どうしてだろう。板移動したら全部消えてしまいました。とりあえずまた上げます。感想……皆様すみません……なんとか拾えましたけど
*注意*
本作品ではとある作品のネタバレが存在します。
本文中に作品名が出て、「ネタバレダメ絶対!」と思ったら引き返してプレイして終わってから読むことをお勧めします。かしこ。
神転オリ主の自殺の仕方
道を歩いていたらトラックにはねられたでござる。
まだ買ったばかりのゲームをやることもできないままにあっという間に意識を失ったオレはそうしてこの白い世界にやってきた。
「ここは……」
閉じられていた眼をゆっくりと開けると真っ白な空が広がっていて、その余りの真っ白さに実はまだ目を閉じているのではないかと錯覚した。それは瞼の裏側の闇を反転したようだったから、なんて詩的なことを考える頭の余裕はあるらしい。
頭だけを軽く捻って左腕を見た。無事である。どうやら大の字になっているようで、動けと命令したら新品のグローブのようにぎこちない動きで遂行してくれた。反対側もどうやら無事なようで一安心。
あいにく足を完全に見ることはできなかったので今までの感覚を思い出して膝を曲げてみた。見慣れた太腿が見え、そしてそこも無事だった。
「なんでだろ……」
トラックに轢かれたオレは直感的に死んだと思ったのだが、こうして意識がある以上神ではいないらしい。しかしよしんば生を勝ち取ったにしても重傷であるはずだ。それがあの時のままにくたびれたジーパンと灰色のシャツに包まれた手足が見える。病院なら脱がされているはずなのだが。
「気がついたのですか」
不意に頭の先から声が聞こえた。とは言っても寝たままのオレな訳だから正確には後ろから、ということになる。そこで始めてオレは身体を起こすということに気がついた。
手足を動かしていたからなのか、上半身は命令通りに起き上がり、そして振り返る。
「ああ、それは何よりです」
――そこには幼女がいた。あの感動的な少年と犬の物語の最期に出てくるぽっちゃり天使のような格好をした美幼女がいた。
正直予想していなかったのでオレはそのまま幼女を見つめ続け、一方でその幼女は照れたように視線を逸らした。
「キミは、誰だ?」
「あ。あの、私は、その……です」
「ん?」
「ですからっ、神様です!」
小さな身体の割に大きな声で言ったその言葉は何とも言えないものだった。
「馬鹿言うな。一体どこにオレより年下でメルヘンな格好をした神様が――」
その時オレはあることを思い出した。
トラックに轢かれ、神様と名乗る知らない人に別の世界に飛ばされてしまうという物語。それは空想の世界でもなんでもありで、なおかつ望む力さえもくれる現実に愛想が尽きた者共垂涎のイベント。
「…………いるかもしれないな」
「え? あ、な、納得していただけたようで何よりです……」
幼女――神様はオレの急な態度の変化に呆気に取られていたが、しかしもし本当に想像通りならオレは憧れの世界に行けるかもしれない。
それにもしもこれが嘘なら、その時はこの幼女の遊びに付き合っていたのだハッハッハとで言えばいいだろう。しからば、まず確認をせねばな!
「で、神様。オレは死んだのか?」
その問いに神様はビクッとあからさまに反応し、そして長い沈黙の後に掠れる様な声で言った。
「……はぃ」
「そうか」
これが現実だとして、しかし死んだというのにそれほどの感情は出てこなかった。それは今こうして思考できているという時点で実感を消失させられるからだ。デカルトも言ってたしな。
それにこの先の展開しだいでそれを幸運だと思うかもしれないのだ。激情は取っておくべきだ。
「それで、死んだやつは皆ここに来るのか?」
「……いえ。あなたは特別です。特別にしなければいけませんでした」
ぐしぐしと目をこする神様。涙を流していたらしい。
「たいへん、言いづらいことなのですが、あの。――あなたは死ぬはずじゃなかったのです」
脳内で顔文字が踊った瞬間である。これぞ正しく狂喜乱舞。しかしここで顔に出すわけにはいかず、堪えながら先を促す。
「わたしがくしゃみをした結果トラックが暴走してしまって……だからあなたが死んだのはわたしのせいなんです! ごめんなさい!」
なんという大規模へーちょ。神様のくしゃみはトラックを動かすらしい。
「くしゃみは反射だ、しょうがない」
全くもってそちらが悪いのだが慰めの言葉をかけなくてはならないほどに幼女神様はかわいそうだった。それに後々のためにいい印象を与える必要がある。
「でも! それでも、あなたの生を終わらせてしまったことには変わりがありません。だから、あなたにもう一度命を与えようと思います」
きたぞ、キタゾコレ!
「でも、一度死んだ人を同じ世界に戻すわけにはいきません。なので別の世界になってしまうわけですが」
「ああ、もう一度やり直せるんだ。文句はないよ。――ところで要望は聞いてもらえるのかな?」
口を閉じて笑い出さないようにしながら聞くと、できることならという最高の返事を頂けた。なので遠慮なく言わせてもらう。
「その世界って、ゼロの使い魔の世界じゃ駄目かな? それで、主人公のルイズに召喚してほしい」
「ゼロの使い魔、ですか? ちょっと待ってください…………ああ、本の世界ですね。大丈夫です。全ての創作物の世界は実際にありますから」
「マジか! あとそうだな、ちょっと能力が欲しいんだ。魔法の世界だから自衛の手段が欲しい」
「はぁ、言っていただければ――」
「マジか! じゃああれ! 空の軌跡のレオンハルト! レオンハルトの全てが欲しい!」
「れおんはると? えぇっと……はい、英雄伝説『空の軌跡』の剣帝レオンハルト。この方ですか?」
空間に画面が浮かび上がり、その姿が窺える。
剣帝レオンハルト、通称レーヴェ。プラチナブロンドの髪と鋭利な容貌を持ち、その圧倒的な剣技は他を寄せ付けない。その世界でも最強クラスの人物だ。
「そう、そうです。高い戦闘力とかっこよさ、その知能。全てにおいて完璧だ! その全てを手に入れられたらオレはもう……」
無双できること間違いなし。遍在なんてチート魔法も分け身の前では無意味。見切れるかな、とか言ってみてぇ!
「はぁ、じゃあそのままあなたに与えればいいのですか……?」
「ああ! 頼む!」
「……まぁそれが望みなら。もともとわたしのミスですし」
「イエスッ! ありがとう神様!」
思わずガッツポーズ。これで素晴らしい人生が待ってるぜ。神様はぶつぶつと呟くとオレの体は温かい膜のようなものに包まれ光り始める。
そしてオレの真横に鏡のようなものが浮かび上がった。ゲートだ。
「そこを潜れば望みの世界です。その時点でお願いされた転写も終わりますから」
「おう! ありがとうそれじゃ!」
感謝も投げやりにひゃっほうと飛び込む。この先にオレの望む未来が…………あれ?
なんか、変……だ。な。
「――あんた、誰?」
少女のような高い声が聞こえて、ゆっくりと意識が浮上した。見ると無数の子どもがいて自分を見下ろしている。
その状況は不思議だ、しかし。
しかし何より不思議なのは。
「――娘。何をした」
死んだはずの自分が、どうしてここに存在しているのかということだった。
――そして剣帝レオンハルトは第二の生を歩み始めた。
「――しかし、あの人は自分が嫌いなんでしょうか……」
少女のような神は呟く。レオンハルトの全てを転写した彼はもはや彼でなく、レオンハルトでしかなくなるのだから。
あとがき
神様転生チートオリ主は調子に乗りすぎたようです。
Q. 転生?
A. レオンハルトに転生しました。