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No.27061の一覧
[0] 【本編 第六十六話投稿】インフィニット・ストラトスcross BLADE [ドレイク](2012/03/06 23:51)
[1] 第一話[ドレイク](2011/06/18 23:41)
[2] 第二話[ドレイク](2011/04/11 00:42)
[3] 第三話[ドレイク](2011/04/24 16:50)
[4] 第四話[ドレイク](2011/05/04 16:42)
[5] 第五話[ドレイク](2011/07/10 22:22)
[7] 第六話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[8] 第七話[ドレイク](2011/05/08 17:18)
[9] 第八話[ドレイク](2011/05/15 19:38)
[10] 第九話[ドレイク](2011/05/18 07:20)
[11] 第十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[12] 第十一話[ドレイク](2011/05/21 15:46)
[14] 第十二話[ドレイク](2011/06/05 22:59)
[15] 第十三話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[16] 第十四話[ドレイク](2011/06/05 22:57)
[17] 第十五話[ドレイク](2011/06/09 21:54)
[18] 第十六話[ドレイク](2011/06/18 23:42)
[19] 第十七話[ドレイク](2011/06/27 07:11)
[20] 第十八話[ドレイク](2011/07/02 09:04)
[21] 第十九話[ドレイク](2011/07/03 15:03)
[22] 第二十話[ドレイク](2011/11/23 19:48)
[23] 第二十一話[ドレイク](2011/07/10 18:35)
[24] 第二十二話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[25] 第二十三話[ドレイク](2011/07/18 17:02)
[26] 第二十四話[ドレイク](2011/07/20 19:53)
[27] 第二十五話[ドレイク](2011/11/23 19:49)
[28] 第二十六話[ドレイク](2011/07/24 18:17)
[29] 第二十七話[ドレイク](2011/11/29 00:54)
[30] 第二十八話[ドレイク](2011/07/26 23:25)
[31] 第二十九話[ドレイク](2011/07/28 23:25)
[32] 第三十話[ドレイク](2011/07/30 08:06)
[33] 第三十一話[ドレイク](2011/08/12 20:11)
[34] 第三十二話[ドレイク](2011/08/14 00:31)
[35] 第三十三話[ドレイク](2011/08/19 21:07)
[36] 第三十四話[ドレイク](2011/08/21 12:05)
[37] 第三十五話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[38] 第三十六話[ドレイク](2011/09/17 17:21)
[39] 第三十七話[ドレイク](2011/09/17 22:51)
[40] 第三十八話[ドレイク](2011/11/25 00:07)
[41] 第三十九話[ドレイク](2011/09/20 21:57)
[42] 第四十話[ドレイク](2011/09/23 20:59)
[43] 第四十一話[ドレイク](2011/09/24 23:26)
[44] 第四十二話[ドレイク](2011/10/01 20:44)
[45] 第四十三話[ドレイク](2011/10/05 23:47)
[46] 第四十四話[ドレイク](2011/10/09 01:09)
[47] 第四十五話[ドレイク](2011/10/11 20:01)
[48] 第四十六話[ドレイク](2011/10/13 20:04)
[49] 第四十七話[ドレイク](2011/10/15 17:38)
[50] 第四十八話[ドレイク](2011/10/19 23:08)
[51] 第四十九話[ドレイク](2011/10/23 23:10)
[52] 第五十話[ドレイク](2011/10/26 00:38)
[53] 第五十一話[ドレイク](2011/10/30 19:36)
[54] 第五十二話[ドレイク](2011/11/01 07:18)
[55] 第五十三話[ドレイク](2011/11/03 22:14)
[56] 幕間 その一[ドレイク](2011/11/05 16:56)
[57] 第五十四話[ドレイク](2011/11/07 22:46)
[58] 第五十五話[ドレイク](2011/11/10 23:54)
[59] 第五十六話[ドレイク](2011/11/13 01:33)
[60] 第五十七話[ドレイク](2011/11/16 23:06)
[61] 第五十八話[ドレイク](2011/11/23 09:31)
[62] 第五十九話[ドレイク](2011/12/04 00:28)
[63] 第六十話[ドレイク](2011/11/29 20:45)
[64] 第六十一話[ドレイク](2011/12/06 22:37)
[65] 第六十二話[ドレイク](2011/12/04 21:39)
[66] 第六十三話[ドレイク](2011/12/06 21:55)
[67] 第六十四話[ドレイク](2011/12/11 02:24)
[68] 第六十五話[ドレイク](2011/12/12 18:00)
[69] 第六十六話[ドレイク](2011/12/17 22:39)
[70] 本編とは全く関係がないやばいネタ[ドレイク](2011/05/07 20:12)
[71] 20万PV突破記念外伝[ドレイク](2011/07/05 22:45)
[72] 外伝IF【装甲悪鬼村正とのクロス有】[ドレイク](2011/06/18 22:01)
[74] 外伝IF その二[ドレイク](2011/06/18 22:02)
[75] 外伝IF その三[ドレイク](2011/06/20 22:09)
[76] 外伝IF その四[ドレイク](2011/09/03 08:41)
[77] 外伝IF その五[ドレイク](2011/09/25 17:18)
[78] 外伝IF その六[ドレイク](2011/10/16 21:41)
[79] 外伝IF その七[ドレイク](2011/09/29 00:22)
[80] 外伝IF その八[ドレイク](2011/09/29 22:53)
[81] 外伝IF その九[ドレイク](2011/10/02 21:13)
[82] 外伝IF その十[ドレイク](2011/10/16 21:42)
[83] 外伝IF その十一[ドレイク](2011/11/02 18:01)
[84] 外伝IF その十二[ドレイク](2011/11/20 00:01)
[85] 没ネタ(Dies iraeとのクロス)[ドレイク](2011/08/23 18:09)
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[27061] 第二十二話
Name: ドレイク◆f359215f ID:613a5057 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/23 19:49
<第二十二話>


