旅館の1室に、2人の男と3人の少女が集まっている。
2人の男は一夏とミシェル。敷かれた布団に並んで横たわり、全身に包帯を巻かれた上顔には酸素マスク、医療機器にに繋がれた彼らの意識は数時間前から戻らない。
3人の少女は、箒と鈴とシャルロット。学生服姿の少女達は眠る2人のすぐ傍らで、彼らが運び込まれた当初からずっとここに居る。
少女達の表情は一様に暗く、その中でも特に箒の憔悴した顔つきは死を目前にした病人を連想させるほど生気を感じさせない。
胸中で膨れ上がった不安感に駆られ、千冬からの通信も無視して戦闘が行われていた空域に戻った箒が目にしたのは、飛び去る<銀の福音>の後ろ姿と今にも海中へ沈みゆこうとしていた一夏とミシェルだった。
絶望と混乱に張り裂けそうな自分の精神を必死に押さえ込みながら、エネルギー切れ寸前の<紅椿>で余計なダメージを2人に与えないように、尚且つ最大限の速さで千冬達教師陣が待機していた海岸へ辿り着いたのが3時間以上前の事。
<白式>と<ラファール・レクイエム>はダメージレベルがC―――下手に再起動すればエネルギーバイパスが異常を起しかねない程の損傷と認定され、装着者の一夏とミシェルに至っては、最早言わずもがな。
特に酷いのは一夏の傷だ。防御機能を貫くほどの熱波により主にISの装甲に守られていない部分に火傷を負い、皮膚・筋肉のみならず脳や内臓まで損傷している可能性があるという。
ミシェルの方は全身装甲という特殊なISの構造から熱波が装甲に阻まれたお陰で火傷は負わずに済んだものの、連続した着弾による衝撃までは防ぎきれず伝わった強烈な振動によって全身にダメージが、特に頭部への衝撃で脳震盪を起こしていると診断された。こちらも予断は許されないでいる。
2人が死にそうになっているにもかかわらず、結局<銀の福音>は悠々逃げおおせたまま。
それは何故か?
「・・・・・・私のせいだ」
一夏とミシェルが生物学的には生きている事を示す心臓の鼓動、それを感知している心電図の電子音のみしか響いていなかった室内に、箒の力無い声が加わる。
箒の左右に陣取り、寄り添うようにして膝を抱えていた鈴とシャルロットもその声に顔を上げる。
「私が、不甲斐無かったから。私が自分の機体に浮かれて、その力に溺れてしまったから・・・・・・」
ふざけんじゃないわよ、と鈴は言ってやりたかった。彼女の胸倉を掴みあげて、その通りだと、アンタのせいだと喚き散らしてやりたかった。
だけどそうしなかった。出来なかった。もっと箒との関係がそこまで深くなかったら、まだ一夏を巡る恋のライバルで、彼を共有する間柄になっていない状態だったなら、形振り構わず箒に言ってやっていたかもしれない。
既に箒共々一夏と深い仲になってしまっていたからこそ、箒に負けず劣らず一夏が傷つき目覚めない事に対する心のダメージも比例して大きく。鈴の精神を傷つけている。
故に鈴の口から漏れたのは叱責ではなく、箒を庇う言葉だった。責めたい気持ちはあれど、単に箒の責任だけではない思いもまた持ち合わせていたのだ。
「箒の気持ちは、私だって分かるわよ。私だって最初に専用機を与えてもらった時は散々抜かれたりしたもの」
「だが私があのような時にも関わらず浮かれてしまっていたからこそ、一夏はこうなってしまったんだ!私を逃がす為に一夏も、ミシェルまでボロボロになって目覚めない!私が足を引っ張ったからこんな事に・・・・・・」
「箒、そこまで自分ばっかり責めちゃダメだよ」
シャルロットの声が加わる。3人は互いの体温を求めあう様に、互いの心の傷を舐め合おうとするかのように身を寄せ合いながら会話を続ける。
「箒が出撃した事が悪いっていうんなら、それを止めなかった僕達や先生達にも責任があると僕は思う。慣れない機体で箒の調子もちゃんと考慮しないまま、作戦を組んで出撃させたのは皆なんだから」
「違う、そんな事!」
