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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 6話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 10:03

「大丈夫ですか、ネギ先生?」

「ぁぅ~……はい」

 教師がなんて声出してるんですか。
 まぁ、しょうがない、とも言えるのかもしれないが。
 アレから数日経ったが、どうにもネギ先生周囲の状況は改善されていない。
 住まいはそのままだし、授業内容もそのまま。
 神楽坂との関係は多少――本当に多少改善されたようだけど。
 ちょうど一緒に授業が無かったんで、少し話でも聞こうかと校舎外の広場で黄昏ていたネギ先生に話しかけてみる。
 ちなみに、職員室の窓からその小さな背中は丸見えで、生贄に捧げられた感じがしないでもない。
 あんな小さな背中で黄昏られたらなぁ……。

「あ、先生」

「……何を悩んでるんですか?」

 俺と気付かずに返事したのか。
 相当追いつめられてるなぁ……まぁ、この歳で異国に一人ぼっちじゃ、当然か。
 俺だったら、きっと不安で押し潰されてしまうだろう。
 というか、この歳になっても、誰も知らない所に一人とか……きっと勇気が要るだろうし。
 その隣に腰を下ろし、持っていた缶の紅茶をどうぞ、と渡す。

「いえ、アスナさんにまた酷い事をしてしまいまして」

「……まぁ、神楽坂は根は良い奴ですから、許してくれますよ」

 長引くかもしれませんけど、とは心の中で。
 まぁそれもしょうがないかな、とは思ってしまう。
 いきなり同室に、子供とは言え男の子が入って来たのだ。
 きっと、近衛みたいに受け入れてくれる方が珍しいと思う。
 まぁそれでも、学園長の決定だから……神楽坂にはもうしばらく我慢してもらわないとなぁ。
 何とか改善できると良いんだが。

「近衛とはどうです?」

「木乃香さんですか?」

 ええ。
 近衛は面倒見も良いし、確か自炊していたはずだ。
 話の聞き方として食べ物からでも、まぁ良いだろ。
 神楽坂から聞いたら、話が進まない可能性だって低くは無いだろう。

「朝ご飯とかは近衛が作ってるんじゃないんですか?」

「そうなんですよ。木乃香さん、アスナさんと同い年なのに凄く料理が上手なんです」

「そうなんですか?」

 でも、想像はつくなぁ。
 雰囲気的に……和食が良く似合いそうだ。

「はいっ、和食もそうですけど、洋食も凄く上手なんです」

「ほー。それは羨ましいですね」

 近衛とは仲が良いんだな。
 と言うより、近衛とは仲は悪くないんだな。
 ……いや、神楽坂の反応が普通だって判るんだけどさ。

「そうだ、今度先生も食べてみませんか?」

「は、はは……自分は遠慮しときますよ」

 流石に、生徒に食事を作ってもらうのは抵抗がある。
 それに、何度も言うが神楽坂と近衛は女子寮住まいなのだ……普通は男は入れん。
 そこはいくら教師だろうと、越えてはならない一線だ。

「そうですか……?」

「ええ」

 ついでに、半端に断ったらどうなるか判らないので、きっぱり断っておく。
 今度、とか言ったらこの先生の事だ、自分で話を進めかねん。
 そして、そうだ、と一言区切り、

「悩んでたようですけど……神楽坂の方とは、上手くいってないんですか?」

「……はい。さっきの時間なんですが、アスナさんの為に、って思って授業で当てたんですけど」

 授業で当てられて、問題を解けたら気持ちいいじゃないですか、と。
 いや、判りますけど――神楽坂相手には、どうだろうなぁ。
 多分、今の英語の範囲だとヒント無しじゃ難しいんじゃないだろうか?
 それで悩んでるのか。

「まぁ……考えは、間違ってないと思いますよ?」

「そうですか? でも、怒られました」

 そうですか、と。
 というか、いくら当てられたからって、教師を怒るのもどうかと思うけど。
 ……しばらくは、その辺りも注意しておかないといけないか。
 でも、まずは言っておかない事があるので、そっちを言うか。