「二回戦進出おめでとう」
「……やっぱり志保はチートだってこと、改めて認識したぜ」
「ありがとう、簪、――――そして、一夏は後日しごいてやろう、存分にな」
「いや、一夏の感想も当然だと思うよ?」

初っ端から波乱塗れの結果となった、学年別タッグマッチ。
その第一回戦の第一試合を勝利で終えた志保とシャルルは、ピットに戻り、もうすぐ出番である簪と一夏からそれぞれ祝福と呆れの言葉をもらっていた。
まあ、あんな真似をしたのならば、一夏の評価も最もというものだろう。
それをわかっているから志保も口では怒ったように言っているが、その口元には苦笑が覗いている。
そして、志保の手は同時に簪の頭に伸びており、子猫をあやすように優しく撫でている。
自発的ではなく、簪が物欲しげな眼差しで訴えていたからなのだが、なんの衒いも無く実行してしまうあたり、志保自身もこの行為を行うことに慣れて、なおかつ気に入っているのかもしれない。
その様子を物欲しげな目で見つめるシャルル。………………試合開始前に存分にやってもらっていたはずなのにまだ物足りないようである。
簪も簪で我関せずとばかりに、子猫のように目を細め志保の手技に酔いしれている。

「俺、………ここにいていいんだろうか」

自然とのけものにされたような状況に陥った一夏が、ぼそりと漏らした言葉に反応した者がいた。

「――――これから試合だというのにたるんでいるな」
「ええ、この学園に二人しかいない男子生徒としての自覚が足りていないわね」

やってきたのは千冬と楯無。千冬はいつもの凛とした様子だが楯無のほうは、口調は常のままでもその美貌を血の涙で穢していた。…………よっぽど今の志保のポジションと変わりたいらしい。
流石にそんな状況で撫で続けるわけにもいかず、志保は簪の頭から手をのけるが、簪はその行為に対し不満げな表情になる。
その最愛の不満げな視線にさらされ、怒りの視線を志保に叩きつける楯無。
どうすりゃいいんだとばかりに頭を抱える志保。どうにも志保とかかわると有能さとか生徒会長としての威厳が綺麗さっぱり消え去ってしまうようである。

