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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/27 22:47
 くぁ、と。
 欠伸を一つして伸びをする。
 良い天気だなぁ、と。
 あまり良く寝れてない頭でそう考えて、起きてから暫く経つが、それでも窓際でぼんやりと外を眺める。
 快晴の空。
 良い祭り日和である。
 きっと、昨日と同じように皆が学園祭を楽しむんだろう。
 だろうけど――うーん、と。
 どうしたものか。
 問題が多すぎて……いや、問題なのかも判らない事が多すぎて、困る。
 武闘大会。超の事。魔法の事。
 どうすればいいのか。
 どうにかできるのか、判らなくて困ってしまう。

「はぁ」

 溜息を、一つ。
 超は言った。
 俺の所為だと。
 超の計画が狂ったのも、超の計画が問題だらけなのも。
 ……何をしたんだろうか?
 一晩考えたが、まったく思い浮かばない。
 魔法に関わったのは、約半月前。
 そして、俺に知らされた超鈴音の情報は、ほんの少しだけ。
 魔法使いではない、ただの教師は巻き込めないから、と。

「どうするかなぁ」

 今日何をするかも、聞いていない。
 そして、副担だからとその理由で掲示された情報は――ほんの少しだけ。
 超がこの麻帆良に越して来た2年前、麻帆良中に入学してくる以前の事はなにも判っていないという事。
 絡繰の製造――というと聞こえは悪いが、まぁ、その情報は超からだという事。
 そして、未来から来ていると言う事。
 あとは昨日、超本人から聞いた事くらい。
 これくらいだ。
 まだ信じきれない所もあるけど、一晩経ったら何となく受け入れる事が……できなくもない。
 吸血鬼とかも居るんだ。
 未来人が一人居ても問題無い……だろう。うん。
 もう本当、非現実的というか、なんというか。
 世界は不思議に満ちているな、と。
 そう思いながら、窓の外を見上げていた顔を落として、溜息を一つ。
 うーん。
 仕事に手がつかない。
 起動させたノートパソコンの画面は、変わらず仕事用のファイルを開いたまま。
 クラスでの出し物の報告書やら、見回りの報告書やら、月詠と小太郎の報告書やら。
 やらなきゃならない事はあるのだが、手につかない。
 むぅ。
 これは拙い。
 提出は麻帆良祭終了から一週間後だが、こういうのは早いうちにしておかないと忘れてしまうのだ。
 それはこれまでの経験上判っているんだけど……はぁ。

「はぁ」

 殆ど寝ていない頭で、考える。
 一応眠りはしたが、起きたのは朝の5時だ。
 何で、と思ったが起きてしまったのはしょうがない。
 しかも妙に目が冴えてたし。
 寝たのも日付変わった時間だったのに、である。
 やっぱり、人間物事を深く考えるのはあんまり良くないな。
 覚えてないけど、もしかしたら夢にも見ているのかもしれない。
 パソコンの隅に表示されるのは、午前6時を少し過ぎた時間。
 うん。
 どうしよう?
 一時間、仕事も手につかず、超の事ばかり考えてた。
 ちなみに、昨日はマクダウェルと高畑先生からもあの後怒られた。
 ……笑顔で。
 アレは怖いな、うん。
 怒鳴られるよりも、よっぽど来るものがある。
 きっと、寝起きが良かった理由の2割くらいはあの笑顔だ。
 もう二度とマクダウェルと高畑先生は怒らせまいと心に誓った瞬間でもある。
 多分また怒らせるけど。
 しょうがない。
 俺が何か関係してるみたいだし。

「おはよーございます~」

 もう一度溜息を吐いた時、ちょうど月詠が起きてきた。
 ドアを開けて、こちらに挨拶してくる仕草は何時も通りで、もしかしたら全部俺の勘違いか?
 と思ってしまいそうだが、そうじゃないんだよなぁ。

「おはよう、月詠。顔洗ってきたか?」

「はい~。でも、眠いですえ~」

 こうしていると、魔法使いも普通の女の子みたいなんだがなぁ。
 眠そうに、口元を手で隠しながら欠伸を一つする月詠を小さく笑ってしまう。
 俺が物事を難しく考え過ぎているのだろうか?

「はは。コーヒーでも飲むか?」

「あっついお茶がええですわ~」

「ん、判った。座って待ってろ」

 そう答え、立ち上がる。
 うん、一人で考えると、なにも良い考えが浮かばない。
 それは昨日も判っていた事だ。
 俺一人じゃ、なにも判らない。
 はぁ。
 判ってはいるけど、考えてしまうのはどうしたものか。
 そう苦笑して、月詠と自分用のお茶を用意する。
 俺も、眼は冴えてるけど疲れてるし。
 あっついお茶を飲んで、目を覚まそう。

「お兄さん、今日はどうしますか~?」

「今日?」

 キッチンでお茶を用意していたら、月詠からの声。
 ふむ、今日か。

「昨日とあんまり変わらないかな? 見回りばっかり」

「なら、今日はウチと回りませんか~」

「ん? 俺とか?」

 そのお誘いは予想外だったので、驚いた声を返してしまう。
 だって、今日は時間取れそうと言ってたから、祭りを楽しむと思っていたのだ。

「俺と居ても、あんまり楽しくないぞ?」

「そうですか~?」

「クラスの連中とも、あんまり喋れないだろうし」

 それより、雪広達に混ぜてもらって回った方が良いぞ、と。
 そう言いながら、用意したお茶を持ってリビングへ。

「折角の麻帆良祭なんだから、楽しんでこい」

「んー。でも、お兄さん危ないですよ~」

「危ない?」

 何が、と聞きかけて……ああ、と。
 そう言えば、超は要注意人物の一人なんだったっけ。
 昨日の夜、学園長室で高畑先生に言われた事。
 あの武闘大会の開幕をもって、超を魔法使い側の要注意人物として見る、と。
 そして、俺はネギ先生と同じく、超側から接触してきた教師だ、と。