「でもまあこんな文句も結局は結果論でしかないけどね。でも、2人の事で気に病んでるんだったら、少なくとも箒を逃がす為に2人がこうなった事に関しては箒の責任じゃないよ」
「何故そう言える!?2人は、私を庇って逃がす為にこうして死の淵を彷徨ってしまっているんだぞ!それが私の責任でなくて、何だと言うんだ!」
激情がら生じた涙を振り撒きながら箒は勢い良く立ち上がった。結構な音量の叫びが間近でしても一夏とミシェルはピクリとも反応が無く、シャルロットもまた目覚めぬ伴侶の顔に視線を固定したままだ。
「殿とか、そういう味方の撤退を援護する為に留まって敵を足止めする役っていうのは分かりきってるけどとっても危険なモノなんだよ。1人取り残されて敵に立ち向かわなきゃならないんだから当たり前だよね。
でもミシェルも一夏も箒を逃がす為にその場に残って<銀の福音>に立ち向かう事を選んだ。相手がどれだけ強大な敵なのかはその時も2人もよく理解していた筈だよ。それでも2人はその選択を選んだ。他ならぬ箒の為にね」
「・・・・・・」
「それだけさ、一夏も、ミシェルだって箒の事を大切に思ってくれてたって証拠なんじゃないかな。だって本当はどうでもいいなんて考えてる人を逃がす為に、躊躇い無く殿を受け持とうなんて考え普通は出来ないと思うよ?」
「あはは、どーかしらね。一夏っていつもはトーヘンボクにも程がある癖して呆れるぐらいお節介焼きだから、知らない奴でもそうやって助けに入りそうよ」
「もう、茶化さないでよ鈴」
「ゴメンゴメン。でも一理あるわね」
苦笑を浮かべながら、鈴も立ち上がる。
「ねえ箒。一夏も、ミシェルもアンタを逃がす為に留まったのは2人がその選択をしたからよ。そうやって逃げ延びれたアンタがそんな事を言ってちゃ、それは2人の選択を穢すって事なのよ。それでもアンタはそうやって自分を責めて、悲劇のヒロイン気取るわけ?」
「そんなつもりは!」
「それじゃあ箒にこれ以上責任は無いって事で、この話はもう終わりにしましょ・・・・・・・・・・・・こんな話続けてたって2人は目覚めそうにないんだし、ね」
そう言われては箒も黙り込むしかない。だが鈴とシャルロットのお陰で心身に圧し掛かっていた重荷が和らいでいたのは否定できない事実だった。
ありがとう、と小さく呟く。感謝の言葉は傍らの2人の耳にしっかり届き、儚げながらも薄い笑みを鈴とシャルロットは確かに浮かべる。
その時勢い良く背後の襖が開け放たれ、3人揃って顔をそちらに向けるとラウラが決然と仁王立ちしていた。その手には携帯端末。彼女の後ろにはセシリアの姿もある。
「見つけたぞ。ここから30km離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていたがどうも光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で発見したぞ」
「流石だね。ありがとうラウラ。それじゃあ皆行こうか」
「ま、待て、何処に行こうと言うのだ?」
会話の内容についていけない箒に対し、他の専用機持ちはキョトンとした顔になった。ごくごく当たり前のように今後の予定を告げたのはシャルロットである。
「何って、<銀の福音>が見つかったから叩き潰しに行くんだけど」
いともあっさりそう言ってのけるシャルロット。
彼女が浮かべている表情は、一見箒も見慣れた向日葵を思い浮かばせる温かくも眩しい笑顔だ。だがその時その場でシャルロットのその顔を見た少女達は、それは笑顔には全く思えなかった。
だって、どうだろう?あれが笑顔であるならば、あんな目を浮かべる筈ないじゃないか。
「『僕』の大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な旦那様をこんな目にあわせたデク人形なんかを、『私』が許すわけないに決まってるじゃない」