「……そう言えば、簪と一夏の戦う相手って篠ノ之さんと、……ボーデヴィッヒさんなんだよね?」

シャルルの瞳に映るのは不安の色。ドイツ代表候補生に相応しい技量と、それに見合う高性能の機体の組み合わせは、一夏と簪にとってはとてつもない脅威だと認識しているからだ。

「勝てとも負けるなとも言わん、無様な戦いだけはするなよ、一夏」
「ああ、頑張るよ千冬姉」
「ああ、頑張ってこい、一夏」

千冬はそんななんて気に挑む一夏に、一応の励ましの言葉をかける。
言葉面だけを見れば突き放したような言い方だが、千冬の口元に覗くわずかな微笑みが、千冬の一夏に対する情愛を現していた。

「簪の相手はあの子か」
「そう言えば、志保はあいつをフルぼっこにしてたよな、――――なんかアドバイスない?」
「アドバイス?」
「なんか弱点とか隙とか――――」
「代表候補生がそんな弱点なんぞ持ってるわけがないだろう」
「じゃあ、志保はどうやって勝ってたんだよ……あの時俺は千冬姉にぼこぼこにされてて気にする余裕なんてなかったからな」

志保の言葉から続く会話の流れで、あの恐怖体験のことを思い出したのか、顔を青ざめさせる一夏。

「どうやって、といわれてもな……空戦機動ではさすがに劣るから、とにかく空に逃がさないように撃っていただけだがな」

どこぞのフィンランドの白い死神のような言うは易し行うは難しを地で行く志保の言葉に、アドバイスを求めた人選を思いっきり間違えたことを悟る一夏。

「それで行けるのは志保だけだっての……」
「おまえは私のことをなんだと思ってるんだ」
「え? 生きた非常識」
「ほう……、いい度胸だなあ、一夏」
「だって志保と出合った時からあれだぜ、そう思うのも無理ないだろ?」
「…………確かにそうだが……、そして人前でそのことを持ち出すなと約束しただろう、一夏」
「あいたたたっ!! 痛いっ!! マジでいたいからアイアンクロー止めてっ!!」

一夏の正しいが無謀極まる言葉に、まるで聖母の様な慈愛の笑みを浮かべアイアンクローで一夏の体を持ち上げる志保。そんなカオスな光景に、どこぞの世界最強が既視感を覚えたらしいが。

「じゃ、じゃあさ、ボーデヴィッヒさんのISに搭載されている停止結界の対策とかってないかな?」

あまりの光景に見かねた簪が、具体的な質問を投げかけた。志保はその言葉を聞くと即座に一夏から手を離し、簪からの質問に対して思案し始める。

「あれへの対策か……」
「うん、停止結界に捕まっちゃったら一気に不利になるし、織斑君とも話し合ってはみたんだけどなかなかいい案が思い浮かばなくて」
「あの時のあいつは停止結界を使ってたのか?」
「ああ、使っていたな、――――もちろん、全部避けたが」
「いや、あんなもの初見じゃよけるの難しいだろ……、マジでどうやったんだ」
「勘で」
「うぉおいっ!! 言うに事欠いて、勘!?」

力の限りを込めドイツが開発した第三世代兵装を、勘の一言で無効化するんじゃねえよ、と突っ込む。
簪もこれにはあきれ顔で、改めて志保の非常識さを認識しながらちょっと引いていた。

「まあ、半分はそれだが、もう半分には種があるから安心しろ」
「種って何なの」
「ああ、教えるからちょっと耳貸してくれ、一夏も耳を貸せ」

志保の言葉に一夏と簪は耳を寄せ合い、志保が停止結界を避け切った手法を教えてもらう。

「――――というわけだ」
「……よく気付くな、そんなこと」
「これは第三世代型の特殊兵装全般に言える欠点だと思うがな、なまじ思考で操作できるだけにそういうことが起こってしまうんだ」

