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No.25915の一覧
[0]  †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 【SAO二次】(旧題:†ネトゲの姫にはよくあること†)[かずと](2015/10/04 09:41)
[1] 第一話 「始まった二つのデスゲーム」[数門](2011/08/07 19:42)
[2] 第二話 「好奇心は”猫”を殺す」[数門](2011/08/07 19:43)
[3] 第三話 「吾友は病気である」[数門](2011/08/07 19:43)
[4] 第四話 「職人の朝は遅い」[数門](2011/08/07 19:44)
[5] 第五話 「ちーとはじめました」[数門](2011/08/07 19:45)
[6] 第六話 「○○充は爆発しろ」[数門](2011/02/16 13:43)
[7] 第七話 「たまによくあるこんな一日」[数門](2011/08/07 19:46)
[8] 第八話 「危うく死ぬところだった」[数門](2011/08/02 05:50)
[9] 第九話 「目と目が合う瞬間」 [数門](2011/08/02 05:50)
[10] 第十話 「ゲームはクリアされました」[数門](2012/02/27 14:39)
[11] あとがきというか、なかがきというか[数門](2011/08/03 05:00)
[12] 第十一話 「そういえばデスゲームだった」[数門](2012/02/19 22:50)
[13] 第十二話 「虐殺の日」[数門](2011/03/04 11:49)
[14] 第十三話 「信頼は裏切られるためにある」[数門](2011/03/08 10:05)
[15] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」[数門](2011/03/09 15:16)
[16] 第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」[数門](2011/03/11 06:59)
[17] 第十六話 「そして彼も罠にかかった」[数門](2011/08/07 19:49)
[18] 第十七話 「開かれるは漆黒への道」[数門](2011/08/07 19:49)
[19] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」[数門](2013/11/20 12:16)
[20] 第十九話「それは見てはいけないもの」[数門](2012/02/19 23:54)
[21] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」[数門](2012/03/05 12:25)
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[25915] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」
Name: 数門◆50eab45e ID:3f0dd04b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/09 15:16
「……漆黒、一体、急になぜだ。何故……」

問いかける。

漆黒は一拍置いた後、静かに口を開いた。

「……猫サン。拙者、今まで猫サンのいないとき、街にいったりもしてたヨ。
 多少だけど、いろんな人と喋ったし、いろんな人と見たネ」

「……何がいいたい?」

そんなことは知っている。俺と違い、漆黒は街にもいく。最もそんなに長居せずにすぐに帰ってくるが。

「男なのに、女の名前した人、そこそこいたヨー。
 でも、楽しく溶けこんでやってる人もいたネ。
 きっと、よくある事なんだヨー」

「……だから、俺には必要ないってのか?」

「ソウダヨ」

それがどうしたというんだ。そんな奴が”多少は”いることぐらいは想像している。

「……漆黒。確かにそうかもしれん。だけどな、そう諦めがつくのは、この手にカードが無いときだけだ。
 お前が持っているから、全然話は違うんだよ。
 それに、バレても楽しくやってる人もいるだろう……でも、やってない人もいる……だろ?
 つまはじきものにされる奴だってかなりいるはずだ。見えないだけで。
 俺がその後者に入らない保証がどこにある?万が一がないと、何故いえる?
 いや、俺はきっと後者だよ。
 だから……」

槍を抜き、構える。

「渡してもらうぞ漆黒……。力づくでもな」

そして、相手に分かるように『信頼の腕輪』を装備する。

「ここまでの付き合いだ……。生命まではとらない。
 だが、決着がついた場合、大人しく負けを認めて渡してもらおうか」

「……」

「構えろ。漆黒。逃げた場合は、『腕輪を外して』追いかけるぞ。俺の追跡スキルから逃げ切れると思うか?」

これは警告であり意思表示。腕輪を外すとはつまり、
そちらがそこまで逃げるなら、最悪のケースも有るぞという脅し。
……本当に逃げたらどうしようか。追うのは言うほど簡単じゃない、それに、俺に漆黒を傷つける事ができるのか。
正直な話、傷つけることはできても、トドメをさせる気は全くしない。
受けてくれないと……本気で詰む。

そもそも漆黒が裏切るということ自体が……信じられない。どこか現実味のない夢のようだ。
この10ヶ月ほど、少なからず命と名前を預け、信頼を感じてたのは俺だけだったのか。
夢なのか?それとも。
現実感がない。衝撃が大きすぎて、逆に感情が固まったかのようだ。

