(この物語はなんだったのだろうか)
砕け散った体。
周囲に散乱する部下の死体。
(皇帝とはなんだったのか)
思い返す。
遥か1000年もの彼方の記憶。
息子を殺された男の妄執がもう一人の息子に取り付いた。
それが始まり。
自分のものかも定かではないその復讐心のまま、
敵の本拠に攻め込んだ二人目。
敵を討ち自らの収めるべき国へ帰った二人目の見たモノは
自分の不在の内に国へ雪崩込んだ魔物の群れに蹂躙された国と民。
国を立て直し、やはり自分のものか定かでない意思のまま領土拡大を図る。
まず、国内の盗賊を捉え、拷問し、本拠を吐かせ、殲滅した。
かつて自国であった地域で
いつの間にか自分よりも名声を集めていたならず者たちを捉え、罰した。
その記憶と妄執を受け継ぐ三人目、四人目。
かしずかないモノは殺し、他国を制圧し、見殺し、
それをよしとしないならば臣下も殺した。
そんなことを何百年も続け、気がつけば国は崩壊一歩手前。
まともな人間では受け止めきれなかった狂気が
ようやく正気に戻ったのは人間では受け止められない狂気に左右されない
人形がそれを継承した時だった。
人形。自分。
もともと他者に影響される人格、魂を持たなかった自分は
書物や物語から得た情報と自分が受け継いだ何人もの皇帝の行動の記憶を比べて気づいた。
-コレはおかしい-
とはいえ、千年を数えた狂気に狂わされた帝国はもはや取り返しがつかず、自分は国を追われた。
それでも付き従ってくれた数名の部下と途方にくれる。
-もう、何もない-
だがやることはあった。
7英雄。
帰ってきた英雄達。
そもそもの始まり。
彼らが現れなければ、彼らが人を犯さなければ、こんなことにはならなかった。
だから向かった。最後の仕事に。
『またオマエか皇帝』
問いただした。
何故あんなことをしたのか。
何をしていたのか。
何をするのか。
そして聞いてしまった。
『我らは復讐に向かう。もうこの世界にようはない』
受け入れられなかった。
私を、我々をこんなにしておいて、いなくなるのだという。
許せなかった。
挑み、敗れた。
彼らは光に包まれ、旅立つ。
砕け散った体。周囲に散乱する、最後まで付き従ってくれた部下。
彼らを包む光に巻き込まれながら、気づく。
復讐に燃える彼らの目の光、それは千年前の始まりの男と同じ。
-どうして、こうなってしまったのだろう-
-この物語はなんだったのだろうか-
-皇帝とはなんだったのか-
-私は-
そして全てが光りに包まれた。