<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.26014の一覧
[0] 竜皇騎士伝 ~勇者と同等に面倒な役割~ (異世界強制召喚ファンタジー)環部1話更新[かみうみ十夜](2016/11/20 22:14)
[1] 第1話 唐突感。プロローグは意味不明に 起部1話[かみうみ十夜](2011/06/13 00:03)
[2] 第2話 状況把握は不十分。それでも事態は進展す 起部2話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:41)
[3] 第3話 無謀と果敢。履き違えると惨事 起部3話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:41)
[4] 第4話 フルボッコの後は 起部4話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:42)
[5] 第5話 食後に座学は寝落ちフラグ? 起部5話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:42)
[6] 第6話 座学前編、基礎知識と因縁 起部6話[かみうみ十夜](2012/05/01 22:50)
[7] 第7話 座学後編。※最後は手抜きではありません 起部7話[かみうみ十夜](2011/04/08 22:06)
[8] 第8話 休憩? いいえ、昏睡です 起部8話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:44)
[9] 第9話 楽しい昏睡学習 起部9話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:45)
[10] 第10話 竜なのに鬼教官 起部10話[かみうみ十夜](2011/04/01 21:45)
[11] 第11話 信頼と実績。纏め役の実力(の、一部) 起部11話[かみうみ十夜](2011/04/01 22:08)
[12] 第12話 閑話休題1 起部12話[かみうみ十夜](2011/04/03 22:30)
[13] 第13話 華月の努力、テレジアの本気(五分の一) 起部13話[かみうみ十夜](2011/04/08 22:11)
[14] 第14話 殺された理由、散歩の誘い 起部14話[かみうみ十夜](2011/04/10 15:04)
[15] 第15話 華月の乱入、この世の絶景 起部15話[かみうみ十夜](2011/04/10 22:14)
[16] 第16話 穴倉の鍛冶小人、尊大に付き注意 起部16話[かみうみ十夜](2011/04/15 23:20)
[17] 第17話 美貌のエルフ、性別不明 起部17話[かみうみ十夜](2011/04/17 23:55)
[18] 第18話 フィーリアスの解説、新手登場 起部18話[かみうみ十夜](2011/04/24 22:36)
[19] 第19話 華月を測量、明かされる性別 起部19話[かみうみ十夜](2011/05/03 00:33)
[20] 第20話 闇黒竜国、最後の異種族 起部20話[かみうみ十夜](2011/05/04 21:54)
[21] 第21話 闇黒竜の先達たち 起部21話[かみうみ十夜](2011/05/05 20:10)
[22] 第22話 女皇陛下の憂鬱、纏め役の素顔 起部22話[かみうみ十夜](2011/05/08 22:06)
[23] 第23話 物臭魔法講師 承部1話[かみうみ十夜](2011/05/13 22:29)
[24] 第24話 正統派武器術講師 承部2話[かみうみ十夜](2011/05/15 21:32)
[25] 第25話 次世代を担う娘たち、参上・1 承部3話[かみうみ十夜](2011/05/22 22:00)
[26] 第26話 次世代を担う娘たち・2 承部4話 [かみうみ十夜](2011/06/05 22:15)
[27] 第27話 次世代を担う娘たち・3 承部5話[かみうみ十夜](2011/06/05 22:19)
[28] 第28話 不具合発生 承部6話[かみうみ十夜](2011/06/13 00:08)
[29] 第29話 精神(ココロ)重ねて 承部7話[かみうみ十夜](2011/06/18 22:41)
[30] 第30話 目覚めと休息。フェリシアの誘い 承部8話[かみうみ十夜](2011/06/26 23:54)
[31] 第31話 襲い掛かる影 承部9話[かみうみ十夜](2011/07/02 02:58)
[32] 第32話 速度勝負、実感は大切 承部10話[かみうみ十夜](2011/07/14 20:33)
[33] 第33話 巨木のエルフ 承部11話[かみうみ十夜](2011/07/21 20:13)
[34] 第34話 洞窟のドワーフ 承部12話[かみうみ十夜](2011/07/22 21:33)
[35] 第35話 上級水精霊 承部13話[かみうみ十夜](2011/08/15 01:29)
[36] 第36話 火と土の上級精霊 承部14話[かみうみ十夜](2011/09/02 00:32)
[37] 第37話 樹の上級精霊 承部15話[かみうみ十夜](2011/09/16 07:26)
[38] 第38話 襲撃者の末路、理不尽に 承部16話[かみうみ十夜](2011/09/23 19:39)
