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No.27061の一覧
[0] 【本編 第六十六話投稿】インフィニット・ストラトスcross BLADE [ドレイク](2012/03/06 23:51)
[1] 第一話[ドレイク](2011/06/18 23:41)
[2] 第二話[ドレイク](2011/04/11 00:42)
[3] 第三話[ドレイク](2011/04/24 16:50)
[4] 第四話[ドレイク](2011/05/04 16:42)
[5] 第五話[ドレイク](2011/07/10 22:22)
[7] 第六話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[8] 第七話[ドレイク](2011/05/08 17:18)
[9] 第八話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[10] 第九話[ドレイク](2011/05/18 07:20)
[11] 第十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[12] 第十一話[ドレイク](2011/05/21 15:46)
[14] 第十二話[ドレイク](2011/06/05 22:59)
[15] 第十三話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[16] 第十四話[ドレイク](2011/06/05 22:57)
[17] 第十五話[ドレイク](2011/06/09 21:54)
[18] 第十六話[ドレイク](2011/06/18 23:42)
[19] 第十七話[ドレイク](2011/06/27 07:11)
[20] 第十八話[ドレイク](2011/07/02 09:04)
[21] 第十九話[ドレイク](2011/07/03 15:03)
[22] 第二十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[23] 第二十一話[ドレイク](2011/07/10 18:35)
[24] 第二十二話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[25] 第二十三話[ドレイク](2011/07/18 17:02)
[26] 第二十四話[ドレイク](2011/07/20 19:53)
[27] 第二十五話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[28] 第二十六話[ドレイク](2011/07/24 18:17)
[29] 第二十七話[ドレイク](2011/11/29 00:54)
[30] 第二十八話[ドレイク](2011/07/26 23:25)
[31] 第二十九話[ドレイク](2011/07/28 23:25)
[32] 第三十話[ドレイク](2011/07/30 08:06)
[33] 第三十一話[ドレイク](2011/08/12 20:11)
[34] 第三十二話[ドレイク](2011/08/14 00:31)
[35] 第三十三話[ドレイク](2011/08/19 21:07)
[36] 第三十四話[ドレイク](2011/08/21 12:05)
[37] 第三十五話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[38] 第三十六話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[39] 第三十七話[ドレイク](2011/09/17 22:51)
[40] 第三十八話[ドレイク](2011/11/25 00:07)
[41] 第三十九話[ドレイク](2011/09/20 21:57)
[42] 第四十話[ドレイク](2011/09/23 20:59)
[43] 第四十一話[ドレイク](2011/09/24 23:26)
[44] 第四十二話[ドレイク](2011/10/01 20:44)
[45] 第四十三話[ドレイク](2011/10/05 23:47)
[46] 第四十四話[ドレイク](2011/10/09 01:09)
[47] 第四十五話[ドレイク](2011/10/11 20:01)
[48] 第四十六話[ドレイク](2011/10/13 20:04)
[49] 第四十七話[ドレイク](2011/10/15 17:38)
[50] 第四十八話[ドレイク](2011/10/19 23:08)
[51] 第四十九話[ドレイク](2011/10/23 23:10)
[52] 第五十話[ドレイク](2011/10/26 00:38)
[53] 第五十一話[ドレイク](2011/10/30 19:36)
[54] 第五十二話[ドレイク](2011/11/01 07:18)
[55] 第五十三話[ドレイク](2011/11/03 22:14)
[56] 幕間 その一[ドレイク](2011/11/05 16:56)
[57] 第五十四話[ドレイク](2011/11/07 22:46)
[58] 第五十五話[ドレイク](2011/11/10 23:54)
[59] 第五十六話[ドレイク](2011/11/13 01:33)
[60] 第五十七話[ドレイク](2011/11/16 23:06)
[61] 第五十八話[ドレイク](2011/11/23 09:31)
[62] 第五十九話[ドレイク](2011/12/04 00:28)
[63] 第六十話[ドレイク](2011/11/29 20:45)
[64] 第六十一話[ドレイク](2011/12/06 22:37)
[65] 第六十二話[ドレイク](2011/12/04 21:39)
[66] 第六十三話[ドレイク](2011/12/06 21:55)
[67] 第六十四話[ドレイク](2011/12/11 02:24)
[68] 第六十五話[ドレイク](2011/12/12 18:00)
[69] 第六十六話[ドレイク](2011/12/17 22:39)
[70] 本編とは全く関係がないやばいネタ[ドレイク](2011/05/07 20:12)
[71] 20万PV突破記念外伝[ドレイク](2011/07/05 22:45)
[72] 外伝IF【装甲悪鬼村正とのクロス有】[ドレイク](2011/06/18 22:01)
[74] 外伝IF その二[ドレイク](2011/06/18 22:02)
[75] 外伝IF その三[ドレイク](2011/06/20 22:09)
[76] 外伝IF その四[ドレイク](2011/09/03 08:41)
[77] 外伝IF その五[ドレイク](2011/09/25 17:18)
[78] 外伝IF その六[ドレイク](2011/10/16 21:41)
[79] 外伝IF その七[ドレイク](2011/09/29 00:22)
[80] 外伝IF その八[ドレイク](2011/09/29 22:53)
[81] 外伝IF その九[ドレイク](2011/10/02 21:13)
[82] 外伝IF その十[ドレイク](2011/10/16 21:42)
[83] 外伝IF その十一[ドレイク](2011/11/02 18:01)
[84] 外伝IF その十二[ドレイク](2011/11/20 00:01)
[85] 没ネタ(Dies iraeとのクロス)[ドレイク](2011/08/23 18:09)
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[27061] 第三十二話
Name: ドレイク◆f359215f ID:2a1133d4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/14 00:31


