―――――人は見た目によらないものである。
第2グラウンドから見える空を見上げながら一夏はしみじみとそう思った。
「強いな、山田先生」
「・・・・・・こう言っては何だが、本当に、意外だった」
元代表候補生とは千冬姉の談だがなるほど、単独で現役代表候補生であるセシリアと鈴を追い詰めている辺り、千冬姉が言うだけあった。
――――勝手に壁に突っ込んで気絶したり生徒にからかわれて振り回されたりISの操縦をミスって生徒達に突っ込んできたり(ミシェルが発動させたAICのお陰で双方被害なし)してきた人と同一人物とは思えない、冷静沈着な戦いぶりである。
「あ、終わったみたい」
シャルロットが声に出した通り、山田先生の牽制射撃に2人が誘導させられて固まった所でグレネードが炸裂しジ・エンド。
教師の面目躍如といった見事な戦いぶりであった。自分もアレぐらい落ち着いて戦えるようにならなきゃな、と一夏は決心を新たにする。
対するセシリアと鈴の方はそっちが悪いだのいいやアンタが下手くそわーわーぎゃーぎゃーと互いに責任をなすりつけ合いながら下りてくる。
いやまあぶっちゃけ一夏以外にも観戦してた皆からしてみればどっちもどっちじゃね?ってな感想なのだが。
と思ってたら地面に着地するなり情けない顔で鈴が一夏の元へ駆け寄ってきた。
「いちかぁ、負けちゃった~・・・・・・・」
「いやそんな泣きそうにならんでも。相手は皆に教える先生なだけあるんだし、山田先生もそれ相応の実力を持ってたって事なんだろ。見た目によらないけど」
「最後のは余計ですよ織斑君!」
抗議の声を上げる山田先生を無視して、何と鈴は一夏に抱きついた。というか、<甲龍>を展開したまんまなので体格と自重差のせいで一夏は押し倒される格好になる。
周囲で上がる歓声。目を剥く箒。目の光が消えるセシリア。苦笑するシャルロット。ちょっとだけ眦(まなじり)を持ち上げるミシェル。相変わらず冷たい視線のラウラ。眉間を押さえる千冬。
一番驚いたのは一夏である。
「な、何すんだいきなり!?」
「なによ、傷心の彼女を慰めるだけの甲斐性ぐらい発揮したらどう?」
「だからって押し倒す意味がわかんねーって!つか場所考えろ場所!今授業中!でもって皆見てるから!」
「だからよ。こういう時こそ出来る限りアンタはアタシの物なんだってアピールしとかないとねー♪」
「ええいそれぐらいで十分だろう鈴!ISを展開したままでは一夏が苦しいだろうが!というか羨ましいぞ!それにお前だけではなくて『私達』だ私達!」
「いい加減にせんかこのトライアングラーども!!」
一夏にのしかかる鈴を引き剥がそうとしている箒にもまとめて出席簿一閃。周囲の女生徒+αには腕の残像しか見えない程速く鋭い、見事な3連打であった。
ちなみにそのすぐ近くでは、
「許せませんは許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ妬ましいですわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ許せませんわ(ry」
「いけませんオルコットさん!安全装置解除して向けちゃダーメーでーすー!」
「うん、やっぱり一夏死んだ方が良いと思うよ?」
「本人達の問題なんだからシャルロットも<灰色の鱗殻>はしまっておいてくれ・・・・・・」
「ふ、鳳さんなんて羨ましい・・・・・・」
「なんて大胆な。っていうかやっぱりあの噂本当だったんだ」
「2股で三角関係で篠ノ之さんと鳳さんで織斑君を共有・・・・・・」
「毎夜3人でお楽しみとか?」
「とにかくハッキリしてるのは―――――」
「「「「「「「2人に先越されたorz」」」」」」」
天誅ですわー殿中ですよー落ち着け話せば分かるお兄ちゃんそこどいて殺せない2人がオッケーなら私もーええいどいつもこいつもいい加減にせんか!!!!