「本気デスか……。らぶりーえんじぇるにゃあこたん……」

「……」

「スルーとは……本気なんですネ……」

お前の俺の本気判定はそこかよ。こういうやりとりも最後かもしれんが……。
最後……本当に最後なのか。

「分かりましタ。お相手いたしまショウ」

漆黒が、やはり分かるように『信頼の腕輪』を装備し、カタナを抜き放つ。
正直ホッとした。ソレを表には出さないが、心の底から。
逃げられた場合、俺は追いかけたとしても、何も出来る事がない気がしたから。

「そのかわり……拙者が勝った場合は、引いてもらいマスネ」

「いいだろう。最も負けないがね。お前こそ約束を守れよ」

「来な」と促し、モンスターの邪魔が入らず、人目もない中原まで移動する。

しかし……そうは言っても、怖いもんだな。問題はまだある。
『信頼の腕輪』とはよく言った物。
もし、相手がとどめの瞬間に外したら……俺は死ぬ。
勿論相手にとっても同様だ。俺がその瞬間に外せば、漆黒は死ぬ。
お互いに相手に絶大な信頼がないと、このデュエルは成立しない。
そしてそれは、最後の最後まで分からないんだ。

裏切った相手に信頼とは変な事態だがな……。
だが、俺は何故か漆黒が外す気はしなかった。
あっちはあっちで、不安に思ってることだろう。

「そういえば、お前と出会ったのもこの森だったな……」

「……そうですネ」

出会った頃を思い返す。
こいつをMPKから救った俺が、いまPK紛いの決闘をしようとしている。
……不思議なもんだ。

「……行くぜ」

「……カカッテ来るね」

槍を構える。
真剣勝負の空気……嫌いじゃない。
この空気がすきだから、俺は戦いづくしの日々でもやってこれたのだろう。
裏切られたダメージはあるが、この緊張感に比例するように、
うけたショックと逆に感情は凍てつき頭は冴えていく。

……もう言葉はいらん。

漆黒と俺が、同時に言葉を紡ぐ。

こういう時は、こういうと決まっている。




「「いざ、尋常に……」」


「「勝負!!」」



一陣の風が、俺達の間を通り抜けた。










――――――――――――――――――――――――――――――
     第十四話 「ハッピーエンドを君に」
――――――――――――――――――――――――――――――





……お互いに大きく動かない。

風にゆらぐ草の音すら響く。
ヒリつくような空気。

漆黒は居合の構え。
……いつか、コピーが同じことをしてたな。
だが、前と同じ手は使えない。

第一は距離の問題。以前よりずっと近い。投げるモーションの間に近寄られる。
第二は広さ。館の中で左右に動きづらい前回と違い、自在に動ける広い草原だ。
第三にHP。牽制にはなっても、致命傷には絶対にならん。俺なら回避に専念しない。投擲は所詮牽制にすぎん。
第四に……奴は人間だ。AIほど馬鹿正直じゃない。

ちっ開始距離を縮めすぎたな。

このままじっとしててもいいが……。

いや、よく見ると、じわり、じわりと間合いを詰めてきている。

……いい手だ。

1:1の槍に対してはさらに遠距離から攻撃するか、さもなくば懐に飛び込むのが定石……。
追い詰めて、狩る気か。

そうさせるわけにはいかない。やはり、俺から手をだすしかないようだな。

「ハッ!」

烈火の気合とともに、横薙ぎに槍を繰り出す。
突きでは身のひねりでかわされる可能性がある!
サイドステップでは避けられまい!
ガードしても俺の筋力値のほうが上、よろけるのは漆黒!
つまり、どうしても下がる必要がある。
そして距離があくほどに俺に有利となる!

「シッ」

だが、それに対して漆黒は、カタナに収めた鞘ごと槍に対して
やや斜め向きの垂直に掲げる。

「何ッ」

ガインッ!
筋力値で上回る俺が、漆黒の体勢をやや崩すが、槍が鞘を上滑りし、
虚空にそれていく。完全に体勢が崩れた、正面ががら空きだ!まずい!

