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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/27 22:47
 大会も終わったようで、会場から出ようとする観客の人達とは逆に、会場に向かって歩く。
 しかし――どれだけの数の客数なんだろうか?
 まさに人波といった感じなんだが。

「大丈夫ですか~」

「月詠こそ大丈夫かー」

 俺より小さいんだから、と。
 ……まぁ、余計なお節介なのかもしれないけどさ。
 というよりも、すいすい進んでいってるみたいだし。
 時々見える小さな頭が、何とか月詠の今居る場所を教えてくれる。

「こっちは大丈夫ですよ~」

「お、すまん」

 ついで、人の流れが少し緩い方向を教えてくれる。
 そのまま、月詠の誘導に救われながら人波を何とか抜ける。
 ……抜けた時には、少し息が上がってしまってたけど。

「はー……疲れたぁ」

「まだ会ってもいませんのに~」

 だなぁ、と。
 まったくもってその通り。
 さて、と。

「急いで探すか」

「ですね~」

 まだ会場の方に残っている人が居るのだろう、少し向こうが騒がしい。
 また人波に揉まれたら、今度は攫われてしまいそうだし。
 とりあえず、人が少ない所に行くか。
 というより、役員室を探した方が良いのかな?

「どの辺りに居そう、っていうのは……」

「あー、すみません~」

「だよなぁ。ま、一通り見て回るか」

「はい~」

 しっかし、これだけ広いんだ。
 どれだけ時間が掛るかなぁ、と。
 ま、大体はこういう時は裏方だから、奥の方だよな、と。
 適当に目星を付けて、それっぽい方に足を向ける。

「勝手に入って良いのかな?」

「今更ですえ~」

 確かに、入ってしまってから聞く様な事じゃないよな。
 一応、土足は大丈夫という事だけは確認しておく。
 最低限の礼儀というか、最後の良心というか。
 ……まぁ、最悪。
 役員の方に見つかっても、教師だからという言い訳があるんだが。
 あんまりそう言うのは好きじゃないので、できればその前に超を見つけたい所だ。
 2人ならんで、誰も居ない渡り廊下……みたいな所を歩く。
 しかし、良い景色だなぁ。
 こんな風景を眺めながら時間を潰せたら、きっと良い休日になるんだろうなぁ、と。
 そんな事を考えていた時だった。

「おヤ、先生?」

「おー、丁度良かった」

 丁度、前を超が歩いてきた。
 良かった良かった。
 他の人に会う前に会えて

「丁度良かった?」

「ああ。昨日の続きを話したくて、探してた所だった」

「……あー」

 そう言うと、困ったように視線を逸らされてしまった。
 あ、何か都合悪かったかな?

「時間、忙しいか?」

「んー……そうではないがネ」

 何かあったのかな?
 少し歯切れが悪いと言うか、周りを気にしてるのかキョロキョロと見ているし。

「お兄さん、少し場所を変えた方がええですよ」

 そう、小声で月詠から言われた。
 あ、そうか。
 ここだと誰が通るか判らないもんな。
 いかんいかん。気を付けないとな。

「超、どこか話せる所はあるか?」

「あー。良いのかな、先生?」

「ん?」

 何が?
 そう聞くと、溜息を返された。
 ……なんか変な事言ったかな?
 俺は、超から話を聞きたいだけなんだけどなぁ。

「いや。私の事を聞いているんじゃないのかナ?」

「ああ」

 未来人だ、って事だよな。
 聞いてる、と。
 そう答えると、また溜息。
 ついで、右手で顔を隠すように押さえる。

「先生。私は今――麻帆良の魔法使いを敵に回そうとしてるんだがネ?」

「その事を聞こうかと思ってるんだけど……」

 やっぱり教師だし、そう言うのは言い辛いか? と。
 そう聞くと、また溜息。

「確かに、先生と話しの場を設けるのはやぶさかではないが、だ」

 その視線が、俺から逸れ、隣へ。
 月詠?

