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No.27061の一覧
[0] 【本編 第六十六話投稿】インフィニット・ストラトスcross BLADE [ドレイク](2012/03/06 23:51)
[1] 第一話[ドレイク](2011/06/18 23:41)
[2] 第二話[ドレイク](2011/04/11 00:42)
[3] 第三話[ドレイク](2011/04/24 16:50)
[4] 第四話[ドレイク](2011/05/04 16:42)
[5] 第五話[ドレイク](2011/07/10 22:22)
[7] 第六話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[8] 第七話[ドレイク](2011/05/08 17:18)
[9] 第八話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[10] 第九話[ドレイク](2011/05/18 07:20)
[11] 第十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[12] 第十一話[ドレイク](2011/05/21 15:46)
[14] 第十二話[ドレイク](2011/06/05 22:59)
[15] 第十三話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[16] 第十四話[ドレイク](2011/06/05 22:57)
[17] 第十五話[ドレイク](2011/06/09 21:54)
[18] 第十六話[ドレイク](2011/06/18 23:42)
[19] 第十七話[ドレイク](2011/06/27 07:11)
[20] 第十八話[ドレイク](2011/07/02 09:04)
[21] 第十九話[ドレイク](2011/07/03 15:03)
[22] 第二十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[23] 第二十一話[ドレイク](2011/07/10 18:35)
[24] 第二十二話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[25] 第二十三話[ドレイク](2011/07/18 17:02)
[26] 第二十四話[ドレイク](2011/07/20 19:53)
[27] 第二十五話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[28] 第二十六話[ドレイク](2011/07/24 18:17)
[29] 第二十七話[ドレイク](2011/11/29 00:54)
[30] 第二十八話[ドレイク](2011/07/26 23:25)
[31] 第二十九話[ドレイク](2011/07/28 23:25)
[32] 第三十話[ドレイク](2011/07/30 08:06)
[33] 第三十一話[ドレイク](2011/08/12 20:11)
[34] 第三十二話[ドレイク](2011/08/14 00:31)
[35] 第三十三話[ドレイク](2011/08/19 21:07)
[36] 第三十四話[ドレイク](2011/08/21 12:05)
[37] 第三十五話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[38] 第三十六話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[39] 第三十七話[ドレイク](2011/09/17 22:51)
[40] 第三十八話[ドレイク](2011/11/25 00:07)
[41] 第三十九話[ドレイク](2011/09/20 21:57)
[42] 第四十話[ドレイク](2011/09/23 20:59)
[43] 第四十一話[ドレイク](2011/09/24 23:26)
[44] 第四十二話[ドレイク](2011/10/01 20:44)
[45] 第四十三話[ドレイク](2011/10/05 23:47)
[46] 第四十四話[ドレイク](2011/10/09 01:09)
[47] 第四十五話[ドレイク](2011/10/11 20:01)
[48] 第四十六話[ドレイク](2011/10/13 20:04)
[49] 第四十七話[ドレイク](2011/10/15 17:38)
[50] 第四十八話[ドレイク](2011/10/19 23:08)
[51] 第四十九話[ドレイク](2011/10/23 23:10)
[52] 第五十話[ドレイク](2011/10/26 00:38)
[53] 第五十一話[ドレイク](2011/10/30 19:36)
[54] 第五十二話[ドレイク](2011/11/01 07:18)
[55] 第五十三話[ドレイク](2011/11/03 22:14)
[56] 幕間 その一[ドレイク](2011/11/05 16:56)
[57] 第五十四話[ドレイク](2011/11/07 22:46)
[58] 第五十五話[ドレイク](2011/11/10 23:54)
[59] 第五十六話[ドレイク](2011/11/13 01:33)
[60] 第五十七話[ドレイク](2011/11/16 23:06)
[61] 第五十八話[ドレイク](2011/11/23 09:31)
[62] 第五十九話[ドレイク](2011/12/04 00:28)
[63] 第六十話[ドレイク](2011/11/29 20:45)
[64] 第六十一話[ドレイク](2011/12/06 22:37)
[65] 第六十二話[ドレイク](2011/12/04 21:39)
[66] 第六十三話[ドレイク](2011/12/06 21:55)
[67] 第六十四話[ドレイク](2011/12/11 02:24)
[68] 第六十五話[ドレイク](2011/12/12 18:00)
[69] 第六十六話[ドレイク](2011/12/17 22:39)
[70] 本編とは全く関係がないやばいネタ[ドレイク](2011/05/07 20:12)
[71] 20万PV突破記念外伝[ドレイク](2011/07/05 22:45)
[72] 外伝IF【装甲悪鬼村正とのクロス有】[ドレイク](2011/06/18 22:01)
[74] 外伝IF その二[ドレイク](2011/06/18 22:02)
[75] 外伝IF その三[ドレイク](2011/06/20 22:09)
[76] 外伝IF その四[ドレイク](2011/09/03 08:41)
[77] 外伝IF その五[ドレイク](2011/09/25 17:18)
[78] 外伝IF その六[ドレイク](2011/10/16 21:41)
[79] 外伝IF その七[ドレイク](2011/09/29 00:22)
[80] 外伝IF その八[ドレイク](2011/09/29 22:53)
[81] 外伝IF その九[ドレイク](2011/10/02 21:13)
[82] 外伝IF その十[ドレイク](2011/10/16 21:42)
[83] 外伝IF その十一[ドレイク](2011/11/02 18:01)
[84] 外伝IF その十二[ドレイク](2011/11/20 00:01)
[85] 没ネタ(Dies iraeとのクロス)[ドレイク](2011/08/23 18:09)
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[27061] 外伝IF その二
Name: ドレイク◆64dd2296 ID:613a5057 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/18 22:02
なんかそれなりに好評だったので、続きをちょっとだけ書いてみた。