漆黒はそれに対し、よろめきながらも無理やりこちらに突っ込んでくる。
居合にはならないが、そのまま掲げた鞘から上段抜き打ちで斬りかかるつもりだ。
俺の槍はまだ中空を向いたまま。このままなら無防備でくらってしまう!
だが……

「甘い!」

俺は上滑りして言った槍を無理に戻そうとせず、そのままの勢いに合わせむしろ体の回転を加速させる。
軸足でしっかりと大地を踏みしめ、そのまま回し蹴りを放つ。

漆黒はまさかここで蹴りがくるとは想像してなかったようで、
モロに胸に攻撃をくらい、弾き飛ばされる。
そう、俺は体術スキルもあげている。

……俺と漆黒の違いが、出始めた。

「ヤッ!」

蹴りとともに戻ってきた槍の穂先を漆黒に向け、
バランスを崩した漆黒の足元を狙い、片手を伸ばし、槍を突き刺す。
漆黒が慌てて避けるが、真の狙いはそこじゃない。

「スカイスラッシュ!」

突き立てた槍をしならせ、棒高跳びのように加速値をつけ天に飛ぶ。
そして、絶対に反撃のない、はるか上からの一撃を振り下ろす。

避けきれないと判断した漆黒は、剣を横にガードに回る。
だが加速度を加えて振り下ろされた一撃は強烈。
ガードの上からも体力を削り、漆黒の態勢を大きく崩す。
だが真の狙いはさらにある。着地後、今度は点での打突。

「ビリヤードスタンプ!」

態勢を崩した漆黒は避けることもできない。
最も見切りにくい点での攻撃は、それでもガードしようとした漆黒のカタナをかいくぐり、胸にあたる。
ダメージはゆるい。なぜならこれは吹き飛ばす攻撃だからだ。
ヒットした漆黒は、技特性もあり、完全に宙を舞って吹き飛ばされる。

……詰みだな。

吹き飛んだことがではない。槍相手にここまで引き離されたことがだ。加えて主導権は俺にある。
ダッシュで着地地点を追いかけ、未だ起き上がる途中の漆黒に攻撃を加える。
もはや漆黒は為す術もない。

槍の圧倒的な強み……。それは対人戦の強さ。
どの時代でも、戦いの最も優れたるものは、敵の射程外からの一方的な攻撃だ。
拳よりカタナ、カタナより槍、槍より長槍。長槍より弓。リーチはいつだって強さだった。
ここゲームでも、システム的なアシストや、漫画的な技のいくつかはあるとはいえその根本は変わらない。
でかいモンスター相手じゃ「最長武器」というメリットは霞むが、対人じゃ別だ。
カタナがどのような行動をとろうとしても、常に槍の行動が先にヒットし、行動を阻害される。

つまりリーチの差ってのは圧倒的ってことだな。

さらに、俺と漆黒ではステータス差も大きい。
まずLVが違う。LVが違えば根本的な強さが違うのがこのゲームだ。
LVだけでいえば、漆黒もそこらの前線メンバーぐらいの強さはある。
が、漆黒のように休憩を挟まず、ひたすら戦闘ジャンキーと化してきた俺のLVは、それをさらに上回る。

つけくわれば、LVが仮に同等だとしても、先程の体術のように、戦闘スキルの習得率が全く違う。
体術スキル。隠蔽スキル。観察スキル。識別スキル。追跡スキル。索敵スキル。
戦闘用ではなくとも、目や耳、見た目、数多の補助スキルが奴の挙動の情報を読み取り、こちらの情報を隠す。
武器が違う。
LVが違う。
スキルが違う。
そしてはっきりいえば、戦闘そのものの熟練度すら、俺のほうが上だ。
伊達に何ヶ月もゴースト相手にずっとカウンターやってたわけではないし、ソロづくしではない。
ステータスに頼らない、攻撃そのものを見切り、避け、かわしながら反撃する強さが。
アシストシステムに頼らない、腕の振り、足の捌きが、いわば脳に刻まれた強さが、俺にはある。

……終わったな。

怒涛の攻撃が漆黒にヒットする。
漆黒の攻撃は、結局あの最初のワンチャンスだけだった。
それすらも失敗し、俺は一太刀も浴びてないまま終わった。
あとは一方的な蹂躙。傷どころかチャンスすらない。パーフェクトゲームだな。

最後に破れかぶれに漆黒が攻撃しようと、カタナを振り被るが
俺は冷静に攻撃を見切り、痛烈な一撃を武器の根元に加え……
――武器破壊を引き起こした。

そして、そのまま漆黒に最後の攻撃がヒットする。

結局、漆黒に「一か八か」の行動すら与えるチャンスもなく。
徹底的に行動を封じ。
無感動に、奴のHPバーが空っぽになった。












勿論、HP1を残して。





「……終わりだ、漆黒」

倒れて動かない漆黒に近寄ると、回復結晶を使う。
これで全快するだろ。
まあ、万一モンスターの奇襲があっても嫌だしな……。

そんな事を考えてると、漆黒が、ガバッと起き上がって
いきなりこちらを羽交い締めにしてきた。

……まずい!

