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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/30 22:52

 うーむ。
 なんというか、まぁ、うん。
 ぼーや……あー、えーっと。

「いやはや、近頃は化学もバカになりませんねぇ」

「……そんなレベルか?」

 何と言うべきか迷い、とりあえずそう答える。
 うん。

「駄目だろ。科学部」

「科学部じゃなくて、工学部ですよー」

 ……問題はそこじゃないだろ、葉加瀬。
 私の隣に立つ葉加瀬が、律義にそう返してくる。
 麻帆良武道大会の第一試合。
 ぼーやと、田中とか言う奴の勝負だったのだが……だ。
 むぅ。
 空いた口が塞がらないと言うか、溜息も出ないと言うか。
 顎に手を添え、とりあえずコメントは控えておく。
 もう、なんだ。
 色々酷いと思う。
 あと茶々丸? お前後でお仕置きな?
 なに暢気に大会の解説なんてやってるんだ。
 そりゃ、お前に何をしたらいけない、とは言ってないが……。
 流石に、こういった大きな大会に関係する事をするなら、一言言ってくれ。

「うっわ、すっげぇ!? 姉ちゃん、ロケットパンチやでっ」

「そ、そうだな」

 その葉加瀬の隣では、小太郎が年相応の子供のようにはしゃいでいた。
 そして、会場の約半分であろう――男連中のテンションも、上がってきている。
 なんでだろう?
 そんなにロケットパンチが良いのか?
 あんなの、効率的じゃないだろうに。
 一回使ったら回収しないといけないんだぞ?
 田中のは有線だから、線切られたら多分もう使えないんじゃないのか?
 実際、一発撃ったら線を巻いているのだろう。連射は出来ていない。
 不便じゃないか。
 ……そう言ったら、物凄く怒られた。
 …………納得がいかん。
 が、面倒なので反論はしないでおく。
 ちなみに真名は長瀬楓の激励に、控室へ行っている。
 このテンションの連中の中に置いていかれると、こう、なんだな。

「エヴァンジェリンさんには、浪漫が無いです」

「まったくや」

 …………物凄く、納得がいかない。
 私が悪いのか?
 だって有線だぞ?
 明らかに効率悪いじゃないか。
 まだ手に火薬仕込んで、単発のミサイルパンチにした方が便利だと思うんだがなぁ。
 ……言わないけど。
 さっき葉加瀬に怒られた時、少し目が血走ってたから。
 あとクソ犬? お前、この私に良くもそんな口が聞けるなぁ。

「ロケットパンチとドリルは男の浪漫ってヤツや」

「そ、そーか」

 そういうものなのか?
 ……良く判らん。

「杭打ち機は流石に許可が下りませんでしたが……」

「……死ぬだろ、ソレ」

 というか、ロケットパンチはともかく、ドリルと杭打ち機は殺傷能力が高過ぎるだろう。
 レーザーもあまり言えないだろうが。
 あれって熱線だろう?
 ルールに引っかからないんだろうか?
 まぁ、朝倉も何も言わないし、良いんだろうなぁ。
 というか、何気にアイツ、反射神経良いよな。
 上手い具合に田中のレーザーやらロケットパンチやら避けてるし。
 半泣きだけど。
 ざまぁみろ。
 しかしまぁアルの奴も子供みたいにはしゃいで……こういうのが好きなんだろうか?

「なぁ、アル?」

 私を挟んで、葉加瀬の反対側に立つあるを見上げながら、声を掛ける。
 ……お前、もう結構良い歳だよな?
 あんな非効率的なのを見て、どうにも思わないのか?

「なんですか、エヴァンジェリン?」

「……こー言うのが、お前好きなのか?」

「男なら、田中さんの可能性に胸を躍らせない人はいないでしょう」

「…………そ、そうか」

 そういうものなのか。
 男というのは、良く判らんのが好きなんだなぁ。
 あんな筋肉ダルマの、どこが良いんだか。

「エヴァンジェリンには、まだ男の浪漫は早かったようですね」

「……はぁ」

 なんだ。
 言い返す気力も無い。
 とりあえず、頑張れ田中。
 私の為に。
 ……そう応援する事すら、なんか嫌だ。
 視線の先。
 特設リングでは、ロケットパンチやら、レーザーやらを避けるぼーやが頑張っている。
 何でだ?
 ロケットパンチは連射出来ないんだから、その合間に攻めればいいじゃないか。
 そう言ったら、また怒られた。
 ……何故怒られたのか、全く判らない。
 私か? 私が悪いのか?
 むぅ。

「まぁ、良いか」

 このまま、ぼーやがあの田中とかいうロボットに負ければ、仕事が一つ減るし。
 後は、反対側のトーナメント表の小太郎が負ければ、私がこの大会に出る理由も……。
 ……あー。

