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No.26350の一覧
[0] (デジアド無印に大輔投入)おれとわたしとぼくらのあどべんちゃー(再構成)[若州](2013/01/22 22:22)
[1] 第一話 激闘!サイバードラモン![若州](2013/01/22 22:18)
[2] 第二話 幼き古代種 チビモン[若州](2013/01/24 23:39)
[3] 第三話 大好きと大嫌いの狭間で[若州](2013/01/22 22:20)
[4] 第四話 お姉ちゃんという宿題[若州](2013/01/22 22:21)
[5] 第五話 僕らの漂流記 [若州](2013/01/24 23:38)
[6] 第六話 星明かりの下で[若州](2013/01/24 23:36)
[7] 第七話 僕らの漂流記 その2[若州](2013/01/27 06:17)
[8] 第八話 夏の決心[若州](2013/01/29 05:20)
[9] 第九話 ミミの恋愛講座[若州](2013/08/02 23:48)
[10] 第十話 ちびっ子探険隊 その1[若州](2013/08/02 23:49)
[11] 第十一話 ちびっ子探険隊 その2[若州](2013/08/02 23:50)
[12] 第十二話 ちびっ子探険隊 その3[若州](2013/08/02 23:50)
[13] 第十三話 そしてはじまる幸福論[若州](2013/08/02 23:51)
[14] 第十四話 寝ない子誰だ[若州](2013/08/02 23:51)
[15] 第十五話 ムゲンマウンテンの麓で[若州](2013/08/02 23:52)
[16] 第十六話 ケンカするほど[若州](2013/08/02 23:53)
[17] 第十七話 僕らの漂流記[若州](2013/08/02 23:56)
[18] 第十八話 うそつきのこども[若州](2013/08/02 23:57)
[19] 第十九話 すたんどばいみー[若州](2013/08/02 23:57)
[20] 第二十話 ぼーいみーつがーる[若州](2013/08/02 23:58)
[21] 第二十一話 そして、想いは進化する[若州](2013/08/02 23:58)
[22] 第二十二話 可哀想な女の子の話[若州](2013/08/02 23:59)
[23] 第二十三話 古の奇跡 エクスブイモン[若州](2013/08/02 23:59)
[24] 第二十四話 いちばんだいすきなひと[若州](2013/08/03 00:00)
[25] 第二十五話 ともだち[若州](2013/08/03 00:01)
[26] 第二十六話 完全なる善 エンジェモン[若州](2013/08/03 00:01)
[27] 第二十七話 届かない声[若州](2013/08/03 00:02)
[28] 第二十八話 兄姉奮闘記[若州](2013/08/03 00:02)
[29] 第二十九話 違う物語が、キミたちからはじまる[若州](2013/08/03 00:03)
[30] 第三十話 覚醒した希望 エンジェモン [若州](2013/08/03 00:03)
[31] プロローグ 太陽が目覚めたら[若州](2013/08/03 00:04)
[32] 第1話 友達のありかた[若州](2013/08/03 00:04)
[33] 第2話 旅立ちの夜に[若州](2013/08/03 00:05)
[34] 第3話 幻痛[若州](2013/08/03 00:06)
[35] 第4話 約束[若州](2013/08/03 00:06)
[36] 第5話 うそつき[若州](2013/08/03 00:07)
[37] 第6話 めざめのこどう[若州](2013/08/03 00:07)
[38] 第7話 太陽の紋章[若州](2013/08/03 00:08)
[39] 第8話 笑天門過ぎれば福来る[若州](2013/08/03 00:08)
[40] 第9話 模擬パラドックス[若州](2013/08/03 00:08)
[41] 第10話 傲慢なる太陽 スカルグレイモン[若州](2013/08/03 00:09)
[42] 第11話 続・ちびっこ探検隊 その1 [若州](2013/08/03 00:09)
[44] 第12話 続・ちびっこ探検隊 その2[若州](2013/08/03 00:10)
[45] 第13話 続・ちびっこ探検隊 その3 もといタケルの受難[若州](2013/08/03 00:11)
[46] 第14話 Go ahead[若州](2013/08/03 00:11)