「まー、超さんはそう危険やないとは思いますけど~」

「そうか?」

「はい~。ウチ、その辺りの事は鼻が聞きますから~」

「ふぅん」

 鼻が利くって。
 女の子がそう言うのはどうかなぁ、と苦笑しながら、床に腰を下ろしてお茶を啜る。
 ふぅ、落ち着くなぁ。
 ……しかし、俺も一端にお茶淹れがそれなりに板についたもんだ。

「それより、今日の事ですえ~」

「ん?」

 今日?
 ああ、俺と回るって事か。

「お姉さんから、お兄さんからは目を離すなー、って言われてますから~」

「……誰?」

 お姉さん?
 葛葉先生かな?
 桜咲……の事は先輩って呼ぶし。

「エヴァさんです~」

「マクダウェル?」

「はい~」

 何でマクダウェルがお姉さんなんだ?
 吸血鬼だからだろうか?
 というか、早速お目付役が出来てしまったか……。
 流石に、超と2人っきりで会ったのは色々と拙かったのかもなぁ。
 危なくは無い――とは思うけど。
 ……そう言えば、

「なぁ、月詠?」

「なんですか~?」

「マクダウェルって、お前がお姉さんって言うくらい歳とった吸血鬼なのか?」

「……知らないんですか~?」

 うん、と。
 そういえば、以前聞いたのは――いつだったか。
 一回聞いたような気がするけど、答えてもらった記憶が無い。
 覚えていない、って訳でもないから多分聞いていないんだろう。

「女の子のお歳は、ウチの口からは言えませんわ~」

「そりゃそうか」

 まぁ、気になっただけだから、別に良いけど。
 そのうち、マクダウェルに聞いてみよう。
 ……怒られそうだけど。

「お兄さんは、ウチとお祭り回るのは嫌ですか~?」

「ん? そうじゃないけど。折角の祭りなんだから、楽しい方が良いだろう?」

「はい~」

 なら、クラスの皆と回るのもきっと楽しいぞ、と。
 そう言うと……笑われてしまった。
 小さく、でもはっきりと。

「お兄さんは、もう少しご自分の事をお考えになった方がええですよ~」

「そうか?」

 でも、さっきお前も超はそう危険じゃない、って言ってただろ、と。
 そう言うと、また笑われる。

「赤の他人でしかないウチの言葉を、そう真に受けられると困りますえ~」

「……むぅ」

 そう言われると、何と言い返すべきか考えてしまう。
 違う、というのは簡単だけど。
 きっとそれじゃ、納得はしてもらえないだろう。
 家族と言えるほどの時間を過ごした訳じゃない。
 でも、赤の他人と言うほどに知らない仲じゃない。
 ……ふむ。

「そうだなぁ」

 そう、一言置いて考える。
 改めて考えると――俺と、月詠と、小太郎の関係は何なのだろう?
 ただの同居人、とは違うと思う。
 友達というには歳が離れているし、知人というような仲じゃない。
 家族ではないし……何なのだろう?
 血の繋がりは無いのに、こうやって一緒に暮らしてる。
 これは、周りから見たらどういう風に見えるんだろう?

「どないしました~?」

「ん? ああ……まぁ、なぁ」

「?」

 答えがまとまっていないので、どう答えるかな、と。
 そう考え、口からは意味にならない言葉が漏れる。
 俺と月詠と小太郎の関係か……。

「俺たちの関係って、何なのかなぁ、と」

「関係ですか~?」

「そ。赤の他人じゃ、寂しいからなぁ」

「………………はぁ」

 思いっきり深い溜息を吐かれてしまった。
 むぅ。

「お兄さん? ウチらはいつか、お別れするもんですえ」

「そうだな」

 それがいつかはまだ判らないけど、いつかきっと、その時が来る。
 出来ればそれは、卒業の後が良いとは思うけど――そればっかりは、俺には決めようがない。
 学園長が、もしくはこの2人が決める事だ。

「なら、赤の他人の方がええですよ」

「そうか?」

「はい。きっと、そうですえ」

 妙に、真面目な声だった。
 でも――それと同じくらい、何と言うか……。
 いつもの独特な喋り方じゃない、月詠の声は新鮮で。
 それが……どうしてか、寂しかった。
 だから、

「なんで笑うんですか~」

「いや、な。月詠の真面目な声って、初めて聞いたから」

「え~。ウチが折角、格好良く言ったのに~」

 ……それが、きっとこの子の“本当”の事なんだな、と。
 それが酷く寂しくて、笑ってしまう。
 赤の他人の方が良いとか。
 はじめて言われたけど……これは、厳しいな。うん。
 お茶を啜り、ソレを紛らわす。
 俺が思っている以上に、月詠達と、俺との間の距離は、遠いのだろう。

「それよりも、今日の事ですえ~」

「そうだな」

 うん。

「今日は、一緒に回るか?」

「ええんですか~?」

「そうしないと、マクダウェルから怒られるんじゃないのか?」

「はい~」

 怒ると、すっごい怖いんですよ~、と。
 うん、それは判る。
 怖いもんなぁ、アイツ。
 そう言うと、今度は2人で小さく笑う。
 ――こうやって笑い合えるのに、赤の他人なんだろうか?
 人と人の関係というのは、言葉にするのが本当に難しい。