「月詠さんは危険すぎるネ」

「そうか?」

 何もしないぞ、と。
 そう言うと、小さく笑われた。
 手で口元を隠すようにして。

「そうかナ?」

「はい~。今は無害ですよ~」

「ほら」

 まぁ、その手には二本の竹刀袋が握られてるけど。
 それだって、自衛用だし。
 袋から出さなければ、そう危険でもないと思う。

「はぁ。ま、いいか」

 そして、また溜息。
 今度のは、小さな苦笑交じり。

「こっちネ。まだ、誰にも聞かれたくない事だしネ」

 そう言って、こちらに背を向ける。
 その背を追うように歩き出し、その隣に並ぶ。

「なぁ、超?」

「どうかしたかい、先生?」

 んー……。
 何と言えば良いだろうか?
 大体、こういった事は人生初めてだからなぁ。

「今日の大会、どうだった?」

「…………判ってて、聞いてるのカ?」

 無難な所を聞いてみたが、小さく睨まれてしまった。
 あれ? なんか変な事聞いた?
 いや、そんな事無いと思うけど……と自問自答。

「優勝は、良く判らない魔法使いだたヨ」

「魔法使い?」

 超が良く判らない、って。
 麻帆良の外から来た魔法使いかな?
 ……麻帆良の外に、魔法使いが居るかは知らないけど。
 これだけ大きなイベントを起こして、魔法使いを巻き込んだんだし。
 麻帆良の魔法使いは、ある程度知ってるような気がしてたんだけど。

「白いローブで顔を隠した、ネ」

「あー」

 もしかして、図書館島で会った人かな?
 思い浮かぶのは、マクダウェルの友人だと名乗ったあの男の人。
 マクダウェルやネギ先生も出場してたんだし、もしかしたら、あの人物凄く強いのだろうか?
 見た目、そんな感じしなかったんだけど。
 ……人は見掛けによらないもんだ、としみじみ思ってしまう。
 まぁ、それを言ったら超と月詠もだけど。

「知ってるのカ?」

「図書館島で話した……人だと思う」

「ふぅん。どんな事を話したのかナ?」

 ん?

「いや、マクダウェルの写真を渡された」

「エヴァンジェリンの?」

 ああ、と。
 まぁ、流石に見せるのはあまり良くないだろうから、見せないけど。
 そう言えば、あの写真どうするかな。
 後で絡繰に渡すか。
 マクダウェルに渡したら、あの照れ具合から、本気で捨ててしまいそうだし。
 ……少し時間が経ってから、渡してもらうように言っておこう。

「そう言えば、先生。エヴァンジェリン達とはどの程度交流があるのかナ?」

「交流って……別に、そうないと思うが」

 どうだろうか。
 弁当を一回と、朝食の世話をしてもらったのは……うーむ。
 アレはあまり思い出したくないなぁ。
 いや、嬉しい事だけどさ。
 だけど、やっぱり教師としては、素直に喜べないと言うか。
 教師だから、喜べない、というか。

「どうかしたかイ?」

「んー……まぁ、絡繰には、良く世話になってるなぁ、と」

「そういえば、そうだたネ」

 そういえば?
 あれ、話したっけ?
 ……してないよなぁ。

「絡繰から聞いたのか?」

「そんな所ネ」

 そう聞くと、肩を竦めて答える超。

「よくもまぁ、あそこまで育ててくれたネ」

「……ん?」

 育てて?
 そういう言い方は、普通しないよな。

「さ、ついたネ」

 そう言って一つの部屋の前で立ち止まる超。
 ……何の立札もないから、ただの空き部屋かな?

「ここから、私の秘密基地に行けるヨ」

 そう言って、ドアを開ける。
 秘密基地?
 その部屋の中は、何と言うか……物置部屋、と言うべきか。
 乱雑に置かれた物は、どれもそれなりに埃を被っている。

「埃っぽいですよ~」

「我慢するネ」

 月詠の講義を、一言で切り捨て、そのまま部屋に入る超。
 それを追って、俺と月詠も部屋へ入る。

「ほら。口元に当ててろ」

「ありがとうございます~」

 ハンカチを月詠に渡す。
 まぁ、無いより少しはマシだろう。
 しかし、月詠じゃないけど埃っぽい。
 
「……はぁ」

 また、超から小さな溜息。

「私が言うのもなんだガ――もう少し警戒してくれると、やり易いんだがネ?」

 これでも、私は悪人なんだが、と。
 そう言われてもなぁ。

「今日は話し合いに来たんだしなぁ」

 それで警戒すると言うのも……まぁ、正しいのかな?
 一応、超は魔法使いの敵らしいし。
 ……でも、俺は魔法使いじゃないのか。
 そんな事を考えていたら、乱雑に置かれていた物の一角を、超が崩す。
 ソコには。

「床下?」

「そ。ここから地下に続いてるネ」

 ……うーむ。
 さすが秘密基地と言うだけの事はあるなぁ。
 まさか地下とは。
 板張りの床に、さらに四角の切れ込みが入った場所があった。
 そこだけほこりが積もって無いので、恐らく最近よく使っているのだろう。
 子供の頃、そう言ったのに憧れた記憶はあるが――地下とは考えなかったなぁ。
 そして、一つボタンのついた機械を取り出し、そのボタンを押す。
 そうすると、切れ込みがせり上がり……地下に続く梯子が現れる。