<第三十二話>


旅館の一室で、死んだように眠る一夏。肌の血色は人形のように生気がなく、体の至る所が焼け焦げとてもではないが生者には見えなかった。
生体的にもリンクしている<白式>が、かろうじて生体ナノマシンで命の灯火を守っているにすぎない。
ISの絶対防御と言っても、それは緊急用にプールしているシールドエネルギーを使っての、一時的なオーバーブーストに過ぎない、それを超える火力ならば、容易く突き抜けられてしまう。


知らぬ間に奥歯を食いしばり、耳障りな音を立てた。


そう、こうしてかろうじてといえども、命を保っていられるのは単なる偶然に過ぎない。
もしかしたら、あの時既に死んでいたかもしれないのだ。
そして、そうなったとき、一夏の命を奪ったのは。




――――ほかならぬ、この私、だ。




その場面を想像して、煮え滾るものが腹の内に湧く。何だそれは、そんな結末、よりにもよってそんな結末を私の手でやらせるつもりだったのか、あのガラクタは。
どこのだれかは知らないが、ふざけた真似をしてくれるっ!! 絶対に許さない、何があろうとも、だ。

「お姉さま、まだこちらにいらしたのですか?」

その時、背後から私を心配する声がかかる。

「ラウラか」
「はい、お姉さまは帰還してから一度も、お休みになってはおられませんので」
「悪いが、そういう気分じゃない」
「そう………ですか」

ラウラがそう言って、私の身を案じてくれるのは素直に心地いいと感じる。
けど、内から迸る怒りを鎮めなければ、とてもじゃないが休めそうにない。あのガラクタが今も安穏としている、それだけで意識が飛びそうになるぐらい怒りを感じるのだから。

「ここで、座って身を休めておくさ、それでいいか?」
「では、私もお供いたします」

話し相手ぐらいは務めます、そう言って私の横に座るラウラ。だが、私もラウラも話し上手、と言えるようなものではないから自然と沈黙が旅館の一室を包んだ。
沈黙を破って口を開いたのは、ラウラが先だった。

「――――お姉さま、一つ質問よろしいですか?」
「何だ? いってみろ」
「<紅椿>の搭乗テストの際、織斑教官がお姉さまの動きに“迷い”が乗っておられると言ってました」

