「――――で?」
「『で?』って、何がだよ?」
「とぼけるなって。鈴とファースト幼馴染の事だよ。人にわざわざ相談の電話までよこしときながら、ほったらかしか?」
中学時代からの友人である五反田弾の自室にお邪魔していた一夏は、アーケード仕様のコントローラーに手を置いたまま固まった。
画面の中で一夏の操るキャラが動きを止め、対照的にここぞとばかりに必殺コンボ発動の弾。一気に体力ゲージが底を尽いて弾の勝利。
勝ち誇った様子で隣の友人の方を向いた弾であったが、何故かさっきまでとは打って変わって冷や汗ダラダラ顔色も悪くして彫像と化した一夏の様子に彼もまた動きを止めた。
「い、一夏?すみません、コイツ向こう(学園)の方で何かあったんですか?」
赤い長髪にヘッドバンドと軽い見た目に似合わないかしこまった様子で振り向いた先には、2人の対戦を観戦しながらゲームの順番待ちをしていたミシェルの姿。
学園内唯一の男友達である一夏に日本の庶民の料理を御馳走云々と誘われてホイホイここまで付いてきたのである。
「・・・・・・別に同い年なんだ、敬語とかは必要ない」
「いやあでもやっぱミシェルさん有名人ですし。それにこう、丁寧に対応しなきゃオーラをひしひしと感じがしましてねハイ」
それって遠回しに頭文字にヤの付く自営業辺りの危険な人間に見えるって事じゃなかろうか。
本人には悪気は無さそうなので何も言わないでおくが、内心ちょっと傷つきつつ、
「・・・・・・本人達の話し合いの結果、2人同時に一夏と付き合う事になったそうだ」
「・・・・・・もう1回お願いします」
「・・・・・・篠ノ之と鳳の方から2人同時に一夏の恋人にしてもらう事で決着が付いた、と言った」
「マジですか」
「・・・・・・本気と書いてマジだ」
意外とネタの分かる人らしいがそれはともかく、今思いっきり聞き捨てならない事を聞かされましたよ?
「えーっと、ちなみにそのファースト幼馴染はどういった女の子で?」
引き攣った笑みでの弾の問いかけに、ミシェルはズボンのポケットから折り畳み式の携帯を取り出した。しかしミシェルの手が大きいものだから、まるでマッチ箱か100円ライター並みに小さく見えてくるから不思議である。
ポチポチとボタンを操作して画像データを表示。親指も手のサイズに比例して太いせいで他のボタンまで押しそうになるのはご愛嬌。
ミシェルが見せた携帯の画面には、弾の記憶より少しだけ成長した鈴以外にも金髪の少女、そして黒髪のポニーテールにキリッとした美貌の少女の画像が。
「・・・・・・この真ん中のが俺の嫁で、その右隣がその篠ノ之箒だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
錆ついたカラクリ人形の様にゆっくりと再び一夏の方を向く弾。
そして以前固まったままの一夏に飛びついてその首を掴みあげた。
「ええいこのモテスリムが!言うに事かいて二股かよ二股!それもスッゲェ美少女でおまけにその子も公認!?ふざけんのも大概にしろ!」
「うげっ、ちょ、テメェ弾そっちがふざけんな!いきなり何しやがる!?」
「うるさい!今は黙ってブッ飛ばさせろ!散々事ある毎に女子にフラグ立てちゃ悉くスルーどころかブッた斬ってたくせに、自分がモテてる事に気付いた途端二股だぁ!?鈴や篠ノ之って子が許しても俺が許さん!罰として俺にも学園の女の子紹介しろ!」
「最後のが本音だろ絶対!仕方ないだろ2人だけで勝手に決めちゃってたし!いや嬉しかったけどさぁ!!」
「やっぱり死ねお前!気付かずにへし折って来た女の子のフラグの分だけ刺されりゃいいんだ!ってストップストップ本気で間接極めるのは反則!」
どうやらすぐに決着がつきそうだ。強さの追求に余念が無い分地力が違い過ぎる。
「・・・・・・トイレを借りさせてもらっても構わないか?」
「この家のトイレなら確か階段降りて右の奥にあった筈だけど」
「ギブギブギブギブマジで痛いって、アッー!」
コキャっと聞こえた気がしたけどミシェルのログには何も無い。そう何も無い。パタッ、って助けを求めて伸ばされた手があえなく落ちたような音も気のせいだきっと。
