ついに総帥の娘・まいを誘拐した犯人を突き止めた志貴とネロ・カオス。二人は犯人の潜伏してると思われる『間桐邸』に辿り着いた。あとはいかに屋敷に潜入するか検討していたそのときであった。「アノー…ドチラ様デ……」玄関の奥より現れた使いの者は、髑髏の仮面(?)に異形の手…全身黒タイツ(?)の上にさらにメイド服という、池田茂美もビックリのとんでもない者であった。一時は脱兎のごとく逃げようとした二人ではあったが、それではまいの奪還は不可能であるため、勇気を振り絞り再度突入することにした。「あ…あの……貴方がアサシン…さんですよね……?」「イカニモ。私は『アサシン』ではあるが…」志貴の恐る恐るの質問に対し、律儀に答えるアサシン。「…えっと…」「用がないなら帰られよ。私は『魔術師殿』のご飯支度で忙しいのだ。孫(慎二)は引き篭もって部屋から出てこない上、孫娘(桜)はエミヤシロウの家に入り浸り状態で、誰も介護をするものがいないのだ」言葉の詰まる志貴に対し、アサシンは一方的に追い返そうとする。というか、理由が随分と所帯じみていた。このアサシンのマスターである魔術師殿…もとい『間桐臓硯』は、聖杯戦争以後は『ボケ老人』と化していた。そして、その面倒をアサシンこと『ハサン・サッバーハ』が24時間の看護体制で診ている。いっそのことヘルパーなどの介護サービスを使えばいいのではあるが、この家の主導権はほぼ『間桐桜』が握っているといっても過言ではなく、きちんと介護保険料を払っているか怪しいものである。いくら間桐が金持ちとはいえ、その介護サービスの自己負担額を考えればそう易々と使用はできまい。さらに言えば、ここ数年の景気の悪化により地価はさらに下がり、『土地の賃借』も思うように行かない部分が多い。孫は引き篭もり、孫娘が男の家に入り浸っている現状では、むしろアサシンが哀れでならなかった。「…やはり。魔力を辿った先はここで間違いはない。私の分身がそう教授してくれている」一方のネロ・カオスは、こんな奴の事情など知ったことではないと言わんばかりに、『犯人はお前だ』と、やや『どや顔』で含み笑いを浮かべる。「…噂には聞いている……。我が主のように、不老不死の身体を得るため数多の生命体の集合体と化した『混沌』が存在するというが……」アサシンも、ネロ・カオスの言葉と分身体をその眼で見ることで、その正体を暴いてみせる。まあ、アサシンのマスターである間桐臓硯もまた、永遠の生命を手に入れるためにその生命を数多の蟲に宿したのである。その共通点から正体を割り出すことなど造作もないことであろう。「それを貴様が識ってどうなるという話でもあるまい。…さあ、娘を何処に隠匿したか解答して頂こう」ネロ・カオスは介することなくまいの居場所を吐かせようとする。しかし、アサシンから出た答えは、再び話を二転三転させた。「…確かに、娘を誘拐したのは私だ。だが、彼女は既にここを出て行ったのだ」「「何!!?」」「…実はだな………」*一方、ここは打って変わって総帥の部屋。そこには総帥がソファーにふんぞり返っており、その脇にはショートでパーマがかった、ちょっと年増の秘書が立っていた。「さて…仕事も粗方片付いたことだし、そろそろ『娘』に会いに行きたいのだが…」「…あ、あの!もう少しお待ちください!総帥にはもっとこの計画についてはじっくりと思案していただかないと!石橋は叩きすぎても困ることはありませんし……」手のひらを叩くように動かす仕草をし、総帥に進言する秘書。…まあ、一応この秘書はネロ・カオスより『誘拐』の件は聞かされており、それを総帥の耳に入れるまいと上手く時間を延ばしていた。「どうでもいいが、相変わらず仕草がオバサンくさいぞ」「ほっといてください!」もしこの誘拐の件がバレてしまえば総帥が発狂することは確実であり、多々社員にどんなとばっちりがくるか分かったものではない。頑張れ志貴!頑張れネロ・カオス!総帥に誘拐の件がばれる前に、なんとしても娘を探し出すのだ!!!―――to be continued