・・・まずは、だ」


箒と鈴に向けていた愛おしげな眼差しを掻き消し、煮えたぎる怒りと殺気を露わに一夏は右手に握る<雪片弐型>、その切っ先を自分達を睥睨している<銀の福音>へと突きつける。

ミシェルも一夏と背中合わせになりながら、左腕の<グリムリーパー>の連装砲身を<雪片弐型>と平行になる様に持ち上げた。


「「よお、クソッタレ」」


とりあえずまずは、今やムカついてムカついてしょうがなさすぎるあのコンチクショウにこれだけは言ってやりたい。






「「――――――人の女に、手ぇ出すな!!」」






それは逆襲の宣戦布告。

それを耳にした者達の反応は2種類に分かれた。彼らのすぐ後ろに固まった少女達は一斉にとっくに沈んだ夕陽以上に顔を赤くし、その反対側5人を見下ろす操り手に手から離れて暴れ狂う機械人形は。


「La――――――!!」


超高音の咆哮を上げた。身体中から生えた光翼から数えるのも馬鹿らしくなる量のエネルギー弾を生み出し掃射。


「盾役は俺に任せろ・・・・・・遠慮無く首を刈ってこい!!」

「皆を頼んだぜミシェル!」


一夏は垂直に高度を上げ、濁流を通り越してもはや津波同然の掃射を飛び越す形で<銀の福音>へと急接近する。

大して背後にシャルロット達を背負ったミシェルはその場から1歩も動かない。3人ともほぼエネルギー切れでまともに動けるかも怪しい以上、これだけの規模の弾幕を回避するなどまず不可能。それが分かっている少女達はこれだけの光弾をミシェル1人で防げるとは思えなくて身を強張らせてしまう。

それも無理は無い。が、彼女達は知らなかった・・・・・・防ぐ術が存在すると言う事を。そしてまだ気付いてもいなかった。つい先程もエネルギー弾の奔流をミシェルが相殺してみせていた事を。


「・・・・・・レクイエム」


ミシェルはそう呟いただけ。両肩近くを漂っていたアンロックユニットの2枚の大型の盾がミシェルの前へと移動。光の津波に立ち塞がる。その盾の表面部分には血の様に赤い紅玉が中心に追加されていて、押し寄せる壁の光を受けてギラリと妖しい輝きを返す。

津波と2枚の盾が正面から激突した。その規模からしてみれば、幾ら2mを超す盾が2枚並べどあまりにもちっぽけな筈だ。

にもかかわらず、横並びの2枚の盾は光の津波と拮抗している――――いや、言葉に語弊がある。何かがおかしい。ただ単にぶつかり合っているのではないらしい。


「エネルギー攻撃を、吸収してる?」


よくよく見てみれば、盾の表面には紅色の薄い光の膜らしきものが。本来<ラファール・レクイエム>の最もたる特徴であるAICを備えた攻防一体型複合防壁ビット<シールド・オブ・アイギス>は物理攻撃をほぼ無効化する代わりにエネルギー兵器に対しては防御できないという弱点を持っていた。

そう、『持っていた』。過去形だ。

これが第2形態移行を果たした<ラファール・レクイエム・ガーディアン>が手にした新たな力、<イージスの鏡>。物理攻撃のみならずエネルギー兵器に対する圧倒的な守りの力。

そして攻撃を防ぎきってからが<イージスの鏡>の本領発揮である。


「・・・・・・お返しだ」


盾の表面の紅色の膜。その厚みが増し、かと思えば宝玉部分へ一点に集中し紅く光る光球と化し・・・・・・解放される。

それは原子爆弾の起爆にも似ていた。一気に膨張した光球を中心とした高エネルギーの衝撃波が、紅い津波となって空中に広がった。光翼を機体の全身を包み<銀の福音>を守るが、咄嗟とはいえ万全の態勢で受け止めたにもかかわらず、遥か後方へと弾き飛ばされてしまう。

これが『鏡』たる所以。受け止めたエネルギーを吸収し、己の糧としてからエネルギー波として放出する。その規模と量は取り込んだエネルギー量が多ければ多い程、より強力となる。