「それじゃ、朝食の準備をするかね」

 そう言い、立ち上がる。
 さて、こうやって難しい事を考えていてもはじまらない。
 俺は俺の出来る事をやろう。
 そう無駄に気合を入れて、キッチンに向かう。

「で? どうして着いてくる?」

「お手伝いですえ~」

 いや、嬉しいけどさ。
 あと助かるけど……。

「なら、サラダ作ってもらって良いか?」

「はい~」

 切るのは任せて下さい~、と。
 その声を聞きながら、内心で首を傾げてしまう。
 赤の他人がいい、と月詠は言った。
 なのに、こうやって手伝ってくれる。
 これは、違うのだろうか?
 ……この子にとって、赤の他人って何なんだろう?
 朝食用の鮭をグリルに入れながら、横目で月詠を見る。
 ――難しいなぁ。
 超の事も、月詠の事も。

「なぁ、月詠」

「はい~?」

 でも、やっぱりなぁ。
 嫌だよな、こういうのは。
 うん。

「……昼は何食べる?」

「そうですね~……おにぎり握って、外で食べませんか~」

「本当、お前はおにぎり好きだなぁ」

「はい~」

 赤の他人とか、寂しいし。
 自分の生徒の事は知りたいし。
 それは人間として、当然の事だと思う。
 なら、俺が出来る事は――うん。
 ちゃんとある。
 そうやってきた。
 そうしてきた。

「お兄さんもおにぎり握って下さいね~」

「……丸いぞ?」

「ええやないですか~。面白いですよ~」

「食べ物を面白がるのもどうかと思うぞー」

 よし、と。
 声に出して気合を入れる。

「小太郎と三人で、昼は一緒に弁当食べるか」

 ご飯足りるかな?
 足らなかったら、もう一度炊けば良いか。
 便利な早炊きという機能もある事だし。

「でも、お犬は武闘大会がありますえ~」

「あ、そうだったな……」

 むぅ。

「まぁ、一回戦か二回戦で負ければ食べれるかと~」

「流石に、いきなり負けるのを願うっていうのも可哀想過ぎるだろ……」

 そうなると、昼は小太郎は抜きかぁ。
 ……また今度誘うか。
 小太郎には今日を頑張ってほしいし。

「ま、お犬ならもう少し頑張れる……かも?」

 だなぁ。
 でも、昨日のマクダウェルとか見てると……厳しいのかもな、と思ってしまう。
 そういえば、

「小太郎の今日の相手って誰なんだ?」

「誰でしたっけ? 知らん人ですえ~」

「……なら、大丈夫かな?」

「どうでしょ? ここ、妙に強い人多いですからね~」

 そ、そうなのか……。
 月詠が言うくらいだから、本当に強い人が多いんだろうなぁ。
 うーむ。

「勝てると良いなぁ」

「ですね~」

 ……はぁ。

「どないしました~?」

「ん? いや」

 何だかんだ言っても、ちゃんと小太郎が勝てれば良いって思ってるのな。
 なんというか。

「本当に小太郎と、知り合った時間って短いのか?」

「はい~。まだ半年も無いですね~」

 それがどうかしましたか~、と。
 いや、と首を振り、小さく笑ってしまう。

「変なお兄さんですね~」

「すまんすまん」

 でもなぁ。
 赤の他人が、と言う割には、小太郎の事は悪く言ったり、心配したり。
 そう言うところは、結構仲が深そうに見える。
 どういう事なんだろうな?
 何と言うか、アンバランス。
 赤の他人が良いと言ったのに、こうやって朝食を手伝ってくれる。
 お犬と小馬鹿にした風に呼んだかと思ったら、小太郎の事を心配したり。
 本当に、この子の中の“赤の他人”というのは、どういう事なんだろうか?

「それじゃ、一緒におにぎりでも握るか?」

「はい~」

 そう返事をし、楽しそうに笑う月詠。
 この子の本当の“顔”は、どんな顔なんだろう?
 笑顔なのか、それとも……。

「……ぅ」

「相変わらず、丸いですね~」

「判ってただろうに……笑うなよ」

「すいません~」

 そんな事を考えながらおにぎりを握っていたら、見事な丸が出来ていた。
 うん。
 相変わらず丸いな、俺のおにぎり。
 ……判ってたけどさ。
 なんでだろう?

「どないかしましたか~?」

「いや……うーん」

 握り方は真似てるつもりなんだがなぁ。
 何が悪いんだろう?
 さっぱり判らない。

「お兄さんは不器用ですねぇ」

「良いんだよ。楽しければ」

「……そうですね~」

 料理というのはそういうものだと思うのだ。
 まぁ、綺麗に美味く出来た方が、もっと楽しいとは思うんだけどなぁ。

「……むぅ」

「不器用ですね~」

 はぁ。







「それじゃ小太郎、頑張れよー」

「おー。優勝賞金は小遣いに貰う約束やし」

「お前は本当に強気だなぁ」

 そこがお前らしいと言うか。
 『まほら武道会・本戦会場』と書かれた場所で、そう自信満々に豪語する小太郎。
 その頭に手を乗せて、軽く叩くように撫でる。
 しっかし、人通り凄いな。
 ま、二日目のメインイベントに近い人気ではあるよなぁ。

「勝ったら一割くらいは割けてくれよ?」

「へへ。判ってるって」

「……お犬は悩みが無さそうやなぁ」

 そう言ってやるなよ。
 朝は少し心配してたくせに。

「ふん。優勝しても、お前には一円もやらんからなっ」

「セコいな~、相変わらず」

「なんやとっ」

「はいはい」

 ぱん、と手を叩いて言い合いになった2人を止める。
 最近は、このやり取りにも慣れたなぁ。

「頑張ってマクダウェルにも勝てよー」

「へっ。言うとるやんか、優勝するって」

 その言葉が嬉しくて、苦笑してしまう。
 お前は前向きだなぁ。
 そういう所は、本当に羨ましいよ。
 うん。

「それと、」

「あー、はいはい。特別な事は、なんもせぇへんからな?」

 まったく。
 はいは一回、とその頭に手を乗せる。

「よし。それじゃ、頑張ってくれ」

 一応、そこはマクダウェル達との約束だからな。
 出場する代わりに、魔法は使わない。
 何があっても、だ。
 それが出場の条件。
 それに、本選出場者がいきなり欠場したら、それも問題になるだろうし。
 ここまで人気なら、それも判らなくもない。
 大変なんだな、イベントの運営っていうのも。