そのラウラの言葉に私が抱いたのは、やはり、見ている人は見ているのだな、というある種感嘆の念だった。
自分では隠し通せていたつもりだったが、それは甘い認識だったか。

「その“迷い”が知りたいと? そういうことか」
「………ええ」

成程、ラウラは私を慕ってくれている。その私に、その様なものがあるかもしれぬとわかれば、聞きたくなるのも道理というものだ。
そのことに、愛しさを感じ、ならば、答えてやるのがせめてもの礼と思い、私は話し始めた。

「簡単なことだ、――――私は篠ノ之束が、姉さんが嫌いだ」
「そう、なのですか?」
「ああ、姉さんはな、昔からわけがわからなかった、才気に溢れ、突飛なことを考えてはそれを実現してしまう、私はいつも、そんな姉さんに振り回され続けてきた、だから今日、<紅椿>を渡された時も、姉さんの真意がわからなくてな」
「それが………」
「勿論、私の為にしてくれたのだろうとは思う、けど、心の底からそうだと、信じきることができなくてな」

自嘲気味にそう漏らす私を見て、ラウラはただ黙しているだけ、もとよりそういう家族関係を経験したことのないラウラに、そう言った思いをすぐに理解してほしいなどとは思っていない。
むしろ、私のほうこそがそう言ったものを教えねばならない立場なのにな。


再び途切れる会話。それを破ったのはラウラの懐にあった通信端末の呼び出し音だった。


「――――私だ、あれの居場所が分かったのか? …………そうか、ご苦労だった」


そう言って、要点だけを短く伝えた、軍隊らしい簡潔な通信を終えると、ラウラは私のほうに向きなおって、待ちに待った言葉を告げた。

「やつの居場所がわかりました、ここから三十キロの沖合に静止しているようです」
「よく見つけられたな?」
「ええ、ステルスは起動させていたようなのですが、光学迷彩を起動させずにいたおかげで、わが軍の偵察衛星で見つけられました」
「そうか、他の者たちにこのことは伝えてあるのか?」
「いえ、まだです、急いでこのことを伝えなければ」

そう言って立ち上がり、臨時管制室に駆け出そうとするラウラ。私を信頼しているのだろう、隙だらけなその姿。


――――好都合だと思った。


私はその無防備な首筋に手刀を喰らわせ、ラウラの意識を刈り取った。
完全に不意を突かれたその一撃に、ラウラは成す術なく崩れ落ちる。

「どう………して…です……お姉さま………」

混濁する意識の中、かろうじてそう問いかけてくるラウラに、私は答える。




「――――姉さんのこととか、今はどうでもいい


 ――――今はただ、あのガラクタをこの手で壊したい<殺したい>」




たぶん、今の私の顔は、直視に耐えるものではないだろう。
だが、それでいい、いまさら何を取り繕う必要がある。この怒りを、縛るものなど何一つ必要ない。
そうして、私はラウラを置き去りにして旅館を抜け出した。やることはただ一つ。あれを破壊する。ただそれだけだ。




=================




「――――大変だっ!!」

息を乱し、ラウラが臨時管制室にかけ込んできたのはそれから数十分後。
その様子に、その場にいた誰もがただ事ではないと感じ取った。

「お姉さまが、一人で<シルバリオ・ゴスペル>のところにっ!!」

その言葉に、束は顔面蒼白となり、千冬は己が愚かさに歯噛みする。

「そんな、箒ちゃんが!?」
「くそっ、あいつの気性を見誤っていたかっ」

だが、この場でのトップに立つ者の義務として、いつまでも後悔に浸るようなことはせず、すぐに他の者たちに指示を飛ばす。

「ラウラ、他の専用機持ちを集めてすぐに篠ノ之を追え!!」
「了解しましたっ!!」

ラウラに指示を飛ばし、ディスプレイを操作して<シルバリオ・ゴスペル>がいるであろう地点の情報収集に努める千冬。

「――――すまん、束」
「…………ちーちゃん」
「今の私には、それぐらいしか言えん」
「…………無事でいて、箒ちゃん」

やはりセシリアを任命するべきだったかもしれない、そんな思いを抱く千冬。意味のないことだとしても、そう思わずにはいられなかった。
ディスプレイには旅館から飛び立つ五機の専用機の姿が映し出され、二人は祈るような面持ちでその姿を見つめていた。