「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」


誓約を唱えると同時、深紅の鷹と化した志保の体が、いくつもの刃金へと分たれる。
一夏の体を、飛翔する刀刃が覆い、一機の武者を顕現させる。
志保に内在する数多の戦術を生かすために、足回りと低速での騎航性能を重視した、美濃関鍛治衆の流れを汲む作りに、頭部は鷹をイメージとした造形、とても即席で志保が成り果てたとは思えぬ、見事な造りであった。
しかしそれも当然のこと、志保の魔術、内界は剣そのもの、ならば、劔冑に成り果てるぐらい造作もないことだ。


「いけるか、“御堂”」
「――――ああ!!」


御堂、劔冑の仕手を現す呼び名。一夏とて、元の世界への帰還方法を得る過程で、劔冑に関する知識は人並み以上にある。
だからこそ、志保がそう呼んでくれたことに、一夏は奮い立つ。
そして一夏は、自身の道を切り開くため、戦場に赴かんとする。


――――しかし、目に入るものがあった。


「悪い、やり忘れたことがあった」
「……なんだ?」


装甲したことにより、自身の体の一部となった志保の魔術回路を起動させ、一夏は火の属性を内包した、新鍛の魔剣を一本投影した。
はじめて使う筈なのに、奇妙なほど使い慣れた、形容のしようがない感覚が駆け巡る。
当然、志保も自信の魔術回路の状況は把握、というかほとんど一夏と一緒に動かしているようなものなので気付かぬはずもなく、作りだした剣を見て一夏のやり忘れたこととやらを把握する。


「弔いか」
「ああ」


襤褸寺の床板に突き刺した魔剣は、内包する炎を持って修平の亡骸もろとも、襤褸寺を赤く染める。
パチパチと爆ぜる音が響く中、数瞬の黙祷をささげた一夏は真上を見上げ、劔冑の推進機関である合当理を吹かす。