「なぁ、アル?」

「なんですか、古き友よ? 今少し忙しいんですが」

 何もやってないだろうが。
 まったく。

「田中さん、頑張って下さい」

 応援し始めてるよ。
 お前、ぼーやが勝つのにか賭けてるんじゃないのか?
 ……相変わらず良く判らんヤツだ。
 楽出来るから、別に問題は無いが。
 というか、だ。
 お前、今まで隠れて生活してたんだろうに、そうやって声出して応援して良いのか?
 まぁ、これだけ回りも応援してるならそう目立たないだろうが。
 なんか良く判らん“男の浪漫”とやらで田中を応援する男連中と、見た目可愛らしい子供であるぼーやを応援する女連中。
 どっちもどっちと言うか……格闘技の事は、誰も楽しんでないよなぁ。
 ふぁ……賑やかな連中に囲まれながら、欠伸を一つ。
 なんだかなぁ。
 なんといか……。

「暢気なもんだ」

 それは私の事か、私の周りで騒ぐこいつ等の事か――両方か。
 超鈴音の事もある。
 それでも……それを判っているからこそ、暢気だな、と。
 どうしてだろうか?
 昨日はああも慌てたが、今日はそう慌ててはいない。
 そりゃ、超の目的が判らないから、というのもある。
 どう行動するかも予想できないしな。
 じじいからは、魔法先生はこの事に当てると言われている。
 超の行動への対応へと。
 タカミチも、超のマークについているはずだ。
 その代り、魔法生徒は見回りを、と。
 魔法生徒の件は聞いていなかったが、律義に真面目な魔法生徒が報告しに来たしな。
 ……はぁ。
 そりゃ、私も魔法使いの一人だ。
 そうやって言ってもらえると助かるが……なぁ。
 やはり、何と言うか……そうやって言ってもらえると、何かと助かる訳だ。
 いろいろと。今まではそんな事は、こっちで調べるか、無視してた訳だし。

「おや、エヴァンジェリン。楽しんでないようですね」

「考える事が多いんでな」

「おやおや、そうですかそうですか」

 ……ムカツクなぁ。
 誰かこいつを、一回黙らせてはくれないものか。
 物理的にでも良いから。

「しかし良いのか? このままじゃ、ぼーや負けるんじゃないのか?」

 明らかに、劣勢だし。
 これが魔法有りなら、ぼーやの勝利は揺るがないだろう。
 ロケットパンチやらを確実に避けれる距離から、魔法で攻撃すれば良いだけだから。
 だが今は違う。
 “戦いの歌”で肉体を強化して避けてはいるが、そこまでだ。
 そこから先――近付いてからの攻撃が無い。
 それはそうだろう。
 私は、ぼーやを砲台として教育してきたのだから。
 それはぼーやも判っているはずだ。
 一人では戦えない。
 勝負以前の問題だ。戦闘になりはしない。
 近付かれたら何も出来ない、典型的な魔法使い。
 それが今のぼーやだ。
 しかも、逃げ道の無いリングの上。
 それでも、何か策があるのか、とも思っていたが。
 ……あの調子じゃ、なにも無いんだろうなぁ。
 田中の攻撃を無様に避ける姿を見ながら、小さく溜息。

「あの子も、必死なんですよ」

「ん?」

「ナギの事です。手掛かりを求めてこの大会に出場したんだと思います」

 ナギ?
 ……まぁ、そうかもな。
 15年前は、この麻帆良に居たわけだし。
 それに、日本にもいくつか隠れ家を持ってるみたいだし。
 京都然り、である。
 だが、それと今回のが何か関係あるのか?

「以前。この大会にナギが参加した事があるんですよ」

「……は?」

 なんだそれは?
 初耳なんだが。
 というかじじい、お前知ってて何で黙ってるんだ?
 まぁ、こっちは知らなかったから、聞いていないんだが。

「知らなかったのですか?」

「ああ。本当なのか?」

「ええ」

 そう言い、楽しそうに笑う。
 それは本当に――楽しそうに。

「子供が親を求めて、ああやって頑張ってるんです」

「ふぅん」

 なるほどなぁ。
 しかし、こんな大会に出ても、ナギの情報なんて何もないだろうに。
 親を求めて、か。
 はぁ。

「馬鹿だな」

「貴女から見たら、そう見えるかもしれませんね」

 ふん。
 それじゃまるで、私以外には別のように映っていると言うのか。
 だがまぁ、ナギ、か。

「アル。お前の仮契約カードを見せてくれ」

「嫌ですよ」

 む。

「答えが簡単に判ったら、面白くないじゃないですか」

「……ならせめて、それをぼーやに見せてやれ」

 そうすれば、もうこんな馬鹿な事はしないだろう。
 少なくとも麻帆良に居る間は。
 アルビレオ・イマはナギ・スプリングフィールドの友人であり、従者。
 それは、魔法界側の一部では良く知られている事だ。
 そして仮契約カードは、ある意味で最も有効な生存確認に使える。
 生死でカードの模様が変わるからだ。