したり顔でそう語る志保に、簪は憧れと感謝の視線を向ける。

「やっぱり凄いね、志保は」
「簪にそう褒めてもらえるのは、なかなかいい気分だな」
「そ、そう? ……と、ともかく、志保のおかげちゃんと戦えそうだよ、ありがとう」

互いに笑顔を交わす二人。まあ、非常に“イイ”雰囲気ではあるのだが、その光景を見て嫉妬に駆られる人物が二人いた。

「ううっ……、やっぱりルームメイトは大きなアドバンテージだなぁ」
「簪ちゃんが可愛いっ……けどっ、その笑顔はっ、……こちらにっ、向いていないっ」
「どうにかしてくれないかな、これ、毎回毎回……」

この面子がそろうと発生するお決まりの反応に、食傷気味の一夏。とはいえ、箒、セシリア、鈴がそろうと一夏を中心にして同じようなことが発生するのだから、一夏も人のことは言えないのだが……


ちょうどその時、簪と一夏を呼ぶアナウンスの声が流れてきた。


「よっしゃ!! そろそろ出番だな」
「うん、頑張ろうね、織斑君」
「それじゃあ行ってくるぜ、千冬姉、志保」
「ああ、行って来い、一夏」
「頑張れよ、二人とも」
「頑張ってね、簪」
「お姉ちゃんが応援してるからね、簪ちゃん」
「うん、いってくる!!」


そして、一夏は<白式>、簪は<打鉄弐式>を展開しアリーナへと向かう。
皆の視線を受けて向かうその後ろ姿に、少なくとも怯えは見られなかった。




=================




「さてと、それじゃあ僕たちは観客席に行こう」
「ああ、そうだな」

一夏と簪を見送り、アリーナの観客席へと向かおうとするシャルルと志保に、千冬が声をかける。

「衛宮は少しここに残れ、話がある」
「じゃあ、僕は先にいってるね」

千冬の真面目な雰囲気に、シャルルは空気を読んで先に観客席へと向かう。
そのままシャルルは歩き去り、その姿が見えなくなると、おもむろに千冬が話し始める。

「先の試合、お前にしては珍しいな」
「――――そうですか」
「それに関しては私も同感ね、あんな曲芸まがいのことをしなくても勝てたでしょ」

千冬と楯無の疑問、それも当然といえた。志保の技量ならば普通に射撃戦に持ち込んだのならば、危なげなく勝利することができたはずだ。
千冬も楯無も志保が意味も無くそんな無駄な行為をするとは思っていなかった。

「まあ、しいて言えばメッセージ、ですかね」

そして、その疑問に返された志保の答えもまた意味不明なものだった。

「メッセージ、だと」
「成程……、話題にはなるわね」

しかし、千冬も楯無も頭は切れる、即座に多数の関係者の目があるところで目立ち、何者かをおびき寄せようとしているのだと気づく。

「まあ、今更貴様が何を隠しているかは問わん、おおよその予想はすでに付いているからな」

志保に軍事関係・諜報関係とのつながりも見つけられず、そのうえで隠したいことがあるという、千冬の中ではすでに志保の秘密をある程度は推察していた。

「そうね、警戒はしていたけど、全く欠片もそういうやつらとつながりは見つけられなかったしね、―――――その代り、簪ちゃんとイチャイチャしまくってたけどねぇッ!!」
「お願いだから落ちつけ、黒いオーラを出すな」

最近楯無のシスコン暴走発生の沸点が低いなあ~、とか益体も無いことを考えながら、志保は数日前に判明したことを思い返していた。

(前に捕まえた諜報員が、学年別トーナメントで私の撃った偽・螺旋剣のデータを外部に流出させていたと判明したからな)

そう、かつて偶然にも千冬と共同で捕まえたあの諜報員が、学園の機密データの一部を盗み出していたことが判明。その機密データの一部に、志保が放った偽・螺旋剣の映像データが含まれていたのだ。
勿論、この世界のほぼすべての人間にとって、あのデータは意味不明の一言でしか片づけることのできない代物だ。