「月詠、今日は兄ちゃんを頼むで」

「……はぁ」

「へへ。明日はワイが面倒見たるからな?」

 自分より年下に面倒を見られると言うのもなぁ。
 そう内心で思い、苦笑してしまう。
 というかマクダウェル?
 お前この2人になんて言ったの?
 そこをぜひ聞いておきたい。

「ん、そろそろ開幕だろ?」

「おー。んじゃ、行ってくるっ」

 そう元気良く駆けていく背を目で追う。
 何と言うか――本当に、元気だなぁ、と。
 見ていてこっちまで元気になってくると言うか。

「ま、あの調子ならそう簡単には負けませんやろ」

「だなぁ」

 そう2人で苦笑し、踵を返す。
 さて、と。
 どうするかなぁ。

「どこ回る?」

「お兄さんにお任せしますわ~」

 そうか?
 そういう月詠は、マクダウェルが着ているような服の白いのを着て、その左手には竹刀袋が二つ。
 そして、少し大きめの弁当箱入りのバッグを持っている。
 ……まぁ、あんまり聞かなくても判るけど、な。
 白いフリルの多い服に、竹刀袋……なんというか、なぁ。
 それに、麦わら帽子をかぶってるので、見ようによってはどこかのお嬢様に見えなくもない。
 竹刀袋が無ければ。
 うーむ。しかし……女の子って、服装で化けるなぁ。

「なら、世界樹周りの店を冷やかしながら、見て回るか」

「ええんですか?」

「折角の麻帆良祭だし、店を見て回らないと勿体無いだろ?」

 それに、月詠は初めてなんだし、と。
 俺としても楽しいんでもらいたいし。
 そのルートだと、結構楽だしなぁ。

「それは嬉しいですわ~」

「そりゃよかった」

 んじゃ、行くか、と。
 それに、昼はおにぎりを握りはしたけど、おかずは無いからなぁ。
 なんか適当なの買わないと。
 その辺りも、店を冷やかす時にいくつか買えば良いだろう。

「でもお兄さん、ええんですか~?」

「ん?」

 歩き出して少しして、そう月詠から言われた。
 何が?
 竹刀袋を胸に抱く様に持って歩きながら、見上げてくるその視線を、こちらからも見る。

「お姉さんも、ネギせんせーも出場しますのに」

 見に行かなくて、と。
 あー。

「まぁ、興味はあるけどなぁ」

 でも、仕事をしない訳にもいかないだろう。
 こっちは教師なんだし。
 そういう意味では、一度ネギ先生と話したいんだけど……昨日から捕まらないんだよなぁ。
 何と言うか、間が悪い。
 うん。

「真面目ですね~」

「それで給料貰ってるからなぁ」

「なるほど~」

 でもまぁ、それもしょうがないのかな。
 あの年齢だし。
 それに、マクダウェルが言うには何か意味があるらしいし。
 超が関係しているとか。
 それに、良い機会だからとか言ってたし。
 まぁそっちはマクダウェルに任せる事になってる。
 魔法使いの問題らしいから。
 ……そう言われると、こっちは何も言えないしなぁ。
 うーむ。

「なぁ、月詠?」

「はい~?」

「月詠なら、超と会う事は出来るか?」

「超さんとですか~?」

 ああ。
 ふと、気になったので聞いてみた。
 月詠も、魔法使いの一人なんだし。

「まぁ、居場所が判れば……どうでしょう~? その時になってみませんと判りませんね~」

「そうなのか?」

「はい~。ウチは荒事専門ですから~」

 荒事って……この前みたいな事だよな。
 むぅ。
 それだとあんまり無理は言えないよな。
 やっぱり、そういうのをしてほしくない、って思う。
 はぁ――難しいなぁ。
 俺って、本当に一人じゃ何も出来ない。
 生徒に会う事にだって、こんなにも苦労してるしなぁ。
 こう思うくらいなら、朝から女子寮にでも顔出せば良かった。
 明日はそうしようかなぁ。

「超さんに会いたいんですか~?」

「ああ」

 判らない事ばかりで、本当に頭が痛くなりそうだ。
 超の事。
 魔法使いの事。
 どうすれば良いのかすら判らない。
 何が正解なのか。
 そもそも、正解があるのかすら怪しいんだけど。

「聞きたい事ばっかりだからなぁ」

 それ全部に答えてくれるか、となったらまぁ、首を傾げるしかないけど。
 アイツも大概、マイペースだからなぁ。
 っと。

「何か食べるか?」

「ええんですか~?」

「あんまり小遣いもやって無いからなぁ、今日くらいは奢るぞ」

 というか、この年頃ってどれくらいの小遣いなんだろう、と悩んでたりする。
 こういうのを聞ける人が居ないからなぁ。
 とりあえず、要る時に言うようには言ってるけど。

「なら、アイス食べたいですわ~」

「そりゃいい。今日は暑いからなぁ」

 しかし、学生が作ったアイスか……ちょっと勇気がいるな。
 美味いんだろうか? という意味で。
 こういうのって、結構遊んでる所もあるからなぁ。

「中々美味しいですね~」

「……そりゃ良かった」

 うーむ。
 やはり基本のバニラは外れ無しか。
 むぅ。

「お兄さんの方は外れのようですね~」

「うむ。トマトは無いな、やっぱり」

 というか、何でトマトだよ。
 イチゴで良いだろうに……身体には良さそうだけどさ。
 妙になま臭いと言うか、あのトマト独特の味がすると言うか……甘いから、余計に性質が悪い。
 店側からしたら、頼む方も頼む方だろうけど。
 やっぱり、こういうのは挑戦したくなるのが男と言うか。
 客の心理を良く掴んだ商売してるなぁ、と。

「ねぇ、せんせー?」

「ん?」

 あれ、と思った。
 ……ああ、呼び方が違うのか。

「どうした?」

「どうして超さんと関わるんですか?」

 ん?

