リリカルでマジカル。マジカルでラジカル。ラジカルでフィジカル。魔法将軍★マジ☆狩る悠陽、始まります。
悠陽は、この国の未来を憂えていた。
京都防衛戦。出される避難警報。悠陽は、避難しながらも、ひたすらに憂えていた。
日本を救う為には、どうすればいい?
悩んでいると、声が聞こえた。
『日本を、救いたい?』
「この、声は……日本を守るは我が役目。日本の救済を、望まぬはずはないでしょう」
突然虚空に話しかけた悠陽に、お付きの者達が疑問の目を向ける。
『その為なら、何でもする?』
「私一人の身で叶う事なら」
『ならば、私を一番と称えなさい。私を一番の戦術機の作り手と称えなさい』
悠陽は、目を閉じる。そして、強く虚空を睨んで言った。
「あのベータの大群を倒す戦術機を与えてくれるのならば、私はそれを称えましょう。……そなたが神でも悪魔でも」
哂い。哂い。哂い。
『いいわ。貴方専用の戦術機と強化装備をあげる。でも、例えベータを蹂躙できる力を得ても、貴方にそれを使いこなし、ベータに突撃できる勇気があるかしら? ……慣れるまで、護衛が必要ね? 一番の衛士、村正を御供につけてあげる』
発光。庇われる悠陽。光が収まった時に会ったのは、明らかに改修が加えられた将軍専用機。鮮やかな紫の武御雷を見て、悠陽は一つ息を吸い、コクピットを覗いた。
「殿下!? 危険です!」
そこにあったのは強化装備と腕輪。コックピットを閉め、狭い空間で悠陽は着替える。
「殿下!」
「……私は……私は、この声の主を信じましょう。どのみちこのままでは、京は陥落します」
『クスクスクス。さあ、呪文を唱えて。紫電、セットアップと』
「紫電、セットアップ! ……くっ」
ついで、宙空に突如出現する青の武御雷。
頭に響く、どこかで聞いた事のある男の言葉。これが村正だろうか。
『リリカル、マジカル、フラッシュムーブ。防御結界作動』
村正の周囲を透明な膜が覆う。そして、足元には美しい白い羽が生えた。あまりにも遅すぎる天使降臨に、悠陽は息を飲んだ。
「リリカル、マジカル、フラッシュムーブ。防御結界作動……?」
知らず、呪文を繰り返す。途端、崩れる機体のバランス。
……空を飛んでいる。推進剤でなく、羽で。
「殿下! 悠陽殿下!」
女官長の叫び声が聞こえる。
「許すが良い。先に避難を。私は、ベータを掃討して参ります」
進む村正を追いかけたいと思う。それだけで、紫電は村正を追いかけた。
戦場。混乱。悲鳴。
オープンチャンネルに殺到する、お下がりください、せめて降りて下さいという懇願。
『一番槍は殿下にお譲りしましょう。サーチで光線級を探して、リリカル、マジカル、スターダストブレイカ―と。その間の守護は私にお任せ下さい。バリアの解除を。使い方は簡単です。ただ紫電に命じ、信じ、祈り、受け入れ、念じればいい』
ならば、操作機器になんのいみがあろう? 戸惑いながら、悠陽は命じる。
「紫電。光線級を探すのです」
その言葉で、光の帯が広がっていく。悠陽の頭に、全ての光線級の位置が刻み込まれた。
バリアの解除など、命じるまでも無くされる。そして、悠陽は唱えた。光線級の殲滅を、日本の安寧を祈りながら。
「リリカル、マジカル、スターダスト……ブレイカ―!」
殺到する光線は、全て寄り添う村正が防いでくれた。凶悪な光の弾が、ベータに降り注ぐ。光線級を全滅させてしまえば、バリアを張る必要も無い。空からの制圧掃射。地上に降りて、残党を長刀で次々と狩って行く。その反応速度は異常だった。何より異常なのは、本来その状態だと転んだりして失敗してしまうのにもかかわらず、紫電側で微調整をしてくれている事だった。無慈悲にベータを狩って行く姿は、正しく戦乙女。リリカルでマジカル。マジカルでフィジカル。
暴力的な魔法少女、魔法将軍★マジ☆狩る悠陽は、この日爆誕した。
「村正、大義であった。そなたも降りて休むが良い。……透殿」
『有難きお言葉。しかし、私は透であって透にあらず。妻の元に帰ります。殿下、くれぐれも進言しておきますが、一人の勇者は戦況を変えられません。また、妻の扱う戦術機を使った後は、十分な睡眠を取らないと、歩く事も出来ないほどの障害を得る事があります。将軍は少し、力を使いすぎました。二日はお休みし、回復に努めて下さい』
「一人では戦況は変えられぬ。ならば、何故そなた達は私に力を貸したのです? 一人では帰られずとも、十人、百人の勇者ならば勝敗を覆す事も出来ましょう。どうか、私に力を」
『私達を受け入れて下さるのならば。では、二日後に』
そして、村正……九條透は虚空に消えた。
一度の殲滅ではベータを退ける事は出来ず、また眠り続ける将軍を気遣い、この後、帝国軍は混乱の内に撤退をする事になる。
最終回と銘打ちつつ、舌の根も乾かぬうちに。需要ありますか―?