<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.27061の一覧
[0] 【本編 第六十六話投稿】インフィニット・ストラトスcross BLADE [ドレイク](2012/03/06 23:51)
[1] 第一話[ドレイク](2011/06/18 23:41)
[2] 第二話[ドレイク](2011/04/11 00:42)
[3] 第三話[ドレイク](2011/04/24 16:50)
[4] 第四話[ドレイク](2011/05/04 16:42)
[5] 第五話[ドレイク](2011/07/10 22:22)
[7] 第六話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[8] 第七話[ドレイク](2011/05/08 17:18)
[9] 第八話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[10] 第九話[ドレイク](2011/05/18 07:20)
[11] 第十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[12] 第十一話[ドレイク](2011/05/21 15:46)
[14] 第十二話[ドレイク](2011/06/05 22:59)
[15] 第十三話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[16] 第十四話[ドレイク](2011/06/05 22:57)
[17] 第十五話[ドレイク](2011/06/09 21:54)
[18] 第十六話[ドレイク](2011/06/18 23:42)
[19] 第十七話[ドレイク](2011/06/27 07:11)
[20] 第十八話[ドレイク](2011/07/02 09:04)
[21] 第十九話[ドレイク](2011/07/03 15:03)
[22] 第二十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[23] 第二十一話[ドレイク](2011/07/10 18:35)
[24] 第二十二話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[25] 第二十三話[ドレイク](2011/07/18 17:02)
[26] 第二十四話[ドレイク](2011/07/20 19:53)
[27] 第二十五話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[28] 第二十六話[ドレイク](2011/07/24 18:17)
[29] 第二十七話[ドレイク](2011/11/29 00:54)
[30] 第二十八話[ドレイク](2011/07/26 23:25)
[31] 第二十九話[ドレイク](2011/07/28 23:25)
[32] 第三十話[ドレイク](2011/07/30 08:06)
[33] 第三十一話[ドレイク](2011/08/12 20:11)
[34] 第三十二話[ドレイク](2011/08/14 00:31)
[35] 第三十三話[ドレイク](2011/08/19 21:07)
[36] 第三十四話[ドレイク](2011/08/21 12:05)
[37] 第三十五話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[38] 第三十六話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[39] 第三十七話[ドレイク](2011/09/17 22:51)
[40] 第三十八話[ドレイク](2011/11/25 00:07)
[41] 第三十九話[ドレイク](2011/09/20 21:57)
[42] 第四十話[ドレイク](2011/09/23 20:59)
[43] 第四十一話[ドレイク](2011/09/24 23:26)
[44] 第四十二話[ドレイク](2011/10/01 20:44)
[45] 第四十三話[ドレイク](2011/10/05 23:47)
[46] 第四十四話[ドレイク](2011/10/09 01:09)
[47] 第四十五話[ドレイク](2011/10/11 20:01)
[48] 第四十六話[ドレイク](2011/10/13 20:04)
[49] 第四十七話[ドレイク](2011/10/15 17:38)
[50] 第四十八話[ドレイク](2011/10/19 23:08)
[51] 第四十九話[ドレイク](2011/10/23 23:10)
[52] 第五十話[ドレイク](2011/10/26 00:38)
[53] 第五十一話[ドレイク](2011/10/30 19:36)
[54] 第五十二話[ドレイク](2011/11/01 07:18)
[55] 第五十三話[ドレイク](2011/11/03 22:14)
[56] 幕間 その一[ドレイク](2011/11/05 16:56)
[57] 第五十四話[ドレイク](2011/11/07 22:46)
[58] 第五十五話[ドレイク](2011/11/10 23:54)
[59] 第五十六話[ドレイク](2011/11/13 01:33)
[60] 第五十七話[ドレイク](2011/11/16 23:06)
[61] 第五十八話[ドレイク](2011/11/23 09:31)
[62] 第五十九話[ドレイク](2011/12/04 00:28)
[63] 第六十話[ドレイク](2011/11/29 20:45)
[64] 第六十一話[ドレイク](2011/12/06 22:37)
[65] 第六十二話[ドレイク](2011/12/04 21:39)
[66] 第六十三話[ドレイク](2011/12/06 21:55)
[67] 第六十四話[ドレイク](2011/12/11 02:24)
[68] 第六十五話[ドレイク](2011/12/12 18:00)
[69] 第六十六話[ドレイク](2011/12/17 22:39)
[70] 本編とは全く関係がないやばいネタ[ドレイク](2011/05/07 20:12)
[71] 20万PV突破記念外伝[ドレイク](2011/07/05 22:45)
[72] 外伝IF【装甲悪鬼村正とのクロス有】[ドレイク](2011/06/18 22:01)
[74] 外伝IF その二[ドレイク](2011/06/18 22:02)
[75] 外伝IF その三[ドレイク](2011/06/20 22:09)
[76] 外伝IF その四[ドレイク](2011/09/03 08:41)
[77] 外伝IF その五[ドレイク](2011/09/25 17:18)
[78] 外伝IF その六[ドレイク](2011/10/16 21:41)
[79] 外伝IF その七[ドレイク](2011/09/29 00:22)
[80] 外伝IF その八[ドレイク](2011/09/29 22:53)
[81] 外伝IF その九[ドレイク](2011/10/02 21:13)
[82] 外伝IF その十[ドレイク](2011/10/16 21:42)
[83] 外伝IF その十一[ドレイク](2011/11/02 18:01)
[84] 外伝IF その十二[ドレイク](2011/11/20 00:01)
[85] 没ネタ(Dies iraeとのクロス)[ドレイク](2011/08/23 18:09)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27061] 第七話
Name: ドレイク◆f359215f ID:613a5057 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/08 17:18
<第七話>