[47] 閑話 選ばれなかった女の子の話[若州](2013/08/03 00:12)
[49] 第15話 はろーあげいん[若州](2013/08/03 00:13)
[52] 第16話 キミだけにできること[若州](2013/08/03 00:14)
[54] 第17話 どんないろがすき[若州](2013/08/03 00:14)
[56] 第18話 Should read between the line![若州](2013/08/03 00:16)
[57] 第19話 ひとりぼっちの子守唄[若州](2013/08/03 00:16)
[58] 第20話 あたりまえのふつうのこと[若州](2013/08/03 00:17)
[59] 第21話 親友になりたい宣言[若州](2013/08/03 00:17)
[60] 第22話 スーパーハカーはかく語りき[若州](2013/08/03 00:18)
[61] 閑話:孤独な女の子の話[若州](2013/08/03 00:18)
[62] 第23話 2102400の孤独[若州](2013/08/03 00:19)
[63] 第24話 希望は疫災である その1[若州](2013/08/03 00:19)
[64] 第25話 希望は疫災である その2[若州](2013/08/03 00:20)
[65] 第26話 希望は疫災である その3[若州](2013/08/03 00:21)
[66] 第27話 希望は疫災である その4[若州](2013/08/03 00:21)
[67] 第28話 蹂躙する愛情 セトモン[若州](2013/08/03 00:22)
[68] 第29話 放り投げられた祈り[若州](2013/08/03 00:22)
[69] 第30話 ぼくのばしょ[若州](2013/08/03 00:23)
[70] 第31話 だれかさんのおもいで[若州](2013/08/03 00:23)
[71] 第32話 そして空は黄金色  [若州](2013/08/03 00:24)
[73] 第2部 序幕 八つ神の少年[若州](2013/08/03 00:25)
[74] 第一話 親友のあり方[若州](2013/08/03 00:26)
[75] 第二話 めぐるせかいで[若州](2013/08/03 00:26)
[76] 第三話 飛翔する太陽 メタルグレイモン[若州](2013/08/03 00:27)
[77] 第四話 悪食聖獣のたわごと[若州](2013/08/03 00:27)
[78] 第五話 終わってしまった物語[若州](2013/08/03 00:28)
[79] 第六話 薄氷に立つ[若州](2013/08/03 00:29)
[80] 第七話 やつあたり[若州](2013/08/03 00:29)
[81] 第八話 一寸先は闇[若州](2013/08/03 00:30)
[82] 第九話 フラワーヤードにて[若州](2013/08/03 00:30)
[83] 第十話 受け継がれる英知 [若州](2013/08/03 00:31)
[84] 第十一話 母なる英知 アトラーカブテリモン[若州](2013/08/03 00:31)
[85] 第十二話 いにしえのきせき[若州](2013/08/03 00:32)
[86] 第十三話 はじまりのまち[若州](2013/08/03 00:33)
[87] 第十四話 囚われのお姫様[若州](2013/08/03 00:33)
[88] 第十五話 願いなる風 リリモン[若州](2013/08/03 00:34)
[89] 第十六話 世界の安定を司るもの[若州](2013/08/03 00:34)
[91] 第十七話 迷子の気持ち[若州](2013/08/03 00:35)
[92] 第十八話 ジュレイモンを捜せ[若州](2013/08/03 00:35)
[93] 第十九話 ベジーモンレストラン[若州](2013/08/03 00:36)
[140] 第二十話 スピリットオブメモリーズ[若州](2013/08/03 00:36)
[141] 第二十一話 豪勇進化 ワーガルルモン[若州](2013/08/03 00:37)
[142] 第二十二話 夜が降りる[若州](2013/08/03 00:38)
[143] 第二十三話 ミッドナイトファンタジア その1[若州](2013/08/03 00:38)
[144] 第二十四話 ミッドナイトファンタジア その2[若州](2013/08/03 00:39)
[145] 第二十五話 ミッドナイトファンタジア その3[若州](2013/08/03 00:39)
[146] 第二十六話 ゲンナイの隠れ家[若州](2013/08/03 00:40)