「言ったでしょう? 時期尚早だと」

「どういう事だ?」

「あの子が私を納得させられるだけの“力”を身に付けたら、教えましょう」

「……別に、そこに“力”が必要か?」

 教えるだけならタダだと思うがな。
 まぁ、私も無料で教えてやるほどお人好しではないしな。

「ええ」

 聞くだけで“力”が必要か?
 まぁ、試練と言えば、聞こえはいいが。
 お前はムカツク奴だが、そんな意地悪はしないと思っていたんだが。

「だってあの子。ナギが今どういう状況か知ったら、きっと何もかも捨てて行動しますよ?」

「……あー」

 否定は出来んなぁ。
 現に、今は勝手に動いた結果が、この大会の、この状況な訳だし。
 アルが言う“力”は、私が考えていたのとは、少し違うのか。
 まぁ確かに。
 それだと“力”は必要だな。
 毎回こんな行動をされていたら、じじいの首がいくつあっても足らないだろうし。

「そういう訳です」

「そこは気長に待つしかないなぁ」

 地道な毎日が一番の近道とは……きっと、ぼーやには思いもしないだろうな。
 だがまぁ……それを教えてやるほど、私も、世界も優しくはないが。
 何時それに気付くのか。
 それとも気付かぬまま、麻帆良での任期を終えるのか。
 そこはぼーや次第か。

「それに、英雄の息子なら確かな“力”が必要なのも事実です」

 手を抜いた私を下せる程度の、と。
 それはどうだ?
 10歳の子供にそこまで求めるのは……まぁ、世界は求めるんだろうが。
 そう考えると、ぼーやも可哀想だな。
 人並の子供の幸せ、か。
 それがどんなものかは私も忘れてしまったが、少なくともぼーやには縁遠いものなのだろう。

「今のままじゃ、他人も自分も守れません」

 そうだな、と。
 可哀想に。
 そう思うのも間違いなんだろうが、そう思ってしまう。
 あの年頃なら、まだ誰かに守ってもらう立場だろうに。
 それは魔法使いでも、そうでなくても変わらない当たり前の事。
 ……ぼーやには、その“当たり前”すら遠いのだ。
 英雄の息子である故に。

「ですから、私が口を挟むのは、あの子が自分を守れるようになってからです」

 そうか、と。
 それは何時になる事やら。
 英雄を特別視する世の悪意、それはぼーやには荷が重すぎると思うがな。
 ま、今はそれにすら気付いていないだろうが。

「貴女は、ナギの事は聞かないのですか?」

「ん?」

 ついで聞かれたのは、私に対しての、ナギの事。
 ナギの事、か。

「生きているんだろう?」

「……どうでしょうか?」

 ふん。
 お前の態度を見れば判るよ。
 それに、仮契約カードを見せない所も……きっと。
 以前ぼーやが言ったのは本当だったのか。
 ナギが生きている――か。

「それが判れば、十分だ」

「おや?」

 ふん……なんだ、そんなに驚いて。
 そんなに変な事を言ったか?

「以前の貴方なら、一も二も無く飛びつくと思ったんですが」

「――どうだろうな」

 そうなのかもな。
 それとも、そうじゃないのか。
 今となっては、もう判らない。
 15年前の私が、今この時……どんな行動を起こしたのか。
 確かに私は、ナギが好きだ。
 うん。
 ……好きなのだ。
 死んだと聞いた時は泣いたし、生きていると聞いた時は嬉しかった。
 そして今も、アルとの会話で生きていると確信し――嬉しいのだ。
 胸に手を添え、そこにある想いの感触を確かめる。
 確かにここに在るのだ。
 ナギへの想いは。

「生きているのが判れば良いさ。探しに行けば良いだけだしな」

 登校地獄の呪いの目処も立っている。
 来年にでも良いし、高校くらいまではここに居ても良い。
 それか……まだ少し待つのか。
 ま、先の事はまだ判らないか。

「ふむ――貴女にしては、やけに殊勝ですね」

「お前にだけは言われたくないがな……」

 本気で顔の形を変えてやろうか。
 まったく。

「ですが……」

 ん?