「むぅ」

「怖気づいたカ?」
 
 ん? いや、そんな事は無いけど……無いけど。

「いや、生徒が地下に秘密基地とかってなぁ……」

 何と言うか。
 非常に複雑な気分だ。

「はぁ……先生の相手は疲れるネ」

「まったくですね~」

 ……非常に、複雑な気分だ。
 何故に超だけじゃなくて、月詠からも溜息を吐かれなければならないのか。
 そんなに変な事言ったか?
 普通驚くだろ、秘密基地。
 それともアレか?
 俺が超を警戒してないからか?

「お兄さん? 普通は、もっと驚く所ですえ~」

「……それも少し違うヨ」

 2人して、超から駄目出しされてしまった。
 うーむ。

「2人とも、もっと私を警戒した方が良い」

「ふむ」

 でも、本当に怪しい人っていうのは、そう言う事言わないんじゃないかな?
 まぁ、そこまで怪しい人には――会ったのは、あの雨の日の老人くらいか。
 あの人は、まぁ……うん。
 何と言うべきか。
 存在自体が怪しかったからなぁ。
 黒ずくめで、雨でびしょ濡れだったし。

「ま、いいカ」

 本当にやり難いネ、と。
 そう一言呟いて、梯子を下りていく超。
 続いて月詠、最後が俺。
 さて、この下に何があるんだろうか?







 なぜ魔法使いは、その存在を世界に対して隠しているのか。
 梯子を下りた先で、そう問われた。
 ……しっかし、下水道か。
 初めて入ったけど、結構匂わないのな。

「まぁ、危ないからじゃないか?」

 魔法。
 それはまだ見た事無いが……悪魔がどういうものかは、知っている。
 無意識に首元を撫でながら、そう言う。

「そうネ。強大な力を持つ個人が存在する。でも、それを秘密にしておく事は人間社会にとって危険ではないカ?」

 そう言われると、どう返しようもないな。
 確かに、魔法使いというのは、あの悪魔を倒せるほど強いのだろう。
 それは、俺のような個人が持てる力を超えている。

「それが知られる事になったら、どうなると思うかな、先生?」

 魔法使いの存在が知られたら?
 それは、今回の武闘大会の事か。
 魔法の事を仄めかして、魔法使いの人達に睨まれる事になったきっかけ。
 まぁ、以前から目を付けられていたのも原因の一つだろうけど。

「……まぁ、世の中が混乱するんじゃないか?」

 政治然り、情勢然り。
 世界に魔法使いが何人居るか判らないけど、こうやって麻帆良という街があるくらいだ。
 10人20人という訳じゃないだろう。
 そうなると、だ。
 やっぱり――人は警戒すると思う。
 いきなり隣人が魔法という“力”を持っていたと知ったら。
 “力”を持たない側は、どうしようもないのだし。

「この大会も、本当はもう1年……時間を掛けて、万全の状態で挑む予定だたネ」

「……1年?」

「そう。1年ヨ」

 コツコツと、音を響かせながら下水道を歩く。

「でも、やはり“予想通り”に進んでしまうネ」

「どういうことでしょうか~?」

 そう聞こうとした俺より先に、月詠が聞く。
 確かに、どう言う事だろう?
 1年時間を掛けて準備をする、を言ったのに、次は予定通りに進んだと。
 ……予定通りなのに、準備が間に合わなかった?
 それは、変じゃないだろうか?

「何度試しても……計算上は、世界樹の大発光は来年ネ」

「大発光?」

 って、なんだ?
 そう思い月詠に視線を向けるが、首を横に振られてしまった。
 そうだよな。いくら魔法使いでも、麻帆良に居る時間は俺の方が長いもんな。
 そりゃ知らないか。

「あの巨大な木――正式な名称は『蟠桃』というのだガ……ソレが22年周期で一度、魔力を外に放出するネ」

 その後も、細かな説明がされていくが……すまん、よく判らん。
 一応、世界樹の名前が『蟠桃』といって、超の予定していた大発光というのが来年の予定だった。
 というのは理解したけど、その仕組みまでは全く判らなかった。
 ……魔力とか何とか言われてもなぁ。
 折角説明してくれたのに、すまん。

「とにかく。その異常気象を計算に入れても――それでも、予定では大発光は来年のはずだたネ」

「なのに、どう言う理由か今年になってしまった、と」

「“予想通り”ではあるがネ」

 一応の戦力は揃えていて良かたヨ、と。
 だから、そこが良く判らない。
 予定は外れているのに、予想通りと。
 どう言う事だろう?