「何でそんな事を?」

「だって、関わってもええ事あんまりありませんえ?」

「そうか?」

「魔法使いの皆さんにも睨まれますし、見返りだってありませんやろ?」

 む……確かに、言われるとそうなのかもなぁ。
 というか、魔法使いの人達に睨まれるって……ちょっとアレだな。
 勇気が必要というか。

「普通は、そういうのは見て見ぬ振りをするもんですえ」

 あー、まぁ、そうなんだろうな。
 きっと、それが賢い生き方なのかもしれないなぁ、と。
 超がどういう立場なのか、俺はきっと理解出来ていない。
 それでも、俺はあの子の先生なのだ。
 なら――超の立場を少しでも、理解したい。
 もしかしたら、俺にも出来る事が少しはあるかもしれないし。
 それに。

「超が言ったんだ――俺の所為だって」

「……お兄さんの?」

「意味が判らないからなぁ。そう言われたら、気になるもんだ」

 俺が何をしたのか。
 その事で、超を傷付けたのかもしれない。
 だからそれを知りたい。
 謝って許されるのか。
 それとも赦されないのか。
 それすらも判らないのは……うん。気分が悪い。

「ふぁ」

 あんまり寝れてないし。
 この調子じゃ、明日も寝不足になってしまう。
 それに仕事も進まないしなぁ。
 精神衛生上良くない。

「おかげで、昨日はあんまり寝れなかった……今日か」

 まぁ、どっちでも良いけど。
 ふむ――口にすると、結構すっきりするもんだ。
 というか、覚悟が決まったと言うか。
 うん。
 見回りが一段落したら会いに行こう。
 武道大会が終わるくらいなら、超も時間が出来るだろうし。
 ……会えるかは判らないけど。

「お兄さん~?」

「ん?」

 そんな事を考えていたら、月詠から声。

「死ぬかもしれませんよ?」

「――――――」

 そうだな、と。
 うん。
 俺にはなんの力も無い。
 死なないなんて思って無い。
 自分が特別なんて、思った事も無い。
 死ぬのは怖い。
 それは、骨身に染みて判ってる。
 あの雨の日。
 老人に問われた事。
 死ぬのが怖くないのか。
 自分が死なないと勘違いしているのか。
 ――そんな事は無い。
 俺はただの人間なんだから。
 それでも……謎掛けみたいだった超との会話だったけど。
 判ってる事がある。

「しょうがない。先生だからなぁ」

 それで、超は生徒だからな、と。
 しょうがない、で済ませられる問題じゃないんだろうけどさ。
 あの雨の日と同じだ。
 魔法使いの皆があの子を要注意人物として見ていたとしても。
 先生なら、生徒を信じるもんだ。
 うん。
 裏切られるかもしれないけど、それでも信じないとな。
 それに――まぁ、なんだ。
 超は危険じゃない、って言った月詠の言葉もあるし。

「はぁ」

 隣から、盛大な溜息。
 ……う。

「呆れますね~」

「う」

 むぅ。
 まぁ、そう言われると反論のしようが無い。
 だってなぁ……。
 普通は、きっとここまで生徒に踏み込もうとしないだろうし。

「ま、お昼を食べたら大会の会場の方へ行ってみましょうか~」

「へ?」

「会えるかもしれませんしね~」

 そう言って、歩き出した月詠の後を慌てて追う。

「良いのか?」

「会いたいんやないんですか~?」

 いや、そうだけど……。
 マクダウェルから何か言われてるんじゃないのか?
 そう聞いてみた。

「お兄さんを見ているように、とは言われましたが~」

「そっか」

 あと、絶対無茶するからな~、と。
 うーむ……マクダウェルにどう思われてるんだろうか?
 あまり聞きたくないような、一度聞いてみたいような。
 ……やめよう。
 きっとヘコむ事になりそうだ。

「お兄さん~?」

「ん?」

 そう考え、とりあえずマクダウェルの事は置いておこう、と思考の中で落ち着いた所で隣の月詠からの声。
 その声に視線を月詠に向け、その視線は一つの出店へ。
 焼きそばか……祭りの定番だなぁ。

「なんだ、食べるのか?」

「ええんですか~?」

「そんなの気にしなくて良いから。食べたいのを食べれば良い」

 でも、食べ過ぎには注意しろよ、と。
 一応釘は刺しておく。
 こう見えて、月詠って結構食うからなぁ。
 この細い身体のどこに入るんだか。

「んふふ~」

 月詠に焼きそばを、俺は何となくたこ焼きを買って食べながら歩く。
 ……さっきから外ればっかりだなぁ。
 というか、学生のタコ焼きなら、この可能性は高かったか……俺が甘かった。
 生地が、うん。ねばねばというか、何と言うか。

「美味しいですか~?」

「あー、ウルスラのタコ焼きは厳しいなぁ」

 タコがデカイのは良いけど。
 さすがお嬢様学校。そこは抜かりないなぁ。
 ……お嬢様がたこ焼き屋とかどうかと思うけどさ。
 まぁ、そこはクラスの自由だな、うん。
 客がそこそこ多かったから騙されたが、アレは出会い目的の男だったか。