「神楽坂、問題解けなかったんじゃないですか?」

「はい。基本的な訳で、誰でも分かる問題だったんですけど……」

 いや、その考えはどうかと。
 確かに――天才、なんだろうな。
 だから、分からない人が何で“分からない”のか気付けないのか。
 全部分かるっていうのも、問題なんだろうなぁ。

「そうですねぇ」

 なんて言えば良いかな……。

「英語は苦手なんで、偉い事は言えないんですが……」

「はい」

「ネギ先生は日本語を勉強する時に、どういう風に勉強しましたか?」

「単語の意味を調べて覚えました」

 ……簡単に言うなぁ。
 まぁ、いいけど。

「書き方は?」

「それはもちろん、書いて覚えました」

「どんな風に?」

「えっと……辞書で調べてです」

「何度も?」

「え、ええ」

 でしょ、と。

「神楽坂はきちんと単語を読めて、意味を理解してましたか?」

「いえ……訳も、読み方もバラバラでした」

 でも、最近の小テストを見る限り点数は以前より上がってきている。
 つまり、神楽坂達は書く事は、出来るのだ。
 多分源先生がそういう方針で教えていたんだろう。

「それで、どうすれば良いんでしょうか?」

「さっき、自分で言ったじゃないですか」

「え?」

 勉強は、凄く難しくて、ある意味凄く単純だ。
 覚える事も学ぶ事も多い――けど、覚え方も学び方も復習しかないのだ。
 一度で覚えれる人間だって、忘れるから復習する……んだと思う。

「勉強は復習ですよ。何度も書いて、日本語を覚えたんでしょう?」

「あ」

「神楽坂は読めないんでしょう? なら、何度も読ませましょう」

 まぁ、辞書片手でも良いんですけど、教えた方が感謝されるかもしれませんね。
 それに、時間も掛らないでしょうし。
 そこは神楽坂次第だけど……あの子はやり方さえ分かれば、結構覚えは良いからなぁ。
 そう言うと、ネギ先生は判りやすいくらいに嬉しそうだった。

「そ、そうかっ」

「でも、神楽坂ばかり当てても駄目ですよ?」

「はっ!? そ、そうですね」

 分かり易いなぁ。
 でも、その方が年相応で良いのかも。

「英語は源先生が自分より詳しいですから、授業の進め方で判らない所があったら聞いて下さい」

「はい」

 これで明日は大丈夫……かな?
 頭は良いらしいから、他のクラスでもちゃんとやれるだろ。
 さて、と

「ぁの、ネギ先生」

 ん?

「どうしたんですか、早乙女ハルナさん?」

 あ、呼ぶ時はフルネームで呼んでるんだ。
 声を掛けてきたのは早乙女に宮崎、綾瀬の3人だった。

「あ、用があるのはこっち。ね、のどか」

「あ、ああの。今日の授業で、判らない所が……」

 落ち込んでた割には、授業はきちんと進めてたのかな?

「あ、先生はこっちねー」

「こっちです」

「あー、はいはい」

 早乙女と綾瀬に引かれ、ネギ先生達より少し離れた位置で、ストップ。
 声はギリギリ聞こえる範囲――そこにあったベンチに腰を下ろす。

「で?」

「先生、馬に蹴られたいですか?」

「そういう事ね」

 この前の歓迎会で妙に仲良かったけど、宮崎の琴線にネギ先生が触れたのか。
 まぁ、幼くて可愛らしいからなぁ。
 生徒と教師が、とは思うけど……まぁ、こう言った事もあった方がクラスには馴染みやすいか。
 しばらくは様子見、の方が良いかもな。