「なぁ、超?」

「何か判らない所があったかイ?」

「予定では、来年のはずなんだよな。その大発光って」

 なのに、何で予想通りって言うんだ、と。
 そう聞くと、口元を隠すようにして笑われる。

「それは私が未来から来てるからネ」

「なるほど」

 つまり、今年起こるっていう事は知っていたのか。
 でも機械かなんかで測定した数値は、来年。
 だから、予定と予想が違うのか。

「未来を知っていると言うのは、便利ですね~」

「そうでもないネ」

 そうか?
 こうやって、不測の事態も判っていれば便利だと思うがなぁ。

「不測の事態には、目を背けてしまう事もあるヨ」

「そうなのか?」

「……そんなものヨ」

 ? 何か変な事言ったか?
 急に機嫌が悪くなったんだけど……。

「お陰で、私の計画は問題だらけネ」

 それは、どこかで……そう、昨日聞いた言葉だ。
 俺の所為で、と。
 ……俺の所為で?

「なぁ、超?」

「着いたネ」

 その声を無視するように、超が立ち止まる。
 超を見ながら話していたから、前をあんまり見てなかったんだが……超の視線の先には、下水道には似合わない、機械のようなドアがあった。
 …………は?

「ここが秘密基地か?」

「そうネ」

 そう言って、そのドアに向かい……自動ドアか。
 凄いな……。
 もしかしたら、大会の優勝賞金とかも……自腹?
 ――コレは流石に驚いた。

「ここなら、まだ魔法使いの連中には気付かれてないネ」

 下水道一帯にはジャミングを掛けてあるし、と。
 そう言う単語の意味は良く判らないが、秘密基地の存在は魔法使いにはまだ気付かれてないらしい。
 しっかし……なぁ。

「凄いな」

 中は本当に、秘密基地だった。
 そう、基地なのだ。
 子供が遊びで作るようなのじゃない。
 本物の、映画で見るような。
 その中を三人で歩く。

「かなりの額を掛けたからネ」

 その辺りは、あまり聞かない方が良いだろう。
 その方が胃の為だ。

「それで、先生は何を聞きたいのかナ?」

「ん?」

「……私に話があったから、探していたのではないのかナ?」

 あ、ああ。
 そうだった。
 秘密基地を見せられて、そっちをすっかり忘れていた。

「なんであんな、魔法使いの人達に目を付けられるような事をしたんだ?」

 武闘大会とか、と。
 気付いたら、大きな広場のような場所に立っていた。
 周りは機械だらけ、明かりも最低限なので視界もあまり良いわけではない。
 遠くは闇に隠れて見えないので、それなりの広さはあるようだ。

「そうだネ……大したコトではないネ」

 そう一言置いて、立ち止まる。
 そして、振りかえり、

「先生。魔法使いが居るのに、知られていない世界は“変”だと思わないかイ?」

「ん?」

「世界には、人以上の力を持っているのに、その存在を知られていない魔法使いが居るネ」

 そうだな、と。
 ……そうなると。

「魔法使いの事を、世界に知らせる?」

「そうネ」

 それに、どんな意味があるんだろうか?
 しかも……未来から来てまで。
 この時代は、超の居た時間とは違う。
 その超の行動は――何というか。

「“歴史”を変える。私はその為にここに“居る”ネ」

 ――そう言われても、何というか。
 ピンとこないと言うか。
 そんな事を言われても……それは、大丈夫、何だろうか?
 過去を変える。
 そうしたら、

「私は先生にとっての未来。私にとっての過去を――“歴史”を変える為にここに来た」

 この時代の麻帆良に、と。
 
「過去を変えたら、未来はどうなるんだ?」

「さぁ?」

 そう、あっさりと。
 ――あっさりと、言った。

「だって、超。おまえ、未来の人間なんだろう?」

「そうヨ」

「自分が居た時代がどうなるか判らないのに、過去を変えるのか?」

「……そうネ」

 その眼を見て問い、見返されて答えられる。
 それは、

「なんで?」

「ン?」

「お前……それじゃ、これからどうするんだ?」

 帰れないんじゃないのか?
 自分の居場所に。
 居た世界に。
 家族の所に。

「覚悟の上ネ」

 ……お前、それ……何か間違ってるぞ。
 何が、とかはまだ言えないけど。
 そう言いきれる自信がある。
 間違ってる。
 それは、そんな風に笑いながら言う事じゃないぞ。