だが、二つばかり例外があった。


一人は当然、織斑一夏。そしてもう一人は――――


(既に織斑先生のコネで、私の両親にはガードを付けてもらっている、――――何より、やられっぱなしで我慢できるような殊勝な性格ではないだろう、貴様は)

あの場にいた、もう一人の人物。あの女が、もしあのデータを見た場合必ずアクションを起こすだろう。
もしかしたら、この学園の生徒にいらぬ被害が出るかもしれない。それを防ぐためにも、わざわざ派手に勝利したのだから。

(だから、さっさと釣り出されて来い、――――今度は逃がさん)

内心、あの女への闘志を燃やす志保。再び両者が、銃火と刃を交える日は近いのかもしれない。




「と・こ・ろ・で~、――――簪ちゃんに告白されたって、本当?」




その闘志を打ち砕くような、優しげな、それでいて怒りに塗れた楯無の声が響く。

「えっ!? いや、それはっ!?」

いきなりの話題転換と、志保の中でも完璧に整理の付いていない話題を持ち出され、先程のシリアスっぷりを完璧に打ち砕かれ、しどろもどろになってしまう。

「微に入り細に入り、その時の話を聞かせてもらおうかしら」

志保の眼前に顕現した、一人の夜叉に流石の志保も恐れをなし、藁にもすがる思いでこの場にいるはずの千冬に助けを求めるが――――

「織斑先生、助けてっ――――って、いないっ!!」

――――すでにその姿はなく、志保の助けを求める声は空を切った。




「あら、ちょうど二人っきりね、これでじっっっっくり聞けるわ」
「―――――――――――、ちくしょうっ!!」




その後、志保の悲鳴が響き渡ったとかなんとか。




=================




「――――逃げずによく来た」

数多の観客が集うアリーナの中で、一夏を最初に出迎えたのは、ラウラ・ボーデヴィッヒの挑発だった。

「はっ、なんでお前に逃げなきゃなんないんだよ」

負けるものかと、一夏もまた安い挑発とともに、ラウラを鼻で笑う。
だが、一転して表情を引き締めて、ラウラに問いかける。

「おまえはまだ、俺のことを千冬姉にまとわりつく害虫としか見ていないのか」
「どうだかな、………ただ、教官の近くにいる貴様が、気に喰わんだけだ」

自身が放った問いに対しての、ラウラの答え。その姿はどこか寂しげだった。
千冬から、以前ラウラの境遇を簡単にだが聞いたことがある。生まれついてからずっと、軍人として生き、人並みの生活など味わったことなどないという。

(ああ、今のこいつは親と引き離されて寂しがっている子供みたいなもんか、さしずめ千冬姉が母親か? ………………千冬姉って子育てできるのか? 家事能力皆無だけど)

ラウラの感情の推察から脇道に逸れた思考を打ち切り、<雪片弐型>を展開する。
戦闘態勢を整えた俺を見て、ラウラもまた纏う気配を変える。少女のそれから一人の戦士へと。

「ああ、だから今から貴様を存分に叩きのめす、ここにきてからいろいろと苛立ちが溜まっていたからな」
「いろいろ? ………志保にフルボッコにされたこととか?」
「あの女の名前は出すなあっ!!」
「うおっ!?」

志保の名前を出した途端、錯乱したような叫び声を出すラウラ。

「ISの操縦者としての力量は勝っていたのに、射撃の腕だけでこの私が封殺されたんだぞっ!! ……………よけてもよけても銃弾が追ってくるんだ、挙句の果てにワイヤーブレードまで撃ち落とすし、………あいつは人間じゃない、絶対にっ」
「――――すまん、悪かった」

あまりに急激なラウラの変化に、いたたまれなくなる一夏。見れば戦闘態勢をとっていた簪と箒もどう反応していいかわからず、視線をさまよわせている。

「貴様らまじめにやれっ!!」

グダグダになった空気を霧散させる、解説席からの千冬の一喝にどうにか、戦闘前に相応しいピンと張りつめた空気が戻ってきた。
同時に響き渡った戦闘開始の合図で、弾かれたように四機のISが動き始めた。