「ネギ先生の授業、どうだ? 分かり易いか?」

「楽しいよ」

「そうか」

 答えになって無い答えに納得し、綾瀬へ。

「綾瀬はどうだ?」

「……少し」

 はいはい、目を逸らさずに言ってくれ。

「ネギ先生、自分の意見だけ言ってどんどん先に進むです……」

 なるほどなぁ。こっちが理解する前に、要点だけ言って終わってしまってるのかもな。
 そっちは明日からは大丈夫だと思うが。

「それもネギ先生に言っとくよ」

「え、えっ」

「別に陰口って訳でもないんだし、そう驚かなくてもいいだろ」

 授業に不満があるのは、教師の問題だ。

「ネギ先生だって、教師は初めてなんだ。悪い所は悪い、分からない所は判らないって、そう言ってやらないと」

「ぅ……」

「誰だって、自分の悪い所なんて誰かに教えてもらわないと気付かないもんだ」

 そう縮こまらないでくれよ。
 俺が怒ってるみたいに感じるんだが。

「大丈夫大丈夫、綾瀬の名前は出さないから」

「はぁ」

「真面目だねぇ、先生」

「先生だからなぁ」

 その後二三喋っていたら、向こうの宮崎がネギ先生に会釈していた。
 お、向こうも落ち着いたか?
 こっちに駆けてくる宮崎に二人も気付き、立ち上がる。

「んじゃなー」

「先生、また明日」

「またです」

「おー」

 三人の背中を目で追い、ネギ先生の元に行く。

「何やってるんですか?」

「え!? あ、いえ」

 何故そんなに驚きますか。
 何か探していたのか、手荷物のバッグに手を突っこんだまま、少し慌てているネギ先生に、訝しげな視線を向ける。
 どうしたんだろう?

「宮崎と何話してたんです?」

「あ、授業で判らない所があったらしくて」

 そうですか、と。

「そ、それじゃこれで。相談に乗ってくれて、ありがとうございましたっ」

 って。

「足早いなー」

 ……職員室、そっちじゃないんだが。
 はぁ――呼びに行くか。







「それで、なにやってたんですか?」

「え、えーっと、ですね」

 何を急いでたかと思えば、草むらに隠れて実験していた。
 実験である。草むらで火を使ってるのである。

「火事になったらどうするんですか」

「あ、はは……」

 まったく。

「没収です」

「ええっ」

 当たり前でしょうが。
 使っていた道具をネギ先生のカバンに詰め込んでいく。

「危ないでしょうが」

「も、もうしませんからっ」

「そういう問題でもないでしょう……」

 はぁ。
 また、頭が痛くなってきたよ。

「本当に必要な時は言って下さい、返しますから」

 別に触ったり、漁ったりもしません、と一応言っておく。
 ……出来れば持ち物検査したいところだが、流石にそれはやり過ぎだろう。

「ひ、必要なんです」

「どうしてですか?」

「アスナさんの為に……です」

 神楽坂?

「神楽坂が何か頼んだんですか?」

「い、いえ……そうじゃなくてですね」

 そうだったら、神楽坂に一言言わないといけない所だったが、違うらしい。

「……ネギ先生」

 溜息は、我慢。

「次の授業の準備もしないで、遊ばないで下さい」

 あまり言いたくなかったが、強く言ってしまった。
 そう言うと、まるで怒られる子供のように首を竦められてしまう。
 ……いや、子供なんだけどさ。

「だ、だって」

「どうして、こんな事をしたんですか?」

 深呼吸して、気を落ちつける。
 まぁ――この後どうするにしても、理由は聞かなきゃならんだろう。
 悪い事は悪いって言っておかないと、いけないし。
 流石に、良識の分別くらいはあるとは……思うし。

「その……アスナさんって、タカミチの事が、好きらしいんです」

「はぁ」

 ネギ先生も高畑先生の事そう呼ぶのか。
 それで、と先を促す。
 ……正直、苛めてるように周りから見えるんじゃなかろうか?