ベッドからのっそりと立ち上がったミシェルがドアノブを掴む。
――――――よりも早く、反対側から勢いよく蹴り開けられた。蹴り開けたと分かったのは、開けた本人が細く健康的な裸足を上げた体勢で立っていたからだ。
弾と同じ色合いの紅い髪のラフな格好の少女が1人。
「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べに――――」
ようやく少女は気付く。目の前に立ち塞がる、とても恐ろしげな風貌の男の存在に。
見上げなければならない程の背丈に服の上からでも分かる筋骨隆々とした肉体。とても険しい顔立ちを一層際立たせる顔を横切る巨大な傷。どっかで見た様な気もするけれど、それよりも兄の部屋から突如現れた取っても怖い見た目の外人の姿にそんな記憶など少女の脳裏からすっ飛んでしまい――――
出した結論:殺し屋か殺人犯。
「い、いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?殺される犯される!!?誰か―――――っ!!!」
「うおおおおおおいっ!?お客さんに何言ってんだ妹よおおおおおっ!?」
反射的に絶叫しながら元来た道を逃げようとする少女。
だがパニックになっていたせいか足を絡ませてしまい、バランスを崩しながら進む先は階段。このままでは危ない。
咄嗟にミシェルは大きく踏み出しながら少女の腕を掴むと自分と位置を入れ替わった。少女の身体は弾の部屋の方へ逆戻りし、ミシェルの方はというと。
階段から足を踏み外し、そのまま前のめりの体勢で一瞬宙に浮く。
「え?」
「あ・・・・・・・」
どすっ ばきっ がたっ がっ どすんっ ばきゃっ!!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!!」
「気にするな、身体が頑丈な事ぐらいしか取り柄が無いのでな・・・・・・むしろ 家の壁に穴を空けてしまって本当に申し訳ない」
「いえいえ元はといえば私が悪いんですし!」
弾の妹である五反田蘭のうろたえっぷりは被害者であるミシェルからして哀れになってくるぐらい酷かった。
ちなみに壁に穴が開いたというのはミシェルが階段から転げ落ちた際、義足の方の足が壁に当たって突き破ってしまったのである。
「もう、お兄の馬鹿!何でお客さんが来てる事言ってくれなかったのよ!」
「い、言ってなかったか?そりゃ悪かった、あはははは・・・・・・」
場所は移って現在地は弾の実家が経営する食堂の店内である。3人の前には出来たてほやほやの弾の祖父手製の定食。
「一夏さん達は先食べてて下さいね。私、ちょっと着替えてきますから」
「・・・・・・ああ」
あからさまに元気の無い様子の一夏に心配と疑問を半々に抱きつつも蘭は足早に立ち去る。
「「「いただきます」」」と手を合わせて唱和しつつ食事開始。一夏と弾は店の売れ残りのカボチャ煮定食だが、ミシェルは外国のお客様という事で五反田食堂名物業火野菜炒め定食だ。
濃いめの味付けながら野菜のシャキシャキ感と自然本来の甘みがバランスよく調和し、ご飯が進む。
相変わらず一夏が漂わせる空気は重く、せっかくの料理も箸が進んでないのを見かねた弾が口の中の物を呑みこんでから問いかけた。
「何でそこまでしょぼくれてんだよ、ええ?本当に学園で何かあったのかよ?話してみろよ。何か?付き合いだして早々2人と喧嘩でもしたのかよ」
「喧嘩とかしてないさ。むしろ前以上に仲良くやってるぐらいだって。朝はよく一緒に食事も取るし、2人して手作り弁当とかも作って来てくれるし、放課後も剣やISの特訓も付き合ってくれるし、夜だって――――ゲフンゲフン」
「お兄さんちょっと夜の所具体的に教えてもらいたいなー?」
「誰が言うか!とにかくさ、箒も鈴も積極的で俺も嬉しいよ?2人もお互い仲良くなれてるみたいだし、2人に不満なんてちっとも無いんだよ」
だけどさ、そう呟いて一夏は箸を置く。
