「不味い……!よくぞこの程度の味噌汁で、貴様も満ち足りたものだ」「何ですって!!」「一々味付けが濃く素材元来の味を抹殺しているのだ」「文句があるなら帰ればいいじゃない!!」「ま、まあまあ、アルクェイドもネロも落ち着いて…」「………」ちゃぶ台を挟んで一触即発のアルクェイドとネロ・カオス。それを宥める家主・志貴。そして介さぬように淡々と夕食を頂くまい。時は夕暮れの夕食時…ここはボロアパートの志貴の部屋である。ちゃぶ台の上には、ご飯、味噌汁、メザシ、漬物と非常に質素なメニューが『4人分』並べられている。「帰還することは『総帥の命』により不可!故に、味付けの改善を要求する」「なんですって!!こっちだって『総帥の頼み』だから、まいちゃんはともかく、『しょーがなく』貴方まで家に入れてるんでしょうに!!」そう、ネロ・カオスは総帥の命令により、しばらく屋敷を離れてまいとともに志貴のアパートの部屋に居候することとなり、この日は初の4人で取る夕食であった。*その原因は、居間から数時間前に遡る。総帥が自宅で休んでいたところ『謎の爆破事件』が発生。総帥の屋敷は木っ端微塵に吹っ飛ばされてしまった。犯人はおそらく『研究』の妨害をせんと、総帥の命を狙ったものであろう。そのときまいは学校であり、総帥も持ち前の『悪運』の強さによりなんとか無事ではあった。しかし、こんなところで数年がかりの研究を頓挫するわけにも行かず、かといって、このまま行けば愛娘にも危険が及ぶことはほぼ確実である。総帥は娘と離れ離れになるという辛い思いを『夕方』になるまで悩み続けた結果、志貴とアルクェイドのところに匿えば安心だろうということで、護衛のネロ・カオスとともに『娘の護衛』を志貴に依頼。自分は研究の完成の為に、側近の秘書だけを連れ『スフィア王国』へと亡命したのであった。*「ネロ…別にいいよ。私はおいしいし……」夕食の味付けを巡る『嫁舅戦争』を、まいは大人の対応で乗り切る。さすがは総帥の娘、無表情ながらも人間が出来ている。「むうう…お嬢様が云われるのであれば、我が矛も引っ込めざるを得ないというもの………」「やーいやーい!止められてやんの」「黙れ!!この場で我が分身の餌にしてやろうか!?」「なによ!!やれるもんならやってみなさいよ!!!」まいの大人の対応で折角納まりかけた嫁舅戦争は、今度はアルクェイドのいらない挑発により『ガキの喧嘩』と化してしまった。「……やめてくれ。近所迷惑だ……」こんなところで千日戦争などやられてしまえば、志貴も困るしお隣の岡崎さん一家も迷惑極まりないであろう。…というか、『半径50メートル』は消し炭と化すことは免れない……「なんかごめんなさい……」「いや、まいちゃんはぜんぜん悪くないんだからね」なんだか心労の耐えない志貴であった。そして、そんな『喧しい』様子をぶら下がり健康器具の上から観察していたレンは、こっそりと降りてきて志貴のメザシを盗み食いしていたことは酌量の余地が大いにあることであろう。