「それで、お手伝いできるように……ですね」

「あのですね、ネギ先生」

 目頭を、指で押さえる。
 根本的に、間違ってる……その事に、気付いてない。

「教師と生徒の恋愛に、貴方が手を出してどうするんですか……」

「え?」

 普通、止める事はあっても、手を貸そうとはしないと思うんだが。
 生徒指導の新田先生が最近疲れるわけだ……。
 その苦労が、少しだけだろうけど、判った気がした。

「大体、高畑先生と神楽坂……どれだけ年の差があると思ってるんですか?」

「え――でも、アスナさんは」

 まぁ、確かに判り易くはあるけど。
 好きだからって、何でもして良い訳じゃない。
 生徒と教師。
 これは、確かな問題なのだから。
 本人達がどうであれ……世の中は、きっと良く思わない。

「別に、止めさせろとは言いません――けど、手を貸しちゃ駄目です」

「そんな……」

「当たり前でしょうが」

 高畑先生、クビになるぞ。そんな事になったら。
 しかも、結構不名誉な肩書つけて。

「アスナさんに……」

 ん?

「アスナさんに、失恋の相が出ているんです」

「……占いも出来るんですか?」

 何でもありだな、この子。
 はぁ、と先を促す。
 しかし、占いでも駄目なのか、神楽坂は……。

「それを言ったら、怒られたんです」

 そりゃ怒るわ。

「だから、もしタカミチと上手くいったら――仲良くしてくれるかも、って」

「先生……」

 そりゃ、神楽坂と仲悪くなるよなぁ。
 まぁこっちは子供だから、この問題はあっちに折れてもらうしかないんだが。
 どうにも、この先生が空回りして神楽坂を何度も怒らせてるのか……すまん、神楽坂。
 心中で謝っておく。気付かなくて済まなかった。

「貴方は先生になりたいんですか?」

「え?」

「先生になるために、麻帆良に居るんじゃないんですか?」

 そうですっ、と力一杯答えられた。
 でしょう、と。

「神楽坂の先生になりたいのか、神楽坂と友達になりたいのか……今の先生からじゃ判りませんよ」

「……え?」

 先生と友達は、違いますよ、と。
 まったく。
 ネギ先生の荷物を詰め終え、立ち上がる。

「そんな事してる暇があるなら、教師としてやる事をやって下さい」

「……は、はい」

「生徒が言ってましたよ。先生の授業はこっちが分かる前に先に進むから、理解できないって」

 その顔が、曇る。
 俺も新任の時はこうだったんだろうなぁ。
 まだ3年目だけど、妙に歳とったように感じるのはなんでだろう。

「もっと授業内容を考えるとか、先生としてやる事があるんじゃないですか?」

「はい」

「そうやって担任として見てもらえるように努力すれば、きっと神楽坂とだって仲良く出来ますよ」

 大丈夫です、自信を持って、と。
 前の学校を飛び級で卒業したんでしょう?

「この荷物は、放課後まで待っていて下さい。すぐに返しますから」

「あ、杖は……」

 ん?

「父の、贈り物なんです」

 ……あー。

「じゃあ、杖だけ……けど、これも出来れば職員室に置いておいて下さいよ?」

「はい、分かりました」

 本当かなぁ……まぁ、大丈夫だと信じよう。

「それじゃ僕、授業の準備してきます!」

 そう言って駆けていく背を目で追い――溜息。
 せ、説教してしまった……新任の、しかも子供の先生に。
 自己嫌悪である。
 もう少し言い様は無かったんだろうか……あーーー。

「先生、ありがとうございましたっ」

 その元気を、少し分けてもらいたいなぁ。
 はぁ。







 えー……誠に残念である。
 最初にそう一言言い、

「それでは、毎度恒例の放課後居残り勉強を始めるぞー」

「恒例ってなんですか!? 失礼なっ」

「……え? アスナさん達は毎回だって」

 はい、こっちを見ないで下さいネギ先生。
 神楽坂ー、先生が言ったんじゃないぞ、それは。
 ちなみに毎回と言われたのは神楽坂たち、5人衆である。
 今回はそれにマクダウェルが加わっている。さっき、絡繰に頼んで連れてきてもらった。
 その絡繰はマクダウェルの後ろに控えているだけで、この勉強会には一応の不参加と言う扱いで。

「良いからさっさと始めろ」

「そう怒るなよ、マクダウェル」

 ちゃんと勉強しないお前が悪いんだからな?
 俺はちゃんと勉強しろって言ってたのに。
 ――俺だって、まだまだやる事残ってるんだぞ……。

「ちなみに、プリントは数学と英語を用意していますので、出来た人から帰って良いです」

 そう言ってプリントを配るネギ先生を目で追い、クラス名簿に目を落とす。
 ……何時の間にあの先生は、落書きしたんだ?
 後で怒らないと。
 はぁ、修正液で消すのもなぁ。
 これ、どうしよう?
 新しいクラス名簿って、誰に言えば良いんだろうか?
 事務所?