「焼きそばはどうだ?」

「中々ですね~」

「むぅ……良いな、まだ外れが無くて」

 こっちは外れの連続だと言うのに……。
 まぁ、アイスは自業自得と言われたらそれまでだけど。
 やはり、良く考えるとトマトは無いよなぁ。
 ……しかし、キュウリも捨てがたかった。
 というか、どうやって作ったんだろう?
 アレか? 磨り潰して、アイスに混ぜ込んだんだろうか?
 良くやるよなぁ。インパクトは十分過ぎる。
 明日買ってみるかな。





――――――エヴァンジェリン

 うーむ。

「どうしたんだい、エヴァ?」

「いや……知らない名前ばかりだ、とな」

 先ほど超から発表されたトーナメント票を睨みながら、一言。
 まぁ、真名とは反対側だから良いか。
 最後まで残るにしても、当たるなら決勝か。
 ……そこまで、この茶番に付き合う気も無いが。
 それに、一千万と言われてもなぁ。
 チラリ、と隣に視線を向ける。

「ん?」

「一千万、欲しいのか?」

 とりあえず、聞いてみた。

「そりゃね。遊びで一千万なら、良い小遣いになるし」

「……一千万は小遣いの範疇を超えてると思うぞ?」

 どうでも良いけどな。
 ま、少しは真名に楽をさせてやるのも良いか。
 こっち側でそれなりに強そうなのは……。
 誰だ?
 あんまり、こういうのは詳しくないからな。

「なぁ、真名。私と戦いそうな奴で、強いのって誰だ?」

「んー……多分、エヴァの相手になるのって居ないと思うよ?」

「そうか?」

 一回戦は名前を知らないヤツ、上手くいけば、二回戦はぼーやとだ。
 そうなると、私が参加するのは二回戦までなんだが……ふむ。
 しかし、真名の方がなぁ。
 クーフェイに長瀬楓に、小太郎の連続である。

「そっちは大変そうだなぁ」

「まぁねぇ……」

 そう言って、一つ溜息。
 一回戦からクーフェイだもんな。

「勝ち残れそうか?」

「厳しそう」

 だなぁ。
 武器禁止だし。
 何でもアリなら、お前だって勝ち目があるだろうけど。
 クーフェイと長瀬楓はこういった大会なら反則気味だからなぁ。
 無手で強い。
 そう言うのは、武器使いの真名には荷が重いだろう。
 小太郎は……まぁ、まだまだ甘い所があるからなぁ。
 クーフェイみたいにまっすぐでも、まだ付け入る隙がある。

「そういえば、素手で行くのか?」

「まさか。そんな馬鹿正直じゃ、それこそ優勝なんて無理だよ」

「……一応、優勝は狙ってるんだな」

「勝負を投げるには、少しばかり一千万は景気が良すぎる」

 そうか。
 ふむ。

「それに、三回戦までは勝ち残らないとね」

 ……そうか。
 三回戦は、小太郎。
 そこまで残れば――まぁ、うん。
 チラリ、と。
 問題の2人を見る。
 小太郎の方は、まぁ問題無いだろう……と思う。
 私からも、先生からも言ったから。
 これで“気”を使うなら、どうしてやろうかとも思うが。
 まぁ大丈夫だろう。
 何だかんだで、先生の言う事は正直に聞いてるからな。
 問題は、だ。

「おい、ぼーや」

「ぅ……は、はい?」

 ……お前は。
 教師なんだから、もう少し胸を張れんのか?
 どうして私に怯える?
 まったく。

「何でこの大会に出場したんだ?」

「そ、それは……その」

 はぁ。
 相変わらずのだんまりか。
 そう目を逸らして、気弱そうに話す姿は――まるで、麻帆良に来た当初のよう。
 最近はもう少しマシだと思っていたんだが。
 さて、この大会にそれほどの“何か”があるのか。
 超から何か言われたらしいが、じじいに聞かれても答えなかったからなぁ。
 よっぽどの理由なのか。
 ……あのじじいも、本当甘いな。
 まぁ流石に、あの懐中時計を模したタイムマシンはじじいが取り上げたが。
 アレは危険すぎるからなぁ。
 過去を変えられるとか……未来がどうなるか判ったものじゃないだろうに。
 大体、時間を弄るなど。
 人の出来る範疇を超えている。
 超の目的が何なのか。
 この大会で少しでも判れば良いんだが。
 ま、それは今はどうしようもないか。

「今のままじゃ、一回戦も危ないぞ?」

 まぁ、私としてはそっちでも助かるがな。
 魔法無しのぼーやじゃ、きっと格闘を齧った一般人と五分五分といった所だろう。

「そうとも限らないと思いますよ?」

 と。
 その声は、私の後ろ。

「――――――」

 な――。
 私と真名が振り返るのは同時。
 ……まったく気配が……。
 そこに居たのは、白のローブに身を包んだ男。
 今対峙しても、その気配は希薄で――まるで、目の前に居るのは幻影のよう。
 なのに――。

「こんにちは、古き友よ」

 その男は、私を友と呼んだ。
 それは、私を知っていると言う事。
 私を――。

「貴様ッ」

 一人、知っている。
 私が居場所を把握していないで、それで私を友と呼ぶ――馬鹿を。
 思い出すと、確かに。
 この魔力の質は…。

「何故ここに居る!? 私は、お前の事も探していたんだぞ!」

「ええ、知っています」

 んなっ。
 あ、あっさり言ったな、この男……。

「知ってたら顔くらい出せ、このッ」

「ははは。私のこの性格は、流石に十数年じゃ直りませんでしたね」

「他人事みたいに言うなっ」

 くそっ。
 なんで――。

「いやー、面白そうなお祭りでしたので」

 つい出てきてしまいました、と。

「つい、じゃないだろ!?」

 笑いながら言う事か!?
 違うだろっ。

「あと、貴女が楽しそうなのに、私が参加できないのは寂しくて」

「……は?」

 楽しそう?
 私が?