そんな感じでしょっぱなからカオスな授業風景に、1人ラウラはやはりこの学園は生温いにも程があると再確認するのであった。
・・・・・・生温いというよりは無茶苦茶である、といった方が正しい気がしないでもない。
事態の収拾までしばしかかり、時間が無駄になった分テキパキと授業再開。
今日は実機を使った実戦訓練である。専用機持ちをリーダーにグループを作り、1つの班につき1機のISが宛がわれる事になった。
各自専用機持ちの指示に従い実習を開始し始めたのだが―――――2つのグループだけ重苦しい沈黙の空気を漂わせていた。ミシェルとラウラの班である。
ラウラの場合は本人の放つ冷たく人を寄せ付けないオーラのせいで、ミシェルの方は単に彼の顔が怖くて班員になった少女達が勝手に怯えてしまっている為である。
彼が歩き回る度に聞こえてくる合金製の義足のたてる特徴的な足音がまた拍車をかけていた。
「・・・・・・ならまずは」
「「「「「ひぃっ!!?」」」」
普通に指示された通りに進めようとしただけなのにそれだけで悲鳴を漏らされた。もう慣れたけど、ちょっとだけ泣きたくなった。
別に取って食うつもりなんてこれっっっっっっっぽっちもないのに。やはり世の中顔で世界は回るのだ。何という格差社会。恨むぞこんな顔に生まれ変わらせた神様。シャルロットに出会わせてくれたのには感謝するけど。
「・・・・・・順番に装着と起動、歩行まで進めていく事にする。誰か、最初にやってみたい人は居るか・・・・・・?」
「ね、ねえ、美紀から最初にやってみない?」
「いやいやここは里子からどうかしら?」
「いえいえここはアリサから」
「いやいやここは――――」
「どうせなら先に――――」
思いっきり最初の犠牲者(?)の役目を押しつけ合う少女達。見事な友情に今度こそ涙が出そうになった。だから君達は俺の事どう思ってるんだ一体。もうこれいじめのレベルじゃね?
そんな感じでミシェルの内心は涙がちょちょぎれそうな、その時だった。
「なら私が行ってみるよ~」
「「「「「「どうぞどうぞ――――――え?」」」」」」
自ら生贄に進み出たのはとても小柄なでゆるゆるとした雰囲気の少女。ミシェルとの身長差は何と50cmオーバー。近づかれると顎を引かなければ視界にも入らない。
前に一夏とかと話してるのを見た覚えがある。名前は、確か。
「のほほんさん、で、良かったか・・・・・・?」
「おー、デュノア君にも呼ばれちゃったー。じゃあ名字だとシャルシャルと被っちゃうからミー君って呼ぶねー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれれー?どうしてミー君泣いてるのー?」
「・・・・・・気にしないでくれ・・・・・・これは、ただの嬉し涙だから・・・・・・」
苦節15年、これまで散々人間核弾頭だの伝説の傭兵だの歴戦の戦士だの扱いされてきたミシェルにとって、のほほんさん(仮)の純粋無垢な雰囲気と接し方は彼に琴線に強く触れたのである。
感動し過ぎて先にシャルロットと出会ってなければプロポーズしてたかも、と考えちゃった辺り、これまでのミシェルの追い詰められっぷりが伺えるだろう。
「泣かなくても大丈夫だよ~?ほらいいこいいこ~」
自分よりも遥かに小柄な少女に慰められながら頭を撫でられる、というのはとても新鮮な体験だった。
人懐っこい子犬にじゃれつかれているような錯覚を思えて、ミシェルも反射的にのほほんさんの頭を撫でてみる。あははーくすぐったいーとのほほんさんが笑う。周囲は彼女の頭が握り潰されないかとヒヤヒヤしていたが。
うん、激しく癒される。出来る事ならもっとこうしていたいが今は授業中である。先生に怒られる前に進めようと思っていたら、
「むー・・・・・・」
「あー、しゃるしゃるだー」
別の所で教えてた筈の妻が脹れっ面ですぐ隣に居ました。明らかに怒っている。というよりも、拗ねている。
黙って旦那を睨むシャルロット。よく見てみると微妙に頭を傾けて頭頂部をミシェルの方に向けているような姿勢をしており、ミシェルは彼女が何をして欲しいのかすぐに悟った。
ぽんっ
「・・・・・・すまない。別に浮気とかそういうつもりじゃなくてだな・・・・・・」
「もう、それぐらい分かってるよ。だけど僕だって嫉妬ぐらいするんだからね?」
「・・・・・・心得ておく」
「わははー、ミー君としゃるしゃるらぶらぶだ~」
シャルロットもまたミシェルに頭を撫でられながら、彼女の方から彼の胸板に顔を埋めた。
その様子を見ていた少女達の抱いた感想は『美女と野獣』で統一されていた。ついでにミシェルの逞しい身体に挟まれて大きく形を変えているシャルロットの双丘にも目が行ってしまう。
何アレ私の頭よりおっきくない?ISスーツ着てて何で揺れるのよ。箒さんクラスいやいや山田先生レベル!?ええいフランスの乳は化物かっ!?