「――――行くぜ、志保っ!!」
「了解した、御堂!!」


刃金の翼を広げ、一夏は飛び立つ。




燃え立つ天井を突き破り、無窮の大空へと――――




=================




突然炎上した襤褸寺を見て、兵士たちは自害するつもりかと判断する。
既に村人の殲滅は終了し、残るは摩訶不思議な術でこちらの邪魔をした少女ぐらいなものだった。
兵たちの駆る数打甲冑、九〇式竜騎兵甲の熱源探知で策敵を行っても、二人分の反応があるぐらい。
最早この人狩りも終わった、指揮官から一平卒まで全員がそう思っていた。
中には少女を生きたまま捕らえ、いかに犯し愉しむかの算段を立てているものたちもいた。


それも、寺から突如炎が上がるまでだった。


浮足立つ兵たち。当初はやけになったうえでの心中か、そう思っていたが、それも燃え落ちつつある寺を突き破り、天高く舞い上がる一騎の武者を見るまでだった。
まるで焔な中から新生したかのような、深紅の武者。それは見る者に鳳凰を連想させる、神秘的な光景だ。


「何だ、…………あの武者!?」


茫然とし、一部の兵はそんな間抜けな言葉を発する。
その停滞は、あまりにも致命的。
そのつけを、深紅の武者が虚空に生み出した幾多の刀剣が贖わさせる。
洋の東西、形状、拵えに至るまでバラバラなそれが、流星となって降り注ぐ。


「総員散開!!」


指揮官である真打甲冑の武者が、散開の指示を出すものの、もう完全に手遅れであった。
衝撃と爆風の二重奏が、部隊の殆どをズタボロにする。
深紅の武者は空高くに逃げ去っていく。まるで、この結果などわかりきっている、そう言わんばかりに――――


「逃がすかぁっ!!」


舐められた……相手もするまでもないと、権力ある立場ゆえに醜く肥大していた指揮官のプライドは、深紅の武者の行動をそう認識した。
立場相応の技量を有していたがために、先程の剣雨から逃れ得た指揮官は、自騎の合当理を全力で吹かし、深紅の武者に追いすがって行く。




廃墟と化した山村の上空に、二筋の軌跡が描かれた。




=================




高速で飛翔し、濃密な大気を切り分けてゆく。
普通なら、味わえぬこの感覚に酔いしれるのかも……知れない。だが――――


「御堂、――――剣弾射出によって、敵部隊のほとんどが行動不能、今の内に全速で離脱するべきだ」
「ああ、わかってる…………死んだな」
「ああ、死んだ」


想定などしていない筈の、劔冑と魔術による奇襲。
効果は絶大だ。……そうだ絶大だ。だから死ぬ。人が死ぬ……。


人を殺した。


オレが殺した。


何のために………、生きるためだ。


自分一人の命を守るために、数多の命を、奪った。
天高く駆け上がっているはずなのに、墜ちていくような感覚に包まれる。
志保の声が響く。


「今は、泣け、………今の私からは、御堂の顔は見えん」
「くっ、うぅああ………………………」


血に塗れた自分のためなのか、失われた命のためなのか、涙を流した理由は判らなかった。
志保は言葉を発さず、俺はひたすらに飛び続けていた。
しかし、五分ほど飛び続けていた時、志保の焦りを含んだ声が響いた。


「御堂!! 後方より敵騎襲来、先の部隊の指揮官のようだ」
「………逃げ切れないか?」
「無理だ、速力はこちらが劣っている」


後方から迫る、山吹色の武者。志保の言うとおり、向こうが速い
ならば、どうする、――――判り切ったこと。
俺は、――――死にたくない。だから、戦う。自らの手で、生きるために刃を揮おう。


「志保、速力上昇!! 敵騎の高空(うえ)を獲るぞっ!!」
「了解したっ!!」


通常、劔冑同士の空中戦――双輪懸――は敵騎の上をとろうとする。
劔冑の甲鉄を抜くためには、高空からの重力エネルギーを加味した一撃こそが最も有効とされているからだ。勿論剣技や陰義といったものを駆使し、その条件を無視した有効打を与えるものも少なからずいる。
機首をあげ、天頂を目指す深紅の武者。さながらそれは深紅の弓、天空へと堕ちる流れ星か。