そう告げるシャルロットの瞳が宿す光は、凍りついた心を溶かしてくれる太陽の様な暖かさなど微塵持ってはおらず。
例えるならばそれは、氷の刃の如く冷えきり、鋭く、そしてそれ以上に禍々しく渦巻く憎悪を孕んだ、背筋を凍らせる狂気の光。
その瞬間、よく知る友人たる少女が別の何かへと変貌を遂げていた、としか形容のしようが無い。
少女達はその思いを数十分後、標的たる<銀の福音>を肉眼で目視できる距離でもって包囲した段になって再度抱く事になる
海上で捕捉した<銀の福音>を取り囲む5人の少女達。
ラウラの<シュヴァツェア・レーゲン>には砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』、セシリアの<ブルー・ティアーズ>には強襲用高軌道パッケージ『ストライク・ガンナー』、鈴の<甲龍>には機能増幅パッケージ『崩山』と、それぞれの機体には今回の臨海学校に於いて試験予定だった特殊パッケージが装備されている。
シャルロットの<ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ>も例外ではなく、実体シールドとエネルギーシールドを追加搭載する専用防御用パッケージ『ガーデン・カーテン』を装備して参戦していた。
箒もまた、膨大なエネルギー消費の原因たる展開装甲の一部を封印した<紅椿>を身に纏っている。
ラウラが先制の砲撃を行い、シャルロットが彼女の盾役となり、セシリアが牽制して箒と鈴が追撃するという作戦。
海中に潜んでいた箒と鈴の連携攻撃を食らった<銀の福音>は、機能停止にまでは追い込まれなかったものの白銀の機体のあちこちに傷を拵えていた。
そうして一旦連携攻撃が一段落し、空中で5人と1機が空中で睨み合う格好となった時。
不意に聞こえ出したのは、押し殺したような低い笑い声。
「ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「シャルロット?」
怪訝そうにラウラが声をかけても笑い声は止まる気配が見られない。
それはあまりに平坦で、あまりにも空虚で、あまりにも感情が感じられないからこそ、それを耳にした箒達の背鈴を震わせる。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
何時までも起伏の感じられない笑い声を繰り返すシャルロットの表情は笑ってなどいなかった。紫色の瞳はブラックホール並みに底無しの冥(くら)さを湛え、幾ら表情筋が顔の皮膚を笑みを形作っていても、傍から見れば能面の方がよっぽど愛嬌を感じさせるほどに感情というものが含まれていなかった。
そして。
唐突に仮面が引き裂かれ、口の箸が一気に吊り上がる。
自らに手傷を負わせた憎き敵を飽くなき執念で何処までも何処までも追いかけ、ようやく追い詰めた野生の狼そっくりの凶暴な、血に飢えた笑み。
・・・・・・箒達は悟る。自分達の中で最も穏やかな気性で惜しみない優しさを周囲に振り撒いてきた少女が、実際には最も苛烈な暴力性を秘めていたという現実を。
「Allez au diable,pauvre con!」
――――――くたばれ、クソ野郎。
その一言に今までの笑い声が嘘に思えるほどの強烈な感情を込めて吐き捨てて、シャルロットは“シールドを装備した両腕”に1丁ずつショットガンを構え、夫と友人を殺そうとした自動人形に襲いかかる。
意識を取り戻して最初に目に入ったのは、何処までも広がる夕焼けよりも濃い紅蓮色の空。
何処か屋外の地べたに直接寝っ転がっているんだと理解出来たのは、背中から不規則にザラザラゴツゴツした地面と小石の感触が伝わってきたからだった。
すぐに立ち上が――――ろうとはしないで、まずゆっくりと首を回して視線を左右に巡らせる。両手を肩の高さまで伸ばし、掌で地面を撫でて指先からの感覚がしっかりと健在であることを確認してから、ようやく俺は身体を起こした。