「一度解いてみて下さい。分からなかった所は、後で皆さんと一緒に勉強しましょう」

「何点以上で合格アルか?」

 はい、毎回こっち見るのは止めて下さい、ネギ先生。

「6点以上ならそのまま帰って良いが……それ以下だったら居残り勉強会な」

「だそうです。それじゃ、はじめて下さい」

 ……あ、そうだ。

「マクダウェル」

「なんだ?」

 それなりに真面目に問題を解いているその机に、一枚プリントを置く。

「国語」

「殺すぞ、キサマっ」

「女の子がそんな言葉遣いはどうかと思うぞー」

 だってしょうがないだろうが。
 お前数学も英語もそれなりに取ってるけど……一番の問題はコレだし。

「どうして私だけ一教科多いんだっ」

「いや、数学と英語は問題ないだろうから」

 喜べ、新田先生の手書きだぞ、と言ってもその目は親の仇を見るソレである。
 いや見られた事無いけど。
 とりあえず、怖いからやめてくれ。
 お前は本当に中学生か?

「マスター、落ち着いて下さい」

「……茶々丸、お前は先生の味方か?」

「いえ、皆さん見られております」

「……ちっ」

「それに、マクダウェル一人じゃない」

「なに?」

 教師に向けて舌打ちする生徒って一体……。
 そのまま次は神楽坂に

「すまんが、神楽坂もだ」

「え、私も!?」

 しょうがないだろ、点数悪いんだから。
 ちなみに、国語の追加はこの二人だけである。

「それじゃ、頑張ってくれなー」

 …………………
 ……………
 ………

「ふむ、綾瀬は帰って良いぞー」

「はいです」

 真面目に授業受ければこのくらいの点数は取るんだな。
 ちなみに、綾瀬夕映は入学当初のテストで結構な高得点を取ってたりする。
 それがなんでこんな補習組の常連になってるのかは、ちょっと分からないが。
 うーん……もう少し頑張ってくれないかなぁ。

「なぁ、綾瀬」

「勉強は嫌いです」

 そうか……。
 もう言われる事も予想済みか……。
 それはそれでどうかと思うけどさ。

「出来た方が、何かと都合が良いと思うんだけど?」

「……勉強の時間より」

 チラリ、と教室の外――宮崎と早乙女、近衛の部活動仲間たち、か。
 はぁ。

「ま、そういう約束だしな。帰って良いぞー」

「はい、ごめんなさいです、先生」

 謝るくらいなら勉強してくれ、と言いたいところだが……ま、友達も大事だよな。
 高校からでも――まぁ、その時はその時か。
 教師としての考えじゃないかもしれないが、この麻帆良に……2-Aに居る間くらいは。

「相談とか、勉強の事で分からない事があったら、何時でも来ていいかなら」

「――すみませんです」

 おー。

「長瀬とクーフェイと佐々木は、英語か」

「……………」

「……………」

「……………」

「はいはい、笑って固まってないでネギ先生に聞いてこい」

 採点したテストを返し、困ったように固まってるネギ先生を指差す。
 でもまぁ、数学は合格点いったから、別に俺から言う事は無い。

「で、だ」

「なんだ?」

「えーっと、何でしょうか?」

 不貞腐れてるマクダウェルと、妙に卑屈な神楽坂の二人を見る。
 ああ、そうだろうな。

「勉強するか」

「……ふん」

「……はい」

 神楽坂は、全滅。
 それはまぁ、言っちゃあ悪いが、分かってた。今までの事から。
 でも、惜しかったけど。凄く、惜しかった。
 5点ばかりとか、良く頑張ったよと褒めたいくらいだ。
 次はやれるな、うん。やっぱりやれば出来るんだよ、ウチのクラス。
 しかし、

「マクダウェル」

「なんだ」

「……国語はともかく、何で数学……この点数なんだ?」

「知らん」

 お前、前はそう悪くなかっただろうが。
 まったく。嫌がらせか?
 こっちは毎回の小テストの結果はちゃんと知ってるから、分かるんだぞ?