いま、志保がいるのはIS学園生徒会室、今朝がたクラスの担任から、昼休みにここに来るように言われたわけだが…………
室内にいるのは志保を除き三名、そのうち一人は昨日会った布仏本音、本音のそばに寄り添う眼鏡に三つ編みのいかにも委員長といった感じの三年生、そして――――


部屋の中心の机、おそらくは生徒会長の机だろう、それに腰掛けているということはこの人物こそが簪さんの姉である、IS学園生徒会長、更識楯無なのだろう。
確かに髪の色とか、簪さんの姉であることを如実に表している。
その盾無さんだが、まるでどこぞの司令官のように机に両肘をつき、顔の前で両手を組んでいる。
表情は組まれた手と、前髪によってここからではよく見えない、そして何より――――



(いや、とてつもなく怖いんですけど!? 会長をこんなに怒らせるようなことしたか私は!?)



そう、目の前の生徒会長様は現在進行形で、大魔神も真っ青になるぐらいに、全身から怒りのオーラを立ち昇らせていた。
よくよく見てみれば、ISらしきものが陽炎のように揺らめいては消えている、おそらくはISを量子変換直前で出し入れしているのだろう、え~と……つまり、なにか気に障る事を言ったらISでぼこるということか?
本当に声を大にして言いたい………どうしてこうなった!?


「楽にしていいわよ、一年四組所属、衛宮志保さん」


にこりと、微笑む会長、そう、吹雪を想像させるような冷たい微笑みだ。
こんなものを向けられて楽にできるわけがない、壮絶に雰囲気と言葉が合致していなかった。
ああ、どうして自分に関わってくる女性はこうも一癖も二癖もある人物ばかりなのだろう、あかいあくまとか、きんのけものとか、高校の後輩とか、割烹着のあくまとか………
こんな時簪さんに出会えて本当によかったと思う、かなうことなら彼女にはこのまままっすぐに成長してほしいと痛切に願う。
もし万が一、彼女もこんな風になり果ててしまったら、しばらくは立ち直れそうにない。
明日の昼御飯は、より手間暇かけて作ろうと決めた、簪さんの食事風景を存分に見て癒されることにしよう。
などと、少々危険な方向に現実逃避していると、会長が本題を告げた。