「エヴァンジェリン。あなたが――貴方の求めた彼と再び会える日は、来ないかもしれません」

「……お前の、下らん予言か?」

「そうかもしれません」

 ――そうか、と。
 私の求めるナギ、か。
 それと会える日は来ないかもしれない、と。
 そう言われ……空を見上げる。
 空は高い。
 きっと、あのバカも、こんな青い空をどこかで見ているのだろう。
 この世界か、それとも別の世界かは判らないが。
 生きて、空を見ているのだろう。

「どうだろうな?」

「はい?」

「……なんでもない」

 願って、叶わない事が多いのは知っている。
 世界とはそういうものだ。
 どうしようもなく残酷で、平等だ。
 それは、誰よりもきっと――私が知っている。
 叶わない想いもあるだろう。
 報われない願いもあるだろう。
 だがきっと――届かない言葉は無い。
 目を閉じ、息を深く吸う。
 ナギ。
 ナギ=スプリングフィールド。
 息を吐きながら、心中でその名を呼ぶ。
 それでも。
 それでも私は、この名前を呼び続けよう。

「私が何者かは、お前も良く知ってるだろう?」

「ふむ……」

 私は吸血鬼、永遠を生きる存在だ。
 そしてナギは生きている。
 なら、後は簡単だ。

「アイツが死ぬ前に探し当てるさ」

「貴女らしい答えですね」

「ふん――いつか必ず、どこかで会えるさ」

 それがどんな形であれ、どんな場所であれ。
 私は必ず、またナギと出逢うさ。
 私がそう望む限り。

「強くなりましたね」

「……お前に言われると、無性にムカツクのはなんでだろうな?」

「なんででしょうね?」

 ちっ。
 お前が、私をまるで――吸血鬼として扱わないからだろうが。
 詠春を少しは見習えというのだ。まったく。
 そう思いながら、視線を試合会場に移す。
 試合の方は、ぼーやが劣勢。
 このまま負けるかな?
 それはそれで楽ではあるが……。

「む」

「賭けは私の勝ちのようだな」

 流石に、もうそろそろ疲労もピークだろう。
 それなりに体力強化の修行もしたが、実践と訓練じゃまた疲労の度合いが違う。
 特にぼーやは、こんなに大勢の前で戦うのは初めてだろうし。
 開き直れるような性格でもないしな。
 魔力はまだあるだろうが、体力が先に底をついたか。
 ま、これで自分がどれほどのものか良く理解できただろう。

「ふん。さっさと写真を寄越せ」

「――――――」

 そう言うと、無反応。
 このまま賭けを反故にするつもりか、と思いアルの方を向くと、

「お前、何やってるっ」

「何の事ですか?」

 なにしれっと――。

「いま――」

「試合がありますからね、少し瞑想していただけですが?」

「――んな」

 わけあるかっ。

「今お前――ッ」

「なんですか? 私が何かをしていましたか? 目を瞑っていただけですが?」

 ――い、言えるかっ。
 と言うかお前、私の前でよくも堂々とっ。
 慌ててぼーやの方を向く。
 すると、視線がこちらを向いていた。
 いや、正確には私ではなく私の方……。 
 隣を見る。
 ……口笛なんか吹いてた。

「反則だろ、それはっ」

「何の事ですか?」

 とぼけるなっ。
 今お前、念話――あの時か!?
 控室でぼーやの頭撫でた時っ!
 こ、こいつ……。

「そこまでして勝ちたいかっ」

「何の事か、さっぱりですねぇ」

「嘘吐けっ」

 な、な、な……。

「田中ぁっ、勝てっ!!」

「おお、エヴァンジェリンさんも、やっとタナカの良さに――」

 そんなんじゃないわっ。
 くっ――まだだ。
 ぼーやの体力は底をついている。
 なら後は……。

「さぁ、ここです」

「――――」

 アルのその言葉は無視。
 田中のロケットパンチを、今までのように大きくではなく、最低限の動きで避ける。
 その際に、間合いを間違えて左の二の腕を軽く裂き――そのまま駆ける。
 そこは、今まで通り。
 ここからだ。
 ここから先の武器を、ぼーやは持っていない。
 それをどうアドバイスしたのか――。
 “戦いの歌”で強化した脚力で一気に間合いを詰め、その懐へ――。
 潜り込む前に、田中の口が開く。
 レーザー。
 それを判っても、その足は止まらない。
 いや、更に加速し、一気に懐に潜り込む。
 さっきまでのぼーやには無い、思い切りの良さ。
 おそらく、自分で考えたのではなく――誰かのアドバイス。
 その誰かの足を踏みながら、右の親指の爪を噛む。
 田中、勝て。
 まだやれるだろうが。
 ――ただの一撃くらい耐えてみろ。
 しかし、

