「わっ!地震だ!!!」この日、光坂市は大きな地震に遭った。志貴の部屋のものは見る見る間に散乱し、直立で立ってはいられないほどの揺れを、志貴はその身で体感する。「うーん…『空想具現化』でなんとかできるかにゃ~?」しかしながらアルクェイド。彼女はこのような地震でも、あわてることなくちゃぶ台の上に散らばっている『せんべい』を食べていた。「食ってる場合か~~~っ!!!」まるで某ドイツ軍人のようなうろたえっぷりで志貴は叫ぶも、数分後には揺れは収まっていた。「あ~あ…片づけが面倒くさいな~」「……いや、少しはあわてようよ…ね……」志貴の心配とは裏腹に、何処までも呑気なアルクェイドであった。*「と、いうわけで避難訓練をします!!!」あらかた片付いた部屋の畳の上で、志貴は頭に鉢巻を巻き意気込んでいた。「え~?今更地震で死ぬような身体でもないし」一方にアルクェイドは、正論とはいえやる気のかけらもなかった。あまつさえ、せんべいを口にくわえたまま、ごろ寝してハードカバーの本のページを開く始末である。「何かあってからでは遅いの!!!」しかしながら志貴は至って普通の人間。吸血鬼でもなければ、体内に『鞘』があるわけでもない。一家の主(注・まだ結婚はしてません)であるならば、家族の防災に努めるのは至って普通の行為であろう。「ほら!レンなんか真っ先に『ぶら下がり健康器具』の上まで避難してたぞ!!」「いや、初めからそこにいた気がするけど…」レンは物干し竿と化した『ぶら下がり健康器具』の上で、これまた呑気そうに丸くなっていた。むしろ、地震にすら気づかずに、そこで転寝していた可能性の方が大きいと思われる。「ハァ……真面目に聞いてくれアルクェイド。俺はただ純粋に―――」「それに…」「俺はただ純粋に、万が一お前に何かあったらイヤだ」…というようなことを話そうとした志貴であったが、言葉途中で卑怯なほどにアルクェイドは志貴に近づきその人差し指を志貴の唇に当てる。「―――それに、もしものときは、志貴にお姫様抱っこしてもらうのもいいかなー…なんて」これは超ド級の反則技である。良識ある人であれば、「テメーでなんとかしやがれ!!!」と思うのが普通であろう(特に、某志貴の妹とか、某埋葬機関カレーとか…)。「…そ、そうだな。お前を殺した責任……とらなきゃな」しかし志貴……!!屈服…ッ!屈服せざるを得ないッッ!!!こんな莫迦過ぎる構図を見ながらレンは、「この二人なら何があっても死なないだろうな」などと思いながら、再びぶら下がり健康器具の上で転寝するのであった。*番外編(災害予防)岡崎一家の場合…汐が張り切り、渚が非常用カバンを準備し、朋也は冷静に、汐と渚が怪我をしないか心配のタネが尽きない感じ。神尾夫婦の場合…観鈴が非常用カバンにワケのわからないモノ(恐竜グッズなど)を入れ、確実に往人に怒られるであろう。相沢夫婦の場合…あゆが張り切りすぎて、非常用カバンにモノを詰め過ぎまず持ち運びが出来ない。結局祐一に怒られ「うぐぅ」となる。総帥親娘の場合…緊急時に備え、シェルター建造したり、数年は自給自足できる物資を備蓄し、娘に「それ、やりすぎ」と冷めた口調で言われる。