[39] 第39話 また混浴、図られた華月 承部17話[かみうみ十夜](2011/12/04 23:55)
[40] 第40話 お酒は程々に。飛行速度は何m/s? 承部18話[かみうみ十夜](2011/12/04 23:54)
[41] 第41話 疑惑の白光竜族竜皇 承部19話[かみうみ十夜](2011/12/04 23:54)
[42] 第42話 光の上級精霊、白光竜族の飽き性 承部20話[かみうみ十夜](2011/12/04 23:53)
[43] 第43話 救難信号 承部21話[かみうみ十夜](2011/12/05 00:01)
[44] 第44話 侵入者・珍入者? 承部22話[かみうみ十夜](2011/12/30 19:56)
[45] 第45話 お騒がせ小娘 転部1話[かみうみ十夜](2012/01/04 00:38)
[46] 第46話 少女と少女、悠月の黙考 転部2話[かみうみ十夜](2012/01/07 00:27)
[47] 第47話 腑抜ける見習い 転部3話[かみうみ十夜](2012/03/17 22:56)
[48] 第48話 華月と悠月、拗らせる関係 転部4話[かみうみ十夜](2012/03/19 15:53)
[49] 第49話 対決、元姉V.S.今主人 転部5話[かみうみ十夜](2012/03/19 15:57)
[50] 第50話 決闘・上 転部6話[かみうみ十夜](2012/04/02 01:31)
[51] 第51話 決闘・下 転部7話[かみうみ十夜](2012/03/26 00:40)
[52] 第52話 和解 転部8話[かみうみ十夜](2012/04/02 01:35)
[53] 第53話 ドワーフの憂鬱 転部9話[かみうみ十夜](2012/04/23 01:49)
[54] 第54話 試行錯誤・上 転部10話[かみうみ十夜](2012/05/01 22:54)
[55] 第55話 試行錯誤・下 転部11話[かみうみ十夜](2012/05/02 21:54)
[56] 第56話 周囲の進捗 転部12話[かみうみ十夜](2012/06/04 00:08)
[57] 第57話 弓弦葉の用事 転部13話[かみうみ十夜](2012/07/17 01:36)
[58] 第58話 発注完了、依頼完了 転部14話[かみうみ十夜](2012/08/18 22:37)
[59] 第59話 華月V.S弓弦葉 転部15話[かみうみ十夜](2013/01/02 02:42)
[60] 第60話 それぞれの想い 転部16話[かみうみ十夜](2012/11/01 00:22)
[61] 第61話 華月と弓弦葉・上 転部17話[かみうみ十夜](2013/01/02 02:43)
[62] 第62話 華月と弓弦葉・中 転部18話[かみうみ十夜](2013/01/02 03:14)
[63] 第63話 華月と弓弦葉・下 転部19話[かみうみ十夜](2013/01/05 22:27)
[64] 第64話 決着……? 転部20話[かみうみ十夜](2013/03/11 01:00)
[65] 第65話 剣を廻って 転部21話[かみうみ十夜](2013/04/01 22:59)
[66] 第66話 儀礼正装の完成? 転部22話[かみうみ十夜](2013/05/03 23:14)
[67] 第67話 魔族の退城、全ての引き渡し 転部23話[かみうみ十夜](2014/01/14 00:34)
[68] 第68話 魔法講師はお役御免 転部24話[かみうみ十夜](2013/06/19 00:06)
[69] 第69話 剣術講師の苦笑 転部25話[かみうみ十夜](2013/07/08 00:34)
[70] 第70話 お披露目の日 転部26話[かみうみ十夜](2013/08/16 00:26)
[71] 第71話 御前試合 転部27話[かみうみ十夜](2013/09/22 00:01)
[72] 第72話 反省会と小旅行への出発 転部28話[かみうみ十夜](2013/10/23 00:03)
[73] 第73話 今回の主催者 転部29話[かみうみ十夜](2014/01/14 00:29)
[74] 第74話 お茶目な竜皇と、融通の利かない纏め役 転部30話[かみうみ十夜](2014/02/27 22:01)
[75] 第75話 残りの竜皇と竜騎士、険悪な打ち合わせ 転部31話[かみうみ十夜](2014/07/20 23:39)
[76] 第76話 会食の肴 模擬戦開始 転部32話[かみうみ十夜](2014/12/01 00:17)
[77] 第77話 模擬戦の決着 意識への侵食 転部33話[かみうみ十夜](2015/06/18 23:47)
[78] 第78話 後味の悪い結末 転部34話[かみうみ十夜](2015/08/14 00:37)
[79] 第79話 心象世界に潜む影 転部35話[かみうみ十夜](2016/06/09 00:14)
[80] 第80話 総纏め役という事、不穏の国 環部1話[かみうみ十夜](2016/11/20 23:01)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[26014] 第27話 次世代を担う娘たち・3 承部5話
Name: かみうみ十夜◆2310bdc6 ID:068b894d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/05 22:19