「何ていうのか、アレなんだよな。散々覚悟してまで告白しようと思ったらいつの間にか自分の知らない間に解決してました、って実際になったらさ――――割り切れないんだよ。置いてけぼりにされた感じで」
「・・・・・・つまり肩透かしを食らったせいで決心した分の感情の行き場が無い、という事か」
「そうなんだよ。そりゃ俺が皆に言われた通り鈍いせいでずっと2人の気持ちに気付かないままだったのが元々の原因なのは分かってるし、サッサと自分の気持ちにケジメをつけて告白しなかったのも悪いんだけど・・・・・・だからって2人に文句付ける訳にもいかないだろ?だってあんなに幸せそうにしてくれるんだからさ」
「・・・・・・確かにな」
学園での様子をよく知るミシェルだけに同意せざるを得ない。クラス対抗戦以降、あの2人の笑顔を見る機会が大幅に増えていた。
どちらも本当に、心から幸せそうな笑顔を浮かべていた。
「他にもさ、ずっと2人をヤキモキさせて、泣かせまでした俺なんかが2人と付き合っていいのかって想いもあるんだよな。『本当に俺は2人に相応しい男なのかな』って、最近よく思うんだよ」
「あーそれ分かる。つか絶対その2人以外にも山ほど女泣かせてるって絶対。どんだけ向こうからの告白とかアプローチに気付かないまま大ボケかましてきたのか、分かってんのかお前?」
「だから今は反省してるって!」
弾の発言に勢い良く立ち上がった一夏の側頭部にお玉直撃。弾の祖父、厳は食事のマナーには厳しいのだ。
一夏復活までしばし待ってから会話再開。
「・・・・・・恋愛事には大層な口を聞ける立場にないし、最後はやはり当事者同士で話し合って解決すべき事柄だとは思うが・・・・・・もうしばらくこのまま様子を見たらどうだ?下手に自分の感情に決着をつけようとして、藪蛇を出す訳にもいかないだろう」
「・・・・・・そうするよ。どっちにしたって箒や鈴と付き合うのに不満なんてこれっぽっちもないし、むしろ俺にはどっちかだけでも勿体なさ過ぎる位だもんな」
「問題はな一夏。お前の事だ、二股かけてるにもかかわらず更に他の女の子達を無意識の内にホイホイ引き寄せかねないって点だな。またどれだけ自覚なしに惚れさせちまう事やら」
「只でさえ恋人が2人も居るのに他に女作るとかどれだけ鬼畜なんだよ俺!?俺は箒と鈴だけで満足してるっての!」
「「あ゛」」
「へ?どうかし―――――」
振り向いた一夏は、わなわなと震える蘭と目が合う。胸の内を吐き出すのに夢中で接近に気付かなかったらしい。
先程までのラフな格好から年頃の少女らしい可愛さあふれるフリルの多いワンピース姿に変貌していた蘭だったが、その瞳に浮かぶ涙が似つかわしくない。
「嘘、ですよね?・・・・・・まさか鈴さんと、しかも他の女の人とも二股で恋人同士・・・・・・?」
「ら、蘭?」
「一夏さんの、一夏さんの――――――馬鹿ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「へぶはっ!?」
右手一閃。思いっきり張り飛ばされて顔が変な角度を向いた一夏の首から不吉な音が鳴り響くのも気にせず、蘭は食堂から飛び出してしまった。
「な、何故に?」
「やっぱりお前は変わっちゃいねえよ、このキングオブニブチン」
「テメェ一夏この野郎!よくも可愛い孫を泣かせやがったな!?」
「ちょ、待って厳さんそれ焼けた鉄鍋ー!」
弾の溜息厨房からの怒声。
調理器具飛び交う危険地帯と化した食堂の中、ミシェルはといえば。
「・・・・・・・美味い」
テーブルの下にその大きな身体を押し込んで緊急避難しつつ、しっかり確保しておいた自分の分の業火野菜炒めを噛み締めるのであった。
あれからなんやかんやあって、ミシェルが妻の待つ自室へ戻って来たのは6時過ぎであった。
「お帰りミシェル。日本のビストロってどんな感じだった?」
「・・・・・・風情があったし料理も中々だった。今度はシャルロットも一緒に行くか?」
「うん、行く!楽しみだなぁ、ミシェルと外でお食事」
「その前にまずは箸の使い方を覚えないと・・・・・・な?」