自分の身体を見下ろしてみると、今の自分は学園の制服姿。何時の間に着替えた俺。
「(・・・・・・何処だ此処は)」
俺が居たのはまあ、有体にいえば『戦場』と呼ぶのが最も相応しいだろう。周辺は瓦礫の山。壊れ具合から砲弾かミサイルの類で吹き飛ばされたものと分かる、
何処からともなく砲声や爆発音が遠くで鳴っているし、地平線の向こうに立ち上るのは炎と黒煙。空が紅いのも多分そのせいだ。
だけど、思考能力が覚醒していくにつれその『戦場』に違和感を覚え出した俺は、不審げに鼻をヒクつかせてみた。
「(・・・・・・“綺麗過ぎる”、な)」
市街地を模した演習場での実弾演習を経験した事がある俺は、砲弾やミサイルによって建物がどんな風に破壊されるものなのかを知っている。
人を殺した事がある俺は、命を奪われたばかりの死体から流れ出る鉄錆の臭いがどれだけ鮮烈かを知っている。
けれど、本物の悲惨な戦場そのものに立った事はまだない。爆発した高性能爆薬の残り香と臓物の臭いがブレンドされた死臭のカクテルを直接嗅いだ事も1度もない。知らない癖に何をぬかしてるんだと自分でも思うが、これだけ荒れ果てた戦場ならそんな空気に満ちていてしかるべきなんじゃないだろうか。
だから、俺は今自分が居る戦場に違和感を感じていた。それぞれ見て感じた光景や感覚を組み合わせただけの、何処までもリアルだけどやっぱり作り物臭さが拭えない合成映像を見ているような気分になってくる。
「(・・・・・・でも本当、ここは一体何処なんだ?)」
「――――貴方は何故、戦いを求める?」
自分1人しかこの場に居ないと思い込んでいたから、いきなり後ろから声をかけられた途端勢い良く振り向いてしまった。
女性――――だろう。多分。声は女性の物だが顔や彼女(?)の遥か後方から煌々照りつける炎が浮かび上がらせるシルエットは、頭全体を覆う中世風の兜や全身に施されたプレートアーマーに阻まれて確認する事が出来ない。
何より特徴的なのは彼女の肩幅程もある巨大な盾の存在。盾の高さも彼女の肩ぐらいまであり、その上端に右手を乗せてその場に佇んでいる。
もう1度問いかけられる同じ質問。
ふと、他にも誰かの声がした気がした。遠くの爆発音に掻き消されてどういう内容なのかは分からない。
「貴方は何故、戦いを求める?」
「・・・・・・俺自身という存在が本当に生きているのだという実感をより強く感じる為」
俺は1度死んだ人間だ。日に日に身体が動かなくなり、大量の天敵や医療機器に繋がれ、最早自殺すら出来ないで早く『死』という救いをベッドの上で待つ事しか出来なかった哀れな男。仮に地獄があるならば、あれこそが俺にとっての最悪の地獄だと断言できる。
だからこそ『ミシェル・デュノア』となってから与えられ、感じてきた全ての感覚が愛おしい。どんな痛みもどんな辛さもそれをしっかりと感じれる事こそ生きている証。
偶に本当の俺は実はベッドの上で死にかけていて、今の『ミシェル・デュノア』の人生は単なる妄想なんじゃないかと感じて悩んだりした事も多々あるが、今はあまり関係ない話だろう。
ともかく実際の殺し合いも経験して死にかけてから、自分が生きている実感をもっともっと求めるようになった。銃という人殺しの道具を愛好するのもそんな感じだ。そういう点を踏まえると、ISの存在もまたその一環な気もしないでもない。
撃って撃たれて斬って斬られて、互いのすぐ傍を防御機能さえなければ1発で人間をグシャグシャのミンチに変えてしまう砲弾が通り過ぎる瞬間に感じるあの恐怖、あのスリル―――――堪らない。
また声が聞こえる。さっきより、ほんの少しボリュームが大きくなっている。
「本当に、それだけなのか?」
そんな感じで突っ込まれてしまうと、他にも言った方が良いんだろうけど中々言葉が思いつかなくてその、何だ、困る。
また声が聞こえる。更にハッキリと。あれは・・・・・・・・・・・俺を呼んでいるのだろうか?