 華月が二人の後を追って皇宮内を歩いていると、前からリフェルアが歩いてきた。

「あら、どうしたの?」

「二人が気になったから追いかけてきたんだ」

「何が気になったのよ」

「いや、ほら、二人の属性の相性は――」

「属性の相性……ああ、あの子は火と土で、私が水と樹だってこと?」

「反発するだろ?」

 華月の言葉を、リフェルアは鼻先で笑った。

「そんなの、自分の意志一つでどうとでもなるわ。私は、だけどね」

「そうなのか?」

 不思議そうな顔になる華月に、リフェルアは勝ち誇ったような表情で返す。

「属性の相性は本能に作用するの。だから、反発する相手とは会話したりすると何と無く苛立ったりするわ。でも、それは属性の特徴が性格に現れたりするからで、それを踏まえていればそこまで引き摺られたりしないわ。

 私が飄々と手応えのない性格をしているのも、水の属性の影響よ」

 水は掴もうとしても手応えが無いでしょう。と、言われ、華月は納得した。が、納得したのは属性と性格の関係性の部分で、リフェルアの性格については認められなかった。

(リフェルアの性格はどう考えても絡み付く蔦だよ……間違いなく樹の属性が影響してるよ)

「まぁ、解説はこのくらいでいいわね。

 テレジアさんのところに戻るわよ」

「え?」

 華月の脇をすり抜け、先に進むリフェルアに、戸惑った。

「え? じゃ、無いわよ。私は貴方の訓練風景を見に来たの。貴方が、私が儀礼正装を作るに相応しい相手かどうか確認するために」

「あ、今日なのか」

「都合が悪かったかしら?」

「いや、いつでも変わらないな」

 リフェルアの脇に並んで歩く。ついつい華月の視線はリフェルアの横顔に向けられる。

「何?」

「え、いや、別に何も……」

「そう」

 君の横顔が綺麗だから。などと歯の浮くようなセリフは決して言えない。その手の言葉がリフェルアの気に障ると学習済みだからだ。同じ轍を踏み、失敗するのはもう御免だった。

(しかし、本当に凄い造形だよなぁ。このバランスは)

 つい、平々凡々な自分の容姿と比べて、軽く凹む華月だった。

(ヴェルラとテレジア、フェリシアにトレイア、ディーネ……は、よく見えなかったけど、ダークネス・ドラゴンも今のところ美人ばっかりだしなぁ……。エルフはまぁ、当然として。あの頭領とヴィシュルを基準にすると、この世界だとドワーフも美形が多いのか?)

「本当に何もないのかしら?」

「あ、悪い。不躾だったな」

「じっと観られると気になるのよ」

「いや、この世界の竜種や妖精種ってみんな美形なのか? って、気になってな」

「貴方の美意識の価値観が解らないから何とも言えないわ。どんなものが美しいとか思うの?」

「ヴェルラ、テレジア、フェリシア、トレイア、リフェルア、ヴィシュル……。俺が会った全員がそうだな」

 華月の言葉に、リフェルアは眉根を寄せた難しい顔になった。

「見慣れた名前ばかりだけど……まぁ、基準をそこに置くのなら、美形が多いということになるでしょうね。

 でも、それだと亜人種の全般には嫌悪感を感じそうね」

「は?」

「亜人種には、獣の特徴があるって知っているわね?