「今日、ここに来てもらったのはね、昨日の無断欠席について、二、三点聞きたいことがあるのよ」
「そこまで……問題になるほどのことでしょうか?」
「ううん、そんな事ないわよ。泣きながら走り去って行ったクラスメイトを慰めにいった。ただそれだけのことだもの、手放しに誉めることはできないけど、あの子の姉としてお礼を言わせてもらうわ。けどねえ――――」


パチン、と手に持った扇子を小気味いい音を鳴らして閉じると、会長は扇子の先端を会議用のディスプレイのほうに向ける。
それに合わせ、本音がディスプレイを操作する、するとそこには――――




――――まるで猫のように気持ちよさげに芝生に寝転ぶ簪さんに、穏やかな笑みを浮かべて膝枕をしている自分の姿、時折簪さんの頭を撫でたりしているところまでバッチリ映っている。




うわぁ、こうして客観的にみると、ものすごく恥ずかしいなこれは…………
実を言うと、こうして映像をとられるのは想定内だった、IS学園なんていう重要機密満載の場所が、世間一般と同程度のセキュリティーなはずがない、実際、昨日も監視カメラは確認していた。
だけどまあ、あの流れでどいてくれなんて言えるわけないし、そこまで大それた行為ではないから放置してたんだが、どうやら、会長にとっては大それた行為だったらしい。


「こんな……こんなにもうら、コホン、………破廉恥な!! 行為を学園内でするなんて、厳重に注意しなきゃいけないわね」
「いま、思いっきりうらやましいって言いかけたよな、アンタ」
「そして学園というところは、何かを学ぶのが本分。そしてここIS学園で一番重視されるのはISの操縦技術――――」
「ああ、………………そういうことですか」


いい加減、会長の目的も大体わかった。
昨日簪さんから聞いた話から推測すると、あまりにも出来過ぎた姉に対し簪さんはコンプレックスを抱いている、当然姉妹の仲はあまり良くなく、妹と仲良くしたい姉は不満が溜まっていたんだろう。
そんなときに、妹と仲睦まじくしているところを見てしまって、たまりにたまったものが爆発したということか。
言葉にすると可愛らしい嫉妬だが…………………………………お願いだから、その癇癪を発散するのに、物騒なものを持ち出さないでくれ……
かつての経験で慣れているとはいえ、疲れるんだそういうことは………………、今度、保健室で胃薬をもらってくるか、ハア………憂鬱だ。


「あなたには、私自ら実践形式でISの操縦を教えてあげるわ!!」
「ワーイ、ウレシイナア」


予想通りど真ん中ストライクな言葉を言った会長に対し、凄まじい棒読みで返しても誰にも責められないだろうと思う。


=================


「さて、これで準備はOKね」
「ええ、人伝に聞いていたあなたの有能さを遺憾なく、間違った方向に全力で出し尽くした結果ですけどね」
「なんで私はここにいるんですか…………」


生徒会室での問答の後、衛宮志保、更識楯無、山田真耶の三名は、それぞれISを装着してアリーナに集結していた。
志保と楯無はともかく、一年一組副担任である麻耶がなぜここにいるかというと、一言で言って、押し付けられたからだ。
楯無が行った手回しは完璧なものであった、アリーナの使用許可に始まり、志保が使う練習用IS<打鉄>と各種武装の貸し出し許可、後で問題にならないために後輩への実技指導という形も整えた。
そして、万が一の不慮の事故が起こった場合に備え、監督役の教官一名を選出してほしいと教師陣に依頼し、結果、その役目が真耶に回ってきたのだ。
ただ単に、押しの弱い麻耶に対し、他の連中が面倒事を押し付けたともいう。
ちなみに、同僚である織斑千冬が真っ先に真耶に押し付けた、まさしく鬼の所業である。


「さ~て、今からお仕置き(実技指導)を始めましょうか」
「おい!? 本音と建前が逆だ!!」
「知ってる? 建前って投げ捨てる物よ」
「断じて違う!!」
「お願いですから、早く始めて早く終わらせましょうよ………」
「そうね、さっさと始めましょうか」
「はあ……………ほんとに疲れる」
「溜息つくと幸せが逃げるわよ」
「誰のせいだっ!!」
「お願いします、早く終わらせて~!!」