『おぉっと!? 田中選手……選手? まぁいいや。子供先生のボディへの一撃でダウンっ』

「立てーっ!!」

「田中さん、立って下さいっ」

「タナカーっ」

『この大声援に答える事が出来るか、田中選手っ』

 ……やけに人気あるなぁ、田中。
 なんでだ?
 私としては、確かに勝ってほしいんだが……どこが良いんだ?
 さっぱりだ。
 それよりも、だ。

「遅延呪文か」

 しかも、使ったのは魔法の矢・光の一矢。
 雷属性のソレなら、機械の田中は耐えられないか……。

「まぁ、動きながらは慣れてないようで、一矢だけですが」

「……やはりアドバイスしたんじゃないか」

「いえいえ。見てただけですよ?」

 嘘吐けっ。
 このっ、このっ。
 さっきまでのぼーやが、そこまで頭を回して戦えるかっ。
 ただでさえ、戦場を見る目も育ってないというのにっ。

「ははは、キティ? そんなに足を踏んでも、痛くありませんよ?」

「五月蝿いっ」

 反則じゃないかそんなの。
 賭けは無効だっ。
 あとキティと呼ぶなっ。

「しかし、賭けたネギ君が勝ったとはいえ……田中さんには、もっと頑張ってほしかったですね」

「……いや、賭けは無効だろ? 反則だろ? さっさと写真寄越せよ」

「何を言ってるんですか?」

 お前こそ何を言ってるんだ?
 殴るぞ、本気で。

「私は真名さんと勝負しましたからねぇ」

「だったら代わりに、私がその写真を貰うっ」

「駄目ですよ、賭けは賭けなんですから」

「五月蠅いっ! いいから寄越せっ!」

 あんな写真、誰それに見せられるかっ。
 ……ああ、どうして私は、昨日あんな格好で予選に出たんだか。
 面倒臭がった罰か……はぁ。

「それでは」

「あ、ちょ――待てっ」

 そう一瞬油断した時、その隙にアルは気配を消した。
 ……器用だな、アイツ。
 魔法使いなのに、並みの気の使い手以上に気配の消し方上手いし。
 まるで本当に、目の前から消えたように錯覚してしまいそうである。
 と、妙に感心してしまったが、そうじゃない。

「おい、犬」

「……その呼び方、いい加減にやめへん?」

「今はそんな事はどうでも良い」

「良くないって!?」

 ふん。

「先生は何処に居るか判るか?」

「兄ちゃん?」

「ああ」

 あのアルの性格だ。
 絶対あの写真を――。

「麻帆良のどっかにおると思うけど……」

「役に立たないな」

「酷いっ」

 何がだ。
 まったく……しかし、どうしたものか。
 ああ、そうだ。
 携帯があったな、そう言えば。
 そう思い出して取り出そうとし……。
 そう言えば、控室に置いてきたんだった。







――――――

 うーむ。

「先生、そちらは美味しいですか?」

「中々ですよ?」

 源先生と二人、並んで歩きながら、同じように右手にアイスを持って見回りを続ける。
 しかし、熱いなぁ。
 人が多いから、余計にそう感じてしまう。
 と言うか、人並に攫われそうで……。

「源先生、大丈夫ですか?」

「え、ええ……でも、毎年ですけど、この人混みには慣れませんね」

「で、ですね」

 何と言うか、近い。
 うん。
 はぐれない様に、離れないように、というのは判るんだ。
 というか、俺も源先生も意図してこう近づいてるわけじゃないんだが……それでも、少し近い。

「今年は、特に多く感じますね」

「なんでも、何年かに一度の現象が見られるとか……」

 葛葉先生が、と。
 ああ、そういえば。
 マクダウェルも何か言ってたな。
 世界樹がどうとか……なんだったかな?
 思い出せない、というか、なんか隣の源先生が近くて頭が回らないというか。

「それ目当ての人も多いんでしょうね」

「なるほど」

 それもあるのかもなぁ。
 しかし。

「これじゃ、前に進むだけで疲れますね」

「ふふ、お若いでしょうに」

 ははは、と。
 そう乾いた笑いを洩らし、足を進める。
 しかし、実際問題。
 これじゃ見回りどころじゃないな。
 昨日はここまで人は多く……あったか。
 昨日は瀬流彦先生と回ってたからなぁ、隣を気にしなくて良かったもんな。
 今日は……。

「ふぅ」

「だ、大丈夫ですか?」

「……え、ええ」

 そろそろ、どこかで休憩した方が良いか。
 もう結構な時間、歩いてるし。
 さて、と。
 そうなると、だ。
 どこで休むかな……この辺りに、良い喫茶店とかあったかな?
 …………いや、源先生に聞けば早いんだけどさ。
 何と言うか、男の見栄と言うか。
 うん、すまん。
 そんな不純な事を考えながら……俺って、そういう店はあんまり知らないよなぁ。
 そう内心で溜息を吐いてしまう。
 今度散歩する時は、店を回ってみるかなぁ。