 オークやゴブリン、コボルト、オーガ、トロール、ケンタウロス……人間たちがモンスターなんて呼んでる種族は外観が異形よ。

 そして、注意しないといけないのが人類種の試作品として創られた、最低最悪の亜人種のニルダ族。他の種族に物凄く嫌悪されているのだけど、まぁ、気が向いたら調べてみるといいわ。多分、ダークネス・ドラゴンの蔵書には記載されていないと思うけど」

「そ、そうなのか?」

「亜人種の中にももっと人型に近いのも居るわ。詳しくは列挙するのが面倒だから人類種が括ってる呼び方で言うけど、俗に獣人族って呼ばれる、身体の一部にだけ――耳とか尻尾とか、手足ね。そこに獣の特徴を持って、それに応じた身体能力を発揮する亜人種がそうね。

 ……外見が人類種に近い種族は、何かと人類種相手に苦労しているのだけど」
最後は、苦虫を噛み潰した様な顔を一瞬見せ、声音に怨嗟が乗った。

「お話はここまでね。

 さぁ、魅せて。貴方の力を」

 リフェルアが指す先には、仁王立ちするトレイアとテレジアが居た。



 修練場に、何とも威圧感のある二人が揃っていた。

「テレジア、何でトレイアが居るんだ?」

「丁度ヴィシュルが来ましたから、あの原型を持ってきてもらいました」

 近づいてみれば、トレイアのこめかみにはちょっとだけ青筋が浮いていた。

「……昼寝してる最中に、大声で呼びつけられたんだよ……。共鳴音叉なんて使いやがって」

「共鳴音叉?」

「あの岩を砕いた技法の本来の使い方です。離れた相手に声を届かせるために使います」

「糞ウルセェからみんな使わねぇんだけどな。コイツはお構いなしに使いやがる」

 余程響くのだろう。トレイアは明らかに苛立っている。

「更に丁度良いので、二対一で訓練します。ああ、トレイアは素手でも強いので心配要りませんよ」

「心配すんな。加減なんかしねぇから」

「……そんな心配してない」

 華月が思わず溜息をつきたくなった時、テレジアとトレイアは同時に華月から距離を取った。

 空気が変わり、華月は反射的に二人に意識を向ける。

「ああ、一つ忠告します。

 眼は二つで、焦点は一つです。それでは全周囲を把握することはできません」

「あ? 当たり前――」

 華月はそこで言葉を止め、思考を廻す。含みと裏がありすぎる忠告だからだ。

「……了解。始めようか」

「結構。

 トレイア、行きますよ」

「あいよ。

 カヅキ、簡単に砕けんじゃねぇぞ」

 自然体のテレジアと、構えるトレイア。対照的な静と動だ。

(なら、先に仕掛けてくるのは、トレイアだ)

 と、判断し、トレイアに意識を集中し、竜楯を纏った華月だったが――。

「油断大敵、ですよ」

 聞こえたその声が、華月に空を仰がせた。

 下顎に峻烈なアッパーカットが綺麗に決まり、茫然としたまま宙に殴りあげられた。

「決まっちまうぞ」

 華月の飛ぶ高度に達したトレイアが右の回し蹴りを華月の腹に直撃させる。

 踏み固められているはずの修練場の地面に大きなクレーターが出来上がる。

 その中心から、華月が起き上がる。

「……」

「これ以上は教えませんよ」

「……解ってる」

(二人とも纏身系は使ってない。魔力を感知するのは無理、と……)

(竜楯でダメージは無し。全然動ける)

(習い始めの魔法は隙が大きすぎる。実戦での使用は不可……)

 同時にいくつも思考しながら、テレジアのヒントも合わせて考える。

(全体を確認するためには焦点を増やす? 構造的に無理だな。焦点を遠くに置く、のか? でも、それだけじゃ背後までカバーできない……)

 纏身防御を解き、全速でテレジアの背後を取る。

(ん?)

