完全に劇物です、お読みになられる際はご注意を!!
IS学園の職員室で、書類整理にいそしむ一人の美女、名前は織斑千冬。
世界で唯一の男性のIS操縦者、織斑一夏の姉にして、IS世界大会優勝経験を持つ、文字通りの世界最強の個人である。
「ふうっ……」
淡々と仕事をこなすその手によどみはなかったが、仕事とは別の懸念が千冬にはあった。
唯一の家族にして、最愛の弟……一夏のことである。
本来女性にしか扱えぬその特性上、IS学園の生徒はすべて女性である、一夏ただ一人を除いて。
この年頃の女の子はとにかく、異性というものに多大なる興味を抱く。
学生らしく節度ある接し方ならばいいが、そうでない場合が起こるのを千冬は恐れていた。
贔屓目に見ても一夏はいい男である、ルックスはそれなりに整っているし、困っている人がいたら手を差し伸べるぐらいの度量はあり、おまけに家事万能、欠点らしい欠点など鈍感なとこぐらいだ。
――――欠点が本当に致命的に過ぎる、後かなり贔屓目に見ているんじゃないかと突っ込んだ方は、もれなく白騎士の刀の錆になりますからご注意を――――
いつか、一夏に最愛の人ができた時、私はそれを笑って祝福できるのだろうか。
みっともなくいつまでもすがっていそうで……、そんな醜態をさらしてしまうんじゃないかと、時折浮かぶその想像が怖かった。
いつまでも一夏の憧れでいたい、女々しいが、そう思ってしまうのだ。
憧れであり続けるというのは結局のところ、弱さを見せないということだ、それを成す一番の手段は一定の距離をとり続けるということ。
一夏の誘拐事件の直後、ドイツからの誘いを受け入れたのも、一夏を危険にさらした不甲斐無さでボロボロになった、織斑千冬という鍍金を張り直したかったからだ。
だけど、一夏をもっと身近に感じていたい、触れあいたいという欲求が私の裡にあるのも、また事実。
その矛盾は、昔からずっと私を苛んでいた、それはこれからもずっと、私を苛んでいくのかもしれない。
「――――全く、私らしくもない」
処理し終えた書類をまとめながら、私はその矛盾を心の奥底に封じ込めた。
堅く、堅く――――――――願わくば、二度と顔を出すことのないようにと、願いを込めて
その時だった――――
「痛っ!?」
右手の指先に走る小さな痛み、どうやら書類の端で指先を切ってしまったらしい。
愚にもつかないことを考えていたせいか、と自嘲しながら、千冬は机の引き出しの中に絆創膏を入れていたことを思い出す。
この時、不幸だったのが絆創膏を千冬の体に対して、右側の引き出しに入れていたことだろう。
つまり、血の付いた指先を引き出しの中に入れてしまったのだ、引き出しの中に災厄を振りまくものが入っているともつゆ知らず――――
引き出しの中から声が響く、可愛らしい、しかし、とてつもなく胡散臭い声だ。
「血液による認証確認、起動に必要な鈍感な意中の男性に対する素直になれないスーパーオトメ力確認!! おおっ、こ、これは凄まじいパワーです!!」
手にしてしまったのは、くねくねと動くおもちゃの魔法少女のステッキみたいな何か。
なんだこれは、それが千冬の第一印象だった。とてつもなく胡散臭いうえに、私の直感が全力でこれに関わるなと告げている。
よし、捨てよう、そう思い窓を開け全力で投擲しようとするが、離れ……ない!?
「ふっふっふっ、無駄無駄無駄ァ!! 既に契約はなされました。しかし、安心してください、そこまで大それたことはしませんよ、思い人に対しすこ~し素直になるだけです。私はあくまでそのサポートに徹しますから」
契約だのなんだの、わけのわからぬ言葉を聞きながら、私の意識にもやがかかり始める。
あれ? 私は何をしようとしてたんだ。…………一夏、そうだ一夏を……
「そうです、その一夏さんを我が物にするのがあなたのしたいことです。そのためには力が必要です、………後はお分かりですね?」
「そうだな、ルビー……」
そして千冬は勢い良くその杖、カレイドルビーを掲げる、閃光が職員室に広がった。
万華鏡のごとき輝きが消え去った後にいたのは、一人の女性、否――――
「魔法少女マジカル ☆ ウィンター ☆ 千冬!! ここに見参!!」
純白の衣装に身を包んだ、一人の魔法少女(?)がそこにいた――――
「力がみなぎってくる、感謝するぞルビー、これで一夏は私の物だあっ!!」
「キャ~千冬さん素敵~!! このまま思う存分突っ走ってくださいっ!! 群がる敵をなぎ倒し一夏さんを我が物にするのです!!」
「承知!!」
そして飛び立つ千冬、この後起こったことについては詳しくは語るまい、ただ、一人の赤い髪の少女が力の限り奮戦したことをここに記す。
<あとがき>
ほんとにすみません、第五話のシーン書いていると、この妄想が浮かんだので(汗
不快になられる方が多いようならば、すぐに削除いたします