自分の胸元を見下ろした。何人かは世の中の不平等を呪った。やっぱり男か男のお陰なのか。グギギ。
「だから貴様らも早く進めんか!デュノア妻、お前は別の班の人間だろうが、さっさと戻れ!」
すぱしこーん
「いきなり転校生に引っ叩かれそうになったぁ!?」
鈴の素っ頓狂な声が屋上に響き渡った。
現在昼休み。昼食を取るべく一夏とミシェル、箒と鈴とおまけにセシリア(ひどいですわー!)は各々弁当を持って屋上にやってきていた。
なお、毎日ミシェルと昼食を共にしている筈のシャルロットだが、今日は珍しく一緒ではない。
「そうですの。まあ流石一夏さんというべきですか、あっさり防いでみせてはいましたが」
「向こうは一夏を知っているような口ぶりだったが・・・・・・一夏の方は彼女と初対面なのだろう?」
「ああ。でも何となくだけど、見当はついてる。それより早く飯にしようぜ?俺腹へっちゃってさ」
「む、それもそうだな。では食べるとしようか。ほら一夏、お前の分だ」
「しっかり味わって食べなきゃ許さないんだから!」
「分かってるって。サンキューな、2人共」
箒が差し出した弁当箱と鈴が取りだしたタッパーを普通に受け取る一夏。
それを見ていたセシリアの頬が引き攣った。
「・・・・・・箒さん、鳳さん。今渡した物は何でしょうか?」
「何って、今日の一夏の昼食だが?」
箒の弁当箱の中身は鮭の塩焼きに鳥の空揚げ、こんにゃくとゴボウのトウガラシ炒め、ほうれん草の胡麻和えといった色とりどりの見事な手作り弁当であった。
鈴の方はタッパーいっぱいの酢豚。中々のインパクトである。
「ミシェルとセシリアは何食うんだ?2人も自分で作って持ってきたみたいだけど」
「・・・・・・俺のはこれだ」
ミシェルが取りだしたのは全長30cmはあろうかという太いフランスパンを使ったサンドイッチ。レタス・スモークハム・キュウリ・スライスチーズを挟んで粒マスタード入りマヨネーズを塗った豪快な一品だ。
それを強面なミシェルが大口上げて齧り付く姿がまたよく似合う。彼を皮切りに一夏達も食べ始める。
「おおんまいんまい!特にこの唐揚げが良いな!生姜に醤油に後は・・・・・・何だろこの隠し味。覚えはあるんだけどなー」
「ふふっ、答えはおろしニンニクだ。それと予めコショウも少しだけ混ぜてある。そんなに喜んでもらえて嬉しいぞ一夏」
「私の酢豚も忘れないでよね?」
「分かってるって。どれどれ――――お、こっちも美味い!いやー、2人共腕上げたなぁ。こりゃ俺もうかうかしてらんないな」
バクバクと勢い良く2人分の昼食を食べ進める一夏を如何にも幸せそうに見つめる少女2人。
その片割れの視線がふと弁当箱の唐揚げを捉えた。
「ねぇ一夏。私も唐揚げ味見させてもらっていい?」
「ん?構わないぞ。ほらあーん」
一夏は唐揚げを一口大に箸で切ると、左手を添えて鈴に差し出した。
鈴の方はほんの一瞬固まりはしたものの、すぐに再起動して唐揚げを箸の先端ごと口に含む。その顔はちょっとだけ赤い。
「うん、美味しっ♪」
「だろ?」
満面の笑みを鈴も浮かべた。一夏もそれに同意するが、褒められている箒の方はほんのちょっとだけ不機嫌そうだった。
ちなみにそうなったのは一夏が鳥の餌付けよろしく手ずから唐揚げを鈴の口に運んでからである。
セシリア?とっくの昔に黒いオーラを放ちだしていますが何か。
箒のそんな様子を見て取った鈴はおもむろに小悪魔的な笑みを浮かべ、一夏に提案する。