ひっかきまわす楯無に対し突っ込む志保、二人ともが盛大に真耶のことを無視していた、………おい、それでいいのか正義の味方。
そんな不毛な問答を終えると、二人は表情を引き締める。理由が理由なだけにイマイチ締まらないが。
それを見て取った真耶は、試合開始を告げる、その眼には光るものが滲んでいた。


「それでは、更識さん対衛宮さんによる、実戦形式の訓練を始めます。用意はいいですか?」
「勿論OKですよ」
「こちらも同じく」
「それでは、試合……開始!!」


麻耶の号令とともに、二人は同時にバックステップを行い距離をとる。
楯無のほうは、流石に本格的な訓練も行っていない一年生に対して、初手から全力で仕掛けるつもりはないらしく、様子見に留めていた。時間をかけてじっくりいたぶるつもりなのかもしれない………
対する志保のほうも様子見に留まっていた、先に言った通り、志保の操縦経験は素人に毛が生えた程度、せいぜいが学園入試の際に乗ったぐらいだ。
勿論、だからと言ってただやられるだけというのも癪なので、相応に粘るつもりでいた。
だからこそ、不用意に動かず、まずは動作の感覚を把握することに勤めていた。
同時に視界に投影されたディスプレイを操作し、武装の確認を行う。


(武装は……近接戦用の日本刀型のブレード一本、アサルトライフル<063ANAR>二挺、スナイパーライフル<061ABSR>一挺、グレネードランチャー<NUKABIRA>一挺、全距離に無難に対応できるラインナップだな、一応会長に無抵抗な標的を嬲る意思はないということか。まあ、これだけあれば、一応戦えるか――――)


武装の確認を終えた志保は、アサルトライフルを量子展開し、両手に顕現させる。
シンプルなデザインにまとめられた二つのライフルの銃口から、マズルフラッシュが断続的に飛び出る。
楯無はその銃撃を、軽やかな機動を描き、余裕を持ってよけてみせる。
そのよどみない機動を見た志保は、楯無の高い技量と、自身が空戦で勝てる可能性がないことを悟る。


(国家代表になるのだから、相応の技量があって当然か、私が空に上がったところで即座に叩き落とされるのが目に見えている。地上戦のみに絞ったほうがまだ可能性があるか……)


そう判断すると、スラスターを吹かしジグザグに大地を滑りながらアサルトライフルを撃ち続ける。
その動きは回避機動をとっているというより、一刻も早く動きに慣れるためといった感じだ。
その動きは、先の楯無の回避機動と違い、ぎこちなさが随所に残るものであり、志保の推測の正しさを物語っていた。


(ふうん、ISの要である空戦を切って捨てたのね。いくら操縦時間の差がダイレクトに出てくるからといえ、思い切ったことするものだわ)


楯無のほうも、志保の機動からそのことを読み取った、だからと言って手心を加えるつもりはなく、自身の専用IS<ミステリアス・レイディ>の専用ランス<蒼流旋>に内蔵されている四門のガトリングガンを発射する。
単純比較にして、志保の二倍の火力が吐き出される。当然このまま撃ち合いを続けるならば確実に志保がじり貧になるのだが、現実は違っていた。


(くっ…何なの? この並外れた射撃精度、とてもじゃないけどただの一年生ができることじゃないわよ!?)


まるで、吸い込まれるように自身へと向かう弾幕を見ながら、楯無は内心で毒づいた。
楯無が放つ銃弾も、志保に対し確実に有効打を与えているのだが、その状態で五分に持ち込まれるということは、楯無より志保のほうが射撃の腕で上回っているということだった。


(ひょっとしたら、この子、何らかの武術を学んでいるのかしら、妙に戦いなれた感じがするというか、普通こんな状況に追い込まれれば、パニックになって出鱈目な行動をとるのに、堅実な行動しかしてないわね。…………事前に調べた限りでは、目立ったところのない平凡な子だったのに)