――――だから、今現在志保がどうしているのかも、全く気付きはしなかった。




=================




――――銀の天使は、上空二百メートルの海上で膝を丸め、翼で体を包み、まるで眠っている様に動かなかった。


まるで、襲ってみろと言わんばかりの無防備さにいら立ちが募る。
それ姿を見た途端、唐突に理解した。誘っているのだ、あれは。


かかってこい、私はここにいる。倒せるつもりでいるのなら、のこのこやってこい、と。


ああ、ならばかかっていくぞ。倒しに行くぞ。貴様の五体すべて正真正銘のガラクタに戻すためにっ!!
その怒りをスラスターにくべて、私は空を疾走する。変わらずぎこちなさは残るが、そんなものは関係ない。知ったことか。万難振りかかろうとあれを壊せれば構わない。




「――――死ね」




人間、振り切った殺意を抱くと、こうも冷え冷えとした声が出るのかと、初めて知った。
それでいい。雄叫びに熱量を割くぐらいなら、それだけの分を刃に込めろ。僅かも逃すな、熱を込めるべきは殺意と刃のみ。それ以外は不要に過ぎん。


音をを置き去りにした剣閃を、<シルバリオ・ゴスペル>に振るう。
瞬時加速からの一戦は、しかし、するりと滑らかな挙動でかわされる。空を切る刃。私は体を捻り、体が流れた勢いを利用して今度は左腕で横薙ぎに刃を振るう。
<シルバリオ・ゴスペル>はその横薙ぎを、まるで倒れ込むようにして避ける。まるで寝転ぶような体制になると、そのまま上昇。私から見れば急速離脱を仕掛ける。
奴の武装は全身に三十六門装備された多機能エネルギー砲<シルバー・ベル>ただ一つ。完全なる射撃戦使用。懐に潜り込まれれば離脱するのは当然。


「逃すと思うか?」


ああ、逃さない。直線勝負など機体の基本性能がもろに出る。<紅椿>の基本性能、かなりのものだぞ?
案の定、すぐに追いつき二筋の剣閃を奴に見舞う。しかしその頭部の翼を飾りではないと言わんばかりの、複雑かつ精妙な機動で掠らせもしなかった。


「La――――」


そろそろこちらの反撃だ。そう言わんばかりの漸くのエネルギーチャージ。
その腰の重さも気に喰わない。放たれる光弾の雨。その全てを<空裂>で切り伏せ叩き落とす。
視界を染める白光。それ越しにハイパーセンサーの探査能力を使って<雨月>のレーザーを叩きこむ。
しかしその閃光は、まるでリアクティブアーマーのごとく、奴の前に配置された光弾で相殺された。


「La――――」


またもや耳障りな機械音。ああ、本当に羽虫の如くよく響く。
私は急速上昇をかけ、奴の後背を突こうとするが、それを見越してか<シルバー・ベル>による全方位射撃を繰り出される。
まるで大輪の花火。だが剣呑な威力を秘めたそれを私はどうにかかわしていく。
いっそ無茶苦茶なほどに振り回したスラスターで、軌道予測など不可能な機動を繰り出し、それでも回避しきれぬ分は手に持つ二刀で斬り落とす。

ここにきて、ようやく先の一戦と状況が違いすぎることに気がついた。
先の一戦は全機が超音速巡行中の中での戦い。いくら他の空戦兵器と機動の自由度が段違いのISであっても、その最中では行動に制限がかかる。
しかし、今は真っ当な、尋常な戦い。ようやく<シルバリオ・ゴスペル>はその真価を発揮し始めた。