「一夏、アンタん所からで良いから箒にも私の作った酢豚、試食してもらってくれない?」
「んなぁっ!?べ、別にそこまでしてもらわなくても私は構わ――――」
「それもそうだな。ほらお前も食ってみろよ箒。美味いぞー」
即座に次の展開が読めてしまった箒は急激に顔に血の気を集めつつ止めようとしたが、時すでに遅し。
気が付けば、鈴の時同様一夏の差し出した箸がすぐ目の前にあった。違いは摘ままれてあるのが唐揚げではなく衣に甘辛いあんがしっかり絡まった酢豚である事ぐらいである。
しばらく迷う箒であったが、やがて覚悟を決め、そっと唇を近づけ・・・・・・
酢豚を口に含む。噛みしめた途端沁み出る肉汁と火の通った身の適度な歯応え、衣の感触とあんの風味が混然しつつも調和していて成程、確かに美味い。
「うむ、中々のお手前で」
「あったりまえよー、えへへ」
和気藹藹と食事を進める正三角形な一夏達、すぐ横でセシリアが無言でレーザーライフルを展開しようとしていた。それをミシェルが必死になって止めていた。
そんな感じで局所的な嵐が発生しつつもそれぞれの腹は膨らんでいき、次第に食事中の雑談が増え始める。
今日の話題は主に銀の転校生について。
「あら、ボーデヴィッヒさんとミシェルさんはお知り合いですの?」
「ああ、最初にあったのは半年ほど前か・・・・・・フランス軍とドイツ軍の合同演習の際にな」
「ミシェルは軍隊にも所属していたとは初耳だ。もしやシャルロットもそうなのか?」
「・・・・・・いや、シャルロットは単に実家の会社の所属だ。俺の場合は、会社と軍の両方に所属という扱いになっている」
「そもそも専用機持ってるような人間って大概ISを開発してる企業か軍の所属だしね。ちなみに私の場合は軍だけど」
鈴の場合一夏がIS学園に入学したと知ったや否や軍の責任者を脅して無理やり手続きさせたのはいい思い出である。
セシリアの場合は<ブルー・ティアーズ>を開発した企業の所属で、むしろ一夏の様に所属がハッキリしていない人間の方が珍しいのだ。
「・・・・・・誤解の内容に言っておくが、ラウラはただ単に軍隊以外の世界を知らないせいで身内以外の人間になれていないだけであって、本当は少し抜けているが良い奴なんだ」
「いきなり人の顔を張り飛ばそうとするのにか?」
それを言われてはフォローのしようが無い。そこへ一夏が話を逸らそうと試みる。
「で、でもミシェルが軍人って確かに似合ってるよなうん!」
「似合ってるどころかドツボ過ぎて学生だって忘れちゃいそうよ」
「・・・・・・悪かったな」
「軍隊の方からはあちらからスカウトされましたの?」
「・・・・・・きっかけはそんな所だ。元々は広告塔を頼まれたんだが、専門の訓練に関しては自分から希望した」
「なるほど、IS操縦者はいざという時どんな状況に置いてもISが使えない場合であっても状況を打破できるよう、専門の訓練を受けなければなりませんものね。軍に教えを請うのは理に適った事ですわ」
これはISが広まって以後の世界各国で言える話なのだが、先進国における軍隊の兵員は急減の一途を歩んでいた。
戦闘機や戦車などが一気に時代遅れになったが為にそれらを運用する為の人員を大幅に軍が削減したのが主な理由の1つだが、女尊男卑一気に広まったという背景もまた理由の1つである。将来の軍隊を担う若者達の入隊が一気に減少してしまったのだ。
近年女性への門戸も格段に広くなったとはいえ、基本軍隊は男性社会――――にもかかわらず『男より女の方が強い』という風潮故か、入隊する男の数は減少の一途を辿り、女の入隊数の方は少しづつ増加しつつあり、軍隊内の男女比が逆転するのも遠い話ではないと言われていた。