油断しすぎたか?

また、俺は裏切られるのか?

そう思って振りほどこうとすると。


「ウウ……猫サン、アリガトヨー……」



なんか泣いてた。





――――――
――――
――






「なんだかな……ほら、いいから渡せよ」

なんか、シリアスな空気がブチ壊しに……。

「……分かったヨー。渡すヨー……」

「……」

なんだってんだ、一体……。
不信に思いながらも、アイテムを受け取る。
そして、ワクワクしながらチェック。

だが、そこに書いてあるものは、俺を三度絶望に突き落とした。

「……こ、これは!」



『リネームカード
 ・装備品のみ、名称を自由に変えることができる(性能は変化しません)
 ・名称変更中のアイテムはトレード・売却・廃棄不可
 ・名称変更中のアイテムがある場合、このアイテムのトレード・売却・廃棄不可
 ・使用回数制限無し』 



装備品『のみ』
のみ
のみ
のみ

……

馬鹿な……。

人名は、含まれないのか……。


「……なんて、こった」

「猫サン……」

「漆黒……お前が急に渡せないっていったのは、これが理由か……?」

「そだヨ~……。
 きっと、猫サンみたらがっくりすると思ったネ。
 デモ、それだけじゃないヨ」

「さっきも言ったケド、女っぽい名前の人、たくさんいたネ。きっと、猫サンも紛れても問題ないと思ったヨ。
 だけど猫サン、ボクとPT組んでる間は、解散しないと思ったヨ。デモ、それ良くないヨー!
 猫サン、街に戻るべきだヨー。もっとたくさんの人の中に、入れる人だと思うヨー」

「……漆黒。お前ってやつは……お前ってやつは」

俺のことを考えてくれてたのか……。そんなことを……。

俺のことを考えて……。クッ。

バキィ!

槍を振り落として叩く。

「イタッ!遺体!猫サン!セッシャのHPがまた空になっていク!遺体遺体しちゃうヨ!」

「やかましい……ッ!グスッ、クソッ、無駄に人間に絶望しかけたじゃねーかッ……!グスッ、ボケッ」

くそ、目から液体が止まらねえ。しまらねえ。なんでそんなもん流れてるんだ。
哀しみかそれとも喜びか。
泣くから悲しいんだっていう名言があったから、きっと悲しさだな、うん。

「最初にいったろーが!リネームとか!こんなもんありえないから期待してないって!考えすぎなんだよテメーは!」

「それいつもボクが猫サンに言ってることネ……」

「うっせ-、グスッ、バーカ!浅知恵野郎!」

危うく人間不信になりかけただろう。はた迷惑な。

「……最初から、言やあ良かったんだよ。どっちがいいかなんて、お前が決めることじゃねえ。
 俺が決めることだろ。俺の決める道は、俺が決めたから、どんな道であろうとそれでいいんだ」

「猫サン……」

「大体だな。今更だろ、もうこういう生活も1年3ヶ月も続けてきたし、お前と組んでももう10ヶ月だ。
 お前とわかれるのとカードなら、PT続けるよ」

「ね、猫サン……ウワアァンダヨー!!ゴメンヨー!!」

泣くな……キモイから。漆黒には悪いが絵面的にはキモイ……。
これが美少女ならフラグなのに……。
それに……ちょっとかっこ良くいったけど、戻って成功する率が100%じゃない以上、
取り返し効かないとこに踏み切れないというチキンな理由もあったり……。これは黙っとこう。

「とりあえず、謝れ。俺に、色々と」

「ウン……。ごめんなさいだヨー」

「やれやれ……」

「カード……返すヨー。本当ゴメンダヨー」

「いや、いいよ。それはお前が持っておけ」

「イイノ……?ダッテ、今回凄い迷惑かけたノニ……」

「2人で倒したんだから、どっちのアイテムでもあるだろ。俺がいいっつってるから、いいんだよ。
 お前のほうがカード使いこなしそうだし……そうだな、信頼の証とでも思っとけ」

「猫サン……ウワアアン!アリガトウ!本当、お世話してるヨー」

「そこは……まあいいか。ほんっと……やれやれだぜ……」

お世話になってる、が正しいと言いかけてやめた。
ま、訂正しなくてもいいか……。
なんだかんだいって正直な話、俺はこいつの底抜けのお気楽さとポジティブシンキングに、大分助けられてきたと思う。
もしあのままずーっとソロで、人間不信生活続けてたら、今頃心は荒みきって自殺してたかもな。
まあだからこそ、さっきは相当衝撃ではあったが……。