そして<銀の福音>には備えられていない。つまり――――ミシェルが、<イージスの鏡>がこの場に存在する限り、もう後ろの少女達にはもう攻撃は届かない。

分析不能。計測不能。<銀の福音>のコアが理解できない未知の存在を前にして最大級の警鐘をかき鳴らす。


「よそ見してんじゃねぇ!!」


接近警報。<シルバー・ベル>の攻撃を飛び越えた一夏が斜め上上空から強襲。ザザン!と今度は左右の両翼が同時に半ばから両断される。

一夏の<白式>もまた第2形態移行を果たしていた。<白式・雪羅>。アンロックユニットの1対の盾以外に大した変化をしていない<レクイエム・ガーディアン>とは違って大型4機のウイングスラスターが増設されただけでなく左腕にも新兵器の多用途武装腕<雪羅>が加えられて大きく変化を遂げた<白式>の新たな姿。


「La――――――!!!」


戸惑いパニックになったみたいに、他の部分の光翼を使って<銀の福音>は大きく一夏と距離を取りながら再び破損した本来の<シルバー・ベル>から光翼を生やしつつ、エネルギー弾で反撃してきた。

<雪羅>の形態をエネルギークローからシールドモードに切り替え。一瞬で掻き消される光弾。<白式>もまたエネルギー兵器を無効化する新たな防御機能を手にしていた。

その代わりこの防御機能も<零落白夜>の様に<白式>本体のエネルギーを激しく消耗させるので多用は出来ない。ミシェルを機体ごと引っ張って来て全速力でここまでやってきたばかりなので悠著に戦う余裕もない。




次だ―――――次の一太刀で、決める。




一夏の気配が変化した。鋭く、更に鋭く、極限まで研ぎ澄まされた日本刀の如く、冷たく、鋭く、美しく。それにつれ一夏の意識を読み取った様に<雪片弐型>へとエネルギーが流れ込む。

<銀の福音>のコアが自身に発していた警告がより一層激しさを増した。あれは脅威だ、危険過ぎる。相対するな、下手に立ち向かうな、現空域からの離脱を最優先に。逃げろ逃げろ逃げろにげろにげろにげろにげろニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ!!!

大きく羽ばたき、つい先程ミシェル達に放たれたのと同じ規模のエネルギーの大波が一夏へと放たれる。その反動を逆に用い後ろ向きに全速力という運動性能を生かした特徴的な飛び方で離脱を試みる<銀の福音>。

誰が逃がしてやるか。


「お前だけは・・・・・・斬る!!」


<雪片弐型>を握り締め直した瞬間―――――音が消えた。

風の音も、後ろから聞こえていた箒と鈴の自分を呼ぶ声も、一斉に聞こえなくなった。ただ自分の中で刻まれ続ける心臓の鼓動だけはすぐ耳元で鳴っていたが、1回心臓が収縮するまでの時間も鼓動の間隔も、えらく長く引き伸ばされて聞こえてくる。

どこまでも間延びしていたのは音の感覚だけではなかった。凄まじい勢いで押し寄せようとしていた光の津波も、飛び去ろうとする<銀の福音>の動きもまた極端に遅くなっていた。何より一夏自身の動きも、だ。とんでもなく比重の重い水の中でもがいているような感覚。

そのくせ一夏の思考そのものは何時も通りの速さで回転しているのがまた奇妙な話で・・・・・・違う。これは、思考速度そのものが加速している?

よくよく比べてみれば、一夏の身体の動く速度とそれ以外、世界そのものが動く速度もそれぞれ違う。一夏の思考速度が1倍速なら身体の動きはその半分。更にそれ以外が動くスピードは何分の1も遅い。

密度の余り巨大な光波にしか見えなくなっていた<シルバー・ベル>の攻撃も、今の一夏には1発1発の光弾の輪郭やそれから放散されているエネルギーの残滓の1粒すら識別できた。

濡れた薄い和紙の壁を突き破ったような感覚。ぶれず、迷わず、一夏は<銀の福音>への最短距離を選び、突き進む。感覚が引き延ばされているせいで<銀の福音>までの距離が中々縮まらないように思えてじれったかった。