頭部の巨大なウイングスラスターで複雑な機動を行い、<シルバー・ベル>による高い面制圧力。
成程、攻勢兵器、拠点強襲兵器としてのISを、シンプルかつ究極まで追い求めた機体。それが<シルバリオ・ゴスペル>
立ち塞がる全てに滅びの福音を与える、白銀の堕天使。

ならば与えてみろ、この私に滅びの福音を聞かせてみせろ、それら全て斬り伏せる。
おまえが天使だと言うならば、私は天使を打ち滅ぼす悪魔で構わない。


「おまえを地の底に叩き落とすぞっ!! <シルバリオ・ゴスペル>!!」


必当必殺の意思を込めて、私は只管に刃を振るう。
<シルバー・ベル>の、過密極まる弾幕をかいくぐり、幾度もかわされようと、幾度も挑む。幾度も斬りかかる。
光弾の雨に晒され、装甲の至る所に弾痕が刻まれるがそれを無視する。奴を倒すまで持てばそれでいい。


「この程度で私は止まらん、止めたいのならば、この身全てを灰燼に帰すまでやるのだな!!」


そうして私は無謀な突撃を続ける。もとより勝算の無い戦い。命ぐらい賭けねば目は出てこない。
正気などいらない、今の私に必要なのは奴を壊せる力のみ。それさえあれば、後はいらない。


「――――ク、ククッ、クハハハハハハハッ!!」


堪え切れぬ可笑しみが、哄笑となって漏れ出てくる。
力を欲し、それを振るうことに呵責などない自分が、たまらなく可笑しかった。
ずっと自分はそれを嫌い、それを遠ざけ、それを封じ込めようとしたではないか、ならば今の自分は何だ。


――――認めろ、篠ノ之箒。昔から私は、力を揮うことに歯止めが利かなかったじゃないか。


剣術にのめり込んだのも、まっとうに力を揮うのに都合がよかったからじゃないか。
祖父の剣筋に憧れた? そんなものはまやかしだ。”剣を振るって何かを壊したかったからじゃないのか”
そうだ、あの堕天使を壊したいのなら、良心・倫理・道徳、一切合財捨て去ってしまえばいい。
内に残すは殺意のみ、あれに対する殺意だけを練り上げろ。それ以外は余分に過ぎん!!
そうしてやっと私は、あれを壊すに足る刃に成れる。悪魔に成れる。


眼前の敵機に対する突撃速度を、私は一層高めていく。
五体が軋みを上げ、損傷の度合いも一層高くなっていくが、比例するように奴の傷も増えていく。


「しゃあっ!!」


今もまた、<雨月>のレーザーを放つ際、無理矢理スラスターで体を捻り変則的な斬撃を繰り出した。
薙ぎ払われる光の筋が、奴の翼の先端を切り裂く。
同時に<シルバー・ベル>の光弾が数発着弾し、衝撃の余波で右の頬がばっくりと割れた。
次いで訪れた光弾を<空裂>で斬り落とし、ぽっかりと空いた弾幕の隙間に<雨月>のレーザーをねじ込む。
奴はそれを装甲に掠らせながらも私の上をフライパスした。その航跡にばら撒かれる光弾が一斉起爆し、私の全身を打ちすえる。
全身に走る激痛、それに耐えながら奴に追いすがり、至近距離から誤爆もいとわぬ一斉射撃をお見舞いする。
私と奴を巻き込んだ盛大な花火が上がり、お互い装甲の至る所に傷を負いながら距離をとった。


正にチキンレース。たがいに着実に、一歩ずつ確実に手傷を負わせていく。
ともに機能停止の断崖へと進みゆく死のレース。しかも互いに断崖へと引きずり込む様な自殺まがいのレースだ。
そのことを理解しているのに、私の口元はつりあがり、醜い笑みを描きだす。
だってそうだろう、確実に奴を壊す結果に近づいているのだから。笑ってしまうのも仕方がない。


「ハハッ、ハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」


そうだ、壊れろ、壊れてしまえ。もとより狂ったガラクタだ、残骸に成り果てるのが筋だろう。
哄笑とともに、その思いを剣戟に乗せる。思いを乗せる。呪いを乗せる。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。壊れろ。