「そうだ」

「はい?」

 そうだそうだ。
 そう言えば良い店があったんだった。

「あ、いえ。源先生、あんみつは好きですか?」

「あんみつですか?」

「はい。この先にあんみつの美味い店があるんですけど、休憩にどうです?」

 以前近衛に教えてもらった店が、近かったはずだ。
 あれ以来行ってないけど、場所は覚えている。
 ……まぁ、源先生があんみつが好きかは知らないんだけど。

「いいですね。少し休憩しましょう」

 ほっ。
 そう嫌いじゃなかった……のかな?
 この人混みに疲れただけかもしれないけど。
 店はすぐ近くなので、歩いてもそう時間は掛らない。
 源先生とはぐれないように注意しながら、その店の方向に歩いていく。

「ふぅ」

「疲れましたねぇ」

 二人で案内された席に座り、そう一息吐く。
 本当に疲れた。
 二日目でこれなら、明日はもっと大変だろうなぁ。
 たしか、マクダウェルの話だと、明日が世界樹の何とかは本番らしいし。
 なんだったかな、と思いだそうとするが思い出せない。
 ま、今は良いか。
 とりあえず、店員に冷たいお茶と、源先生があんみつを頼む。

「良いお店ですね」

「ええ、以前教えてもらったんですよ」

 生徒にですけど、と。
 そういうと、小さく笑われてしまう。

「先生は、生徒の皆さんと仲が良いんですね」

「そうでしょうか?」

 結構嫌われてると思いますよ、と。
 小言も多いですし。

「ふふ、私はそうは思いませんけど」

「そう言ってもらえると……」

 言ってもらえると、なんだろう?
 嬉しいか、それとも、また違うのか。
 不意にそう思い――苦笑する。
 教師は嫌われる仕事だとは判っているけど、それでも、仲が良いと言われるのは嬉しいものだ。

「どうかしましたか?」

「いえ。それより、自分よりは源先生が生徒達とは仲が良いんじゃないですか?」

 女子校ですし、と。
 やはり男の教師より、女性の教師の方が色々と相談もしやすいだろう。
 それに、男には判らない悩みもあるだろうし。

「そうでしょうか?」

「自分から見たら、そう思いますけど?」

 自分なんて、まだまだです、と。
 仲が良い、と言えるのだろうか?
 確かに1年の頃よりは生徒達とも良く喋る様になったとは思うけど……。
 まぁ、高畑先生やネギ先生みたいな“仲が良い”は、また少し違うんだろう。
 俺や源先生の“仲が良い”は。

「でも、私は先生みたいに……相談事、というのはまだされた事は無いんですけどね?」

「…………はい?」

 相談事、ですか?
 って。

「……何か、見ました?」

「ふふ」

 そう小さく笑い、視線を逸らされる。
 あれ?
 相談事?
 ……さて、その相談事と言うのは……何の事なのか。
 小さく、それは楽しそうに、口元を隠して肩を振わせる源先生に、引き攣った笑顔を返す。
 えーっと……。

「一人の生徒に肩入れするのは、あまり良くないと思いますよ?」

「な、何の事でしょうか?」

 一人の生徒?
 相談事……と言うと、だ。

「近衛さんですよ」

「近衛ですか?」

「以前、学園で二人で話してませんでした?」

「あ、あれっ。見てたんですか?」

 多分、源先生が言っているのは修学旅行の時の事だろう。
 近衛から桜咲の事で相談を受けた時。
 うわ……見られてたのか。

「でも、近衛だけって訳でも……」

「そうなんですか?」

「当たり前です」

 そう。別に、近衛だけを特別に、と思った事は無い。
 丁度運ばれてきた、冷たいお茶を一口飲み、喉を潤す。
 うはぁ、生き返るとはこういう事を言うのかもなぁ。

「生徒を特別扱いはできませんよ」

「あら、真面目ですね」

「しょうがないですよ。先生ですからね」

 それが仕事ですし、と。
 そう言うと、また笑われてしまう。

「先生は、生徒に好かれようとはしないんですか?」

「好かれよう、ですか?」

 ?