ある程度の高度を得ると反転し、眼下に迫りつつある武者への迎撃態勢をとる。
同時に俺は、内なる世界を検索、――該当アリ――、それなりの処理を施された霊刀を手の内に顕現させる。


双輪が結ばれ、刃が真っ向から激突する。
霊刀は高速で切り結ぶ武者の戦いにも、きちんと耐えうる強度を持っていた。
俺の初手は上段からの振り下ろし、対する武者は刀を振るわず、まずは防御に徹する。
轟音と火花をまき散らしながら、一合目は互いに無傷。俺は二撃目を加えるためそのまま前進、十分な速度が乗ったところで上昇体勢に転じる。


「御堂、敵機はこちらを引き離し、いったん体勢を立て直すつもりのようだ」
「わかった、弓で牽制する、照準補正は頼んだぜ!!」


言うや否や、魔力が体を駆け巡り、黒塗りの弓が握られる。
加速しながらという、不安定な体制であっても、自然と狙いが付けられる。
志保が、必中の軌跡を描き切ったのを感じ取ると、武者めがけ弓を放つ。
音の壁を突き破り、必中の魔弾と化した矢が、狙い過たず命中し敵騎のバランスを崩す。
すかさずそこに追撃をかける。体勢を崩した敵騎、こちらは十分速度の乗った万全の一撃。
勝てると思った、致命の一撃にはならぬとも、逃げられるだけの隙を作らせばそれで済む。そう確信した。
剣筋に油断が乗る。――――武者が吠えた。


「ふざけるなぁ……、叛徒風情がぁっ!!」


聞こえるはずのない、刃の噛み合う音が響く。
武者の剣腕と積み重ねた経験が、不利を覆す。
剣を習う者にとっては残心は忘れてはならぬもののはず、なのに、こうして結果が出る前から勝利を確信した、馬鹿か、と内心自分を罵った。


そんな暇、あるわけないというのに――――


武者は、鍔迫り合いの最中、右手を柄から離し脇差に手をかける。
まずい、そう思った時にはすでに、投擲された脇差が右の翼を射抜いていた。
体勢が、致命的に崩れる。
武者の刃が首筋に迫る。速力はないが、甲鉄の隙間を狙い澄ました、精妙な一撃。
自分の命を確実に刈り取る刃を前に、総身が竦む。


「その首もらったぁああっ!!」
「そうはさせん!!」


だが、俺は一人ではない。心強い相棒が“ここ”にいる。
武者の剣筋に割り込むように現れた刃が、俺の命を守る楯となる。
目前で火花が散り、確実な一撃を不可思議なる技で防ぐ俺たちに向かい、苛立ちをぶつける。


「数多の刀剣を出す、……それが陰義か!!」


だが、そんなものに応えてやる道理などない。というより、そんな余裕が俺になかった。
先の一撃、もし、志保が防いでくれなかったら、確実に死んでいた。
その認識が、体を縛る。体が強張り、刀を握る感触があやふやになっていく。


「臆するな、――――言っただろう、我が身は君を守る刃金だと」
「……志保」
「今、全力で右の翼の応急修理をしている、それまで堪えてくれ、御堂」
「ああ、情けない仕手だけど、フォロー頼むぜ」
「了解!!」


志保の声が、俺に活力をくれる。そうだ……死の恐怖に震えるのは後でいい、今は生き延びること、ただそれだけを成せばいい。
改めて、迫りくる敵機を見据え刃を構える。刀を握る感触が鮮明になり、体の強張りが消える。
そうだ、俺の死ぬ場所は……世界はここじゃない!!
だから、こんなところで死ねるものかっ。