[147] 第二十七話 デジモンアナライザー[若州](2013/08/03 00:40)
[148] 第二十八話 ラグランジュハート[若州](2013/08/03 00:41)
[149] 第二十九話 デジモン黙示録[若州](2013/08/03 00:41)
[150] 第三十話 デジモンランド見回り隊[若州](2013/08/03 00:42)
[151] 第三十一話 強襲!メカノリモン![若州](2013/08/03 00:42)
[152] 第三十二話 風と太陽の守護神ガルダモン[若州](2013/08/03 00:43)
[153] 第三十三話 丑三つの夜に[若州](2013/08/03 00:43)
[154] 第三十四話 裏次元の呪い[若州](2013/08/03 00:44)
[155] 第三十五話 かわれないまち[若州](2013/08/03 00:44)
[156] 第三十六話 死者の町[若州](2013/08/03 00:45)
[157] 第三十七話 さよならはいらない[若州](2013/08/03 00:46)
[158] 第三十八話 終焉の兆し [若州](2013/08/03 00:46)
[159] 第三十九話 終焉の兆し その2[若州](2013/08/03 00:47)
[160] 第四十話 終焉の兆し その3[若州](2013/08/03 00:48)
[161] 第四十一話 オムライス[若州](2013/08/03 00:48)
[162] 第四十二話 違法電波テロ事件[若州 ](2013/08/03 00:49)
[163] 第四十三話 砂漠の暗殺者 スコピオモン [若州 ](2013/08/03 00:50)
[164] 第四十四話 砂漠の暗殺者 スコピオモン その2[若州 ](2013/08/03 00:50)
[165] 第四十五話 ゲートポイント[若州](2013/08/03 00:51)
[166] 第四十六話 ただいま[若州](2013/08/03 00:52)
[172] 第四十七話 闇貴族の城 前編[若州](2013/08/10 20:43)
[173] 第四十八話 闇貴族の城 後編[若州](2013/08/10 20:44)
[174] 第四十九話 異次元からの帰還[若州](2013/08/24 21:04)
[175] 番外編[若州](2013/08/10 20:42)
[176] このSSにおけるデジタルワールドの歴史[若州](2013/01/22 22:23)
[177] 第3部 プロローグ[若州](2013/08/24 21:05)
[178] 第1話 デジモン東京大横断 その1[若州](2013/08/24 21:08)
[179] 第2話 デジモン東京大横断 その2[若州](2013/08/24 21:08)
[180] 第3話 デジモン東京大横断 その3[若州](2013/09/09 19:40)
[181] 第4話 デジモン東京大横断 その4[若州](2013/10/06 14:45)
[182] 第5話 常闇の死闘[若州](2013/10/06 14:46)
[183] 第6話 渋谷系デジモン珍道中 その1[若州](2013/10/06 14:47)
[184] 第7話 渋谷系デジモン珍道中 その2[若州](2013/10/06 14:47)
[185] 第8話 ゲソモン、東京湾襲撃! その1[若州](2013/11/24 19:45)
[186] 第9話 ゲソモン,東京湾襲撃!その2[若州](2013/11/24 19:45)
[187] 第10話 beathit!その1[若州](2013/11/27 19:45)
[188] 第11話 beathit! その2[若州](2014/01/15 21:02)
[189] 第12話 beathit! その3[若州](2014/01/15 21:03)
[190] 第13話 beathit! その4[若州](2014/01/15 21:04)
[192] 第14話 beathit! その5[若州](2014/03/16 00:22)
[193] 第15話 beathit!  その6[若州](2014/03/16 00:22)
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[26350] (デジアド無印に大輔投入)おれとわたしとぼくらのあどべんちゃー(再構成)
Name: 若州◆e61dab95 ID:e58c3713 次を表示する
Date: 2013/01/22 22:22
おれとぼくらのあどべんちゃーをお読みになる前に、必ずお読みください