そしていま、光の弾幕を突き抜けて、私はその思い<呪い>を成就する。




「――――壊れてしまえええええええええっ!!」




機体の至る所に傷を負い、エネルギーが底を尽きかけながらも、私の件は奴の翼を斬り落とした。
浮力を失い、水面に落ち往く機体。堕天使にはちょうどいい結末だと、そう思った。


――――そうして、安堵に浸れたのも、ほんの僅かのことだった。




「KIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」




まるで獣の咆哮。先ほどまでの羽虫の様な機械音声とは全く違う。
そんな声とともに、白銀の堕天使が再び空に舞い上がる。


「第二形態移行<セカンド・シフト>、だとっ!?」


ISコアの自己進化機能が、蓄積した戦闘経験をもとに、機体を自ら組みかえる現象。
まず感じたのは、ありえないという思いだった。だってそうだろう。こんなこと戦闘経験を積み重ねば成し得ない。
そして奴は、<シルバリオ・ゴスペル>は試験機だぞ、それも開発されたばかりの最新鋭機。戦闘経験など積みようもない。
なのに奴はその条理を捻じ曲げ成した。翼の切断面からエネルギーをそのまま噴出させて、それをあたかも翼のようにしている。


そのまま私の遥か上に陣取った奴は、光の灯るセンサーで睨みつけてくる。
まるで、天使は落ちない、悪魔であるお前が堕ちろ。そう言っているかのようだった。


「ふざ、けるなあああああああああああああっ!!」


怒りの咆哮を上げながら、軋む機体を残り僅かなエネルギーを使って突撃させる。
しかし、もはやこちらは瀕死と言っていい状況だ。見る影もない鈍間な突撃。奴の返礼はキックだった。
死に体の奴のわざわざエネルギーを消費すまでも無いと思ったのか、スラスターを僅かに吹かしての単純なキックを放ってきた。


「グハッッ!!」


しかし、そんな単純な攻撃ですら、今の私には回避しようがなく、先とは逆に自分自身が海中に叩き落とされる。
冷たい水の中に、私と<紅椿>が堕ちていく。同時にその冷たさが、ジワリジワリと、私の意識を暗闇に引きずり込んでいく。


堕ち行く体と堕ち行く心。私の視界が暗闇に染まり、そして――――途切れた。




=================




「――――ふんふふ~ん」


姉さんの鼻歌が聞こえてくる。どことも知れない研究室の中で、上機嫌で作業をしている。
何だろう、この光景は………? 私はこんな場所を知らない。もしかしたら夢なのだろうか。


「よっし!! もうすぐこの子も完成だねっ!!」


キーボードを上機嫌で操りながら、姉さんがそんなことを言っている。
作っているのはISらしい、それらしき輝きを放つ菱形のクリスタルが視界に写る。
ふと、姉さんが表情を引き締め、そのISコアに語りかける。


「<紅椿>……お願い、箒ちゃんを守ってあげて、あなたはそのために作られた、箒ちゃんの唯一無二の剣となって」


そう言って、真摯に頼み込む姉さん。その表情は、私が今まで見たことも無いぐらい真剣なものだった。


不意に、視界が閃光に包まれた。




=================




「――――今のは………<紅椿>、お前が見せたのか?」


どうやら気絶していたらしい、深い深い海の底で私は意識を取り戻した。
そしてその間に見たあの光景。幻なのか、それとも、<紅椿>が見せてくれた真実なのか。
その答えは、今の私にはわからない。けど、わかったこともある。


「そうだ、姉さんへの不信感など、真っ先に捨てねばならないものだろうが」


そう、それこそが<紅椿>を纏った時に感じたぎこちなさ。初戦の敗因。
阿呆か私は、敗因をそのままにしておくなど。奴に勝つためには殺意以外すべて不要、そう断じたのは自分自身。ならば捨てされ、そんなもの。