「往生際の悪い輩め、せいぜい足掻くがいいわ!!」


嘲りを含んだ声とともに、武者が上から斬りかかってくる。
先ほどまで有していた俺の優位はすべて消え去り、今はただ、奴の刃をひたすらに、受け続けるしかなかった。
文字通り、鎬を削りとられながら、志保の投影魔術のサポートを受け続けながら、俺は耐え続けた。死にたくない、ただその一心で。
ボロボロになった武器はそのまま放り捨て、自分の体から何かが抜き取られる感覚に耐えて次の武器を作り出す。
体力と魔力、おまけに精神的な消耗も加わって、自分のことながら感心するぐらいに耐え抜いていた。


「ちいっ、死に体の癖に粘りよるわっ」


いつまでも落とせぬことに、武者がいら立ちの声をあげるぐらいには――
そして、待ちわびた志保の言葉が聞こえた。


「御堂、応急修理完了、反撃の態勢は整ったぞ」
「そうか、けど、位置関係はこっちの不利のままだしな、どうするか……」
「――――!? 御堂、敵機の反応に変化がみられる、気をつけろ!!」
「何っ!?」


見れば武者は左手をかざし、掌に紫電を纏わせていた。
明らかに、真打のみが備える特殊能力、陰義を発動させようとしていた。あの様子じゃあ間違いなく、奴の有する陰義は――――


「電撃なんてどうやってよければいいんだよッ!!」
「くるぞっ!!」


動揺する俺をよそに、武者が発動の呪句(コマンド)を唱える。


「発雷!!」
「ぐうぅああああぁっ!!」
「――――くぅっ」


放射状の稲光が、俺たちを貫き甲鉄表面と肌を焦がしていく。
今まで味わったこともない、死へ至る激痛が俺を襲う。
雷光が視界を奪い、轟音が聴覚を奪っていく。そして、武者が俺の死を宣言する。


「クックックっ、わが雷切の陰義の味は格別だろう。――――死出の餞に、最大出力で喰らわせてやろう」


雷撃の影響でろくに身動きできない俺たちに、武者は舐め切った言葉を投げつけてくる。
先の一撃とは比較にならない紫電が、左の掌に集ってゆく。
あれを喰らえば、確実にオレは焼き殺されるだろう。だというのに、焦りに満ちた頭では解決策が見えてこない。
あまりの緊張に時間が止まったような感覚に陥り、焦るままに武者を見据えることしかできなかった。




「――――ひとつ教えよう」




平素と変わらぬ志保の声。




「私の戦い方はな、勝てないのであれば、勝てるものを作り出すことだ」




魔術回路が俺の魔力を糧に回転数をあげていき、一つの幻想を作り出す。
迫る絶死の雷鎚が脅威ならば、雷鎚を切る刃を作り出せ。
それが俺<衛宮>の戦い方なのだと、ようやく俺は理解した。




「我、雷牙雷母の威声を以って五行六甲の兵を成す、千邪斬断万精駆逐雷威雷動便驚人,――――発雷!!」




放たれる弩級の雷鎚。俺はそれを志保から生み出した刃で、切り裂いた。
手にした<雷切>の名の通りに、絶死の雷鎚を切り裂く




「な、ん……だとおぉっ!!」




「いまだ志保、速力最大っ!!」
「ここで決めろっ、御堂!!」


そして俺は、稲光の中を突っ切り、あまりのことに惚けている武者を切りつける。
勿論、低空から上昇しての斬撃の為、とどめには至らない。
だが、食い込みさえすれば俺の勝ちだ。
雷切を食いこませたまま、俺は離脱し、敵の命を奪う呪句を唱える。




「――――――――壊れた幻想<ブロークンファンタズム>」




閃光が武者を飲み込み、命を消し去る。
俺はそれをじっと見つめていた。自分が殺した、その命の輝きを――――


「大丈夫か、一夏」
「……大丈夫だ」


戦いが終わったからか、俺のことを名前で呼び、気遣う言葉を志保がかけてくる。
戦いが終わった。数多の命を奪った戦いが、……・・気付けば空は夕焼けに包まれていた。


「じゃあ、行くか、志保」
「元の世界に帰るためにか?」
「そうにきまってるだろ、なおさら……この世界じゃ死ねなくなっちまったからな」
「そうだな、生きて、元の世界に帰らないとな」