そう、開始直後に不用意に動かず、空戦を行う事の不利を悟って地上戦のみに限定し、まずはアサルトライフルの射撃を行い、回避機動をとりつつ機体に習熟していき、射撃精度は国家代表も認めるほど。
こんな素人いるわけがない、これがもし、いきなり見事な空戦をやってのけたぐらいなら、並外れた才能や素質で済ませられるが、しかし、志保が行った行為は、才能などとは無縁であり、対極に位置する行為だ。
明らかに、場慣れした者のそれである、そして、それによって楯無は大きく勘違いをしてしまう。
平凡な経歴であるにもかかわらず、異質な強さを見せつけ、国家代表である自分の妹に急接近している。
更識家が代々、諜報関係に従事していることと、最愛の妹がらみであることを差し引いても十二分に怪しかった。


(ここは、後に何とか復帰できるぐらいに痛めつけたほうがいいかしら……・なんにせよ、少々本気で行ったほうがいいかもしれないわね)


少々物騒なことを考えつつ、楯無はスピードを上げていく、ほぼ無意識のうちに<打鉄>と同程度に抑えていたスラスター出力を、<ミステリアス・レイディ>本来のレベルにまで引き上げる。
一層強い輝きを放ちながら、複雑な機動を描く<ミステリアス・レイディ>、機体を包む水のヴェールの輝きに彩られながら、妖精のごとき舞を披露するその姿は、まさしく霧纏の淑女の名にふさわしいものだった。
その幻惑するような軌道に志保は戸惑いを見せる、だんだんと射撃の命中率が低くなり、五分だった戦況は確実に楯無のほうに傾きつつあった。
しかし、志保の戸惑いの原因は他にもあった。


(くっ、照準が微妙にずれる………、仕方がない、FCS<火器管制>の内、照準関係をすべてカット!!)


この学園の上級生、教師陣が聞いたら、口をそろえて馬鹿か貴様!! と言いそうなことを志保は平然とやった。
ISの照準というものは、操縦者本人による照準と同時に、ISのほうもFCSによる自動補正をかけるのだ。
お互い高速、かつ、従来の航空兵器と一線を画す柔軟な機動性能で動く敵機など、IS側のサポートがなければ当てられるはずがない。
しかし、その補正もあくまで普通の人間が使うことを想定して作られている、いくら魔術を使っているとはいえ4㎞先ぐらいなら、平然と何の補助もなく命中させられる人間用には作られていない。
そして、FCSを使わないということは、必然的に敵機側のロックオンに対する警告が消えるということであり――――


(なんで完全マニュアル照準でこんなに狙いが精確なのよ!? やっぱりこの子には何かある!!)


勘違いの上に成り立つ疑念を、さらに強化してしまうはめになったのだった。
そして楯無は<ミステリアス・レイディ>の固有武装である清き熱情<クリア・パッション>を使うことを決意した。
この武装はナノマシンで構成された水を霧状にして攻撃対象物へ散布し、ナノマシンを発熱させることで水を瞬時に気化させ、その衝撃や熱で相手を破壊する応用性の高い武装だ、拡散範囲は限られているが初見でこれを回避することはかなり難しい。
楯無は、志保の周りを旋回するような軌道をとりつつ、<クリア・パッション>を散布していく、勿論その間にもガドリングガンによる射撃を行い、志保が<クリア・パッション>の有効範囲から抜け出ないように縫いとめていた。
これであとは<クリア・パッション>を起動させれば、志保は爆炎に飲み込まれて終わる。


――――しかし


突然、志保はアサルトライフルを格納すると、グレネードランチャーを展開する。
いきなりの武装変更に首をかしげる楯無をよそに、志保は楯無からの射撃を無視して、グレネードランチャーを全周囲に乱れ撃った。
極大の火炎が志保を包むように乱れ咲き、アリーナに轟音が響き渡る。
傍目から見れば志保が、ガドリングガンの被弾を無視してまで意味不明な行動をとったように見える。
しかし、楯無からしてみれば、不可視であるはずの<クリア・パッション>を察知してグレネードの爆炎で吹き飛ばしたようにしか思えなかった。
事実、爆炎によって<クリア・パッション>は吹き飛ばされ、志保はその有効範囲から抜け出てみせた。
明らかに<クリア・パッション>の存在を認識しなければ、とるはずのない行動だった。


(どうやったらそんなまねできるのよ!? まさか見えてたって言うの?)