「間違っている、と言いたそうネ?」

「……ああ」

「しょうがないネ。それが私の役割ヨ」

 役割?
 そういえば……。

「昨日も、そんな事を言ってたな」

「……良く覚えてるネ」

 驚いた顔をされた。
 まぁ、昨日少し話したくらいだったしなぁ。

「一晩悩んだからなぁ。お陰で、少し寝不足だ」

 そう言うと、小さく苦笑。
 目を細め――まるで、その眼の奥で品定めされてるかのよう。
 あまり、その目で見られるのは気分が良い物じゃないと言うか……。

「吸血鬼を誑かしたわりには、繊細なんだネ」

「た、誑かしたって……」

 人聞き悪いなぁ、と。

「でも、その通りですえ~」

「いや、違うから」

 そんな事してないっての。
 月詠? お前は喋ったかと思ったら何を言ってるんだ?
 まったく。

「なるほどなるほど」

 クス、と。
 そう、楽しそうに笑う姿は、年相応なのに。
 なのに――この子はもう、もしかしたら家族にも会えないのだ。
 それがお門違いなんだと判っている。
 でも。
 ……それは酷く、悲しいものに見えてしまう。
 覚悟したと言った。
 きっと、相当の決意の上での事なのだろう。
 考えて、考えて……考え抜いての行動なのだろう。
 たかだか14歳で、それだけの思いの上に、過去に来た。
 ……でも、世界っていうのは、14歳の少女に背負えるほど、小さなものじゃないと思う。
 たとえ未来が、どうなる運命だからって――それを変えるのが、超である必要が無い。
 そう思う事は、間違っているのだろうか?

「後悔しないのか? 親にも、友達にももう会えないかもしれないんだろ?」

「後悔はしたネ。涙も沢山流したヨ」

 でも、誰かがやらないといけない、と。
 どういう事だろう?
 過去を変えないといけないほど、超の居た時代は……危ないのだろうか?
 でもさ、超?
 どうしてその誰かの枠に、お前が居なきゃならないんだ?
 どうして――。

「先生、月詠さん。手を組まないかイ?」

「……へ?」

「あら?」

 ま、またいきなりだな……。
 そう笑顔で右手を差し出してくる超を、マジマジと見てしまう。
 ――笑顔だなぁ。

「私のやり方が、もっとも混乱とリスクが少ないヨ」

「超のやり方?」

「そうネ。そして、未来を変える」

 でも、笑顔でも言ってる事は……なぁ。
 手を組む、か。

「超……俺ってなんかの役に立つのか?」

「うん?」

 だって、魔法使いでもなければ、特別な力を持ってる訳でもない。
 物語の勇者でも英雄でもないのだ。
 ――なのに、昨日話して、今日もこうやって誘ってくる。
 俺の所為で、計画が狂ったと言った。
 ……その答えは、何なのだろう?

「そうネ……エヴァンジェリンへの牽制にはなるヨ」

 月詠さんは、他の方達への、と。

「マクダウェル達?」

「現状での、麻帆良最強の魔法使い。彼女ばかりは、私でも骨が折れるネ」

 いや、この時代では彼女達、と言うべきか、と。
 まぁその辺りは良く判らないが……。

「先生。昨日私が話した事、覚えてるカ?」

「昨日?」

「クラスの皆の“未来”ネ」

 ああ。

「なら、私が先生を誘う理由は――ソレね」

 生徒の未来が、俺を誘う理由?
 ……いや、余計に判らないんだけど。

「超? もー少しだけで良いから、判り易く……」

「いいのかイ?」

 ん?

「本当に、知りたいのかイ?」

「そりゃなぁ」

 そう言い、頭を掻く。
 とりあえず、そこを聞かないとどうにも。

「本当なら、私の計画に――知る過去に、月詠さんは居ないはずだったね」

「私ですか~?」

 ……そう言えば、昨日の話。
 月詠の未来は言ってなかった……かな?
 うん。

「そして――先生、貴方もダ」

「俺も?」

「――先生。貴方ほど、この世界で特異な存在は居ないのだヨ」

 ……は?
 俺が?
 正直……。

「お兄さんがですか~?」

 何の力もありませんよ~、と。
 うん。そうだよなぁ。
 そりゃ、月詠達みたいに、凄い力とかあれば……まぁ、想像できないんだけどさ。
 その考えが顔に出たのか、笑われてしまった。

「先生。世界に魔法使いは何人居ると思うネ?」

「魔法使い……?」

「そう。月詠さんは判るかナ?」

 何人居るんだ?
 そう言えば、考えてみなかった事だな、と。
 そう思い月詠に視線を向けると、首を傾げていた。
 判らないのか。
 まぁ、日本の総人口を、といきなり聞かれても細かな人数は出ないだろうしな。