=================



初手は<シュヴァルツェア・レーゲン>のレールカノンと、一夏の放ったサンダラーの爆裂弾。
ラウラのほうは有効打を狙った一撃、それに対し一夏は流れを引き寄せるための牽制の一発。
二つの弾頭がアリーナ中央で炸裂し、大輪の爆炎を咲かせる。
爆炎の中から流星のごとく飛び出すは<白式>、そのまま<シュヴァルツェア・レーゲン>に突撃。

白と黒が交わる。ラウラは接近戦に持ち込もうとする<白式>に呼応するように、両手のプラズマ手刀を構える。

「こいっ、織斑一夏!! ――――なっ!?」

しかし、一夏はそのままラウラの上を過ぎ去り、一歩出遅れていた箒へと向かう。
代わりにラウラに襲いかかるは簪が揮う、薙刀の一閃。ラウラはその一撃に対し一歩踏み込み、長刀の柄を腕で抑え込む。

「ふん、貴様が私の相手か」
「織斑君のほうが良かった?」
「どちらでも構わん、それに、弱いほうを優先して狙うのは当然のことだ」

確かに、この場で一番戦力として劣っているのは唯一量産機を操る箒だろう。だが、簪の耳には、ラウラはそもそも箒を戦力として換算していないように聞き取れた。
いや、ひょっとしたらこの場にいる誰もを、脅威としてみなしていないのかもしれない。

「二対一でも、負けはないって思ってるの?」

いったん後退し、二門の荷電粒子砲を放つ簪。ラウラはその二筋の閃光を軽やかによけ、ワイヤーブレードで<打鉄弐式>を絡め取ろうとする。
簪はそれに対し即座の迎撃はせず、ある程度引き寄せてクレイモアを発射。多数のベアリング弾頭がワイヤーブレードをはじき落とす。

「当たり前だ、操縦者はともに半人前、機体のほうも片や未熟者にはろくに扱えぬ尖った機体、そしてもう片方は急造機だ、――――知っているぞ、貴様の機体は本来の兵装すら未完成、機体自身もここの生徒の手で作り上げた半端な代物だとな」

確かに、その言葉は事実。本来の第三世代兵装は完成の目処は立たず、機体性能もしょせんは学生の手による物、正式に倉持技研が作った場合と差はあるだろう。


だが、それでも簪はこの機体が、<打鉄弐式>が急造品でも半端な代物でもないと信じている。


「――――違うっ」


振り絞った呟きに、ラウラはただ純然に疑問の声をあげる。

「違うだと、何が違う」

その疑問の声とともに放たれるレールカノンを、簪は軽やかにかわす。

「この機体は半端な代物なんかじゃ、ないっ!! あなたのほうこそっ」

そのまま簪はミサイルを発射。その白煙を追うように薙刀を振りかぶる。
ラウラはそのミサイルを急速上昇しつつ、近接信管弾頭を選択したレールカノンで撃ち落とす。
爆炎をつきぬけて襲いかかる簪の薙刀は、精妙な見切りと体をひねらせ、機体の装甲表面を舐めさせるような紙一重の回避を行う。

「あなたのほうこそ、なんだ?」

そのまま体を捻った勢いを利用した回し蹴りとともに、ラウラは冷徹な言葉を投げかける。

「あうっ!? あなたのほうこそ、一人で戦っているつもりなのっ?」

苦悶の声とともに吹き飛ばされる簪。即座に襲いかかるワイヤーブレードの追撃を何とかかわしつつ、簪はラウラに問いかける。

「ふん、私は一人で戦っている、この学園の生徒の様な浮ついた者の助けなど何の役に立つ」
「――――けない」
「何?」

簪はこの時初めて、他者に対する明確な怒りを抱いた。




「あなたなんかに、絶対負けないっ!!」




確かに、簪よりラウラのほうが圧倒的に強者だろう。だが、簪は“一人”では戦っていない。

「ふん、弱い者ほどよく吠えるというがな」

ラウラは簪のその叫びを虚勢と判断する。いまのラウラに、簪の叫びに込められた意味など理解出来ようはずもなかった。
そのまま、<シュヴァルツェア・レーゲン>に搭載されている第三世代兵装、停止結界を作動させようとする。