そこで慌てたのは古株の軍人達。彼らは軍まで女性に乗っ取られるのを防ぎたい。だけど入ってくる男の数は年々減ってゆくばかり。
――――そこに世界初の男性IS操縦者となったミシェルの登場である。
10代半ばの若さでありながら男臭さに満ち溢れ、尚且つ流星の如く現れた男性の希望の星たる彼を軍が放っておく筈もなく。
「・・・・・・入隊して1年ちょっとで15歳の若造が大尉というのもおかしな話だが、少しお願いしたらGIGNにまで体験入隊出来たのは予想外だったな」
GIGNとはフランス国家憲兵隊治安介入部隊、つまり対テロ特殊部隊である。
そこまで軍隊に詳しくない一夏達は首を捻っていたが、一応軍属である鈴も同じような反応してちゃダメな気がするのだが・・・・・・
「そういう事は彼女も軍人なのか。確かにそれっぽい感じだったけど」
「階級は少佐・・・・・・立派な部隊の指揮官だ」
「上に立つ者がいきなり人の顔を張り飛ばしていいとは思えんがな」
だからそれは言わないでって!
「そういえばミシェルのISってドイツやイギリスからの技術協力もあって完成したって前に言ってたっけ。その関係もあるのか?」
「・・・・・・その通りだ。俺のISに組み込まれている技術の内、イギリスからはBT兵器のデータ、ドイツからはAICのデータが用いられてある」
「そう考えると贅沢な機体よね。数機分の第3世代機の技術が組み込んである訳なんだから」
「・・・・・・それはともかく、ラウラの友人としても、一夏の友人としても、2人共仲良くしてもらいたいとは思っているのだが・・・・・・」
「いや、俺は別に構わないんだけど向こうにあそこまで喧嘩腰にされちゃあさ―――って何で睨むんだよ2人共」
何故か箒と鈴から冷たい目を向けられて戸惑う一夏。
「別に。ただ私達は憂慮しているだけだ」
「そうそう。一夏の事だから例え最初は仲が悪くったって相手が女の子なら最終的には惚れさせちゃいそうだもの」
「な訳ねぇって!」
「「どうだか!」」
だってすぐそこにセシリアという先例が居るではないか。まったく、せっかく晴れて恋人同士になれたというのにこの男はまだ自分のフラグ立て能力に自覚が足りないのか。
「こうなったら私達の仲をそのラウラってのに見せつけて入る余地が無いって事を今の内にしっかり覚えさせときましょ!」
「うむ、良い案だ!彼女以外にも他の女子達にも一夏が誰の物なのか思い知らせるのにも丁度良い。ぜひそうしよう」
「頼むから俺を置いて勝手に決めないでくれそういうの・・・・・・」
むぎゅーと左右から2人の恋人に抱きつかれながら、一夏は嬉しいやら悲しいやら疲れるやらと悲喜こもごもな表情で力無くそう呟く事しか出来なかった。
だってこうなった時の彼女達に敵わない事は、嫌というほど身に沁みていたから。
「むきー!何で一々わたくしの前でそんな事をなさいますの!?当てつけなのね当てつけなのですわね!?」
「だからって事あるごとに嫉妬に駆られてISを展開するのは勘弁してくれ・・・・・・」
ストッパー役お疲れ様です。
==================================================================
ミシェルの出番とイチャイチャが足りないと言われた気がしたので書いてみた。
これでもミシェルは常識人なんです。