「いざって時はミシェルに食べさせて貰うからね?」
「・・・・・・それも悪くないな」
などと談笑していると、不意にミシェルの携帯が鳴った。画面を見てみると意外な相手だったのでほんの少し眉を顰める。
「誰からなの?」
「・・・・・・クラリッサからだ」
クラリッサ・ハルフォーフ――――ドイツ軍所属の国家IS操縦者であり特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』の副隊長を務めている女性だ。
ミシェルも一応フランス軍属でもある。IS学園に入学する1年ほど前からフランス軍からの要請とミシェル本人の希望もあって特例で入隊し、訓練を受け、専用ISの開発の関係からドイツ軍とも数回合同で軍事演習を行ったりもした。
クラリッサとはそれ以来の個人的な知り合いだ。お互い日本の文化に詳しい―ミシェルは元日本人だし、クラリッサの方は少女漫画から知った偏った知識ではあったが―事から馬が合ったのである。
シャルロットの方も軍には入隊はしていないものの、デュノア社側からの参加者としてミシェルと共に演習に参加していたのでクラリッサとも面識があった。
もちろんミシェルとクラリッサはそういう関係には至っていない。単に性別と国境を越えた純然たる友人関係である。これ重要。
『ミシェル・デュノア大尉ですね』
ミシェルのフランス軍での階級は大尉。入隊して1年余りでこの階級はありえないレベルだが、軍がミシェルを引き留めておくために破格の待遇を提示してきた為にこうなった。
「・・・・・・シャルロットも居る。聞かせて構わないか?」
『構いません。いえ、むしろ彼女にもお聞かせ願いませんか?彼女のお力も借りる事になりますので』
専用回線を通じて、記憶と変わらぬ透き通った水晶の様に冷たくも凛とした声がスピーカーから発せられる。
「クラリッサさん、どうかしたんですか?」
『――――明日にでも分かる事ですが、我らが黒ウサギ部隊の隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐がIS学園1年1組に転校してきます。そう、貴方がたお2人のクラスにです』
「ラウラがここに転校してくるの!?」
2人の脳裏に蘇るは銀の少女の姿。部隊内で最も幼い見た目でありながら黒ウサギ部隊指揮官に君臨するに相応しい強さを誇る、眼帯姿の猛者だ。
『そうです。ひいては今回このように隊長に無断でお2人に連絡したのは――――お願いがあるのです』
「お願い、ですか?」
『お2人もご存じの通り隊長は気難しい方で、出発前もIS学園の事を『ISをファッションか何かと勘違いした素人の集まり以下』などと断じておられました。それ故現地ではIS学園の生徒達との衝突は必然と考えられます』
「・・・・・・確かに、な」
ラウラ・ボーディッヒという少女を現すならば孤高の狼少女、もしくは人慣れしない血統書付きの猫、と言った感じか。
少しでも打ち解けれさえ出来ればちょっと天然気味の可愛い少女なのだけれど。
『本国がIS学園への派遣に許可を出したのは隊長1人のみ。我々には非常お~~~~~~~~~~に残念な事に、通信での情報提供もしくは要請された物資の提供などでしか隊長への手助けを行えません。
なのでミシェル大尉と奥方には、主に隊長の学生生活におけるサポートをお願いしたいのです!もちろん、我々部隊員からの要請である事は伏せて、ですが・・・・・・』
なんかもう血を吐きそうな位苦渋の決断といった感じの声であった。
そういえば副隊長含めた黒ウサギ部隊の人間って全員隊長溺愛してたっけなぁ、と思い出す2人。
「・・・・・・分かった。出来る限りのフォローはしよう」
『是非ともお願いします!それからもう1つ頼みがあるのですが』
「何ですか?」
『日本の学校といえば臨海学校!体育祭!文化祭!修学旅行!その他諸々様々な学校行事が行われる!そうでしたね、ミシェル大尉!?』
「あ、ああ・・・・・・」
いきなりテンション急上昇なクラリッサの声に流石のミシェルもちょっと声が退ける。