そして俺は、当てのない旅を再開する、心底頼りになる相棒とともに――――




=================




この後、人々の間に一つの噂が流れ始める。
深紅の武者が弱者を助ける。荒れ果てた時代ならば、類似の噂がたくさん流れる、そんなちっぽけなものだ。


事実その噂は、銀製号事件の後に起こった、建朝寺事件の後ぷっつりと途絶える。


だがそれで、いいのかもしれない。


なぜならばそれは、英雄の物語でもなければ、ましてや悪鬼の物語でもない。




感情の赴くまま進み続けた――――正義の味方<ただの人間>の物語なのだから。




=================




――――IS学園、アリーナにおいて、二人の女生徒が膝をつき疲弊し尽くしていた。


眼前に対峙するは、正体不明の黒きIS。
クラス対抗別リーグマッチの第一回戦、一年一組クラス代表セシリア・オルコットと、一年二組クラス代表凰鈴音の戦いの最中に突如乱入してきたのだ。


「ああもう最悪、あんなわけのわからないやつにこうまでやられるなんてね」
「あなたの意見と言うのは癪ですが、全く同感ですわ」


たがいに機体のシールドエネルギーがほぼ底をつき、ハッキングされたシールドが逃走を拒む。
試合で消耗したところに乱入されたのでは、この結果も当然だろう。
学園の救援部隊が間に合うか、二人が死ぬか、おそらくは後者の結果が出るだろう。
そんな時だった、異変が起こったのは。




虚空に、大きな穴が開いた。




「――――うおおおっ!?」
「――――おっと!?


そこから男女の叫びが聞こえたかと思うと、一組の男女を吐き出し、虚空の穴はあとかたもなく消え去った。
女性は、年のころは自分たちと同じくらいだろうか、浅黒い肌と真っ白い髪が特徴的だ。
男性のほうも同年代で、女性のほうとは違い、いたって普通の容姿をしていた。
しかし、その姿を目にして鈴の思考は停止する。


「う…そ…!? 一夏?」
「ん? もしかして鈴か?」


しかしその男性は、いくら成長したとはいえ見間違えるはずもない、小学生のころに死んだはずの初恋の人物、織斑一夏だった。
一夏と思しき人物も、鈴のことを覚えていたようだ。


「つ~ことは、…………よっしゃあぁっ!! 元の世界に帰れたんだぁっ!!」
「いや、気持ちはわかるがな、少々落ち着け」
「だけどよ、あんな無茶をやり遂げたんだぜ? 大声ぐらい上げたくなるだろ」
「……確かにな、金神の欠片を取り込んで、その力で帰還を果たしたんだからな」
「しかもランダムにジャンプしたなら、繋がりのある世界にたどり着くかもしれないって無茶なやり方だもんなあ」


死んだと思っていた幼馴染との、感動的な再会とはいかず、一緒に出てきた女の子と喋りまくっている一夏(鈍感神)。
当然鈴の怒りは、あっという間にトップギアにチェンジした。


「何こっちおいてけぼりにしてんのよ!! この馬鹿一夏!!」
「あっ!? 悪い悪い、あまりの嬉しさにはしゃいじまった」
「あ~もう、何がどうなっているのかちゃんと説明しなさいよね!!」
「あーそうだな――――」


その時、黒いISが動き始める。目標は乱入者である一夏たち。
生身の人間ならば、殴るだけでも十分殺せる。そう言わんばかりに火器は使わず、直接打撃を加えようとする。
危ない!! そう鈴が言葉を発する前に、一夏は振り向き黒いISと対峙する。