「楽しいわけあるかっ。こんな面倒事で、折角の祭りの時間を潰されて――」

「楽しそうじゃないか」

「真名、お前は黙ってろっ」

「むぅ」

 楽しくなんかあるかっ。
 面倒なだけだ、と。
 まったく――。

「相変わらず怒りっぽいですねぇ」

「誰が怒らせてるんだっ」

 くそ……はぁ。
 相変わらずだな、コイツは。

「え、エヴァンジェリンさん?」

「ん? なんだ、ぼーや?」

 私は今、非っ常に機嫌が悪いぞ?
 そう視線を向けると、真名の後ろに隠れられた。
 ……ぬぅ。
 その反応はそれで、ムカツクな。

「はっはっは、フられましたねぇ」

「五月蠅い」

 ちっ。

「それより貴様、今までどこで油を売っていた?」

「それは内緒です」

 一発殴ってやろうか、この男。
 はぁ……。

「初めまして、ネギ君」

「は、はい? 僕の事……」

「ええ、よく知ってますよ」

 そうだろうよ。
 ――だからこそ、どうして今まで現れなかったのかが気になる。
 この男にとっては、ぼーやは、ナギの息子は……。

「クウネル・サンダースと言います」

「あ、御丁寧に。ネギ・スプリングフィールドです」

「誰だ、ソレ!?」

「私の名前ですよ? ほら」

 そう言って指差したのは、トーナメント表。
 はぁ?
 ――って、本当にあるし。
 何考えてるんだ、コイツ?

「アホだろ、お前?」

「心外な。結構会心の名前だと思うんですが……」

「なんか、どこかのファーストフード店みたいな名前だね」

 言ってやるな、そこは。
 なんか満足みたいなんだし、触れてやらないのが優しさだろうよ。

「ええ。いつもお世話に――」

「……まんまか」

 はぁ……コイツの相手は、疲れる。 
 本当に。
 なんかぼーやに言おうとしてたはずなんだが、忘れてしまった。
 なんだったかな。

「それで、エヴァ? この人は誰なんだい?」

「あー……」

 どうする、と視線を向ける。
 本名ばらして良いのか?

「キティの古い友ですよ」

「その名前を呼ぶなっ」

 殴るぞ、本気でっ。

「キティ?」

「聞くなっ」

 そう真名に釘を刺し、アホの腹に一発拳を叩きこむ。
 ……ちっ。
 丁寧にローブに防御魔法を仕込んでるのか。
 相変わらず、この手の事は得意だな。

「どうしたんですか、キティ?」

「その顔を殴ってやろうか……?」

「おー、怖い怖い」

 何がだ。
 本気で怖がってないだろうが……くそ。
 あー、まったくっ。

「……何しに来たんだ、お前?」

「おや、お疲れですか?」

 誰の所為だ、誰の。
 はぁ。

「いえいえ。友の息子の晴れ姿を特等席ででも、と」

「はぁ?」

 ぼーやのか?
 ……当の本人は、きょとんとしてこっちを見てるけどな。
 まぁ、説明してないから訳が判らないのは判るが……もー少しマシな顔は出来んのか?

「見る価値あるか?」

「仮にも、貴女の弟子でしょうに……」

「弟子というには、足らないものが多すぎるがな」

 自覚とか、そういうのが。
 自分の力量も判らずにこんな大会に出るくらいだしなぁ。

「まぁ、決勝までは無理そうですが――貴女との勝負は見れそうですしね」

 今はそれで満足しておきます、と。
 ふん。
 お前、ぼーやと戦う気だったのか。
 まぁ――判らなくもないが。
 初めは私もそうだったからなぁ。
 ま、いい。

「……流石に、時期尚早といった感じですしねぇ」

「何の話だ?」

「いえいえ。こちらの事です」

 はぁ。
 お前、それ言いに来ただけか?
 本当に暇人だな……。
 相変わらず掴みどころが無いというか。

「ネギ君」

「はい?」

 そう溜息を吐く私を置いて、ぼーやに近づくアルビレオ・イマ。
 時期尚早、か。
 どうにも――気に入らないな。

「大きくなりましたね」

 そう言って、ぼーやの頭を撫でる様は、本当に――親子か、歳の離れた兄弟のよう。
 それを遠目に眺めながら、溜息を一つ。
 ――コイツが出てきたという事は、だ。
 厄介な事が起こるのかもな。
 今まで身を隠して、私にも見付からないようにしていたんだし。
 はぁ。