流石の楯無もこれには動揺を隠せず、惚けた顔をさらしてしまう。
それは志保に、自身の行動の正しさを確信させた。


(やっぱり何らかの、不可視の兵器を展開していたか)


志保が<クリア・パッション>を察知できたのは、かつての経験からくるものだ
衛宮士郎の戦いの中には、外法に走った魔術師の討伐も幾度となくあった。
そういったときはたいてい、魔術師の拠点<工房>に自ら踏み入った。
工房というのは魔術師の拠点であり、自身が探求した魔道を守るための要塞でもある。
必然的に幾多のトラップが仕掛けられている、おまけに衛宮士郎の魔術耐性はお世辞にもいいといえず、いやほとんど一般人と変わらないといってもいいだろう。
故に、魔眼による暗示やトラップを喰らうことは一番避けたいことであり、そういったものに対する警戒は、並外れて鍛えられていた。
事実、かつて戦った魔術師の中には、水をミスト状にして操り敵の体内に直接毒物を打ちこむといったことをしてきたの者もいた。
<クリア・パッション>などの様な兵器は気付かれないからこそ有用であり、気付かれてしまえばそれも半減してしまう。
ちなみに今回志保が気付けたのは、周囲の湿度の急激な上昇を感じたからだ。普通ならば気にもかけないような事象にも警戒を向けるのは流石だと言っていいが、それによって楯無の警戒心はトップレベルにまで引き上げられたのは、志保にとっては不幸というほかなかった。


(決めた……これが終わったら、この子のことを徹底的に調べるわ!! ここまでしておいて何も無いって有りえない)
(なんだろう……抵抗すればするほど、深みに嵌まっている気がするな………ここは勝負に出てさっさと終わらせるべきか?)


何か、いやな予感を感じる志保と、当初の目的をすっかり忘れている楯無、その時――――


カチカチッ――――


そんな音を鳴らして志保が撃っていたアサルトライフルが弾切れを告げる、自身のミスを悟り顔を顰める志保に対し、ここをチャンスと見る楯無、楯無はガドリングガンを打ち続けながらもう片方の手に蛇腹剣<ラスティー・ネイル>を展開、志保に対し突撃を仕掛ける。
このタイミングでは武装の再展開は間に合わない、楯無はそう判断したが――――


――――あろうことに、志保は弾切れになったアサルトライフルを楯無に向かって投げつける。


鉄塊二つが高速で楯無に飛来する、それを楯無は悪足掻きと判断する、確かにその判断は間違っていない、通常ならば命中したところでISには何らダメージを与えないだろう。
しかし、それは普通に投げた場合の話、志保は普通になど投げていなかった。
志保が使った技は鉄甲作用と呼ばれるもので、聖堂教会に伝わる投擲技法であり、投擲物に出鱈目な威力を付加することができる技だ。
かつて、聖堂教会の切り札、埋葬機関の第七位と出合った際に教えてもらい、衛宮士郎の魔術との相性の良さも相まって、好んで使っていた技でもある。


命中した途端、轟音を伴って楯無の体が大きく揺れる。


(嘘!? なんでこんなに威力があるの、ってマズイ!!)


ありえない衝撃に一瞬楯無の動きは止まる、何とか視線を戻せば、いつの間にやらスナイパーライフルを構えた志保の姿、無慈悲に放たれる弾丸は、狙い過たず楯無の頭部に命中した。


(これで決まったか?)


弾丸が命中したことを確認した志保、しかし、必殺を期して放たれた弾丸は――――




――――楯無の頭部にのみ展開された水のヴェールによって防がれていた。




(何だと!?)
(危なかったぁ…でもこれで!!)
  