「西洋魔術師さんですか~……」

「ヒント、東京圏の人口の2倍」

 東京の?
 えーっと……東京圏って、どれくらいの人口だったっけ。

「6千万人くらい? ……そんなに居るのか?」

 多いなぁ。
 もしかしたら、本当に映画みたいに、魔法使いの国があるのかもしれない。
 そう思ってしまう。
 それが顔に出たのか、笑われてしまった。

「魔法使いの総人口は、約6千7百万人。その人口は華僑の人口よりも多いヨ」

 華僑って言うと……中国外に住む、中国国籍を持つ人だったかな?
 たしか、それ以外にもあった様な気がするけど、そう間違ってないはずだ。
 ……そう考えると、確かに相当な人数だ。

「彼らは我々の世界とは僅かに位相を異にする“異界”と呼ばれる場所に、いくつかの“国”を持っている」

 はぁ……それは凄い。
 という事は、魔法使いというのは、確かに“国家”をもってその国を維持していると言う事だろう。
 それは今のこの俺たちの世界と、なんら変わらないと言う事じゃないだろうか?
 もしくは、俺たちの世界よりも進んだ世界なのかもしれない。
 スケールが大き過ぎて、どうにも感動が追い付いてこないが。
 なんとなく、超が言いたい事は判る……ような気がする。

「その存在を、全世界に対して公表する。それに伴って起こりうる政治的な混乱も私が監視するヨ」

 ……だから、と。
 どうして。
 どうして超は、そんな事を、一人でしようと考えているんだろう?
 私達ではなく、私。
 そこが、どれだけ大きく違うか……それが、どれだけ違うか。
 一人で出来る事なんて――。

「その為の技術と財力は、この時代に来てから用意したよ」

 ――ああ、そうだ。

「なぁ、超?」

 一つ良いか、と。
 判り易い説明……と言って良いのかは判らないが、何となく判る話を中断させ、一つ、聞きたい事があった。

「超は、2年前くらいから、麻帆良に居るんだよな?」

「おや、そこも知っていたカ」

 ああ。
 だとすると、だ。
 その間に、その財力やら技術やらを用意したんだろうけど。

「お前、一人で全部用意した……訳じゃないんだよな?」

「そうネ。技術の方は、ハカセや――科学、工学部の連中にお願いしたネ」

 茶々丸も、その一つネ、と。
 絡繰? そう言えば、絡繰の技術もって学園長室で言われたな。
 なるほど、確かに今の時代の技術で人型、しかも感情を持つロボットなんて聞かないもんな。
 ……そう考えると、未来の技術って言うのが、どれほどのものか良く判る。
 きっと、今の時代では誰も手の届かない物なんだろう。
 絡繰然り、タイムマシン然り。

「なら、もう一つ聞いて良いか?」

「ん? なんだネ、先生?」

 だったら、と。

「葉加瀬達は、超の計画の事は知ってるのか?」

 過去を変え、世界を、未来を救う。
 その、大き過ぎる計画の事を。

「葉加瀬には話しているネ」

 その答えは……だとすると、科学部や工学部の連中は知らないと言う事か。
 葉加瀬には、と。
 超の信頼を得た人は、超が居た2年の中で――葉加瀬一人なのか。

「もう一つ」

「うン?」

「……本当に、やれると思うのか?」

「私は、うまくやる」

 過去を変える。世界を変える。
 きっと、今までもそう思った人は居たはずだ。
 武力で、財力で、科学で。
 でも、どこかしろで破綻していった。
 歴史がそれを証明している。
 世界を統べた人は居ないのだから。
 ……そのうえで、超はそう言ったのだろう。
 私は、と。
 でもそれは……その言い方は、まるで自分に言い聞かせてるように感じた。
 自分なら、と。

「この世界の不正と歪みと不均衡を正すには、私のようなやり方しかないヨ」

 信じてほしい、と。そう最後に言われた。
 正しいのかもしれない、と思った。
 俺が気付いてないだけで、知らないだけで、もしかしたら……超が言うほど、世界は歪んでるのかもしれない。
 そして……きっと無理だ、とも。
 そう、思った。
 確信にも似た思い。
 それは、無理な事だ。不可能な事だ。

「最後に良いか?」

「どうぞ」

 すぅ、と息を小さく吸う。
 そして吐いて、落ち着く。
 難しい事は理解出来てないけど、超がやろうとしている事は、何と無くだろうけど判ってる。
 そして、それが――個人の領分を越えている事を。

「何で学園長とか、誰かを頼らないんだ?」

「……………………」

 そう。
 どうして、頼らないんだろう?
 信じてもらえないから?
 だからと言って……そんな、世界を変えるなんて。
 超と葉加瀬の二人で出来る事じゃないと思う。
 どうして大人を頼らないんだろう?
 どうして魔法使いの人を頼らないんだろう?
 二年間、二人でそんな事を考えていたんだろうか?