「疲れてるね?」

「まぁな……アイツとは相性が悪いんだ」

 あの性格はなぁ。
 実力は折り紙つきなのだが、どうにもなぁ。

「そうだ、キティ」

「だからその名を呼ぶなっ」

 本気でその横っ面殴るぞ。グーで。

「む……この綺麗な顔に傷は、あまりいただけませんね」

「自分で言ってるよ」

 そこには触れるな、真名。
 アイツの話に一々反応していたら、疲れるだけだ。
 自分の顎を指で撫でながら、では、と。

「マクダウェル」

「よし。そこを動くな。顔の形を変えてやる」

「どうどう」

 離せ真名っ。
 アイツを殴らせろっ。

「え、エヴァンジェリンさん、落ち着いて下さいっ」

「ははは。楽しそうですねぇ、エヴァンジェリン」

「お前が言うなっ」

 楽しくなんかあるかっ。
 くそっ。

「それでは、エヴァンジェリンを押さえていて下さい、ご友人」

「おっけー」

「離せーっ」

「話が進まないから」

 進まなくても良いから殴らせろっ。
 一発、一発で良いから。

「絶対一発じゃ済まさないだろう?」

「当たり前だ」

 最低二桁は殴る。
 絶対。
 最悪、コイツが出場出来なくなっても別に構わないし。

「じゃあ離さない」

「ちっ」

「流石に、友達に流血沙汰は、ちょっと……」

 ……ふん。

「それではマクダウェル」

「お前がそう呼ぶなっ」

「おやおや、それは失礼。――それでは、エヴァンジェリン」

 くそっ。
 ……疲れた。

「あ、力尽きた」

 後ろから腕を抱えられる様にして、真名に支えてもらいながら、溜息を吐く。
 もうぼーや放っておこうかな。
 なんかもう、全部面倒になってきた。

「それでは一回戦始めますので、選手の方は会場の方へ――」

「あ、僕だ」

 む、もうそんな時間か。
 そう言って朝倉についていくぼーや。
 ……というか、今日の審判は朝倉なのか?
 昨日といい。
 何やってるんだ、アイツ?
 あと、もう離して良いぞ、真名。
 殴る気力も無くなったから……。

「ふむ、それでは貴女の弟子がどれほどのものか見せてもらいましょうかねぇ」

「だから、今は弟子と言えるようなものじゃないがな」

 肩を落として、そう言う。
 それなりに、戦い方は教えているが。
 こういった一対一の戦い方なんて、教えて無いぞ。
 そこまでの技術も無いし。
 アレは多対一、多対多で本領を発揮するタイプだ。
 ナギとは違うんだからな。

「そうだ、エヴァンジェリン」

「なんだ?」

 もう、何言われても反応しないからな?
 これ以上疲れたら、それこそもう、試合なんてする気も起きないし。

「賭けをしませんか?」

「賭け?」

「はい。ネギ君が一回戦を通過できるかどうか」

 ……ふむ。

「面白そうですね」

「でしょう?」

 ……何故お前が乗る、真名。
 まぁ、別に良いが。
 どうでもいいし。

「私は、ネギ君が勝つ方に」

「む――まず、賭けるモノを話しましょう」

「ふふ。私は、この一葉の写真をある人へ渡そうかと思います」

 …………写真?
 また、何というか……突然だな。
 というか、それ賭けか?
 私も真名も関係ないじゃないか。
 そう言ってローブの袖から一葉の写真を取り出すアルビレオ・イマ。

「これです」

 ――――――。

「乗った」

「乗るなっ」

 そ、それっ。
 昨日の予選の時のじゃないかっ。

「何でお前がそんなのを持ってるんだっ!?」

「いえいえ、心優しい人から――」

「朝倉だね」

 何でそこに確信が持てるんだ、お前?
 まぁ、私も十中八九そう思うけど。
 というか、何でその写真なんだっ。
 その写真には……何と言うか、巫女装束姿の私が映っていた。
 しかも、丁度予選終了直後なんだろう。
 なんというか、うん。
 汗かいてたり、少し服が乱れたりしてた。

「――買いました」

「貰ったじゃない所が、余計に朝倉らしい」

「納得する所か!?」

 あと、それ寄越せっ。

「おっと」

「ちっ」

 ぬぐぐ――その写真を持った手を、高く上げるアルビレオ・イマ。
 あーっ、ムカツクな、コイツっ。
 あまりに腹が立ったので、無駄だと思いつつもその足を全力で踏み付ける。
 が、全然痛くないのだろう。その笑顔は崩れない。
 やはり、靴の方にも何か細工しているのだろう。

「それでは会場の方へ行きましょうか――」

「龍宮真名だ。真名で良いよ、クウネルさん」

「そうですか、真名さん」

 何で意気投合してるんだ、お前ら?
 なんか違わないか?

「って、私との賭けじゃないから、私の写真は寄越せっ」

「私が賭けを振ったのは貴方ですよ? 乗ったのは真名さんですが」

「すまないエヴァ。……どうにも、私の本能が」

「そんな本能、捨ててしまえッ」

「相変わらず手厳しいね」

 あー、まったく。
 ぼーやから大会に出た理由を聞きだそうと思っていたのに、それどころじゃない。
 何なんだ、一体。
 くそ。
 ……あーっ。
 ぼーやの相手誰だっ!?

「田中?」

 トーナメント表には、田中という名字だけ書いてあった。
 また、地味な名前だなー。
 ……こりゃ駄目か?
 いやいや、諦められんだろ。うん。
 何せ相手はぼーやだ。
 田中にだって勝ち目はあるさ。




――――――チャチャゼロさんとさよちゃんとオコジョ――――――

「ふぃー……まさか、会場がペット禁止とはなぁ」

「はいー。予想外でしたねぇ」

 いやはや、木乃香の嬢ちゃんには悪い事をしたなぁ。
 折角連れて来てもらったのに、オレっちが入れないなんて。
 なので、会場の屋根の方にチャチャゼロさんとさよ嬢ちゃんと一緒に登って鑑賞する事にしてる。
 いいね。
 周りに誰も居ないから喋り放題だぜ。

「イイケドヨ、一試合目カラ、オ前ノ御主人様ジャネーカ」

「へ? おー、ネギの兄貴ー!!」

 頑張って勝って下さいよーっ。
 何か相手、筋肉ダルマっすけど……。

「ネギ先生、大丈夫でしょうか?」

「魔法抜キダカラナァ。“戦イノ歌”ガアルトシテモ、五分五分ジャネ?」

「うーっ。頑張って応援しましょう、カモさんっ」

「おうよっ」

 がんばれーっ、兄貴ーっ。
 きっとこれに勝てたら、姐さんも褒めてくれますよーっ。
 ……いつも苛められてるんですから、ここで少しでも良い所をーっ。



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