漆黒はまだわめいている。こいつが興奮しすぎるせいで、逆に俺が冷めていく気がしてならない。

しかし、そこまで感動しなくていいだろう……。俺も泣けてくるじゃねーか。








ま、色々言いたいことはあるけど……とりあえずハッピーエンドってことで……いいか。









――――――
――――
――






「そういえバ。ちょっと話戻るケドヨー」

「ん?」

「PTから離れていいかヨ?」

「んー?……さっきの理由か?俺が街に戻ったほうがいいとかなんとか……
 まあ、あそこまでいうなら、嫌だけど考えなくもないけど……すげえ嫌だけど……死ぬほど嫌だけど……」

「No。それもあるけど、そうじゃなくテ……、今回の探索中に、前のPTに出会ったんだヨ」

「前の……?ああ、お前を置いてった奴らか」

そんな奴らもいたな。10ヶ月も前だから忘れちまった。

「Yes。そしたら、なんか前のことは謝りたいっていってきてサ。そんで、おはなし色々シヨってさ。
 1日2日でいいから、一度PTに戻ってくれないかっテ」

「ふーん……」

「どうかヨ?まあどのみちすぐ戻ってくるヨー」

「俺はさっき言ったとおりのスタンスさ。お前の道だろ。他人がどうこういっても、迷惑になるだけよ。
 選ぶのはお前。好きにしな」

俺だったらもどらんけどな。どの面下げてって奴だ。でもまあ、真摯に謝られたら……うーん。
そいつらの人となりを詳しく知らんしなんともいえんな。

「そうかヨー。じゃあ、ちょっくら戻ってくるヨー」

「おう……楽しんでこいよ。ちなみに、そいつらの名前、なんつうの?」

「オーいい忘れてたヨ。ギルド<<チャレンジャー>>っていうヨ」

「なるほどね。ああ、何度も何度も何度も念を押すけど、俺の名前は言うなよ。ていうか存在をだすな」

「大丈夫ネ。このカタナに賭けても黙ってるヨ!」

「さっき俺が砕いたばかりなんだが……」

不安にしかならん。
ちなみに今は同等の予備があったので、漆黒はそれを装備している。
まーいい。なんだかんだで実力は一線級だし、どこいっても大丈夫だろ。

その後も適当に会話したが、結局送り出すことにした。

「じゃあなー」

「アイヨー」

やれやれ、騒がしいのが行ったな。まあ久々に羽を伸ばさせてもらいますか。

結局、出会ったここで再び別れることになっちまったな。
まあ、すぐ戻ってくるんだが。

あの頃は、こいつがPKされかけても所詮他人事、なんて薄情なことを思ってたもんだが。
なのに今は、本気でいないとなると、なんか寂しささえ感じる。人は変わるもんだな。

奴がいないと静かだねなんとも……。
よく昔の俺は半年間もソロに耐えれたね。










……この時、今になっても考える。何が正解だったんだろう?俺は何ができたんだろう?
結果論からいえば、やることはあった。
でも、この時の俺は、まさに人を信じることを、取り戻した直後だった。
俺にその選択肢は、取れなかったと思う。

それでもやっぱり、結果論からいえば、こういうことだった。

俺は……甘ちゃんだったのだ。

また裏切られるなんて、とてもとても。考えもしなかったんだ。





















――――――
――――
――


















漆黒を送って次の日の朝。

俺は起きると、寝ぼけ眼に漆黒に久々の邂逅はどうだったか聞くべく、Wメッセージを送ろうとした。
あー眠い。昨日は体力的にも精神的にも疲れたからな……。
む……フレンドリストが灰色じゃん。使えないのか。しょうがない、手打ちで送るか……。

ポチポチと……。あいつの名前は無駄に長くて打つのが面倒くさい……。眠いし……。
よっと、送信と……。

<ピロン>

即座にメッセージが返ってきた。

返ってきたメッセージは以下のようなものだった。


『 システムエラー

 【漆黒闇聖闘士†炎の吹雪(FireSnow)】への、メッセージは、失敗しました 』


………………。


失敗?何故……?

あ、あれかな?名前が長いから、打ち間違えたとか……。

はは……寝起きで寝ぼけてたし……。

……間違えたんだよな?

……嫌な、予感がする。








空が、曇ってきた。





――――――――――――――――――――――――――――――
第十四話 「ハッピーエンドを君に」     終わり
第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」 へ続く
――――――――――――――――――――――――――――――


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