「魔法使いの存在を世界に知らせる、って言うのは判るけどさ……それだと、魔法使いの人達は納得できるのか?」

 超の言い方だと、まるで魔法使いの事を見ていないような気がした。
 それだと、魔法を使えない人と、魔法使いの間に問題が起きるんじゃないだろうか?
 それこそ――個人ではどうしようもないような。

「先生の言いたい事は、判るネ」

「ん?」

「でもね――先生のやり方では間に合わない」

 俺のやり方?
 それに、間に合わないって……。

「先生、貴方は私の味方カ?」

「ん? いや……」

 どうだろうな、と。
 敵か味方か、と聞かれたら……敵ではない。
 けど、超が聞いてるのはそう言う事じゃない、と思う。

「……貴方が味方なら、心強いんだがネ」

 ……どうして、俺をそう思うんだろう?
 俺には何も無い。
 本当に。
 どこにでもいる、普通の人間だ。
 魔法を使えるわけでも、特別な何かを持ってるわけでもない。
 なのに、何故、と。
 そう言うと、笑われてしまった。

「貴方は、私の同志となってくれないカ?」

 そして、笑顔のまま――その右手が差し出される。
 同志。
 それは……一緒に、と言う事だろうか?

「貴方の存在を塗り潰すのは、惜しい」

 どう言う事だ?
 そう、口にする前に――すぐ傍で、光が溢れた。

「月詠っ!?」

「……機械は苦手ですわ~」

 な、何だ?
 いきなり、月詠が床から溢れた光の檻と言えるようなものに囚われていた。
 ……しかし、お前。
 そんな状態になっても、その口調なのか。
 そんなに危ない状態じゃない、のか?

「同志になってもらえないなら、イレギュラーにはしばらくの間だけ退場してもらうネ」

「……超?」


 




――――――エヴァンジェリン

 茶々丸の淹れた茶を飲み、小さく息を吐く。
 うん。

「にが……」

「そう言う事は口にするな……」

 まったく。
 だから最初に言っただろうが、お前には合わないと。
 だからこそ、意地になって飲んでるんだろうが。
 まぁ、私の言い方も悪かったよ。うん。

「あ、でも。後味は良いのねぇ」

「まったくだ。私もこういった茶は初めてだけど、美味いもんだ」

「ありがとうございます」

 そう言い、律義に頭を下げる茶々丸。
 しかし……。

「どうかしたの、茶々丸さん?」

「いえ……」

 そうは言うが、心ここに非ずといった感じでチラリ、と視線を逸らす。
 それはその時々で違い、まるで……。

「誰か探してるのかい?」

「そういう訳では……」

 そうは言うが、しばらくしたらまた、その視線はどこかへ向けられる。
 どうしたんだろうか?
 そうは思うが、別段聞きはしない。
 ……まぁ、コイツがこういう行動をするという事は、だ。

「でも、茶々丸さんのお茶って飲みやすいわねー」

「いえ、誰が淹れても同じかと……」

「そんな事無いって」

 そういって、用意されていた茶菓子に手を伸ばす。
 マイペースだなぁ、相変わらず。
 真名と2人で苦笑しながら、私ももう一口茶を啜る。
 うん、美味い。

「でも、茶々丸さんって着物も似合うのねぇ」

「そうでしょうか?」

 まぁ、そこは私も思うがな。
 身長もあるし、身体の関節部も隠れるからな。
 だからこそ、茶々丸は着物が良く似合うと思う。
 以前は髪もまとめていたが、今は葉加瀬に止められてるから首筋も隠れている。
 こう見ると、確かに人形には見えない。
 そうやって誰かを探している様子は、本当に……一人の人間のようだ。

「明日菜さんと真名さんも、よく似合われると思います」

「そ、そうかな?」

「明日菜は似合うだろうね」

「真名も十分似合うと思うぞ?」

 身長あるし、髪も長いし。
 明日菜も髪形を変えたら、十分似合うだろう。
 それに何といっても……なぁ。

「なんだい?」

「いや、別に?」

 そう小さく笑い、また茶を啜る。
 どうにも中学生に見えないからなぁ、お前は。
 真名と那波千鶴と雪広あやかは特にそうだろう。
 あれは……うん。
 どうかと思う。