『我ら黒ウサギ部隊にはそれら隊長の晴れ舞台の全記録を未来永劫伝えるという義務があるのです!しかし我々が出向けない以上現地の協力者であるお2人に頼むほかありません!』
「えっと、つまりラウラの学園での生活とか行事とかの様子を撮影して送って欲しいって事?」
『その通り!値段はそちらの言い値で構いません!流石に機密情報までは取引できませんが、何なら夫婦生活をより満たす為の精力剤といった品々もお送り致します』
「そんな物必要ありませんよ!今だけでも十分激しい位なのにもっと凄くなったら僕壊れちゃうよぉ!!」
「・・・・・・すまん。次からはもう少し抑えよう」
『変わらず円満なご様子で何よりです』
シャルロット自爆。真っ赤な顔から湯気を立ち上らせる彼女は置いといて、
「・・・・・・写真の方も出来る限りの事はしよう」
『ありがとうございます!それでは<シュヴァルツェア・ツヴァイク>のプライベート・チャネルの番号をお教えしますのでそちらをご利用下さい!』
ISのコア・ネットワークは音声のみならず画像のやり取りやリアルタイムでの映像通信も可能である。元が宇宙空間での作業に用いる事が前提の代物だっただけあり、機外などでの作業状況を逐一仲間に報告する為だ。
でも軍におけるISのプライベート・チャネルって緊急通信暗号用の回線だった筈だからコレも一応機密事項だった気が。いいのかそれ。
『日本ではそういう時こう言うそうです。『こまケぇ事は良いんだよ』と』
「そうか・・・・・・」
『それでは失礼。交信、アウト』
切れた電話片手にミシェルはすぐ隣のシャルロットと顔を見合わせた。
「・・・・・・どうしたものか」
「ラウラが転校してくるのかぁ・・・・・・クラリッサさんも言ってたけど大丈夫かな?あの子って中々人を寄せ付けない所があるもんね」
「そうだな・・・・・・とにかく本人がこの学校に慣れてくれるまで支えよう。幸い織斑先生も居るからいざという時のストッパーになってくれるだろう」
「確か織斑先生ってドイツ軍でもしばらく教えてたんだっけ?」
「・・・・・・ああ。ラウラはその時の教え子だったらしい。恩人、とも言っていたな。その割に一夏の事は大分嫌っていたが」
この時期にラウラが転校してくる理由を推測するとすれば幾つか予想は出来る。
ドイツ製第3世代型ISの稼働データ取りと宣伝、ラウラの目を通して分析される他国のISの評価データ、世界に2人しか居ない男性IS操縦者の調査、そして―――――
「・・・・・・どちらにしても、しばらくは忙しくなりそうだ」
何より。
思い込んだら一直線なあの少女が、恩師の偉業を台無しにした存在を放っておく筈が無い。
――――――ミシェルの懸念は的中する。
「・・・・・・いきなり何しやがる」
翌日の月曜日。ラウラの転校初日。
クラス中が唖然として見守る中、一瞬の内に3つの出来事が起こった。
「フン、良い目をしているな」
一夏の元まで近づいた銀の少女が一夏に平手打ちを見舞い、それを一夏が受け止め、同時にミシェルが少女の振るった腕を掴む。
左目を眼帯で覆われているにもかかわらず、片方だけのラウラの眼光は誰の双眼よりも鋭くギラついていた。
「だが私は認めない。今ここで宣言しよう。教官の栄光を奪った貴様を、必ず完膚なきまでに叩きのめしてやろう」
「・・・・・・言いたい事は分かるけどな。だからってハイそうですかってアッサリやられてみせると思うなよ?」
交わされ合う宣戦布告。
こりゃ予想以上に面倒な事になりそうだと、ミシェルは頭を抱えた。
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感想で皆さんに様々なご意見を言われましたが、自分も書いてから(ノ∀`)アチャーと思ってしまいました。学習しろよ自分。
でも一応これまでのとは違う路線のつもりです。ハーレムじゃないよ!幼馴染丼だよ!男の方は喜ぶ以前に思いっきり戸惑ってます。
いやまあ似たようなもんだろゴラァと言われてしまえばそれまでですが。