「自分だって、生徒達から好かれたいですけど?」

「いえ、そうじゃなくて……うーん」

 いや、そこで悩まれても。
 もしかしたら個人的に好かれる、という事を言いたかったのだろうか?
 それはちょっとなぁ。
 この歳で職を失くしたくはないしなぁ。

「相手は中学生ですよ?」

「あら? 高畑先生だって、先生のクラスの……」

「あー……それ以上は、ちょっと」

 ……神楽坂?
 お前、どれだけの人に知られてるんだ?
 学園長の耳に入ったらどうするんだか……いや、新田先生の時点でアウトか。

「折角、学園祭期間中は面白い“伝説”がありますのに」

「はは……それこそ、自分には無関係ですよ」

 生徒達から告白されても。
 まぁ確かに、嬉しくはありますけど……どちらかと言うと、困ると言った方が大きいですし。
 流石に、生徒に手を出す訳にもいかないですしね、と。

「折角の麻帆良祭なんですから、もう少し羽目を外しても良いと思いますけど?」

「それはせめて、歳の近い人にして下さい」

 何が悲しくて、一回り以上年下の子に羽目を外さないといけないんですか、と。
 そう言うと、また楽しそうに笑われてしまう。
 うーむ。
 源先生、こういう話が好きなんだなぁ。
 そう言えば、昨日もこんな話をしたような気がするし。

「源先生は、そう言う相手は居ないんですか?」

「私ですか?」

「ええ。自分には居ませんからね」

 また話を振られる前に、先に言っておく。
 ……いや、自分で言うのも情けないんだけどさ。
 そりゃ、恋人欲しいよ?
 けど、仕事が忙しくてそれどころじゃないって言うのもあるしなぁ。

「私も、今は仕事が恋人で……」

「は、はは」

 それは失礼な事を聞きました。
 そう言い、源先生はあんみつ攻略に取り掛かる。

「あら、美味しいですね」

「そうでしょう? 近衛もここのあんみつはよく食べてまして」

 あの時は、どれくらい食べただろうか?
 相当量食べてたのは覚えてるが……。

「近衛さん?」

「ええ、ここは……」

 あれ?
 ここは近衛に教えてもらったって、言ってなかったっけ?
 ……言ってない気がするなぁ。

「本当に、ただの教師と生徒の関係なんでしょうか?」

「本当に、ただの教師と生徒の関係です」

 さっきの話が話だからなぁ。
 でも、源先生は笑ってるからそう気にしては居ないのかな?
 だと良いなぁ。

「怪しいですね」

「はは。近衛に聞いてもらっても良いですよ?」

「ふふ、そんな事はしませんよ」

 先生の事は信頼してますから、と。
 ぅ……。
 そう笑顔で言われ、頬を掻きながら視線を逸らす。
 むぅ、そう返されるとは予想してなかった。

「もうすぐお昼ですけど、どこかで食べますか?」

 良いお店聞いてますか、と。
 知っている、じゃなくて聞いているという所が、何というか。
 信頼されているのかそれともまた少し、違うのか。
 判断に迷うような聞き方だなぁ。

「どこか、美味しいお店知ってますか?」

「ふふ――女性をエスコートするのは、男性のマナーですよ」

「それは手厳しい」

 お茶を一口啜り、どこで食べるかなぁ、と。
 この辺りの店って、あんまり知らないんだよな。
 それこそ、近衛の方が良く知ってるだろうけど……聞く訳にもいかないだろ。
 どうするかなぁ。

「源先生は、和洋中どれが好きですか?」

「洋食……を良く食べますね」

 ……あんみつに誘ったの、失敗だったかな?
 そう思わなくはないが、今更どうしようも無いので、それは置いておく。
 ファミレスのパフェでも誘った方が良かったかもしれない。

「そういえば。先生、最近は料理の方はどうですか?」

「さっぱりです」

 思い出した、と手を小さく叩いてそう聞いてきた源先生に、即答で答える。
 言ってて情けないが、料理の腕は相変わらずなので、他に答えようも無い。

「料理の本片手に、毎日頑張ってますよ」

「あらあら。楽しそうで羨ましいですね」

「そうですか?」

 同居人には、不安がられてますけど、と。
 特に小太郎。
 文句言うなら、少しは手伝えと。
 月詠を見習え、月詠を。
 あいつは、今朝みたいに偶に手伝ってくれるからなぁ。

「最初は皆そうですよ」

「そうですか?」

 なんか、源先生は最初から簡単に作ってそうなイメージなんですけど。
 雰囲気的にというか、何と言いますか。

「私だって、最初は……まぁ、アレですよ。ええ」

「そうなんですか?」

「誰だってそうですよ」

 まぁ、そうは思いますけど……やっぱり、うん。
 なんだろう?
 源先生は、家事炊事は人並以上に最初から出来てるようなイメージがある。

「私をどう言う風に見てるんですか……」

「……えーっと」

「まぁ、そう言う風に見られるのはそう悪い気はしないんですけどね?」

 それは良かった、と胸を小さく下ろす。
 
「でも、そのうち先生もそう言う風に見られるかもしれませんね」

「はい?」

 自分がですか?

