せーの、メダロット!!
白い世界に俺、白銀 武はいた。全てが終わった。今胸に残る思いもなにもかもを全て忘れ、俺は元の世界に、いや、正確には純夏の望むように再構成された世界に帰る。
それは悲しいことで、まだできることがあるはずだけど、それでも今は喜びたい。みんなで勝ち取った勝利を。人類に光明を与えられたことを。
でも、できたら……意識を失う寸前に、今度は地球を狙う侵略者ではない異星人に会いたいな。とちょっとだけ思った。
そして、目が覚める。俺は……がばっと起きた。そこは俺の部屋だった。確かに見なれた俺の部屋。だが、少し違和感がある。
いったいなんなんだ、何度も世界をやり直したけど、違和感を感じたことなんて……そこまで考えてふと気付いた。なにも忘れてない。俺の中に元の世界の記憶がちゃんとある。
い、いったいどうなってるんだ?
混乱する中、布団が若干膨らんでいた。
ここが、もし元の世界なら、冥夜かと思ったけど……冥夜ならもう少し膨らんでるんじゃ?
俺は恐る恐る布団を捲って……
そこにロボットがいた。
ぱたんと布団を戻す。それから再び広げ、やっぱりロボットがいた。
……なぜロボットと寝てるんだ?
身長は一メートルほど。直線的でスマートなデザイン、デフォルメされた武御雷っていう感じ。そして、紫色の装甲は鉄のような感じではなくどちらかというとプラスチックっぽい。
……ロマンだ。目の前に男の子のロマンがある。
「起きたか武」
そのロボットは冥夜の声で問いかけながら体を起こした。
は?
「冥夜……か?」
俺は信じられないものに問いかける。
冥夜がロボット? いやいや、待て待て俺。それはどちらかというと純夏の役……そこまで考えて少し哀しくなった。
「いきなり泣きだすとは、どうした武?」
うん、落ち着け俺。
夢にしてはリアルだ。ならこれは……
「そうか御剣財閥か」
きっと、冥夜が男の子のロマンを理解し、自分のデータをインプットしたロボットを送り込んだのだ! そうに違いない!
それなら、大丈夫だ。万事解決!
「確かに私のパーツは優勝者の私たちに御剣が進呈したものだがどうしたのだ?」
ほらな。やっぱり御剣財閥が関係して……いや、待て優勝者ってなんだ?
問い返そうとして、
「武ちゃんおはよー!」
そこで、とても愛おしい声が部屋に突入してきた。
振り返る。
赤い髪、大きなリボン、くりっとした大きな瞳、頭から生えるみょうちくりんな触手。満面の笑顔。そこに純夏がいた。
そう、純夏だ。俺が鈍感なせいで苦しめてしまった、とてもとても大切な幼馴染。
「純夏!!」
俺は反射的に純夏を抱き締めていた。
愛おしい人にあったら誰でもこういう反応だろ。うん。と自分を納得させる。
「きゃ! 武ちゃん、どうしたの?」
「……羨ましいなスミカ」
ぼそっと冥夜(?)が呟くが気にしない。
「白銀さん大胆ですね……」
霞?!
確かに霞の声が聞こえた。俺は周りを見回して、
「私はここです」
と、純夏の後ろからちょこんと兎が出てきた。
うん、兎。冥夜と同じような身長一メートル程度、頭頂部に霞がしていたのと同じようなウサミミのついたロボット。
「霞、なのか?」
「はい」
こくりと霞が頷く。
「もー、武ちゃん何言ってるの? 霞ちゃんとはいつも会ってるのに」
純夏の触手がクエッションマークを作るのを見た瞬間、
「純夏、ちょっと霞借りてくぞ!」
俺は、霞を抱えて部屋を、家を飛び出していた。
少し離れた公園まで走り、霞のプラスチックでできた硬い肩を掴む。
「霞、一体この世界はなんなんだ? なんで、お前や冥夜がロボットになってるんだ!!」
いったいなにが起きたんだよ。知り合いがロボットなんて……んなの受け入れられるか!!
「やっぱり、白銀さんもなんですね……」
『も』ってことは……
「はい、私も『前の世界』の記憶があるんです」
よ、よかった。なら、
「教えてくれ霞。いったいなにがどうなってるんだ」
霞ははいと重々しく頷く。
そして、
「ここは、メダロットの存在する世界です」
しばらく沈黙が走る。
「あー、メダロットってなんだ?」
まずは、根本的な質問をする。
「私たちのようにメダルで動くロボットの総称です」
メダルで?
俺の疑問を察したのか、霞が背中を向けてスイッチを押すように指示を出す。
言われるままに俺がスイッチを押すと、背中のパネルが開く。
そこに、六角形で、中心に輝く宝石のようなものがある、兎の意匠が彫り込まれたメダルがあった。
「これが、メダルです。私たちメダロットの頭脳であり、魂です」
そこから霞は説明してくれた。
この世界はメダルで動くメダロットが、良きパートナーとして人間と共にあり、世界中にメダロットと、持ち主であるメダロッターがいる。
そして、メダロット同士を戦わせるロボトルという競技があり、この世界の俺は日本で五指に入る実力者らしく、近々開催される世界大会の選手に選ばれているらしい。
「まじ?」
ヴァルジャーノンでは、そこそこの腕はあった自身はあるんだが、全然信じられないんだけど……
「はい」
霞は重々しく頷いた。
そう、ここは武が望んだ世界。『侵略者としてやってきたが、その役割を放棄した異星人』であるメダロットの存在する世界だった。
一方、香月夕呼……
「返せ! あたしの努力を返せえええええええ!!」
メダロットの存在を知って、自宅で大暴れし、パートナーメダロットのピアティフに止められたという。
~メダロット紹介~
冥夜
武のメダロット。武が小学生の時に拾ったクワガタメダルで、主人である武に忠誠を誓ってる。
ただし、最近は忠誠というより、恋慕の情が上回り始めている。
クワガタらしく格闘が得意で、武の妙な指示にも追随できるほどの機体制御能力を持つ。
霞
武と同じ『前の世界』の記憶を持つ。純夏のパートナーで、妹のような存在。
メダルは七歳の誕生日に純夏の両親がプレゼントしたウサギメダル。
相手の行動を先読みするようなバトルをする。
オリメダ
KWG-00R 武御雷
冥夜に使用されているパーツ。名前に反し、一応女型。
御剣財閥がメダロット社の傑作機『ヘッドシザース』を参考に開発した『シラヌイ』をベースに発展させたもの。
シラヌイの特徴である脚部の跳躍ユニットを装備し、高出力化したのも相まって高い機動力を発揮する半面、シラヌイを無理に発展させた弊害に機体バランスが悪く、他のパーツと組み合わせて使うのにはメダルに相応の技量が必要。
御剣主催の大会で優勝した武と冥夜なら扱いきれる、と判断した次期総帥の御剣悠陽から二人にパーツ一式が贈られた。
VAL-99 ラビスルーズ
霞に使用されているパーツ。武が武御雷とともに贈られたパーツをプレゼントしたもの。
武御雷と同様に御剣財閥がメダロット社のVALシリーズを参考に開発した。
シラヌイと比べ、バランス良く性能が上がっている。また、独自の改良として、頭部に兎の耳のようなパーツがある。これは、シラヌイにも採用された空力カウルの効果を狙ったものである。
VAL型とのパーツ性能の差異としては、右腕パーツがフリーズではなくサンダーであること。
久しぶりにメダロットをやったら思いついてしまった。
マザーメダロットを送ってきたのはBETAの主たちと同じという設定です。
うーん、師匠と纏めた方がいいかなあ?