このSSの主成分は以下の通りです。

・デジモンアドベンチャーおよび02のアニメ版
・デジモンアドベンチャー小説版1から3巻まで
・デジモンアドベンチャーVテイマー01(ゼロマルとブイモンは別個体です)
・WS版デジモンアドベンチャーシリーズ
・デジモンアドベンチャーおよび02のキャラソンおよびドラマCD
・デジモンワールドおよびデジモンストーリー
・PSP版デジモンアドベンチャー

他デジモン考察サイト様、wikipedia、データベースサイト様を参考にしています。

このSSにおける設定は、独自設定と考察サイト様をもとにしたものが混在しているため、
公式設定ではありません。
デジモン商品は、オリジナルの設定をバックボーンとする独自展開を行っているオリジナル商品と、
アニメ作品とのタイアップであるアニメーション商品の二つに大きく分けることが出来ます。
また、両者双方に関連した内容を含むその他の商品も存在します。
このSSでは、上記の商品における設定が含まれますので、予めご了承ください。



デジタルモンスターは、ウィズの考案した公式設定をベースとなっていますが、
各ビデオゲーム作品やアニメ、漫画作品によってそれぞれに独自の解釈をして、
細かな設定が存在します。
オリジナルの設定を継承しつつ発展させています。
このSSではオリジナル設定を優先的に取り扱います。



このSSにおけるデジタルモンスターの設定は以下の通りです。




『デジタルワールド』や『デジタルモンスター』は近代における電子機器や精密機械の発展や、
進む情報化社会化と絡め、リアルワールドでのネットワークの発展に伴って自然に生まれた。
人間とデジモンとの間に、特殊な関係が形成されている。
人間側の精神や感情の昂りによってデジモンが進化される。
場合によってはデジタルワールド・リアルワールド以外の世界も存在し、
物語に強い影響を与えることもある。
デジモンを知らない人間たちはリアルワールドに現れて暴れまわるデジモンたちのことを「怪獣」と呼んでいる。




















彼には6つ上の姉がいる。
6つという歳の差は意外と大きいもので、彼が生まれたとき姉は小学校に入学していて、
彼が小学校に入学したとき既に姉は小学校を卒業し中学校に入学していた。
おそらく彼が小学校高学年になる頃には、姉は中学校を卒業し高校に進学するだろう。
それは彼がまだ知らない世界を少しだけ早く、その自慢気な口ぶりから情報として知ることができて、
いずれ自分が知ることができる世界に想いを馳せる楽しみがある。
1歳でも歳の差が縮まれば小学校の時だけは、1年間だけでも同じ通学路を歩き、
おそらく日常茶飯事のケンカをしながら通うことがあったかもしれないが、事実上それはありえない。
つまり、姉は常に彼にとって一歩だけ早い人生を歩んでいて、
おそらく同じ進路を取るだろうとぼんやり考えている彼は、彼女が通ってきた道を歩むことになるのである。
それがいやとか、いやじゃないとか彼は小学校に進学するまで具体的に思い描いたコトはなかった。
ただなんとなく、姉のことを知っている人がいるから、
顔と名前を覚えてもらえるのは早いだろうなという漠然とした予感だけはしていた。
実際にそれは事実だった。
どうやらほんの少しだけ珍しい苗字は、あっという間に姉を連想させたらしい。、
姉の弟かと何回も顔も見たことがない上級生や先生、通学路沿いの近所の人達に聞かれたし、
別に隠すことでもないので肯定したし、しばらくすれば面倒になったので自己紹介するときには必ず姉の名前を先に付けるようになった。
ああ、あの、と大抵初対面よりも親しげに、時には姉が在学していたときの思い出話も交えながら話しかけてきて、
顔と名前だけは確実に覚えてもらえるのは便利だった。
しかし、とある一点において、そのある意味お約束のようなやりとりが次第に苦痛になってきたのはいつの頃だったか、彼ははっきりとは覚えていない。