「甘いぜ」

 テレジアの背後に着いた瞬間、微妙な違和感を肌で感じた華月は、一瞬動きが鈍った。そこをトレイアに狙われ、横っ面に左ストレートをクリーンヒットされてしまった。

 通常あり得ない縦回転をしてから地面を滑る華月。

 起き上がり、纏身防御をまた纏い、二人に掛かっていく。

 答えが出るまで体を動かして体感するようだ。



 様子を見ながら、リフェルアは思考する。

(未知の状況に対する対応力が低いわね。基礎能力が高いから、それに頼ってる節が目立つ。気づけば一気に学習、応用するタイプね。

 だから、結果として評価が高くなるわけか……)

 現時点での戦闘能力は、正直リフェルア以下と言わざるを得ない。総合的にはリフェルアの方が経験値が高い。

(まぁ、竜騎士になって二週間程度でこの段階というのは、確かに凄い事だけど、速成な分熟練度で劣るわね。

 ああ、そこはその避け方じゃ――)

 また華月が宙を舞う。下に打ち下ろされる。真横に飛んでいく。岩に激突して何かが華月から剥離して周囲に散った。

「うわぁ……。悲惨に飛散……」

「ん? ああ、今のは肋骨ね。正面から殴られて広範囲で砕けた肋骨が、岩に背中から激突して、衝撃で弾け飛んだんでしょう」

「か、解説ありがとう……」

「いいえ。礼には及ばないわ。

 それより、許可は貰えたのかしら?」

 そこで、リフェルアが顔を横に来ていたヴィシュルに向ける。

「まぁ、条件を付けられたけどね。一応」

「そう。まぁ、頑張りなさい」

「リフェルアさんも――」

「私は私に出来るだけの事をするのよ。全力でね」

 冷たく感じる返し方だが、リフェルアが本気になっている。と、それが読み取れたヴィシュルは何も言わなかった。

「あ、リーフェとヴィシェだ。珍しいね?」

 上から、フェリシアがふわりと降りてきた。

「久し振り、元気だったかしら?」

「こんにちは。お邪魔してるよ」

「なんで二人がカヅキの訓練を――。あ! 華月の儀礼正装と武器、二人が作るの?」

「そうよ」

「一応、ね」

 普段通りのリフェルアと、少し決まりの悪いヴィシュル。自信の有り無しの差だろう。

 三人がそんなやり取りをやっている間にも、華月はどんどん削られていっていた。

「おらおら、そろそろ左腕をモグぞ!」

「右足は、要らないようですね」

 左上腕がトレイアに鷲掴みにされ、肉を千切り取られた。

 右脹脛がテレジアのローキックで吹き飛ばされる。

「うわ、グロい……」

「竜騎士の身体で竜楯を纏っていても、純竜には、今のままだと力比べで負けるわね。それに、早く気付かないかしら。知覚域に」

「か、カヅキ~……」

 三者三様にその様を観る。




 華月の内心の焦りは限界近くにまで高まっていた。

(突破口がっ! 見えないっ!?)

 分割意識体は戦闘に振っていない分が臨界速度で思考を廻している。

(テレジアに近づいた時の違和感、あれは――)

(二人の背後を取っても、まるで知っているように対処された)

(行動予測や先読みじゃない。パターンから外れた動きや、即興の動きも完全に捌かれた)

 今度は右胸部にテレジアの貫手が突き刺さる。

 構わず右手で殴ろうとすると、右腕を背後からトレイアに捻られ、肘関節を折られる。

「おいおい、いい加減学習しろよ」

「これは難しかったですか?」

 流石に動けないと判断したのか、二人が攻撃の手を止めた。

 テレジアが右手を抜き、トレイアが右手を放すと、竜楯の維持も出来なくなった華月が地面に倒れ伏す。

(……なん、だ? この違和感は――?)