ラウラの脳裏に、無様に停止した簪の姿が思い描かれ、機体のシステムにその意思を送り込もうとしたその刹那――――、簪の姿が消えた。


「ぐうっ!?」


ほぼ同時に襲いかかる横合いからの一撃。停止結界を作動させる一瞬の隙を狙った、見事すぎる一撃に、困惑と怒りを抱くラウラ。

(馬鹿なっ!? この女、停止結界を見切っているというのかっ、例えデータがあったとしても初見で見切れるような兵器ではない筈だっ)

確かに、予備動作なく発動する停止結界を初見で見切るなど、そうやすやすと出来る芸当ではない。だが――




=================




「――――目の色?」
「そうだ」

試合開始前にもらった、志保からのアドバイス。だが目の色と言われても簪も一夏もわけがわからなかった。

「どういうことだよ」
「順を追って説明してやる、まずあの兵装、停止結界は確かに優れた兵装だ、思考のみで発動し、いきなり相手の動きを拘束できる」
「ああ、そうだな」
「だが、その使い手がまだ未熟だ」
「え?」

簪にはその言葉は、出鱈目なように感じられた。ドイツの代表候補生にもなっている操縦者が未熟というのは、なかなかに受け入れがたい事実だった。

「目は口ほどに物を言い、と昔から言うだろう、目にはな、存外感情が浮き出てくるものだ」
「虹彩の色かっ!?」

何やら志保の言葉で思いいたったことがあるのか、一夏が声をあげる。

「そういえばお前は古流剣術を学んでいたと言っていたな、一夏の言う通り、虹彩の色は感情によって変化しやすい、たとえば敵意を剥き出しにしている時は白みがかった三白眼になり、歓喜の感情の時は黒目になったり、目に感情を出さないことは古流剣術では重要な技法のひとつだからな」

志保の説明で、ようやく簪も志保の言わんとすることに思い至った。

「そうか、停止結界の使用時も同じことが起こるんだね」
「ああ、そうだ、目の色に気を配っておけば、だいたいの発動タイミングは見切れる」
「けど、あいつ軍人なんだろ? 感情ぐらいちゃんと抑え込みそうなものだけどなあ」

その一夏の疑問の声に、志保はフッと笑い。

「初対面の人物にいきなり平手打ちをかまそうとするやつが、感情を完璧に抑え込めるはずもないだろう」

からかうようにそう言ったのだった。




=================




(志保のアドバイスのおかげだね、この一撃は、……ありがとう志保)


内心で志保に感謝しながら、未だ態勢が整っていないラウラに対し、薙刀を切り返しもう一撃を加える。

「ぐはっ!!」

そして簪は叫ぶ。この一撃を加えるための力をくれたのは、整備部のみんなのおかげ。この一撃を加えるための道筋を切り開けたのは志保のアドバイス。この一撃は決しておのれひとりで成し遂げたものではないと、思いを込めて叫ぶ。




「この一撃は、みんなの力のおかげなんだから!!」




簪の雄々しい叫びが、アリーナに響き渡った。












<あとがき>
あれ? 一夏を目立たせようと思ったのに、いつの間にやら簪の主役回になってる!?
そして志保にはオータムとの再戦フラグが立った。それはもうビンビンに。

「あれ、子供の時の志保に倒されたんだから、オータムに勝ち目なくない?」

とか思った読者の皆様、ご安心を、ぶっちゃけ言うと、この作品において一番の魔改造キャラはオータムになる予定です。何せもう、作者の脳内で、<アラクネ>のセカンドシフトと単一仕様能力が決まっていますから。



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