「ま、いいか」

 間違えてる所は、神楽坂とほぼ一緒だし。
 復習ついでに一緒に教えよう。
 国語の方は、間違えた漢字を10回ずつ書き写させる事にする。きちんと読み付きで。

「やれば出来るんだから、頑張ってくれよ」

「そう言ってくれるのは先生だけだよー」

 そんな事は無いと思うが。

「ネ、ギ……先生なんて、バカなんて言うんですよっ」

「分かった分かった、落ち付け」

 それは後でちゃんと言っておくから。
 しかし、生徒をバカ呼ばわりとは……神楽坂と同室だから、慣れ合いがあるのかもなぁ。
 注意しとかないと。

「んで、ここが……っと。マクダウェル、解いてくれ」

「何で私が」

 お前が手を抜くからだろうが。
 自業自得だ。

「絡繰、バイトとかは大丈夫なのか?」

「はい、問題ありません」

 なら良いんだが……ずっと後ろに立ってるし。

「席に座って待ってて良いんだからな」

「先生。それは私のセリフだ」

「別に誰が言っても良いだろ……出来たのか?」

「ああ、ほら」

 差し出されたプリントには、ちゃんとした正解が書かれていた。
 公式も……うん、問題無し。

「やっぱり出来るじゃないか。神楽坂、この公式は覚えてるな?」

「はぁー、エヴァちゃんが凄い」

「ふん――って、誰がエヴァちゃんだ、神楽坂明日菜っ」

 はいはい、そう怒るなよ。

「良いか、神楽坂」

「なに、先生?」

 うーん。

「バイトが忙しいのは、知ってるんだが……復習はちゃんとやってるんだろ?」

「え? うん」

「前は2点とか3点だった問題が、今日はいきなり5点だ。頑張ってるじゃないか」

「……そんなに悪かったのか、バカレッド」

「うっさいっ」

 はぁ。

「そうバカとか言うもんじゃないぞ、マクダウェル」

 まったく――相変わらず口が悪いなぁ。

「ふん――」

「次は一発合格、頑張ってくれよ?」

「は、はいっ」

 素直だなぁ、神楽坂は。
 それに比べて、マクダウェルは。

「今、失礼な事を考えただろ?」

「まさか」

 プリントを集め、それを綺麗にまとめる。
 今日はこんなもんだろう。
 一気に詰め込んでも、覚えれるか不安だし。

「それに、神楽坂は覚えは悪いが馬鹿じゃない」

「えー、そうかな?」

 自分で馬鹿を肯定しないでくれ、頼むから。
 苦笑して、違う、と答える。

「ちゃんと点数上がってきてるだろ? これからも復習をちゃんとすれば、テストでも点数取れるさ」

「そうかな?」

「ああ。次の期末は、きっと大丈夫だ」

 えへへ、と笑うその顔には、少しの自信。
 今まで悪かったから、次は神楽坂にとって大事なテストだなぁ。
 この自信が実を結べば、この子だって大丈夫だと思うんだが。

「本当にそう思う?」

「おお。担任外れた後だけど、高畑先生もきっと見直してくれるぞ」

「そ、そっかな?」

「あの朴念仁が褒めるなんて、相当だな」

「や、やっぱりそう思う、エヴァちゃんっ」

「だからそう呼ぶな、神楽坂明日菜っ」

 しかし、判り易い。
 微笑ましい、とも言えるんだけど。

「マスターが楽しそう」

 だなぁ。
 絡繰の小さな呟きに、心中で同意しておく。
 もしかしたらマクダウェル、人付き合いが苦手なだけじゃなかろうか?
 口は悪いけど、神楽坂とかだとウマが合うのかもな。
 その口喧嘩とも言えない言葉遊びを聞きながら、ネギ先生の方を見る。