 やはり感じる周囲の違和感。目には見えない何かが、薄く二人を囲んでいるように感じる。

(なぁ、やっぱり無理だったんじゃねぇか? コレをあれだけのヒントで体得させんのは)

(出来る筈です。認識できるよう隠蔽せず、こうしてやっているのですから。これでカヅキは予想外にも魔力察知を出来るようになりました。)

 華月の頭に、《声》が、幽かに聴こえた。

(とは言え、コレは本来気配察知が自然に出来るようになってから教えるもんだろ。拙速すぎるって)

(華月は魔力察知が出来ているのです。難易度の高い方が自然に出来ていて、より単純な気配察知が出来ないわけがありません)

 意識すると、声ははっきりと聴こえるようになってきた。

(拗ねてねぇといいけどな。普通、ここまで一方的に嬲られたら心が折れるぞ?)

(そんな軟弱になるような教育はしていません。この程度で折れるなど、論外です)

(この程度って……おいおい、どんな教え方してんだよ……)

(もっと削って、砕いても、カヅキは小竜化した私に挑んできました。この程度で音を上げる筈はありません)

 断言される絶対的なテレジアの信頼の言葉。これを聞いて裏切れる奴は、人でなしのレッテルを貼られても仕方ないだろう。

 身体は直った。もう動ける。

 華月は一挙動で撥ね起き、二人から距離を取る。

「お、もう動けるのか。まだ寝ててもいいぞ?」

「無理はしない事です。少し手加減しましょうか?」

 挑発ともとれる二人の言葉。だが、華月は怒ったりしない。

「……」

 静かに息を整え、二人を良く『視る』。視覚は元より、その他の部分でも。

(魔力察知と同じ……なら、気付けば視える筈だ。そのチャンネルが解れば――)

 一点集中し、意識を凝らすのではなく、二人を眺める感じに視点を遠く、焦点をあやふやに。

 自分を周囲と馴染ませ、知覚領域を拡大する。

 出身国の独自武道に通じる、静の状態に置ける観察術。相手の動きの総てを察知する、自身の背後すら見通す。

 その内に分割意識体の一つが、自然と身体から解放され、自分の周囲に広がる。その領域は次第に広がり、終に――。

(お~? これは……気付いたか)

(カヅキ、聴こえますね? 知覚域の展開が出来ましたか)

「な、何だ、これ?」

「自身の周囲を察知する、知覚域という領域です。それは自分の意識を周囲に薄く展開することで形成します。慣れれば意識せずとも常時展開していられます」

「基本的に視認不可。同じく知覚域の展開が出来る奴にも見えなくすることもできる。あたしらはお前に解り易いよう隠蔽も遮断もしていない状態だ」

 広がった華月の知覚域は、傍で見ている三人にも届いた。



 気付いたのはリフェルアだった。

「カヅキが知覚域の展開に成功したわね。これで二人と勝負になるわ」

「え、これ知覚域の訓練だったの? 二人が憂さ晴らししてるだけだと思ってた……」

「いくらあの二人でも、そんな事しないよ。

 でも、そっか……。テレジアの手を離れるのも、もうすぐだね」

 やはり三者三様の感想が出た。

「さ、再開みたいよ」

 リフェルアが自分の知覚域を不可視状態で広げる。遠くの目標を狙撃するリフェルアの知覚域の広さは、最大で華月が広げた三十倍以上にもなる。

 テレジアとトレイアの二人が同時に動く。華月は動かない。が、今度は正面から繰り出される攻撃、死角からの攻撃、フェイント有りの攻撃までも何とか避けられるようになっていた。

「応用力は高いのよね……だからテレジアさんも体感させて体得させる」

「一見単なる虐めだけど」

「あたしもそう勘違いしたんだよね。でも、もう解ってるから」

 そうして華月の訓練風景を見ている内、リフェルアの顔付きが普段よりも真面目なものになっていく。

(いまだに発展途上。でも、速成でも着実に進歩している。認めないわけにはいかないわね。戻ったら、地下に潜るとしましょうか)

 リフェルアは決めた。自分が華月の儀礼正装を、きっちりと作り上げると。

 ヴィシュルも神妙な顔つきになる。

(ぶっつけ本番で、あそこまでやられても諦めない……。私だって、負けられないね!)

 新たな領域に踏み込み、必ず約束を果たすと、心に刻む。

(カヅキがどんどん一人前に近づいていく……でも、あたしは――)

 一人、小さな孤独感を感じ始めたフェリシア。華月が眩しく見えてきていた。

 華月の訓練は、日が暮れるまで続いた。




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.031278133392334