「着てみますか?」

「へ?」

「着付けは出来ますが」

 ふむ。

「着てみたらどうだ、明日菜?」

「うえ!?」

 ……お前。
 驚いたら驚いたで、もー少しマシな声は出ないのか?
 流石にそれはどうだ?
 そりゃ、タカミチでも引くぞ……。

「えー……でも、似合わないわよ?」

「そのような事は無いかと」

 だな。
 明日菜は身長もあるし、顔もそう悪くはない。
 髪も長いから、纏めてみるのも面白そうだ。

「明日菜さんなら、よくお似合いになるかと」

「ちゃ、茶々丸さんみたいに、私お淑やかじゃないし……」

「安心しろ。性格はともかく、顔はそう悪くない」

「褒めてないでしょ!?」

 褒めてるだろうがっ。
 後最近、何でお前は頭を押さえるんだっ。
 ぐっ。

「仲良いねぇ」

「でしょ?」

「どこがだっ」

 頭押さえながら、何で誇らしげなんだよ、お前はっ。
 こ、このっ。

「マスター、明日菜さん?」

「ご、ごめんなさい……」

「す、すまん……」

 ……そして、最近は茶々丸も感情を良く出すようになったもんだ。
 うん。
 決して怖いわけじゃないからな?

「そして、茶々丸さんには頭が上がらない、と」

 お前も人の事言えんだろうがっ。
 ちっ、一人だけのんびりと茶を飲んで……。

「お二人とも、お茶を飲む時はお静かにお願いします」

「「はい……」」

 むぅ。
 私は悪くないと思うんだがなぁ。

「マスター?」

「いや、なんでもない……」

 まぁ、ここは大人しくしておこう。
 そうして、三人で茶々丸の淹れたお茶を飲んでいると、茶々丸の視線がまたどこかへ向く。

「どうしたんだい、茶々丸さん?」

「いえ」

 そうは言っても、そうあからさまだとなぁ。
 明日菜は判ってないようだが、真名は何か感じたのか、茶を飲んで口元を隠している。
 恐らく、内心では楽しそうに笑っているのだろう。
 私も人の事は言えないのだが。
 まったく。
 本当に――。

「でも、この時間って誰も居ないの?」

「はい?」

「だって、茶々丸さんだけじゃない。茶道部」

「……私も一応、茶道部なんだが?」

「着物着てないじゃない」

 ……それもそうだがな。
 ま、だからと言って、誰彼に茶を振舞うつもないが。

「今は、皆さん休憩に行かれてますので」

「そうなの?」

「はい。私には、休憩は必要ありませんので」

 ま、お前にはそれ以外の意味もあるんだろうがな。
 しかし……来ないな。
 そう思っていると、また茶々丸の視線がどこかへ向く。
 そんなに熱心に探さなくても、どうせそのうち来るだろうに。

「茶々丸さん、もう少し落ち着いた方が良いんじゃないかな?」

「……何の事でしょうか?」

 本当に判っていないのか、それとも判っているが気付いていないのか。
 ――まだ知らないのか。
 きっと、知らないのかもしれないな。
 そう思うとまた、茶々丸のその行動が、可愛らしく思えてくる。
 まったく。

「真名、何か知ってるの?」

「さぁ?」

 そう言い、また楽しそうに笑い、茶菓子を摘む真名。
 お前も大概、意地が悪いと言うか、何というか。
 楽しんでるなぁ。

「どうかしましたか、真名さん?」

「いやいや。茶々丸さんを見ていると楽しいなぁ、と」

「?」

 そう言われ、首を傾げる茶々丸。
 まぁ、そうだろうな。
 私も、こんな茶々丸が見れる日が来るとは思ってなかったしな。
 これはこれで、中々見ていて楽しいものだ。

「マスター?」

「ん?」

「……いえ」

 怒った、とは少し違うのだろう。
 だが、不機嫌――なのかもしれない。
 そしてまた、視線はどこかへ。
 ……お前のそういう所は、本当に、何というかなぁ。

「なんか、私だけ仲間はずれな気がするっ」

「気のせいだろ」

「気のせいだよ」

 しかし、遅いなぁ。
 待っているこっちも、そろそろどこか他の所を見て回りたいんだが……。
 ま、いいか。
 偶にはこんな、のんびりした茶会も。

「茶々丸さん、なにがあったのー?」

「いえ、特には何も」

 でも結局、それから暫く待ったが、先生は来なかった。
 


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