姉が所構わず自分をネタにして笑っていると知ったとき、少なからず彼はショックを受けた。
そりゃあ、6つも下の弟なんて姉からすれば全てが未熟であり、
欠点だらけでプラスになるようなところなんてひとつも無いかもしれない。
何か失敗したり姉と比較して劣るところがあったとき、
いつも両親から姉を見習えと耳にたこができるほど聞かされてきたのは事実である。
彼も彼なりに姉のことはある程度見本とすべきところはあったし、姉として認めていたつもりである。
だが、上級生や先生から聞かされる思い出話の中で、姉は彼の欠点をあげては笑い、
こんな弟嫌いだと、いらないと軽口程度に話していたと、まるで濁流のように聞かされ続ければ、
小学校に入学する前姉をどのように見ていたのか彼はまるで思い出せなくなっていた。
時にはその噂を伝聞してきた上級生に、実際にそういう人間なのかと面と向かって聞かれたこともある。
もちろん全否定に全力を注いだが、そういう事が1年間続いた彼は、姉の言葉を使うとすればすっかりすれてしまった。

姉の愛情表現だと人は言う。自分の弟について話すとき、無条件で褒めちぎるのはブラコンだけだと。
普通はどうしても照れが入ってしまい、あることないこと口に出してごまかしてしまうだけだから気にするな、と励まされる。
でも、とまだ幼い彼は思うのだ。
本当に嫌いじゃなかったら、隠れて自分の弟のことをわざわざ悪く言うなんてことしないんじゃないかと。
そうこぼすと決まって、本当にお前は姉のことが大好きだなと満面の笑み付きでからかわれてしまう。
ちがう、そうじゃない、と反論したところでお門違いの揶揄は止まらず、
気づけば彼のまわりではすっかりシスコン扱いとなってしまっていた。不快である。
そういうわけで、すっかり彼は姉に習って、自分から姉のことは嫌いであると公言するようになってからずいぶんな月日が流れていた。

幸か不幸か彼は直球かつ単純な少年だった。
喜怒哀楽の表現が実に分かりやすく、端から見ているととても微笑ましい言動や行動が多々あり、
人によってはそれをからかったり、怒らせたりして楽しんでいる。
そういう意味でも非常に周囲から好かれる人間だった。
勢いに任せて行動したり、土壇場になればそれなりに根性を発揮して人を引っ張れる力のある子だった。
姉に嫌われているのではないか、という目先の疑惑に対して考えながら行動するタイプであり、
どうしてもその向こう側にある背景や人の考えを読み取るのは、まだ小学校2年生の彼にはあまりにもハードルが高すぎた。
目には目を、歯には歯をというハンムラビ法典のような単純明快な態度は、
返って姉を楽しませているのかもしれないという予感を常に抱えるはめになっているが。
なにはともあれ、彼、本宮大輔と本宮ジュンの関係は今日も元気に険悪である。


「勝手に入ってくんなよ、姉貴」


お姉ちゃんから姉ちゃんに変わり、姉貴になる頃には大輔はすっかり反抗期に突入していた。
小学二年生が口にする言葉にしてはやや乱暴であるが、内弁慶のきらいがある彼はとりわけ姉に対しては顕著だった。
勝手知ったるなんとやら、とばかりにノックも無しに堂々と入ってくる失礼極まりないジュンは、
いつものように大袈裟に溜め息をつくのだった。