「こいつを何とかした後で、な?」




いつの間にやら、一夏の手には岩から直接削りだしたかのような斧剣が握られていた。
あまりに巨大で、IS用の武装と言っても信じられそうなほどでかいそれを、難なく操り黒いISの攻撃を凌いでみせた。
轟音が鳴り響く中、鈴も、セシリアも、その場にいたすべてが茫然としていた。


「どうする、志保」


その出鱈目を成し遂げている一夏の口調は、あくまで涼しげ。
応える少女の声にも、動揺は全くなかった。


「――――そのことなんだがな、取り込んだ金神の力を引き出し過ぎた、放出しないとまずいことになりそうだ」
「ゲッ!? マジで?」
「ああ、ちょうどいいからそいつで発散しよう、見たところ無人機のようだしな」
「ああ、分かった……鈴もそれでいいか?」
「………………………どう反応すればいいのよ」


まるで夕食の献立を決めるぐらいに、平然とぬかす一夏に再会の感動も消え去り、答えに困る鈴。
そこに、空間投影式のモニターで会話に参加するものがいた。
写しだされた人物は、黒髪の美女、この世界においては知らぬもののいない世界最強、織斑千冬だ。


「一夏、………無事だったんだな」
「千冬姉……」
「やれるのか?」
「ああ、勿論、……というかやらないとこっちがまずい」
「そうか、お前に任せる、そのガラクタをさっさと壊せ」
「任せてくれ!!」


最愛の姉の許可をもらうと、一夏は改めて眼前の敵を見据え、己が相棒に呼び掛ける。


「一撃でけりをつける、……装甲するぞ、志保!!」
「了解した、御堂!!」


「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」


誓約を唱え、志保の体が鋼の鷹に変化、そのまま一夏を覆う鎧となった。
またもやの出鱈目な光景に、全員が茫然とする中、一夏は増幅された膂力でもって、黒いISを吹き飛ばす。
そして、手の内に純白の刀を呼び出す。拵え、鞘、鍔、全て雪のように白い刀で居合の構えをとる。


その刀の名は<雪片>、金神の力を使うために作り上げた、金神からの精神汚染を防ぐための術式が刻まれた、真打甲冑・衛宮志保の専用武装。
そこから放つは、帰還のために編み出した、織斑一夏の魔剣<パーソナルアーツ>


「必斬の太刀(おわりのたち)で決める!!」
「了解、最終斬撃、装填開始<ファイナルアーツ、セット>」


一夏の体を、金神の埒外の力が駆け巡る。少しでも制御を誤れば、自滅必死の力だが、一夏に恐れはない。
己が相棒のことを信頼しているがゆえに、迷いなく力を紡ぐ。


「歪曲、最大<ディストーション、マキシマム>」


<雪片>の刀身に、極限まで高められた空間の歪みが集う。
準備は整った、吹き飛ばされた体勢から立ち直った黒いISが、一夏に砲身を向けるが、それはあまりにも遅かった。




「篠ノ之流古武術、弧月が崩し――――」




動きのリズムを無くした<零拍子>、そこから放つ攻めの居合。抜き放たれた刃は――――




「――――次元斬<ワールドスラッシュ>、無明!!」




―――――世界をずらした。




極限まで凝縮された空間の歪みは、世界の断絶と言う埒外の事象を引き起こした。
黒いISは、音もなく真っ二つに分たれ、あっけなく機能停止に陥った。


そんな出鱈目を成し遂げた張本人は、装甲を解くとこう言った。




「そういや一つ言い忘れてた、ただいま、千冬姉」
「ふん、遅い帰還だな、…………お帰り、一夏」




一夏と志保の、当てのない旅はここにゴールを迎え、新たなスタートを迎えたのだった。










<あとがき>
最後の技に関しての突っ込みは無しで、ほんと電磁抜刀はカッコイイ技だと思うからついやっちゃった。
後、この話の一番の被害者は<白式>で間違いありません。





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