今頃になってそれが誰の声なのかようやく気付いた。それは怨嗟の声でもあり、悲痛の声でもあった。
―――――それはシャルロットの声だった。
『よくも、『私』から彼を奪おうとしたな』
『よくも、彼を殺そうとしたな』
『絶対に許さない。叩き潰してやる。擂り潰してやる。完膚なきまでに粉砕してやる』
『だからミシェル、早く目覚めて待っていて。君を傷つけ、苦しめたこのデク人形のコアを抉り出して戻って来て見せるから』
『・・・・・・お願いだから、目覚めててよ、ミシェル。『私』は、ミシェルが居てくれないとダメなんだよぉ』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
言い訳するつもりはないが、すぐにそれがシャルロットの声だと理解できなかったのも無理は無い。
それだけ俺に伝わってくるシャルロットの声は負の感情に満ちた、凄まじい怒りと憎悪を孕んでいた。こんなシャルロットの声も初めて聞くし、こんな声をシャルロットも出せる事も知らなかった俺は。
――――そんな負の感情まみれの彼女の声ですら、愛おしく感じた。
シャルロットは聖女もかくやなぐらい優しい。だけど決して聖女なんかじゃない、れっきとしたただの人間だとも、俺は理解している。
だから焼餅も焼くし怒ったりもするし失敗もする。そんな部分もひっくるめて俺はシャルロットが大好きなのであり、あんな風な呪いの言葉を叫んでいるのを初めて聞かされても、それは俺が知らなかったシャルロットの新たな一面に過ぎないのであって、それすらも俺にとっては十分に許容の範囲内でしかない。
それにだ。シャルロットは俺が<銀の福音>にやられた事にこれ以上無い位怒ってくれているからこそあんな言葉を言っているんだ。それぐらい彼女もまた俺を愛してくれてるって事なんだからそれを喜びこそすれ、忌避する気は更々無い。
多分シャルロットは<銀の福音>と相対し、戦闘状態にあるんだろう。理由や原理は分からないが、声と一緒に何となくそんな感覚も伝わってくる。
シャルロットだけじゃない、箒や鈴達も恐らく一緒な気がした。理由も大体見当がつく。
「・・・・・・戦う理由なら他にもあるぞ」
盾の女性に向き直る。見栄を張る気もカッコつけるつもりもなく、ごく自然に俺は自分の答えを口にする事が出来た。
「女の為、友の為・・・・・・こればかりは例え退けと言われようが決して退けない理由だし、退くつもりも全く無い」
此処が何処なのかもどうやって連れてこられたのかももうどうだっていい。早くシャルロット達の元に向かわなければならない。漠然とだが強く、俺はそう感じた。
そう言い放つと少女は―――――笑ったんだろうか。口元も影になって良く分からない。
「ならば行きましょう。貴方の御仲間と共に」
波の音が聞こえた、と思った次の瞬間には世界が一変していた。戦場から白い砂浜へ。驚いて見回してみると、向こうも驚きの表情を浮かべた一夏と目が合った。一夏も制服姿だ。
・・・・・・ところで、すぐ後ろに居る白い幼女はどちら様だろうか。
「ミシェル?お前も何で、こんな所に?」
「それはこっちのセリフだし理由もよく分からんが・・・・・・とにかく一緒にさっさと行くとしよう」
「行くって何処にだよ」
「・・・・・・聞こえないか?」
俺がそう問いかけてみると、不意に頭痛か眩暈に襲われたみたいに一夏が頭に手を当てて俯く。
しばらくして顔を上げた一夏は――――理解と決心の光を瞳に宿らせていた。
「――――ああ、そうだな。行かないと、な」
また世界が形を変えて、白い光に覆われていく―――――――――
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少し短めで内容が荒い分早めに投稿。
いっそシャルにL5でも発病させてやろうかと思いましたがあれだけの病みっぷりを文章にする技量が無いので断念しました。無念。
2巻でコアネットワーク使った異次元対話出来てたんだから似非固有結界を繋ぐのも出来るんじゃね?って感じです。
再度読者の皆様にアンケート。
3巻終了後は普通に4巻単独ルートか、それとも7巻の内容を織り交ぜた複合ルートに行くか、どちらがお望みですか?