「あいも変わらず可愛くないわねえ、アンタは」


ふん、と鼻を鳴らし、素で見下し状態のジュンが姉という立場に君臨しながら、
大輔と自分の関係を女王様と下僕の関係から認識を改めたことは一度もない。
それが大輔の反発をさらに強めているのは言うまでもない。
ずかずかと入ってきた色気も糞もない部屋着のジュンは、呆れた様子で大輔の部屋を見渡した。


「ちゃんと掃除しなさいよ?手伝わされんのアタシなんだから」

「うっせーなあ」

「足の踏み場もないなんて信じらんない。
アンタねえ、明日からキャンプだってのに少しは片付けたりしないわけ?
ほら、またサッカーのユニホーム脱ぎっぱなしにしてる。
ほら、さっさと脱衣所持ってきなさいよ、きったないわねー」


勝手にベッドの上を占領され、まるで汚物をみるがごとくぞんざいに摘まれた哀れなユニホームが、大輔の顔面に直撃する。
何すんだよ!とさすがに怒る大輔だが、次から次と衣類を放り込まれればたまらずそれをもって部屋から一時退却せざるを得なかった。
結局最期はしぶしぶ言う事を聞くのは、大輔の部屋は汚部屋というが相応しい惨状だったので、
弁解の余地無しであり、ジュンの言うことに寸分の横暴もないことは事実だからだった。
男兄弟の頂点に立つのに必要なのは、暴力や恐怖ではなく、完膚なきまでに叩きのめせる正論の嵐と圧倒的な話術である。
わっとまくし立てられてはさすがに対処の仕様がないのが悲しいところだ。
大好きなサッカー選手のポスターが泣いている。
しばらくして帰ってきた大輔が見たものは、折角リュックの中に準備していた明日持っていくキャンプ用の荷物を、
ポケットというポケットから全部ひっくり返された部屋だった。


「何すんだよ、姉貴!勝手に触るなよ!」

「あーあー、ほら、適当に詰めてるからチャック壊れるんじゃないの。
お父さんから借りてるやつなんだから、ほら、もっかいちゃんと入れなきゃ駄目じゃない」

「わかったわかったから、返せってば!」

「つべこべ言わずにさっさと着替えこっちに渡しなさいよ。ほら、ネーちゃん畳んであげるから」

「なんだよもー」


図星ながら、口だけは減らず口。売り言葉に買い言葉の応酬が続く。
まるで幼児のごとく一から十まで世話を焼かれるのがこれまた微妙な羞恥心を伴うから勘弁して欲しい。
出版関連の仕事についている父から借りた大きめの旅行カバンは、はちきれる寸前だった。
投げつけるように渡した衣類を手慣れた様子でたたみ、
くるくると丸めてビニル袋に入れる姉の手際の良さにより、あっという間に収納スペースが増えていく。
ん、と差し出された手に、はあ?と返した大輔に待っていたのは、さっさとプリント出しなさいよという冷たい姉の声だった。
仕方なく勉強机の上からそれをひっぱり出してきた大輔から渡されたプリントにざっと目を通したジュンは、
そのまま一つ一つ確認するとばかりに持ってくるものを呼称する。
ぼけっとすんな馬鹿と一睨みされ、しぶしぶ一つずつ姉に見せていく大輔は、
明日のカレーに使う米と集金袋を両親に伝え忘れていたことに気付き、
慌ててキッチンで肉じゃがを作っている母のもとに飛んでいった。
再び大輔が帰ってくる頃には、まだまだ余裕のある旅行かばんが用意されていた。
しかし傍らに座っている姉の様子がおかしい。