「ネギ先生、そっちはどうです?」

「はい、こっちももう大丈夫だと思います」

 んじゃ、帰りますかー、と。
 さて……まだこの後明日の準備とか残ってるんだよなぁ。
 はぁ。





――――――エヴァンジェリン

「ご苦労様でした、マスター」

「ふん」

 別に、あんなのはどうという事も無い――と、言いそうになり、溜息を吐く。
 何をやってるんだ、私は。
 ……補習だなんて。
 15年通って、初めてだぞ……はぁ。

「まったく……この私が」

 先生から来るように言われたとはいえ、ナギの息子に不用意に近付いてしまうとは。
 この先の計画のためには、あまり存在を覚えられない方が良いというのに。

「全部あの先生の所為だ」

「何がでしょうか?」

「……なんでもない」

 ふん。
 憎らしいほどに、私に関わってきおって。

「大体、お前はどうしてあの先生の言う事を聞くんだ?」

「彼は教師で、マスターは生徒ですので」

 正論ではあるが、何か違わないか?
 私はお前のマスターなんだが……コイツの中ではあの先生はどうなってるんだ?
 まぁ――今はどうでも良いか。

「あ、エヴァちゃん」

「…………そう呼ぶなと何度言えば分かる、神楽坂明日菜」

「マスターが楽しそう」

 何処をどう見ればそう見えるんだ、このボケロボは。
 今度、葉加瀬に視覚関係を診せるか?

「はぁはぁ」

「……そんなに急いでどうしたんだ?」

 ネギ先生と一緒に戻るんじゃなかったのか?

「そうなんだけど、えっと」

 なんだ?

「今日はありがとね、エヴァちゃん」

「……何がだ? 主語を話せ、神楽坂明日菜」

 お前と話してると頭が痛くなりそうなんだが。
 軽い頭痛を感じ、目頭を押さえる。

「ほら、放課後の勉強会。勉強教えてくれたじゃない」

「ああ」

 別に礼を言われるような事はしていないがな。
 ただ単に、先生に聞かれた事を答えただけだ……説明もさせられたが。

「私は何もしてないぞ?」

「ううん。すっごく助かったわ」

「…………そうか」

「ネギの奴より、ずっと分かり易かったわ」

 そうかい。それは良かったよ……ったく。
 しかし、こんな遅くまで残らされたのに、コイツは本当に能天気だな。
 私はこんなにイライラしてるのに。

「言いたい事はそれだけか?」

「うん。それじゃまた明日ね、エヴァちゃん」

 はぁ。

「神楽坂明日菜――私を、二度と、エヴァちゃんなどと、呼ぶな」

 この私を。真祖の吸血鬼を、闇の福音を、ちゃん付けなどと――。

「分かったわ、エヴァ」

「……はぁ」

 疲れる。
 バカの相手は本当に疲れる……。

「わかった、もういい。もう良いからさっさと帰れ」

「うん。それじゃね、エヴァ。また明日」

 ………………。

「おい、茶々丸」

「なんでしょうか」

「アイツは馬鹿か?」

「いえ、覚えが良くないだけだと伺っております」

 ……ふん。

「茶々丸、アレは真性の馬鹿だ」

 ただの人間が、私の名を呼ぶか……まったく。
 今日はどうにも、気に障る事ばかりだ――。

「マスター、楽しそう」

「どうやら本格的に、葉加瀬に診せる必要がありそうだな」

「その必要はありません。定期の診察まであと1週間あります」

 ふん。

「おい、先生は?」

「明日の教材の準備があるそうです」

「……なら、帰るぞ」

「分かりました」

 夜の闇に包まれはじめた校舎を見る。
 もうどこの部活も終わったのだろう、電気が付いているのは職員室だけ。
 先生は、そこだろう。

「――ふん」

 そんなに仕事ばかりして、何が楽しいのか。
 私は理解に苦しむよ。


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