行く手を阻む光弾の壁。邪魔だ。そこをどけ。

<零落白夜>を発動させた<雪片弐型>を振るう。

1発だけでも強力なエネルギー弾が<零落白夜>の白い刃に触れた途端に掻き消えた。手応えは感じなくとも刃の軌道に存在するエネルギー弾が次々と消えていく。

もう1回振るう。横薙ぎから今度は振り下ろし。更に光の壁に空白が生じる。更に2回、3回と行うとぽっかりと一夏が通り抜けれるだけの空間が出来上がった。そこへと―一夏視点では―やけにのたのたした動きで飛び込む。

闇へと転じかけた空へ消え去ろうとする<銀の福音>の姿をもう1度捉え直す。もう逃がさない。今までの動きが信じられない位、銀の福音の飛ぶスピードは一夏からしてみれば遅かった。

あっという間に追いつき、手にした刀を最上段に構える。その瞬間、世界が本来の時の流れを取り戻す。音が戻る。強烈な風の音が耳へと飛び込んでくる。

一夏が彼の得物の殺傷領域まで近づいた段になって、ようやく<銀の福音>は目前の一夏の存在に気付いた様子であった。もう光翼による防御は間に合わないし、そもそも<零落白夜>には通用しない。

刃が振り下ろされる寸前、バイザーを過ぎったコードの羅列は暴走プログラムがあげた最後の断末魔か。


「っっっっっらあぁぁっ!!!」


裂帛の唐竹割り。

結果は、わざわざ言うまでもない。














「・・・・・・・・・・・・えーっと、今の一夏の動き、見えた?」

「い、いや全然・・・・・・」

「消えたと思ったら<シルバー・ベル>の攻撃を突き破って<銀の福音>の目の前に居てて・・・・・・」


半ば傍観者と化していた箒達からしてみれば先程の一夏の動きは瞬間移動したようにしか見えなかった。実際、あの一夏と<白式>の機動はハイパーセンサーで強化されていた筈の彼女達の認識速度を超えていたのである。

それはともかくとして、一刀両断された<銀の福音>の中から遥か海面へと放り出させそうになった操縦者らしき女性を抱えて一夏が箒達の元へ戻ってくる。

不意にミシェルの身体がぐらりと傾いた。慌てて支えに入るシャルロット。頭部装甲の中身が露わになるとデフォルト状態の時点で仏頂面な顔が青い。

というか、そもそも一夏もミシェルも本来は意識不明になるほどの重体ではなかったか?


「ミシェル!?だだだ大丈夫!?」

「・・・・・・すまん、少しふらついただけだ。身体中痛み過ぎて気絶も出来なさそうだから安心してくれ・・・・・・」

「それ絶対大丈夫じゃないよ!誰か今すぐ衛生兵呼んでー!」


パニックなシャルロットの様子にさっさとセシリアとラウラを回収して旅館に戻るべきなのは確かだな、とは思いつつ。


「一夏・・・・・・本当に一夏なのだな・・・・・・?」

「ああ俺だよ。幽霊じゃないぜ?ほらこうやって足だってちゃんとあるだろ」

「馬鹿っ!」


鈴に飛びつかれた。箒に泣かれた。<銀の福音>の操縦者を抱き抱えてるせいで上手く鈴を受け止めきれなくて女性を落としそうになった。

と、拾いに行くまでもなくダメージから回復したらしいセシリアとラウラが飛んでくるのが見えた。潮風に弄られ大きくたなびく箒の黒髪が目に入る。


「悪い鈴、ちょっとこの人の事頼む」

「あ、うん」


一夏が差し出した手に握られていたのは、


「リボン・・・・・・?」

「確か今日が、誕生日だろ箒。丁度良い、ってのもアレだけどさ――――――」




ハッピーバースデイ、箒。












今度の涙は、決して失意と怒りの涙じゃない。









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はい、という訳でオリキャラ機も進化しちゃいました。
アンケート以前からセカンドシフトの進化方向は考えてあったんですが、皆さまの御意見の結果防御方面に強化と相成りました。更にバ火力化とか期待してた方サーセン。
ちなみにアンケートで弾丸が選ばれてたら体当たり上等な機動力の強化になる予定でした。
ついでに白式も何気に原作以上に強化されていたり。そして更に人間離れしていく原作主人公。どうしてこうなった。


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