「大輔、これなによ」


げ、と大輔は思わず後退した。差し出されたのは新品のカメラだった。


「なに勝手にお父さんのカメラ入れてんの」

「いーじゃん、別に」

「よくない。いくらすると思ってんのよ、馬鹿じゃない?」

「んだよ、ケチ。姉貴の修学旅行は持ってってた癖に」

「ダメに決まってんでしょ、アンタそそっかしいからすぐもの壊すし、無くすし、危ないじゃない。
アタシが前使ってた使い捨てカメラ、まだフィルム余ってるから持ってきなさい」

「ちぇ」

油断もすきもありゃしない、と大袈裟に溜め息をついた姉は立ち上がった。
さっきキッチンで会った母の反応からして、恐らくこの一連のお節介すぎるちょっかいは母の差し金で間違いなさそうだった。
相変わらず仲がいいわねえとサラリと流してしまう母には、姉よりも頭があがらない大輔である。
残りのスペースに、ありったけお菓子やゲームを入れれば入る。
ありがとうの一言がどうしても言えず、ちらちらと視線を向けながらも、
ごそごそとリュックを漁り始めた大輔に溜め息が降ってくる。


「ったく、手伝ってあげたんだからお礼の一つや二ついったらどう?」

「頼んでねーじゃんか、俺、ひとこ、いででででっ?!」

「生意気なこと言う口はこの口かしら?」

「ごめんごめん、いういういうって!ジュンお姉ちゃんどうもありがとうございましたあああっ!」

「そうそう、宜しい。素直が1番よ、素直がね。
あーもう、素直におねーちゃんおねーちゃん言ってくれてたアンタはいったいどこに行っちゃったのやら」

「………姉貴のせいだろ」

「え?なんかいった?」

「なんでもねーよ!さっさとどっかいけってば」

「はーいはい」


すっかり赤くなってしまったであろう頬をさすりながら、涙目で睨む大輔などどこ吹く風。
まだまだアタシより身長低いくせになに言ってんのかしらねえ、このちびっ子は、と
優越心全開で笑うジュンに、再びイラッとくる大輔だった。
そうそう、と去り際に思い出したように振り返る姉に、今度は何だと身構える。


「大輔」

「んだよ」

「ほら、手え出して」

「は?」


しぶしぶ顔を上げれば、ぽん、と投げられた何かが落下する。
反射的にキャッチした大輔の手元から輪っかのひもが垂れ下がった。


「ほら、それ持ってきなさいよ、大輔」


思いの外重量があって驚いてみてみれば、中学進学と同時にジュンが両親にお小遣い一年分と引換にして買ってもらったPHSではないか。
そしてそこには、ひもが通してある。


「キャンプ場すっごく広いみたいだし、アンタ友達と遊んでるうちに迷子になりそうだから、それ首から下げときなさい。
なんかあったら、お母さんに連絡しなさいよ。使い方は聞けばわかるでしょ」

「え、あ、っと」

「壊さないでよ、何かあったら罰金ね」


思わぬ奇襲にしどろもどろになる大輔、してやったり顔で笑うジュンは出て行く寸前だった。


「ありがとう、ねーちゃん!」

「ホント、ソレくらい素直な方がいいわよ、絶対」

「うっせえ」


バタンと扉を閉じられた。大輔はPHSをリュックの上に置き、はあ、と溜息をつく。
結局今日も自分のことが嫌いかどうか問いただすことができなかった。
自分から行くなんてできないから、こういう機会でもないとなかなか話す機会なんて無いのに。
ずりいよ、ばーか、とこぼした言葉は、少しだけ泣きそうだった。








少年はまだしらなかった。ひと夏の思い出が、大きく彼を成長させていくことを。
そして、母と共に出かけたサマーキャンプが誰も知らない世界への冒険の始まりになることを……。
干ばつ。洪水。真夏に降る雪……。世界中がおかしかったその夏。
日本からは見えるはずのないオーロラを目撃した少年たちは、
オーロラの裂け目から飛来した謎の光に異世界へと連れ去られてしまう。
すべてが未知のその世界で彼らは出会い、そして学んでいく。

今、新たな冒険の幕が開く。


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