季節に反し、吹きすさぶ風の冷たい路地裏…ここは志貴の昔住んでいた町、三咲町である。この街で短期間で集中的に起きている奇怪な『連続失踪事件』を捜査しているのは、探偵である遠野志貴とその助手(?)アルクェイド。まあ、彼らは駆け落ちしてこの町を出て行った身であり、仕事の為に戻ってきたとはいえ、その正体がばれてはいけないとばかりに二人ともお揃いの『トレンチコート』と『帽子』と『サングラス(研究所開発の魔眼使用)』を着用していた。……その二人の格好は、吹きすさぶ冷たい風以上に非常に寒いものであることは言うまでもない。「…なんだかこの町も久しぶりね。寒いけどなんだか暖かい」「ああ…。俺たちが出会った…ある意味運命の街だからかもな……」さらに、この二人の言っているセリフは『エターナルブリザード』並に寒いものがあった。「裸足のまんまじゃ寒くて、凍りつくよな夜を数えだけど、俺はこの街を愛し、そしてこの街を憎んだ」…さらにはなぜか『長渕』の歌詞まで口すさぶ始末。こいつらは真面目に仕事をする気があるのか、小一時間問い詰めたいものである。まあ、茶番はそれまでにしておいて、路地裏を散策する二人。「これは……『血痕』……!!?」路地裏を散策しているうちに、志貴は壁とアスファルトとその間に生えている草に付着している、誰にでも分かるような夥しい血痕を発見する。その見るも無残な赤黒い光景はあたかも猟奇的であり、まるで獣がその場で狩をして獲物を持ち去ったような生々しい痕跡にも思えた。「……も、もしかして、行方不明になっている人の血液かも……。ここは警察と依頼主(研究所)に一報入れたほうがいいんじゃない?」「あ…ああ……そうだな……」これはもはや、失踪というよりは殺人の可能性の方が遥かに高い。まあ、さすがにここは数年前のロア事件を経験しているせいか、場慣れした感のある二人。志貴は携帯電話を取り出し、警察及び研究所に連絡をした。その後、志貴とアルクェイドは警察により事情聴取を受け、数時間後に解放されたところで再び捜査を始める。無論、血液の照合の報告など、警察から私設探偵に入るわけもないのであろうが、研究所に連絡も入れたことであり、彼らも独自に照合を行うことであろう。しかし、その後の警察の捜査、及び志貴たちの捜査で発覚した恐ろしい現実は……ッッ!!!この夥しい血液の散乱は、この街の目立たぬ路地裏の至るところにあったということである。無論、『犯人』は証拠を隠滅すべく『処理』をしたのであろう。傍目では血液の飛沫などは分からない。しかし、その現場を鑑定するや否や、検査液による『ルミノール反応』によりがあり暗い、路地裏に不気味な模様の光が浮かび上がってくるのである。まあ、そうなれば当然、この『連続失踪事件』は『連続殺人事件』へと変わっていくわけである。これまで呑気だった警察も、此処に来てようやく物々しい動きで捜査を開始し始める。「……こうまで痕跡を残して証拠が残らない……ってことは……、やっぱり志貴みたいに『バラバラ』にして殺しちゃったのかな?」「人聞きの悪い言い方は止めてくれ。……それに、仮にそうだとしても何処で死体は処理するんだよ。警察の調べだと『魔力』の痕跡もない……って言ってたし……」言うまでもなく、警察の邪魔にならないよう、志貴もアルクェイドもひそやかに事件を捜査していくわけであるのだが…………しかし、これは本当に『連続殺人事件』なのであろうか……?志貴や警察が動く遥かに前に『特命係』が捜査したときには、夥しい血液の散布は見られず、ほんの僅かな……それこそ注意深く見なければ見逃してしまいそうな血液の付着のみが発見された。一方、志貴が発見したのは誰にでも分かるような生々しい痕跡であり……さらにそれが切欠で後に発見されたのは、痕跡を処理したかのような現場の数々である。「それに、さっきアルクェイドは『バラバラ』にした…って言ったけど、死体が見つかってない以上は、殺害方法も分からないわけなんだし……」「そうね…。まさか、犯人が死体を『食べた』……なんてことはないわよね。ネロみたいにさ」「……可能性はあるかもな」まあ、いずれにせよ、死体が見つかっていない以上その『手口』も定かではないのだが…この事件の犯人は――――――別々にいる?―――否、やはり同一犯で間違いはない?―――to be continued