「すまなかったな<紅椿>、今からお前に全てを委ねる、――――ならばお前も、全てを私に委ねろっ!!」


その宣言とともに、エネルギーが枯渇寸前であったはずの<紅椿>の全身に、これまでにないほどの力が漲る。
僅かなエネルギーが際限なく増幅され、そのエネルギーがさらに際限なく増幅される。
<紅椿>の単一仕様能力、<絢爛舞踏>が今、間違いなく起動した。


「さあ、いくぞ<紅椿>!! 今度こそ奴を叩き落とすっ!!」


私の咆哮とともに、スラスターが限界ぎりぎりのエネルギーを噴出させる。
重たい海水の抵抗などものともせずに、解き放たれた弓矢のごとく上昇する。
水柱と言えるほどの水飛沫とともに、私は空へと舞い戻った。


「KIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


再び機械の咆哮が響き渡り、私と奴は互いを認識した。
奴のエネルギー翼が羽ばたき、これまでにないほどの光弾をまき散らす。戦域すべてを覆い尽くすほどの弾幕。光がそのまま膨れ上がったようなそれを目の前にしても、私の心に動揺はわかなかった。


「今の私に、そんなものは通用しないっ!!」


どれだけの弾幕であろうと、直撃コースにあるのはこれまでと変わらない。
<紅椿>の全武装を一斉射。直撃コースにあった光弾を消し飛ばして回避する。
そして、これ以上奴を図に乗らせるつもりは毛頭ない。奴に許されるのは速やかなる消滅だけだ。
今から私と<紅椿>がそれを成す。


「行くぞ、ガラクタ、今度こそ堕ちろ」


宣誓と同時、瞬時加速を発動、奴の背後に回り込む。奴は軌道予測して光弾をばらまくが、それをこちらも弾幕によって打ち消す。
再び瞬時加速を発動。今度は上に抜けながら、再び全武装一斉射。それを何とかよけながら奴は反撃してくるが、私は再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。再び瞬時加速発動。再び全武装一斉射。


――――ありえぬはずの最大速力と最大火力の連続投入。精度など必要ない。戦術など必要ない。只管に敵を圧殺し粉砕する、圧倒的な物量差。


――――大空を縦横に舞う舞踏とともに、絢爛たる光の乱舞でもって立ち塞がる敵の全てを殲滅する。


――――それこそが<紅椿>の単一仕様能力、<絢爛舞踏>の名の由来。


最早<シルバリオ・ゴスペル>に許されるのは、嬲り殺される運命のみ。
間断なき一斉射で圧殺され、直接斬撃まで交えた攻め手に、機体の至る所を斬り落とされる。
<シルバー・ベル>の光弾も、発射される数を瞬く間に減らしていく。




「――――消えろ、壊れろ、砕けろ、そして死ね」




私の言葉通りに、レーザーで消し飛び、斬撃の乱舞で切り刻まれ、砕け散った奴の中から搭乗者が投げ出される。
私はそれを左腕で担ぎあげると、破片の中でひときわ輝く部品を見つけ出す。菱形の輝きを放つクリスタル。間違いなくそれはISコアだった。


水面へと落ち往くそれを、私は右腕の刀で切り裂く。世界最強兵器の中枢は、いともあっさりとその切断を受け入れた。




「最初にいったはずだ、死ね、と」




白銀の堕天使は、断末魔を上げることも無く、この世から消え去った。














<あとがき>
HOUKIさんバーサーカーモード発動!! 嘘です、ごめんなさい。
多分こんな展開、読者の皆さんの予想を盛大に裏切っていると思います。……作者自身すらこれは予想外でした。なんでこんな展開考えついたんだろう。
いやね? 最近の感想で原作とは見違えるほど成長した箒さん、とか見かけるわけですよ、けど、人ってそんな簡単に変わるものか? と思ったわけです。
そこで原作の要素を出そうとしたらこの有様です。力に溺れやすいというフレーズからだけで、こんな話になってしまいました。


しかし、何で箒さんの話になるとここまで筆が進むのか、巷じゃ書き難いヒロインとか言われてるのに。



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