「仕事は真面目で、料理が出来る、って」

「料理出来ませんよ?」

「自分で作るようになりましたら、大丈夫ですよ」

「……そういうものですか?」

「そういうものです」

 そういうものなのかな?
 作っているこっちとしては、何というか。
 料理は難しいと思うし……正直、そう言われても自信が無い。
 それが顔に出たのか、小さく肩を震わせる源先生。

「今度、御馳走してもらおうかしら?」

「……勘弁して下さい」

 とても人様に出せるレベルじゃないです、と。
 そう言うと、今度は声を押し殺すみたいに笑われてしまう。
 むぅ。
 そんなに面白い事を言った覚えは無いんですけど。
 と、

「すいません、失礼します」

 その時、携帯が鳴る。
 誰だろうか?
 一言断りを入れて、携帯を取り出し……って。

「どうした、マクダウェル?」

『先生か?』

 ん?
 何をそんなに慌ててるんだ?

『そっちに変人が行ってないか?』

「あのなぁ、人をそんな風に言うもんじゃないぞ?」

 何回も言ってるけど、本当に直らないなぁ。
 最近は少しは大丈夫だと思ってたんだけど。

『ぅ……い、いや。それより、そっちにローブ姿の男は来なかったか?』

「いや、来てないけど……」

 一応周りを見回すが、それらしい人は居ない。
 ローブ姿って言うくらいだし、相当目立つだろうけど……。

「うん、そんな人は居ないな」

『そ、そうか……あ、あーっとな……』

「ん?」

 いや、電話口で口籠られてもだな……。

「マクダウェル? 良く聞こえないんだけど?」

『……とにかくっ、そいつから何か渡されたら、捨ててくれっ』

「?」

 いや、何が?
 って。

「……そこで切られてもなぁ」

 何の事だ?
 まったく話が判らないんだが?
 しばらく携帯を眺め……ま、そのローブ姿の人が来たら、聞けば良いか。

「大丈夫だったんですか?」

「どうでしょうか? 人が来たらとか言ってましたから、その人と会ったら聞く事にします」

 何を、とかは俺も判らないけど。
 なんだったんだろうか?
 今度会ったら聞くか。
 ……うーむ、しかし、見事に会話が切れたな。
 どうするかな。

「さて、と。それじゃ、見回りを再開しましょうか?」

「あ、大丈夫ですか?」

「ええ。これでも体力には自信がありますから」

 そうですか?

「あまり、無理はしないで下さいね?」

「ふふ――大丈夫ですよ」

 それに、その時はちゃんと言いますから、と。
 なら良いですけど……まぁ、そこまで俺が言う事でもないだろう。
 源先生なら、ちゃんと自分の事は判るだろうし。

「それでは、行きましょうか」

 そう言って、伝票を受け取り、会計を揃えて済ませてしまう。
 こういう時は、と。
 やっぱり、女性に出させるのはアレだし。

「すいません」

「いいですって。こっちこそ、いつも助けてもらってますから」

 今回くらいは奢らせて下さい、と。
 まぁ、小さな男の自尊心と言いますか。
 そう言って笑うと、苦笑を返される。

「それでは、今度は思いっきり美味しいお茶でも入れてあげますね」

「……それだと、また今度奢らないといけないですね」

「それじゃ意味が無いじゃないですか」

「確かに」

 堂々巡りですね、と。
 近衛お勧めの店から出て、小さく笑い合う。

「それでは、もう一頑張りしましょうか」

「そうですね」

 ……しかし、この人混みは気が滅入るなぁ。
 ま、源先生と2人だし、気分だけでも楽しく行くかぁ。




――――――チャチャゼロさんとさよちゃんとオコジョ――――――

「こんにちは、カモくん」

「ん?」

 誰だ? この白ローブの旦那は?

「ナンダ、御主人ト話シテタンジャネェノカ?」

「ええ、そうだったんですが」

 ? チャチャゼロさんの知ってる人?
 ってことは、姐さんの知り合いかな?

「どちらさまですか?」

「おや、可愛らしい妹さんですね」

「ツイ最近ニナ。ソレヨリ、何デコンナ所ニアンタが居ルンダ?」

「いえ、コレをある人に渡してもらおうかと」

 そう言って、オレっちに一枚の写真を……って。

「姐さんじゃねぇっすか」

「ええ、先ほど、それを渡しに行ったのですが……」

 私も、馬には蹴られたくありませんので、と。
 なんだそりゃ?

「うわー、エヴァさん可愛いですねぇ」

「そうでしょうそうでしょう」

 んで、なんでそんなに嬉しそうなんだ?
 良く判らん人だなぁ。
 その写真をさよ嬢ちゃんから受け取り

「で、誰に渡せば――」

 …………さ、殺気!?

「それでは」

 って、消えたし!?

「誰に渡せば――ぶぎゅ」

 踏まれた。
 ……姐さん、オレっち何かしたかい……?


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