同時に楯無は瞬時加速と同時に<ラスティー・ネイル>を揮う、スナイパーライフルというとり回しの悪い武器を構えている志保は、その一撃を完全によけきることはできなかった
揮われた銀閃は、直撃はしなくとも<打鉄>のシールドエネルギーを大きく削り取る。そして――――



「志保さんのシールドエネルギー残量零、更識さんの勝利ですね」



試合を見届けていた真耶の宣言により、この戦いは楯無の勝利に終わった。


=================


「やっぱり勝てませんでしたね」
「私として戦いになったことが、不思議でたまらないんですが・……」
「そうよねえ、私もここまで手こずるとは思わなかったわ」


戦いを終えて、三人はISを解除して集まっていた。
当然の結果だというような表情をしている志保に対し、楯無と真耶は怪訝な目を志保に向けていた。
普通、素人と国家代表が戦えば、瞬殺で終わるのが道理だ。
にもかかわらず、今の一戦は戦いとして成立していた、そんなことをすれば訝しむのも無理はない。
実際最後の一撃は、楯無にとってもかなり危ない一撃だった。
あれがもし決まっていれば、勝者は逆転していただろう。


「………ほんと、あなたって怪しいわね、いろいろと教えてほしいわ」
「そ、そうですか!?」


ジト眼で睨みつける楯無、それにたじろぐ志保、そこに――――




「私も、いろいろと教えてほしい、………………姉さんにね、……何をやっているの?」




――――絶対零度の冷たさを帯びた、簪の声が響く。


「え……? 簪ちゃん、どうしてここに」
「本音から聞いたの、姉さん……」


思わぬ乱入者にたじろぐ楯無、まあ、堂々と言えることではないことの自覚はあったのだろう。
志保はそんな混乱した状況に頭を抱え、真耶のほうはそそくさと逃げていた、。


「え~と、簪ちゃん、あのね……」


何とかこの場を収めようと必死になって言葉を探す楯無、そんな姉を目の前にして簪はついに爆発した。
自分を救ってくれた、好意を抱いている人物に私刑まがいのことをされては簪のほうも我慢の限界だったらしい。抑えきれぬ衝動が、言葉となって楯無に向かう。




「お姉ちゃんなんか、――――大嫌いっ!!」




その言葉に、楯無は完全に固まった、目に入れても痛くないほどに愛している妹からの完全な拒絶の言葉は、楯無にとっては致命的な一撃だった。
さすがにこれ以上はまずいと判断した志保は、二人の間に割って入った。


「ちょっと落ち着け、簪さん」
「でも、志保!!」
「なんでお姉さんがこんなことをしたか教えようか?」
「えっ……・」
「ちょ………待ちなさい!!」


志保の思いもよらぬ一言に焦りを見せる楯無、姉としては妹にはかっこいいままでいたいのに、それを言われては、姉の威厳は木っ端みじんに崩れ去るだろう。
焦りを見せる楯無を無視して、志保は言葉を続ける。


「いいや待たない、簡単にいえばな、妹と仲良くしたいのに、見も知らぬやつが妹と仲良くしているから、嫉妬したんだよ」
「そ、そうなの!?」
「そうそう、昨日の膝枕の映像を見ている会長、ほんとに不機嫌だったからな」
「あ、あれ………見られてたの!?」
「ああ…………、姉としての威厳が崩れ去る、ひどいわ衛宮さん!! あなたにはデリカシーというものはないの!!」
「悪いが昔から鈍感だのなんだの言われ続けたからな、そういったことは期待しないでくれ」


涙目になって志保に詰め寄る楯無、秘密を暴露された怒りというより、秘めた想いをさらされた恥ずかしさが勝っているようだ。
しかし志保はそんな楯無の追及などどこ吹く風で、昨日の膝枕を姉とはいえ、他人に見られていたことを知って、恥ずかしさのあまりフリーズしている簪に声をかける。


「そうだ簪さん、今日の夕食だけど、会長と一緒に食べないか?」
「え……姉さんと?」
「え……簪ちゃんと?」


志保の突拍子もない言葉に、更識姉妹は再び固まるのだった。



<あとがき>
う~ん、相変わらず戦闘描写が上達しないなあ
あと、みんなカレイドルビー大好きですね(汗
しかし、あの話の続きを書くなんて、作者にできるのか?


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.050903081893921